金色の娘は影の中で   作:deckstick

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原作の足音編第06話 仕事するな

 ヴァンとアルにお仕置きしたり、近右衛門が女子中学校の校長に就任するのを生暖かい目で見守ったりしている間に、年度が替わった。

 魔法世界は国も造物主も小康状態を保っていて大きな動きがないのが不気味だが、明確な問題は発生していない以上、むやみに動くわけにもいかない。様子見という名の現状維持となるだろう。

 

 ネギは魔法学校に入学、そして短期で卒業すべく準備中だ。

 何度か会いに行ったりもしたが、基本的に真面目な性格だし、魔法の素質やらもかなり高いように見えるから、麻帆良に来ても能力的に邪魔になることはないと思える。

 もちろん、状況が違う上に中身が別人である以上、原作のネギとは異なる点も多々ある。父親を過剰に英雄視していないとか、魔法の基礎をしっかり練習しているとか、妙に私に懐いている……のは、原作と同じになるのか?

 

 そして、千雨だが……どうも、魔法関係への興味を拗らせたのか、本物の情報が含まれる作品の存在がまずかったのか、まだ実際に魔法を使うための指導が始まっていないせいなのか。

 着実にオタク化しつつあるらしい。

 現実問題として、口を滑らせたとしてもオタクがアニメなどの話をしているだけと思われる効果などが期待できるのだが、あえて言いたい。

 修正力仕事するなっ!

 

「えー、変身する衣装作りに目覚めたちうたんもかわいいのにー」

 

「お前が言うな。

 そもそも、チアのアイドル化を歓迎していなかったか?」

 

「それはそれでありだよ。

 むしろ、チアと魔法少女の衣装が合わさって露出マシマシ的な?」

 

「自重しろロリコン」

 

「大丈夫、紳士だから!」

 

「安心できる要素が全く無いぞ」

 

 千雨に関しては手を出していないらしいが……怪しすぎるだろう。指示内容等を確認した範囲では、手出しの証拠が見付からなかったが。

 

「それよりも、だよ。いろんなところからきてる話はどうするの?

 忍者の里の方からのとかさ」

 

「ああ、楓の事か。

 全力で英才教育をしたらしいが、麻帆良に来るのは中学からでもいいんじゃないか?

 無理に早く来る必要も理由もないだろう。いくら才能があっても、まだ子供だしな」

 

「一応、部下として慣れたり追加で必要な教育をしたりする期間を想定してるらしいよ。

 それに、こっちに来るのとどっちが厳しいか、って疑問はあったりするかも。こっちに呼ぶのが遅くなると、潰れないギリギリを全力で攻める期間が伸びる可能性があるよね?」

 

「あっちにいる望月の連中も、容赦無いからな……

 むしろ呼んだ方が良かった可能性があるのか」

 

「こっちの望月も同じくらい容赦ないけどね。

 それでもエヴァにゃんの指揮下にいるなら、それほど厳しくなかったかもとか思っちゃってさー」

 

「……まあ、どれも可能性だ。雪花達も厳しい時は相当だしな。

 他には……那波から娘を留学させる話も来ていたか。建前や手続きは一般の方だったし、私は口を出していないぞ」

 

 那波は本家が日本の方にあるが、麻帆良に本家がある雪広と同じ学年の娘がいるため交流を深めたいとかいう話だった。

 裏を読めば切りがないが、建前上は魔法に関係するものではないはずだ。

 

「でも、時期といい接触相手といい、確実に裏を意識してるよね?」

 

「しているのだろうが、咎める気は無いぞ。

 あの計画自体は耳にしているはずだし、それを意識して動くのは当然だ。原作の雪広あやかと那波千鶴の関係を考えると、むしろ遅いような気もするが」

 

「親友になるのは、時間よりも相性や濃さだと思うよ。

 えっと、他は確か、中国からも何か来てたよね?」

 

 中国からは確か、人を送るという話が進んでいる、という報告だったか。

 まだ具体的な人物の選定には入っていないはずだが……

 

「気や技術を扱う人物も必要だろう、という話までだな。

 選定基準として、古菲や超鈴音が選ばれる可能性は高い。超鈴音が中国に現れたら、だがな」

 

「でもさ、中国にいる眷属の上層部には、超の捜索に必要な情報を流してあるよね。

 罠を張って呼び込むつもりかもしれないよ? 日本に現れても、中国の方が楽に潜入できるならそっちに行く可能性が高いし」

 

「そうだという確証はないが、結果的には私達が張る網よりも捕獲率が高そうだから、依頼した甲斐があると思えばいいのだろう。雑談のついでにでも、意図を確認しておくか……

 というか、葉加瀬聡美が大学に出没し始めているのは気にならんのか?」

 

「あー、うん、いるのには気付いてたし、優秀な技術者の卵としては気にすべきなんだけど、個人的にはあんまり?

 マッドな方向に振り切れてるのは、女の子として見るときついものがあるよね。別次元のキャラクターとしてとか、協力者としてならいいけどさ」

 

「原作の連中を探していた理由は、ソレなのか?」

 

「うん、いやまさか。

 だってほら、放っておいても動向は耳に入るし、接触はもうちょい後でもいいかなーって」

 

「それは駄目だろう」

 

 少なくとも、超鈴音が現れる前には、ある程度の信頼を得ておく方が良いと思うが。

 まったく、こいつも古本の変態さに染まりおって。

 

「まあ、その辺はおいおいだね。

 他は、なんかメガロから来てた苦情って、あれでしょ。明石だよね?」

 

「機密情報を盗んだ犯罪者が云々というアレか。

 犯罪の証拠を機密だとか主張する程度に頭のネジがおかしくなっているようだから、そいつの政敵にコピーを送ってみたら静かになったぞ。

 騒動の発端になった警察の魔法関連調査担当部隊にいるのが明石裕奈の母親のようなんだが、原作だとメガロのエージェントじゃなかったか?」

 

「幕田が頑張ったせいか、メガロに日系の人ってほとんどいないんだよね。だから、修正力も頑張り切れなかったんじゃない?

 内通してたとかいう話よりは、すごく平和だしさー」

 

「まあ、そうだな。

 で、お前の方は、また誰かを見付けているんだろう?」

 

「そうなんだけど、驚きの情報があるよ。

 なんと。春日美空が、巫女さんになってました!」

 

「……悪戯シスターではなくなったのか」

 

「だってほら、幕田って神道とか陰陽とかが主流でしょ。メガロってキリスト教と仲がいいんだけど、メガロとか宣教師とかの影響力を叩き潰してきたせいか、キリスト教に関係するものって結婚式のための教会しかないとかいう笑える状況なんだよね。

 そんな状態だからなんちゃって牧師とバイトのシスターしかいないし、師事するようなシスターも当然いない、と」

 

 麻帆良は日本よりも更にキリスト教の力が弱いとは聞いていたが……そこまでなのか。

 そうなると、影響が出ていそうなのは……

 

「シャークティは確認できたのか?

 ココネは確か、ヘラスとの文化交流という名目の安定性試験と言っていたのがそうだと思うが」

 

「驚いたことに、シャークティは幕田に帰化してた上に月読神社で巫女やってて、その弟子に美空がいたんだよねー。龍宮神社の御曹司に熱烈アタックしてるマナたんに注目しすぎてて気付かなかったよ」

 

「ちょっと待て、それでいいのか?」

 

「いいのいいの。

 んで、月読神社ってエヴァにゃんの眷属の人達が関係してるから、魔法世界、特にヘラスとの繋がりも強いわけで。その伝手で魔法世界から出られるよう調整されたココネが麻帆良に来てて、シャークティの家にホームステイしてる、と。

 仮契約とかはしてないみたいだけど、現状は兄弟弟子みたいな感じ?」

 

「……修正力が、変な方向に頑張りすぎだろう。

 メガロが干渉していないのはいい事だが」

 

「それが、ちょーっとメガロを叩き過ぎたみたいでさ。

 魔法世界の作業進捗、メガロの勢力圏で遅れがあるんだよね。

 ヘラスとウェスペルタティアが順調だから全体では問題ないけど、むやみに暴走する人がでなきゃいいなーって感じ?」

 

 暴走する人……造物主が最も危険そうだが、この場合は政治屋やマスコミも問題か。

 民衆が暴走を始めると致命的な事になる可能性が高い以上、扇動する力を持つ者には注意しておく必要があるのだろうが……

 

「主要な相手には、それなりに手を打っているはずだ。

 全てに先手を打つことは不可能だし、少なくとも監視はしているはずだから、予兆が見えた時点で対処する事になるだろうが。

 不安があるとすれば、造物主がどう動くか、だな」

 

 私もある程度は上から見ているが完璧ではないし、眷属達も造物主を刺激しないように近付くことを避けている。集める物資類をチェックするのも、近隣での調達ならともかく転移で遠方に行かれたら追うのは無理だ。

 政治家やらと違って外部との接触もほぼ無いから人伝に漏れる情報も無いし、頭の中の監視などできるはずもない。

 最も厄介な相手の後手に回る事が確定しているのは、どうも落ち着かない。

 

「その辺はご都合主義的に、なるようになるんじゃないかなー」

 

「なるようにしかならない、とも言えるな」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 これまでは原作3Aの生徒でも、立場がある者の情報が来たり、特殊な能力を持つ者の情報を探したりすることが多かった。

 だが、小学3年生にもなると、才能がある者はその片鱗を見せ始めたりもするわけで。

 

「で、この夏休みにあった大会やらで、何人見付けたって?」

 

「正確には、名前だけは見付けてたって娘もいるんだけどね。

 順不同というか、メモに書いた順番に言うね。

 まず、ポスターのコンクールで、早乙女ハルナが入賞してたね」

 

「漫画読ませろ……だったか。

 ようやく見付けたのか?」

 

「名前だけはだいぶ前に見付けてたよ。まだ漫画を描いたりはしてないみたいだから、あたたかく見守るつもりだったんだけどね。

 名前が表に出たから、一応話しとこうかなと」

 

「私は別に、特殊な事情や能力持ち以外まで追う気はないんだがな。

 それでも何らかの形で目立っているなら、把握しておく方がいいのか……?」

 

 原作の生徒達とは、既に何らかの形で関りが出来つつある。

 余計な仕事をする修正力の事だから、最終的に全員と接触する可能性は高いと覚悟しておくべきなのだろうか。

 

「そういう事。

 んで、ジュニアの大会に出場してるのを確認できたのが、大河内アキラと佐々木まき絵の2人。

 水泳と新体操だから、原作通りらしいよ?」

 

「本人の好みや適性がそうなっているのだろうな。

 魔法には関わっていないんだな?」

 

「その点は大丈夫みたいだよ。

 まだそんなに大きくなってないアキラたんもかわいかったなー。あー、ロリコンになってしまうんじゃー」

 

「心配しなくても、間違いなく既にロリコンだ」

 

「相変わらずノリが悪いなぁ。

 んで、いくつかの大会の応援団に、椎名桜子、柿崎美砂、釘宮円の3人がいたのも確認済み。

 ちうたん絡みの時にも確認済みだけどね」

 

「あの時は、桜子しか名前が出てなかった気がするが」

 

 しかも、大明神とか言っていたような。

 幸運がどうのとかが由来のあだ名だったよな?

 

「そうなんだけど、ぶっちゃけそこまで注目する必要もないかなーってね。

 他には、図書館島で宮崎のどかと綾瀬夕映を見かけるくらいかな。表に出てるわけじゃないから微妙なとこだけど、僕がよく出歩く範囲で見かけるからさ」

 

「図書館探検部は無いはずだが、普通に利用しているだけか?」

 

「その辺は大丈夫だね。

 本が好きで通ってるだけみたいだよ」

 

「それなら問題ないか。

 他にも存在を確認したまま放置している人物はいるのか?」

 

「いるよー。今はただの噂好きなジャーナリストとか、料理好きなコアラさんとか。

 あ、鳴滝姉妹はなんちゃってミーハー忍者じゃなくて、こっちの望月さんちで修行してる甲賀系忍者になってるみたいだね」

 

「……それはいいのか?」

 

「いいんじゃない? ちびっこが忍者忍者言ってても、誰も本物だと思わないしさ。

 僕の方はこんなところだけど、エヴァにゃんの方はどうなのさ。ちうたんとかちうたんとかネギちゃんとか」

 

「ネギはちゃん付でいいのか……?」

 

「見た目は男の子、頭脳はお母さん、とか言うと嫌われちゃいそうだしさー。

 ほら、女の人って若く言った方がいいじゃない? 前世分を合わせたところで、僕たちの方が圧倒的に年上なんだし」

 

「その呼び方で何か言われても、私は責任を取れんぞ」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。

 んで、ちうたんとかネギちゃんとかはどうなの?」

 

「千雨は、認識阻害耐性以外は良くも悪くも普通だ。通常の修行の範囲で特別な何かがあるわけでもないから、普通の初心者と変わらないと言っていいだろう。

 原作的にコンピュータ関係との相性はいいかもしれんから、電子精霊を扱わせると化ける可能性はあるが……引き籠りのオタクになっていないから、これも微妙か?」

 

「あー、原作ではアーティファクト頼りだったし、こっちだとパソコンにハマってないもんねー。

 ちうたんの将来は未知数ってことでいいとして、ネギちゃんは?」

 

「9月から通い始めるのは決定済みだし、順調に早期入学と短期卒業の準備を進めているぞ。魔法学校はインデペンデント・スクール……独立性の高い私学扱いだし、元々が能力の高い者の短期卒業を認めていたらしいからな。

 ただ、理想は原作生徒達の中学校入学までに初等教育を終えて同じ学年に生徒として入学、らしいが……」

 

「相当無茶な理想だよね、それ」

 

「前世の記憶やらで成績は底上げできるといってもな……まあ、これは努力次第だからいいとしよう。

 どうも、ネギは体が男という事を意図的に忘れている気がする」

 

「それ、いいの?」

 

「良くないだろう。原作の舞台は女子中学校だという事は伝えてあるし、ネギ自身も同じ学年と言っても同じ学校とは言っていないが……どうもな」

 

 原作と同じ状況にはならない事は確定しているとはいってもだ。

 本当に、修正力は仕事するなよ?




シャークティは和名を使わせようか悩みましたが、諸々の理由で没となりました。
たぶん「名」だと思うのですが漢字にすると「姓」っぽくなる上に、アスナ(レイ)以上に名前を忘れられそうだったので。

没ネタ:
「あ、ちなみに和名は紗口(しゃくち)らしいよ」
「あまり日本的ではないが……まあ、変に変えるよりはマシか」
「巫女の紗口(しゃくち)さんを誰かが発音間違いかつ短縮して呼んだせいで、あだ名はミシャグチさんだってさ」
「……女性なのに蛇で御立派様なのか」


連絡事項:
元旦前後はPCが使えない環境になる等の事情により、1週間以上執筆が止まります。
そのため、現状の4週ごと投稿にも間に合わない可能性がとても高いです。
1月25日(6週間後)には間に合わせる予定なので、気長に待っていただけると幸いです。


それでは、よいお年を


2017/04/25 以下を修正
 魔法世界から出れるよう→魔法世界から出られるよう
 変わらない言って→変わらないと言って
2017/05/15 一応話とこう→一応話しとこう に修正

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