金色の娘は影の中で   作:deckstick

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原作の足音編第09話 作られる道

「ああ、既に近右衛門が困り始めたのか……」

 

「相談が早いので、対処する時間はありますね」

 

 再び、春になった。

 木乃香達が5年生になり、小学校生活が残り少なくなってきたという事でもある。

 それに伴い、周囲の大人達は中学校も視野に入れ始めているのだが、女子中学校の校長である近衛近右衛門が幕田に……正確には望月や私になのだろうが、相談に来たそうだ。

 曰く、私や私の計画に関係する人物が不自然なまでに集中するため、いっそ1クラスにまとめてしまい、その担任として私か私の関係者を配置することはできないか。

 その話が色々経由して、最終的にゼロが私に伝えることになったようだ。

 

「いやまあ、アレが麻帆良に来た頃は私も教師をしていたし、候補に私が入っていること自体は不思議ではないんだがな。

 集まる生徒は、摂家関係の木乃香達、魔界関係のマナ達、魔法を知る葉加瀬や千雨達、財閥の令嬢達、それと……」

 

「忍者関係者、中国からの留学生、現時点では私達と関わっていない魔法を知る生徒達も加わるでしょう」

 

 ああ、いたな。

 既に話を聞いている魔法関係者も、今後は無関係というわけにもいかないだろうし。

 

「長瀬楓は確定だったな。中国の方から、何か新しい情報は来ているか?」

 

「正式な情報ではありませんが、幾人かの候補には日本語なども教え始めているそうです。

 その対象者に古菲の名がありましたし、他の候補も同じ学年の少女でした」

 

「少なくとも古菲又は同学年の誰かが来る事は決定済み、と言っていいわけか。

 あの学年で魔法関係者は他に、美空と……明石もか?」

 

「家庭内で教えている可能性は高いでしょう。

 この時点で、クラスのほぼ半数ですね」

 

「その中に、立場やバックが重要な連中もそれなりにいる、と」

 

 現状で私達と明確な関係があるのは、近衛木乃香、桜咲雪凪、長谷川千雨、葉加瀬聡美、マナ・アルカナ、ザジ・レイニーデイ、朝倉和美。

 企業や組織が関係しているのは、雪広あやか、那波千鶴、村上夏美、長瀬楓、恐らく古菲。

 現状で魔法に関係している、春日美空、恐らくだが明石祐奈。

 この時点で14人だが、生徒にならないだろうエヴァ(わたし)、相坂さよ、明日菜、現時点で存在していない茶々丸、超鈴音を引いた26の半分を超えている。

 私達の計画に関係させようと送り込まれている者を多数含むため、私達との協力関係は必須。

 令嬢やら留学生やらを複数含むため、指導力も手を抜けない。

 それらの背景を知った上で、30人近くの暴走しがちな中学生の手綱を取る必要がある。

 うん、なかなか厳しい条件になるのは間違いない。

 

「ちなみに、中学校を担当する望月関係者はかなり少ないそうです。

 その者達は高学年の主任などを担当することが多いですし、仮に1年生の担任としても、相談などで手を取られてしまう可能性が高いようですね」

 

「優秀なだけに、生徒からも頼りになると思われているからか……

 そうなると必然的に人の出入りも増えて、計画やらについて時間が取りづらくなる、と」

 

「はい。ですが、頼りにならないと思われている人物を割り当てるわけにはいきません。

 結果的に、他校から移動させて担任を任せるのが無難であり、その人選を相談されるのは必然と言えるでしょう」

 

「まあ、そうだな。で、実績や実力がある教師はどこも手放したくないだろうし、予想される重圧やらを考えると気軽に頼むとも言いづらい。だから、関係者で教師をしていた事もある私に目を付けたという事か。

 ……そもそも、私の教員免許はまだ使えるのか?」

 

「更新制度が必要ではないか、という声はあるそうですよ」

 

「……もう使えない、という言い訳は駄目か。

 計画の実行は連中が3年の時だが、その前後は私が動けない事はどうなんだ?」

 

「それこそ、望月に任せればよいのではないかと。

 3Aの担任で学年主任。決行後の混乱に対処するには、良い配置でしょう」

 

「そうなるのか。私のところまで話が来た時点で、望月やらも私を推薦しているのだろうが……これは、あれか。ネギから聞いた、雪姫とかいう名前を使うべき場面なのか?」

 

 あの話だと、田舎の学校で教員をしているんだったか。

 麻帆良ではなかったはずだし、今回は関係ない……よな?

 

「教員免許は、幕田重羽の名義だったはずでは?

 名を変える手間はともかく、本名を知る関係者も多いのですから、間違えた時の説明が面倒になるだけですね」

 

「まあ、そうだな。

 あの話の事を気にしないでおこうとしても、妙に思い出すのが困るな」

 

「知ってしまったことの弊害でしょう。

 ネギまの知識も同じ現象を引き起こしていますから」

 

「明確に問題点が見えるだけに、余計質が悪いんだがな。

 知識が無ければ、あの計画は無かっただろうし」

 

「眷属の組織は否定しないのですか?」

 

「規模はともかく、似たようなものは作ることになっていた気がするぞ。

 何かあった時の逃げ場とか、社会的な影響力とか、得るものは多いしな」

 

 当時ほど積極的ではないだろうが、組織作り自体はゼロに誘導されただろうと予想するのは簡単だ。

 ゼロは、マシューとリズ……最初の眷属を作る時から、利点と問題点を冷静に判断していた。自分達の力や魔法に関係する組織を知れば、何らかの形で対抗できる手段を得ようと動いていただろう。

 

「とりあえず、話を戻すぞ。

 お前達としては、私が教師として直接関わる事に賛成なんだな?」

 

「消去法的な選び方ではありますが、望月関係者と幕田関係者は概ね賛成寄りです。

 反対寄りの意見は、イシュトや護衛担当、それに防衛部門からが多いですね」

 

「強い賛成や反対は無いのか」

 

「強い意見を出す理由がない、といったところでしょうか。

 それよりも、月の一族の長という立場を無視する割に引き籠りすぎだ、という声の方が大きいですよ?」

 

「引き籠り……まあ、確かにそうなんだが。

 昔ならともかく、ネットやらが発達している現代で、私が表に顔を出していいのか……?」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 秋が深まり、もうすぐ冬の足音が聞こえてくる頃。

 中庭で行われている、関係者……正確には日本呪術協会関係者の訓練を通りがかりに覗いてみたら、そこに見慣れないモノがあった。

 

「ふむ……日本刀型のデバイス、だな?」

 

「はい。体形に合わせて少々小振りですが、日本刀としてもかなり良い出来です」

 

 それを雪凪に渡しただろう雪花がそう言うなら、間違いないのだろう。

 雪花の刀を見る目は確かだし、日本刀の部分を作っただろう桑名の連中は変態が極まっている。

 普段から趣味と称してたたら製鉄から仕上げまでを全力で研鑽し続けているらしいから、腕が鈍っている事もないというか、練習用に作ったものでも実践で使える出来だったりするから、いい人物を得たというべきか、癖のある人物が多く集まっていることを嘆くべきか。

 

「デバイスとしては、一般公開用のレベルだな?」

 

「勿論です。

 予想通り、今度の正月に帰省した際、関係者に見せてよいか聞かれましたし」

 

「子供のおもちゃとは違うが……まあ、現状では大人でも優越感が得られる程度には珍しい品ではあるか」

 

 ストレージデバイスの基本的な部分しか製造方法を公開していないせいか、地球では幕田の特産品のようになっている。大々的に導入や販売をする気が無いなら、私達から買った方が労力やコスト的な負担が小さいという事もあるらしいが。

 メガロの連中は個の優位性や従来の価値観が崩されることを危惧してるのか、一部の連中……特に私達との関係が薄い政治屋やら力で成り上がった連中やらが、口うるさく否定している。そのせいで知名度は上がっている面もあるが、研究はしても販売しようとする者が現れていない。実力優先の賞金稼ぎやら傭兵やらが自分の判断で持つことはあるようだが。

 ヘラスとウェスペルタティアは、少量だが生産を行っている。その理由が、私達との関係によるものなのか、未来を見据えてなのかは、判断が難しいところだが……幕田からの小規模な輸出と合わせれば、需給のバランスが取れているらしい。

 その程度しか売れていない、という話でもあるが。

 

「呪術協会の長が近衛詠春、つまり剣士なので、日本刀の部分を自慢する意味もありそうです」

 

「詠春か……夕凪は今もあいつが持っているのか?」

 

「譲ったという話は聞いていません。

 本人も鍛練を怠っていないようですし、自身が表に立つ事も視野に入れているのではないでしょうか?」

 

「本人としても、紅き翼の実績とヘラスとのパイプ役に期待されて結婚を認められたのを気にしている可能性もあるし……娘の負担軽減も兼ねて、個人的な実績を持ちたいと考えても不思議ではないか。

 そういえば、月読の噂は無いか? 年齢的に、そろそろどこかの弟子か何かになっている頃だと思うが……」

 

「雑談程度でしか聞いていませんが、それらしい情報はありません。狂気に飲まれる者は昔から度々現れていますし、妖刀の厳重な管理と併せて注意を促した程度です」

 

「あまり探るのもあれだし、それ以上は難しいな。

 妖刀は、確かひなとかいう名だったな?」

 

「はい。それを含む複数の妖刀を呪術協会が厳重に封印しており、盗難の防止と探知用の罠もかなり気合を入れているそうです。

 もちろん妖刀に限った話ではないそうで、色々な危険物の管理はかなりしっかり行っているようです」

 

「組織としての負担は増えるが、安全が確保できるなら悪くないな」

 

「危険物の管理について、有宣がかなり強く要求していたようです。

 その甲斐あってか、メガロに襲撃された際も含め、呪術協会となって以降は紛失や盗難は1つもないと聞いています」

 

「素晴らしいな。どこかのアホな政治屋どもとは大違いだ」

 

「幕田も油断は禁物です。

 執務室に御用ですか? 今日の分の書類は終わっていますが」

 

「いや、少し気になったことの確認だ」

 

 既に夕方も近い時間だし、通常の業務が終わっている事はわかっている。

 だが、気になったことの解消は早い方がいいし、廊下の立ち話でする内容でもない。

 

「魔法世界の方の、現状が少し気になってな。

 あの計画を実行すると、多少の混乱は避けられん。私達が示した対策も最低限でしかないから、それすらクリアできないなら問題があるだろう?」

 

「その件ですか。問題があるのは、実質的にはメガロだけでしょう。

 未だに新世界と魔法という優越感を捨てきれていないのですから」

 

「少なくとも、ヘラス、ウェスペルタティア、アリアドネーは問題ないのか。

 他の小国は?」

 

「メセンブリーナ連合の影響が強い国は、微妙のようです。それでも、嗅覚に優れた統治者がいる国はそれなりに動いているそうですよ。

 もっとも、大型軍艦の建造を見合わせ、旧型艦の延命や小型艦で当面は対処するといった、後ろ向きのものも多いですが」

 

「発電所やらよりも、元老院の連中からの追及を逃れやすいからだろうな。開発した高効率型精霊エンジンの出番が、ちゃんとあってよかったと思えばいいのか」

 

 無償で提供しているわけではないし、ヘラスやウェスペルタティアの企業で製造しているのも、元老院が気に入らない理由だろう。

 メガロで起業しようとした際に利権だの経営権だので決裂した以上、先見性の無さと強欲さの結果でもある。私達が元老院を掌握しているわけでもないのだから、自業自得と言っておけばいいはずだ。

 

「あまり大型のエンジンを作れていない事が、大型艦の製造見合わせに繋がっているようです。

 元老院向けには、大型艦を維持するコストが過大だとか、国力に見合わないとか、大型艦より英雄の方が戦略的に重要だとか、色々言っているようですが」

 

「元老院としては、面白くないだろうな。

 いや、これ幸いに侵略しようとする可能性もあるか?」

 

「メガロだけは今でも大型艦を建造していますから、可能性は否定できません。

 連合の構成都市を含む、他の全てを敵に回す覚悟があるとも思えませんが」

 

「ナギやラカンの知名度は高いし、ウェスペルタティアやヘラスと直接戦う事は避けるだろう。

 それでも、侵略する姿勢を見せるだけで、牽制にはなる。自分で火種を撒き、正義面して踏み荒らすのは連中の得意技だ」

 

 まあ、火種を撒く連中と、踏み荒らす連中が、同じ派閥や勢力とは限らないが。

 特に資本主義や個人主義が行き過ぎていたり末端が暴走していたりすると、企業や組織が好き勝手に火を放ち、国が火消しを押し付けられる場合も無いわけじゃない。

 

「今回に限れば、時間が小国に味方するでしょう。

 それに、今回の件は明らかにヘラスやウェスペルタティアの動きが早いので、小国も今後の身の振り方を考えているようです。そこで高圧的な外交を行えば、メガロの未来はもっと暗いものとなるでしょう」

 

「既に暗いからこその暴走を警戒すべきか、阿呆の自滅を放置していればいいだけなのか……」

 

「ある程度情報を集めつつ、静観していれば良いのではないでしょうか?

 私達は、地球の魔法関係組織なのですから」




なぜか隣のファイルに、艦これ二次用の世界設定のメモが存在していた件。ストーリー無し&人の配置だけ少ししてある程度で、本当に世界の設定なのですが、疲れているのだろうか……
ちなみに、現代にネギまやらリリカルやら色々なゲームやらの要素を加えた闇鍋を、艦これ風に仕立てようとしたもののようです。とりあえず、「隊息(たいむす←部隊息子):陸軍+RPGのジョブ」というメモを残した頃の私の精神状態を誰か教えてください。忍者隊と騎兵(戦車)隊が同列に並んでるってどういうことだってばよ。

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