金色の娘は影の中で   作:deckstick

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今回、ちょっと短めです。久しぶりに5000字未満な程度に。
決して艦これのせいでは……(掘りという名のE5の情報とにらめっこしながら


魔法先生重羽ま編第08話 自称、薬味

「エヴァさん、お久しぶりです!」

 

 もうすぐ夏休みが終わる、8月の終わり頃。

 予定通りの最速で魔法学校を卒業したネギが、幕田で魔法を研究する事という修行のために引っ越してきた。

 もちろん父親であるナギや母親代わり兼世話役のネカネ、使い魔として契約済みのアルベルティーヌ・カモミール、護衛であるタカミチも一緒に。

 ……タカミチも久しぶりに見たが、やっぱり若いな。無精ひげが無いから余計かもしれんが。そして、カモの見た目はカモに似た何かなんだな。胡散臭くない、きれいなカモと表現すべきか。

 

「直接会うのは久しぶりだな、相変わらず元気そうで何よりだ。

 それにしても、随分急いだな」

 

「父さんやネカネさんの日本語の勉強はだいぶ前からしてましたし、卒業がほぼ確定した時点で家の手配や引っ越しの準備も始めましたから。

 計画まであと1年もないのに、年が明けるまでなんて待てません」

 

「それもそうか。

 それで、だ。ナギとタカミチの仕事についてだが、民間の警備員扱いで裏の部隊もある会社に話を通してある。一応は面接もするらしいから仕事自体は来月半ばあたりから、魔法世界の連中が来た時の威圧や調査要員程度になる予定だ。これについてはアリカも了承済みと聞いている。

 予定通りのはずだが、齟齬やらは無いな?」

 

「ああ、俺の聞いてた話と一緒だ。

 仕事はどれくらいの頻度になりそうなんだ?」

 

「メガロがかなり弱っているし、別にお前に頼らなくても問題ない戦力はあるから、大して忙しくはないだろう。

 どうしても夜間が多くなる事が問題と言えば問題か?」

 

「コソコソしてる連中は、暗いとこが好きだしな。

 ま、ウェールズにいた時と大差ないって事だろ? 何かあっても仲間は多そうだしよ」

 

「まあ、そうとも言えるな」

 

 防衛が自主的じゃなく、指示される形になる事を除けば、だが。

 部下としては扱いに困る性格と行動力の持ち主だから、言う事を聞かないタイプだと伝えてあるが……どうなるだろうな。

 

「それと、ネカネは一応家政婦としての扱いとなる。

 就労ビザの都合だが、口裏と帳簿をきちんとしておいてくれ。ナギが雇ってネギの世話をする形だから、今までと大差ない生活をしていれば、行動に関する制限は特にないと思っていい」

 

「はい、わかりました」

 

 別に適当な理由で長期滞在でも良かったが……こうでもしないとネカネがずっと無料奉仕することになりそうだと、アリカが心配したんだよな。

 そもそもネカネが謝礼を受け取ってくれないという問題もクリアするためとはいえ、なんて面倒なと言うべきか、女の戦いにならなきゃいいがと言うべきか。

 

「で、だ。

 ネギを私の部下という扱いにするのは問題ないが、超や葉加瀬とは別にしようと思っている。あいつらは科学寄りの立ち位置だから、もっと魔法寄りの内容にするためだな。

 それと、通うのは共学の中学校で手配している。

 これについて、何か問題はあるか?」

 

「共同研究とかは、可能ですよね?

 同じ麻帆良に住むエヴァさんの部下ですし」

 

「内容によるが、可能だろう。

 やはり気になるのか?」

 

「当然です。

 それに、完全に別になると、色々と支障があるんです」

 

「支障? やりたい事に、科学の力が必要なのか?」

 

 もしくは原作の鈴音や聡美のファンだった、くらいか?

 中の人は女性だし、ハーレムだの仮契約てんこもりだのといった願望は無いはずだが。

 

「いえ、立場的な問題です。

 というわけで、エヴァさん。チューしましょう」

 

「……は?」

 

「あ、間違えました。仮契約しましょう。

 もちろんエヴァさんが主人で、ボクが従者です」

 

「ちょっと待て。どうしてそういう話になった?」

 

「ボクはどう見ても、ウェスペルタティアの紐付きですから。

 対外的な立場を確立する、わかりやすい方法ですよ?」

 

「いや、お前は王族だからな?

 アリカに何かあった時の継承権は、1位だからな?」

 

「そんな事、どうでもいいです。ウェスペルタティアは王国でなくなる方針ですし。

 ボクはネギですから、ネギらしく薬味になります」

 

「待てと言っているだろう。意味が解らんぞ」

 

「意味ですか?

 薬味は、風味を増し食欲をそそらせるものです。つまり、ちょっとしたアクセントのようなものですね」

 

「いや、言葉の意味じゃなくてだな。

 修正力……運命的な何かはあるから、世界が、お前を中心に回ろうとするはずだ。

 それは理解していたんじゃなかったか?」

 

「この世界の主人公は、間違いなくエヴァさんです。

 これは、エヴァさんの物語なんです。

 であるなら、余計な何かに煩わされる前に、介入されないよう手を打ってしまうべきです」

 

「どこかで聞いたようなセリフだが……その為に必要なものが私との仮契約、だと?」

 

「いぶし銀の渋いけど実は熱血なおじさんキャラもいいですよね。

 それでですね、主従がはっきりしてしまえば、妙なジンクスやフラグに振り回されることも無いんじゃないかと。それに、Aクラスって裏の人がいっぱいじゃないですか。ボクも仮契約すれば、妙なアプローチとかも防げる上に仲良くしやすくなりますし、ボクの立ち位置もはっきりしますよね」

 

「こんなところにオジコンがいたか。

 あいつらの立場やらを考えると、別に仮契約やらが無くても大丈夫だと思うが……」

 

「ショタからおじいさんまで、らしいキャラなら全然オッケーです。

 した方がいいと思いますよ、仮契約。近衛や雪広ではなく木乃香やあやかであると主張するためにしているんですから、ボクもスプリングフィールドやエンテオフュシアでなく薬味であると主張するには効果的です」

 

「いや、少なくとも薬味と主張するのは意味がわからんぞ」

 

 というか葱だから薬味というのも、かなりアンチもので使い古された話じゃないのか?

 少なくとも、自称する意味は無いはずだが。

 

「薬味の意味ですか? エヴァさんの引き立て役です。

 ボクにとってエヴァさんは頼りになるお兄さん的な感じですし、できる事なら道化ではなく伴侶がいいですから、チューがいいです! 頭からカードが生えるくらい濃厚なやつ!」

 

「そっちの意味の仮契約なのか!? というかGLまで行けるのかお前は!」

 

「肉体的にも精神的にも異性だからいいんです!

 むしろ一番作りたい魔法は精神の入れ替え、次に肉体の成長なんです! お互い本来の性別の美形になれてラブラブできたら最高じゃないですか!」

 

「わかりたくないっ!」

 

「ちょっとは分かってるじゃないですか!

 アルちゃん、やるよ!」

 

「本当に良いのでしょうか……」

 

 ああもう、迷いながらも魔法陣を書くんじゃない!

 

「あっ……さすがです」

 

「妨害されたのに感心しないで!」

 

「合意なしに仮契約しようとするな!!」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

「いったー……」

 

 頭から煙を出したり大きなたんこぶが見えたりしそうな勢いで殴られたネギが、頭を抱えている。

 うん。今回は、ナギよくやった。

 

「一応聞いておくが、仮契約について、話はしていたのか?」

 

「んー、まあ、俺もアリカも、親としては反対しねーと言ってあったんだけどよ。

 対外的なもんとか、わかんねー事もあるから、よく相談しろって事になってたんだが……」

 

「相談どころか、合意すら無かったんだが」

 

「だよなぁ。全く、誰に似ちまったんだか……」

 

 いや、間違いなくお前……だと、中の人がいなければ言えたんだがな。

 ネカネがあまり動じていないのは、ナギで慣らされたせいなのか? だとしたら、すぐ気絶しそうなキャラではなくなっているのかもしれん。タカミチも微笑ましい感じで見てるとなると、いつもこんな感じなのか。

 

「とにかく、だ。

 少なくとも現時点では、諸々の都合により仮契約はしないからな」

 

「えー。じゃあ、眷属化は?」

 

「問題がもっと大きくなるだけだな。

 ウェスペルタティアが王国である間は、政治的な問題で不可能だと思ってくれ」

 

「うー……楽しみにしてたのに……」

 

 いや、楽しみってのは、どの意味でだ。

 仮契約自体なのか、キスなのか、アーティファクトやらなのか。

 

「だから言ったろ? 急ぎすぎんなって。

 なんか方法が無いかヴァンとかいうやつが探してるらしいから、そっちの話を聞いてみろつったぞ?」

 

「でもー」

 

「いや、ちょっと待て。ヴァンが何か言っていたのか?」

 

「俺が直接聞いたわけじゃねーけどよ、何か調べてるとは言ってたらしいぜ?

 巻き込んだ責任がどうとか、せめて幸せにとか、いろいろ言ってたって聞いたけどよ」

 

「……不安しか感じないのは気のせいか……?」

 

 責任がどうとか、あのヴァンが綺麗事を言っている時点で何かやらかそうとしているような気がしてならん。

 今度は、何をするつもりだ……?

 

「アルビレオの野郎は、祝福すべき状態になるかもしれません、とか言ってたぜ?

 何かやばそうか?」

 

「この状態のネギで祝福……だと……?」

 

 理由はともかく、ネギが私に懐きすぎているのは事実として認める必要がありそうだ。

 その上で、祝福すべき状態、となると……まさか、私がドレスを着させられたりする方向じゃないだろうな!?

 

「なんか世界の終わりみてーな顔してっけど、魔力がどーだの契約がどーだのとか言ってたから、結婚とかいう話とは違うんじゃねーか?」

 

「ネギが精神の入れ替えだのとか言っていたから、安心できんのだが。

 魔力も契約も、その為の調査に聞こえて仕方がない」

 

「えっと、その点は謝ります。ごめんなさい。

 でも、入れ替えについては特に相談とかもしてませんから、違うと思います」

 

「……話に出た事は?」

 

「本気で考える前の、冗談みたいな雑談の中でちらっと話に出た程度だったはずです。

 ボクもまだ恋とか愛とか感じる前でしたから、希望というよりもそういう手段もあるのかなーという話だったと思いますし、自覚してからはまず近くに来る事を優先してましたから、現状では何も出来ていません。

 あくまでも、出来たらいいなーという希望です」

 

「そ、そうか。

 そのレベルだと……ヴァンと変態の組み合わせだと何をしでかすかわからんのが怖いが、先走っていない事を祈るしかないか。

 ……とんでもない事をしようとしていなければいいんだが」

 

「ボクは会ったことがありませんから、何とも……」

 

「変態って、アルビレオの事だよな?

 あいつも俺とは別の意味で、何しでかすかわからねーってお師匠に言われてたしなぁ」

 

「だからこそ、怖いんだが……

 これはあれか。胃薬を常備する流れになってしまうのか」

 

「どこかのチートネギに振り回される大人たち、みたいな流れですか?

 でも、その場合ってエヴァさんがチートネギのハーレムに入ったりしますよね。ボクはチートじゃないと思いますから、エヴァさんのハーレムの薬味として、ぜひ!」

 

「いらん! というか、ハーレム以前に恋人を作る気もないっ!!」




(裏話)
青の~のプロットの元が、金色の~のプロットなわけです。
という事は、アコノに相当するキャラがいるわけですよ。
つまり、こういうことだってばよ。

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