金色の娘は影の中で   作:deckstick

50 / 59
魔法先生重羽ま編第17話 京都にて、2日目~3日目朝

「奈良だな……」

 

「はい、奈良です」

 

「どうしてこうなった?」

 

「関係者の多くがこちらにいる都合と、ボクも大仏を見たかった結果ですね」

 

 というわけで、今日は奈良の観光なのだが。

 グループとしては、魔法関係者が多く集まる2班(古、超、葉加瀬、長瀬、春日)、3班(雪広、那波、長谷川、村上、朝倉)、6班(綾波(アスナ)、木乃香、雪凪、ダイアナ、茶々)が近くにいる状態だ。

 マナとザジがいる5班はザジがマイペースだからか夕映があちこちふらつくからか移動が遅く、鳴滝姉妹のいる1班と明石のいる4班は食べ物を優先して店に突撃したらしい。

 そして、ネギが隣にいる、と。

 

「まあ、宮崎は近くにいないし、告白騒動やらの種が無いだけ平和か?

 こっちまで来て襲撃する気力があるやつもいないようだし」

 

「では、僭越ながら。

 ボク、エヴァさんのこと大好きです!」

 

「あー……うん、改めて言われると、なんだ。

 外見が子供だと、恋愛ではなく親愛とか微笑ましい何かのように見えて仕方ないな」

 

「デスヨネー」

 

 ネギの場合は普段の行動やらがあれだから、恋愛方面が力いっぱい含まれているのだろうが。

 それでも外見は小学4年くらいだから、外見と内面の食い違いが……

 ああ、わかっている。特大のブーメランという事くらい、痛いくらいわかる。あれだけ生暖かい視線を向けられていればな!

 

「で、今は奈良公園にいるわけだが。

 鹿が寄ってこないのは、どういうわけだ」

 

 鹿煎餅も持っているのだが。

 隣にいるネギも煎餅を持っていて近づかれていないが、私から離れれば普通に食べさせられているのだから、原因は私と見ていいだろう。

 

「えーと、醸し出す高貴な気配が……とか?」

 

「別に私は高貴ではないぞ?

 むしろガサツで乱暴者と言った方が正しい気がするが」

 

「うーん……あとは、魔力の濃度とかですか? かなりうまく隠してますけど、動物の感覚では近寄りがたい何かがある、とか。

 あ、鹿が煎餅の売店にあるのを食べない理由に関係してるとか」

 

「魔法的な鹿よけか……可能性としてはありだが、それと同じと言われても嬉しくはないな」

 

「まあ、どれも可能性ですし。

 あ、大仏の方に移動するみたいですよ?」

 

「やれやれ。どうすればいいんだ、この鹿煎餅」

 

「あー、ボクが食べさせましょうか?」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 さて、昼は平和な観光で終わり。

 すっかり夜になったわけだが。

 

「北の1班と南の3班が、敵性勢力と接触しております。

 木乃香お嬢様と雪凪お嬢様は、最も安全なこちらでお待ちしといておくれやす」

 

「大変やー」

 

「すみません、お邪魔します」

 

 木乃香と雪凪が、護衛として目立たない程度についてきていた天ヶ崎千草に連れられてきた。

 そういえば、千草(こいつ)もいたな……

 

「今回の相手は、陰陽師や呪術師か。

 北が少し苦戦しているか……?」

 

 そこそこの数の陰陽師がいて、鬼やらを召還されているのが南側だ。

 純粋な力、正面からの戦闘力勝負になっているし、突破より蹂躙したいのか陽動のつもりなのか、馬鹿正直に戦闘を行っている。護衛の戦力も十二分にあるようだから、問題はないだろう。

 それに比べて、北側は搦め手を好むようだ。

 こちらの護衛……神鳴流の剣士や陰陽師の姿を写し取った式神をばらまき、場の攪乱と突破を試みている。

 ここに到達する可能性だけなら、北の方が高そうだ。鶴子と雫が手ぐすね引いて待っているし、混乱が治まれば挟撃されることになるだろうが。

 

「で、木乃香をここに置いたというのは、私を巻き込むつもりと見ていいんだな?」

 

「いいえ、逆どす。この部屋には、不躾な者どもを一歩たりとも踏み入らせまへん。

 他の全てを犠牲にしても死守せよという命令どす」

 

「そっち方向でぶっ飛んだ命令を出したのか……」

 

「護衛の若いもんも、ええとこ見せようと気合が入っておるそうや。

 それもあって、ぜひ覗き見してほしいと伝えてくれと言われとります」

 

「……上がああなら、下もこうなるのか。

 木乃江の教育を……いや、別に私を特別視はしていなかったと思うが……」

 

 となると、詠春か? だが、身分や実力的な理由で緊張されていても、ミーハー的な感じはしなかったと思うし……

 となると、こうなった原因は、どこだ?

 

「それは、摂家や土御門の方々が原因やと思います。

 歴史を知れば知るほど敬いたくなる人物やと、日頃から口癖のように触れ回っとります」

 

「あー、確かに言っとったなぁ。

 偉大な祖先とか、救世主たりえる人物とか、昔はよーわからへんかったけど」

 

「最強の剣士を従える、最強の魔法使いにして陰陽師……と、神鳴流の師範は言っていましたが」

 

「あいつら……」

 

 一応家系的には私が幕田家の始祖で摂家に嫁に行った幕田の女もちらほらいるし、雪花を最強の剣士と呼ぶのも分かるし、私を最強の魔法使いや陰陽師と呼ぶのも一応理解はできる。

 だが、救世主と呼ばれる筋合いは……

 

「でも、崇拝ぶりは幕田の人とかも大概やよ?

 特に魔法世界出身の人なんか、魔法世界を救う救世主やから拝んどるってゆーとったし」

 

「あれは計画の成功を祈っている、という話だったような?

 ああでも、信仰する神がいないからエヴァ様に祈るようにした、とか言っていましたか」

 

 ……筋合いは……うん、こう聞くと、すごくあるような気がする。

 どうしてだろうなぁ……

 

「遠い目をしとるとこ悪いんどすが、そろそろ警備に行かせてもらいますわ。

 余裕かまして踏み込まれでもしたら、後が怖いさかいなぁ」

 

「ああうん、行っていいぞ」

 

 怖いのは、上の連中なのか、若い連中なのか。

 とりあえず、あれだ。覗き見する気力もないとはこういう状態か。

 

「ここで寝るわけにもいかへんし。

 せっちゃん、ここはパジャマパーティーや!」

 

「起きている事はいいですが……騒ぐと迷惑になるのでは?」

 

「エヴァさんも巻き込めば、もーまんたいや。

 あの顔は、絶対に外を監視する気をなくしとるはずや!」

 

「ええと、そうでしょうか……?」

 

 ああ、確かに木乃香の言う通りではあるが。

 中身が未だに男の私にとって、パジャマパーティーも拷問のような気がするぞ?

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 さて、襲撃は無事に対処されて、夜が明けた。

 今日は班別の自由行動日であり、私達が呪術協会に行く日でもある。

 パジャマパーティー? ははっ、何のことかわからんな。

 

「注意点は出発前に説明したとおりですー。

 夕食までには帰ってきてくださいねー」

 

「「「「はーい」」」

 

 元気に返事をしてる生徒達だが、魔法関係者だけの2班、3班、6班は、私と一緒に呪術協会行きだ。昨日と似たような行動になるわけだな。

 他の3つの班は関係者以外を含むから、関係者が別行動となるよう誘導することになっている、という理由もある。

 その結果として。

 1班。鳴滝姉妹が誘導して、椎名桜子、柿崎美砂、釘宮円を某テーマパークへ。

 4班。裕奈が誘導して、佐々木まき絵、和泉亜子、大河内アキラ、四葉五月を食道楽の街へ。

 5班。マナとザジが誘導……するまでもなく、綾瀬夕映が早乙女ハルナと宮崎のどかを寺院仏閣巡りに連行。

 メンバーを見る限り、まあ妥当な行先……なのか?

 

「それでは、いってらっしゃいー」

 

「「いっくぞー!」」「早く行くです!」

 

 ……率先して動いているメンツにふさわしい行先ではある、らしい。少なくとも1班と5班は。

 

「先生はどう動くんー?」

 

「ん? 近衛か。

 京都は久しぶりだ。のんびり街の散策でもしたいところだが……お前たちの様子を見る仕事があるからな」

 

「じゃあ、うちらと行かへん?

 外国人目線で京都らしいとこを、ダイアナちゃんに案内する手伝いが欲しいんよ」

 

「外国人目線で、か。

 ゲイシャブッカクスシテンプーラ、でいいんじゃないか?」

 

「そこは舞妓いわへんと。

 でも、古い町並みのとこで舞妓やっとるとこはありやね。

 というわけで出発やー」

 

「なんだ、結局私は連行されるのか?」

 

 そんな三文芝居で連れ出され、向かった先は。

 

「……うん、知ってた。

 ここを上るんだな」

 

 山中に向かって鳥居がずらっと並ぶ、坂の入り口だ。

 

「話は聞いていましたが、思っていたより疲れそうですわね……」

 

「何事も体が資本ヨ。

 体力作りの一環と思えば、軽いものネ」

 

「えー、研究者の体力は、そこまではいらないですよぅ」

 

 そして当然、あやかや鈴音たちも合流済みだ。

 確かにこの坂は、体力が普通以下の聡美達には辛いかもしれん。

 

「嫌なら、体調不良を理由に待っていていいんだぞ。

 用意されている会席や会談を放棄していいならだがな」

 

「そんなこと出来るわけないじゃないですか……」

 

「なら、鍛えると思って歩くといい。

 途中で休憩もできるんだから、良心的だぞ」

 

「研究者でモ、追い込みは体力勝負ヨ」

 

「わかりましたよ……」

 

「さて、あまりもたもたしていると、休憩の時間も無くなるからな。

 とっとと行くぞ」

 

 えーって顔をしている千雨を無視して、石畳の坂道へと突撃。

 実家やら国やらの後ろ盾が絡む他の連中はともかく、千雨は行く理由があまり強くないからな。電子精霊使いとしての仕事を依頼してきた相手は呪術協会にもいたようだが、そいつらも私や他の権力が絡む連中の相手を優先すると言っていたらしいし。

 逆に言えば、雪広や那波の名を背負う2人や、国の後ろ盾を持つ古とダイアナ、一応企業や組織の意向を受けた夏美や楓たちと、逃げるという選択肢が最初からない連中が多すぎる、とも言えるか。

 話を聞いた限りでは、呪術協会の連中はそれすら二の次で、私の歓待に全力を注いでいる様子なのだが……

 

 そんな事を考えつつ、加えて適当に喋りながら歩くこと、15分程度か。

 休憩所が、現れた。

 休憩所に、人影がある!

 

「お、来た来た」

 

「お早いおつきで~」

 

「どちら様ですか?」

 

 警戒して対応した雪広には悪いが、どう見ても小太郎と月詠だな。護衛として付かず離れずを保っていた千草たちも近付いてきてるし。

 現れるメンツという意味では原作再現か。修正力は頑張った。

 

「呪術協会の案内役や。

 小僧と小娘なのは、あれや。大人連中が醜い争いとやらをやらかした結果、くじ引きになったせいや」

 

「一本道で案内も必要ないですけど~、案内自体は組織の見栄や思て勘弁してください~」

 

「……何をしているんだあいつらは……ああ、雪広たちは安心していい。こいつらは一昨日の夜、馬鹿どもが寄こしてきた悪魔を相手に戦闘訓練していた連中だ。神鳴流の師範が一緒にいたから、期待の若手といったところだろう」

 

「お、やっぱ見られとったんか。

 ポカもなかったはずやし、それなりの戦いが出来とったと思うんやけど」

 

「ドヤ顔で言われてもな。私の基準は雪花や鶴子あたりだぞ?

 若手の中でどの程度なのかも知らんが……まあ、今後に期待は持てそうな内容ではあったな」

 

「よっしゃ!

 無能とかセンスが無いとか言われるよりは、ずっといい評価や!」

 

「今はダメって意味ですけどね~」

 

「大物になる準備中やから、今はまだええんや!」

 

 それでいいのか。というか、本当に小太郎か?

 口調はともかく、考え方が違いすぎるんだが……

 

「そんな寝言ばかり言っとるから、ひよっこ言われるんどすえ?」

 

「ぐっはぁっ!?」

 

 おや、千草が追いついてきた……と思ったら、小太郎にとどめを刺しに来たのか?

 雫や千鶴もいるし、この辺からはもう表立って護衛につくという事だろうが。

 

「憧れの人物に会えて舞い上がっているとしても、その言動はあきまへん。

 師範達には、みっちりと指導してもらわんとなぁ」

 

「うへぇ……」

 

 小太郎のテンションが駄々下がりだな。

 だが……憧れ? 小太郎は、私としか喋ってないし……私が、か?

 

「何や理解したくないような顔をしてはりますけど……小太郎は可愛いもんや。

 本山に着いたら、もっとひどいのがわんさとおりますえ」

 

「……うん、帰りたい」

 

 言葉では理解していたが、実物を見ると、いたたまれないというか……

 

「ここで帰られると、うちらの命が危険で危ない感じの事態になるので、できればやめてほしいどすなぁ。

 言わない選択肢も、それはそれで心証を悪くしはる思いますし」

 

「お前の立場はわかる。だが、帰りたい」

 

 全く、実際に会ったことのある木乃江や詠春はともかく、摂家やら若い連中にそこまで好かれるようなことはしていないと思うんだがな。

 本当に、どうしてこうなったんだろうな。




京都弁 ああ京t(ry
作者です。京都弁と関西弁がわかりません。
作者です。千草が出ると手が止まります。


仕事やら私事やらで忙しくて、なかなか書く時間が……本来なら本山に到着するところまで行きたかったけれど、タイムオーバーでした。しかも、間隔があきすぎてキャラが不安定になっているような気が無きにしも非ず。
艦これ2次の方もぽちぽち書いていますが、まだ1話分できてないという。困ったもんです。
艦これゲームは舞鶴鎮守府在住になり、2次に近付いたぜヒャッホウ。イベントは甲甲乙乙乙で掘りも完遂、ゴトさんが攻略中に来てくれてよかった……


2018/10/17 電子精霊使いとして仕事を受けた相手はいるようだが→電子精霊使いとしての仕事を依頼してきた相手は呪術協会にもいたようだが に変更
2019/02/20
 千草のセリフ(京都弁)を訂正されたように修正
 探索→散策 に修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。