金色の娘は影の中で   作:deckstick

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魔法先生重羽ま編第18話 京都にて、3日目

「……私のファンを自称する連中は、そこまで多いのか」

 

「嫌ってるやつは見たことないで。

 無関心とか特に何も思ってへん人は、まあおらんことはないようやけど」

 

「うーむ……こっちで布教するとしたら、摂家の連中あたりだろうが……」

 

「でも、押しつけは無いで。

 歴史の勉強でちょくちょく出てくるのは確かやけど、勉強以外で出てくる話の方がおもろいんや」

 

「大して面白い事はしていないぞ?」

 

「雑談で、先生やら先輩やらから色々聞かされるんや。

 嘘や思って調べるとそれ以上の話が出てくるんやから、逆に面白いで」

 

「そういう流れで広がっているのか……」

 

 そんなわけで、呪術協会へと足を進めつつ、適当な相手……私は小太郎と駄弁っている。

 道中に怪しい気配はあるが、雫や鶴子は確実に、楓、ダイアナ、千草、小太郎、月詠あたりも気付いているようだ。ちらちらと警戒している様子がある。

 そうしているうちに、雫が電話をかけて。

 

『はい、予定通り進んでいます。

 ……そうですね、変更はありません。想定していないトラブルが無ければ、先ほど伝えた時刻に到着するでしょう。

 ……はい、見苦しくないようお願いします』

 

 状況報告、に見せかけた排除依頼かこれは。

 電話が終わった直後に、山中にいた警備の連中が動き始めたか。元々包囲するような位置にいた連中が輪を狭めているし、戦力的には……まあ、怪しい連中が妙な奥の手を持っていなければ問題なさそうだな。

 さっきのを正確に言うなら、見苦しく負けたりすることのないように、だろう。

 

「それで、予定ではあとどれくらいで到着だ?」

 

「このペースであれば、あと10分ほどでしょうか。

 ただ、体力的な問題もあるので、実際は15分から20分と見ています」

 

「だ、そうだ。

 聡美と千雨、あとは夏美あたりも、もう少し運動した方がいいな」

 

「こ、こっちは、基本的に、インドア、なんだよ……」

 

「そ、そう、ですよ……体を、動かす、必要は……」

 

「ケド、研究者も体が資本ヨ。

 体力不足じゃ、長い時間がかかる実験は厳しいネ」

 

「超、さん、は、どう、やって、体力、を……」

 

「護身術の練習を兼ねて、適度な運動をしてるだけヨ。

 筋力トレーニングだけなら、短い空き時間に少しずつやるのもいいネ」

 

「そん、なー」

 

 出荷されそうな勢いでしょんぼりするほどではないと思うが……体力は無いよりある方がいいだろうし、この辺は本人次第でもある。

 まあ、やるなら無理しない程度に頑張れ、としか言えんだろうな。下手なことを言えば、また無理しそうだし。

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 怪しい気配の連中の処理は、フラグを回収することなくさっくりと終わり。

 数名の体力不足により予定より少々遅れながらも、無事に最後の鳥居をくぐり抜けた。

 

「「「「ようこそいらっしゃいました!」」」」

 

 そして、そこに並ぶ、巫女(みこ)やら(みこ)やら剣士やら陰陽師やら……

 

「……お前たち、役目はどうした?」

 

「「「「歓待と到着後の護衛が役目です!」」」」

 

「…………そうか」

 

 うむ、思った以上に帰りたいな、コレは。

 とりあえず詠春と木乃江は……ああ、来たな。ちらっと聞こえた話から考えると、怪しい連中に関する指示をしていたのか。うむ、ゴミの処理は大事だな。

 

「お久しぶりです」

 

「お久しぶりですわ!」

 

「詠春……しばらく見ないうちに、随分と老けたな。

 それと、木乃江。いつの間にそんなキャラになった?」

 

「組織の長というのは、思っていたよりも大変なようです」

 

「ふふ、久しぶりすぎて、テンションが上がってしまったのです。

 普段は京都弁が多いですし」

 

「歴史が長い分、しがらみやらもあるだろうしな。まあ、木乃江に捕まった以上、逃げられんぞ。

 それにしても、木乃香や雪凪が唖然とする程度には衝撃的らしいが……普段は何枚くらい猫の皮をかぶっているんだ」

 

「それはもう、着ぐるみを通り越して実物に見えるくらいに。

 これでも皆にはお淑やかと思われているんですよ?」

 

「ハハ……」

 

 詠春の乾いた笑いは、逃げられないと言ったせいなのか、それとも木乃江のはっちゃけぶりのせいなのか。

 というか、私のせいで木乃江が壊れたとか言われないだろうな?

 

「私が小娘でいられる機会なんて、この次いつあるかわからないでしょう? ですから、今回は思いっきりはっちゃけます!

 というわけなので、行きましょう! 詠春、木乃香たちをよろしくね?」

 

「やれやれ……詠春、とりあえず木乃香を正気に戻してくれ。

 移動はそれからの方がよさそうだぞ」

 

「ええ、そのようですね……」

 

 詠春はやれやれといった表情か、夫婦の間では秘密にしていなかったんだな。

 それにしても、この調子で大丈夫……じゃないからお淑やかキャラにしていたんじゃないのか?

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

「……で、こうなるのか」

 

 確かに、謁見の間のような構造のこの部屋は、客人を迎える際に使うものなのだろう。

 重鎮やら実力のある若手やら、恐らく主要な面々はほぼ揃っているだろうという人数が集まっているのも理解はできる。

 決して間違っていない。ここに案内された時点までは。

 これで、私の席が玉座に相当する場所でなければ文句はなかった。

 

「そこ以外では納得できない人達が、いっぱいですから。

 もちろん、私も含みます」

 

「一応、呪術協会の長は詠春で、私は客として来ているんだぞ?」

 

「呪術協会の前身、陰陽寮の英雄にして影の支配者ですよ? 普通の客人として扱えるわけがありません。

 粗末に扱おうものなら、保守派の老人に組織を維持してくださった恩人に何という事をと言われ、革新派の若者に新しいものを生み出してきた偉人に何という事をと言われてしまいます」

 

「決して私だけの力ではないんだがなぁ」

 

 陰陽寮にいろいろやっていたのは有宣だし、新しいものといっても前世の知識が元でそろそろネタ切れだし実際に作ってるのは技術者たちだ。

 私が関わっているのは事実だが、裏を考えると、私の功績ではないんだ。

 

「ふふ、世の中はそんなものだと教えてくださったじゃないですか。

 それに、王や長は人を使うのが役目。使われた人物が良い成果を出したら、人材を正しく使った者も評価されるべきです。

 指導者や管理者の評価とはそういうもの、ですよね?」

 

「あー……まあ、そうだな」

 

 やばい、正論過ぎて反論ができん。

 それに、ここから見える範囲には、私が上座に行く事に不満を持たない面子しかいない気がする。少なくとも、嫌悪やらが顔に出ている者はいないようだ。

 反発する連中はオシゴト中なのかもしれんが、人数やらを考えると……これが主流なんだろう。

 要するに、抵抗は無駄、か。

 

「ふふ、ようやく諦めてくれましたね。

 さあ、さあ、さあさあさあさあ! あ、この際ですから本来の姿で!」

 

「おい、そんなに押すな。

 実際諦めたんだ、そこまで……って、なんだ、ロリコンが多いのか?」

 

「せっかくですので、久しぶりに愛で……じゃない、偽らずに話すという態度で云々という事で!」

 

「欲望駄々洩れな上に、取り繕う気もゼロだな!」

 

 そんなやり取りがあったりもしたが……まあ、平和に終わったと言っていいか。

 実際にやった事は、詠春や摂家の当主連中が歓迎の挨拶をして、いくつか質問に答える形での昔話をした程度だ。

 内容が妖や宿儺に関するものだったのは、呪術協会の役目的な意味があったのだろう。そう思いたい。反応がいちいちミーハー的だった点を見なかったことにして。

 

「さて、見世物のオシゴトはあれで終わったことにして、ここからは真面目なお仕事だ。

 具体的には、メガロの老人共についてだが」

 

 そして、夕食前の時間。

 木乃香を含む生徒連中は風呂に行き、私は詠春と大っぴらにできないお話だ。

 場所は、詠春と木乃江の私室。一応木乃江もいるが少し下がっているし、口を出さないつもりだろうか。

 

「今回、色々と手を出してきている者達ですね。

 おそらく裏にいるのは元老院の一部である可能性が高い、とは言えます。

 ですが、決定的な証拠はありません。正式に抗議するには手札不足です」

 

「やはりか。どうせ金で雇われた捨て駒だろう?

 金か依頼の流れを追うしかないだろうが……その間に尻尾が切られるだろうな」

 

「そうでしょうね。

 ですが、今回は徹底的に追うことになっています」

 

「ほう……私が狙われたからとかいう感情論じゃないだろうな?」

 

「モチベーションの上げ方としては使いますが、根拠にはしませんよ。

 今回は魔法世界側というか、ウェスペルタティア王国の関係者がいますからね。あちらの世界での調査が行いやすい、という理由もあります。

 何より、ここで元老院の尻尾を減らしておけば本番での邪魔が減るだろう、という期待が最大の理由ですね」

 

「本番……まあ、夏までに尻尾を作り直すのは難しいか。

 その理由なら、止める理由は無いな」

 

 むしろ、眷属や協力関係にある魔法組織が、嬉々として手を貸してくれそうだ。

 メガロの老害どもに煮え湯を飲まされたり、何らかの強要や被害にあったりしたとこは多いようだからな……

 

「ええ、これまでの負債を払ってもらおうと鼻息も荒い方々の協力も確約済みです。

 情報通りに襲撃がありましたから、既に各地で調査が行われているでしょう」

 

「準備はできているのか。

 それなら、やり方を間違えない限りは、私からは何も言う事は無い。間違えた場合は、周りが黙っていないだろうが」

 

「それは当然でしょうね。

 もちろん、由緒ある魔法組織に恥じないよう、精一杯やるつもりです」

 

「そうか。まあ、頑張れよ」

 

 実態としては夏の安全対策を主目的とした報復、かな。眷属連中も巻き込んでいるようだし、結果として悪いものではない、と。

 ウェスペルタティアも動く……うん、恐らく魔法世界の眷属連中も動いているだろうし、今回の狩りは、なかなか大規模になるのだろう。

 隙があれば大元に喰らいつく気でいるだろうし、夏まで老害連中が元気でいるか、怪しい状態になってきたかもしれん。因果応報、かな。いいことだ……が、せっかく浄化し始めたんだ。最近元老院入りしたまともな連中は巻き添えにしないでくれよ?




ふと気付けば、前回の投稿から1か月(正確には4週間)が過ぎようとしているんですが。
光陰矢の如しといっても、最近早すぎませんかねぇ……まさか、これが老化かっ!?
年は取りたくないねぇとか言っちゃうおばちゃんに近付いているというのかっ!? ※作者は男性です

こっちを書くのもギリギリ(そして遅れる)な現状、艦これの方も進んでいません。
チラシの裏にしておいてよかった……
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