金色の娘は影の中で   作:deckstick

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執筆時間と話の区切りの問題で、短いです。


魔法先生重羽ま編第19話 京都から帰ろう

 何事もなく、朝になった。

 厳密に言うならば、微妙に原作に関係する記号がある程度の出来事は無くもなかったが、平和に朝を迎えることができた。

 フェイトが襲ってきたりはしていない。元老院の鉄砲玉を相手に暴れていたフェイトが、その後処理やらのために来ていたようだが。

 私やダイアナが両面宿儺を相手に戦ったりもしていない。稽古をつける意味での軽い試合のようなものはあったが。

 ストリップショーなど以ての外だ。ネギがじゃあとか言って脱ごうとしていたのは何かの間違いで未遂だ。

 

 そして、ナギの家はこの世界にないわけで。

 その代わりが……これ、なのか?

 

「やっぱ足取りは消されてるか。

 けど、裏の情報では追えてるんだろ?」

 

「現状では問題なく。

 頂いた情報には感謝していますよ」

 

「うむ、役に立って何よりじゃ」

 

「アリカ、元老院なら偽の情報くらい流しているはず」

 

「その程度、アスナに言われんでもわかっておる。

 のう、詠春」

 

「ええ、もちろんです。

 確認しすぎれば気取られるので、難しいところではありますがね」

 

「それを何とかするのがヒーローってもんだろ?」

 

「そうですが、組織としては個人に頼るのも問題です」

 

 この場になぜ私がいるのかは謎だが、詠春と木乃江、ナギとアリカとネギ、私とレイ(アスナ)の7人が集まって、色々と裏側の話をしている。

 実質的に、私と木乃江とネギが置物になっているが……ナギの家が無いからと言って、ナギ本人が出てこなくてもいいんじゃないか? それとも、ナギの家族とかいう洒落にもなれん何かか。

 

「ところで、木乃江。

 私が呼ばれた理由が謎だったが、お前の暇潰しなのか?」

 

 話が始まってから、ずっと私の髪をセットしようとしているのはどうなんだ。

 そもそも私の髪はサラサラすぎて、よほど気合を入れて固めない限り違う髪型にしづらいのは、麻帆良で過ごしていた頃に経験済みだろうに。

 

「いえ、この後で話したいことがあるそうですよ?

 今の話に参加されないようなので、それなら時間があるかなと」

 

「それで、ツインテールにしたいのか?

 ゴムが滑りまくっているようだが」

 

「相変わらず、素直なんだか素直じゃないんだか、わからない髪ですね……」

 

「それは私に文句を言われても困る」

 

 これはこれで、絡まない飛び跳ねない寝癖付かないという、ものぐさには最適な髪質なんだ。

 もっと普通の髪質だったら、ばっさり切り落としていた自信があるくらいには。

 

「さて、ここ数日については、これくらいでしょう。

 雑談という体裁の非公式な話として、エヴァ様に相談があります」

 

「ん? それは呪術協会の長として話を通すには大げさなものか?

 それとも、話すことが好ましくない類のものか?」

 

「現時点では協会内部の話ですが、幕田……正確には麻帆良に関係する可能性があることですね。

 ですが、話が通る前に相談しておきたいのです」

 

「ふむ。私にも関係しそうな内容なのか」

 

「ええ。

 6月に予定されている、魔法の公開と実演としての麻帆良祭に関してですので。

 どうも、うちの若い連中が何とか祭りに参加できないかと画策しているようなのですよ」

 

「武道会やパビリオンについては協力要請があったと思うが……希望者が多すぎるのか?」

 

「それも含めて、祭りのイベントにもっと参加したいようなのですよ。

 話を聞く限りでは、関係者側と参加者側が半々といったところですか」

 

「客として来るのを止める気は無いが……今から運営、か?」

 

「念動を使って料理する屋台のスタッフや、会場警備とかでもいいらしいですよ?」

 

「念動は手品に見えそうではあるが……まあ、運営と言わないのはそのあたりで妥協する気だからか」

 

「その様です。

 この動きを止めるべきかどうか、少々悩んでいるのです」

 

「うーむ……人手は、恐らく不足するだろうとは思う。

 ただ、本当に不足するかはわからんし、外から人を入れるリスクもあるか」

 

 呪術協会から予定以上に何か出すなら、他の組織やらも出したいという話になるだろう。そうなると、余計な工作員が入り込みやすくなる。

 ただ、魔法の公開という爆弾でどれくらい人が動くのかわからない……というか大混雑になるだろうし、一般採用のスタッフに工作員が紛れないわけでもないからな……

 

「これから準備するだろう学校関係用の場所目当てに動くのは、止めてあります。

 企業関係との接触も控えるようには言っていますが……暴走する前に指針を決められたら、といったところです」

 

「それはまあ、正解だろうな。現時点では魔法を公開していないわけだし。

 だが、指針、指針か……私が管轄しているわけではないから何とも言えんが、人手の確保と、工作員の対処と、他の組織の対処を、どうバランスをとるか、だろうな」

 

「やはり、他の組織も問題ですか」

 

「自分たちも人を出したい、と言ってくるだろうからな。

 幕田が自前でやる分には、現地の組織だからで済む。だが、他の組織を含むとなるとな……」

 

「気持ちはわかりますから、何とも言えませんね。

 まあ、無理なら無理とはっきり言ってもらった方が、本人たちも諦めやすいでしょう」

 

「そうだろうが……直接有宣に聞けなかったのか?」

 

「あの方も色々と忙しいですから。

 それに、非公式と言っても周囲に誰かいる状況でしか会えません。噂として広まる可能性を考えると、そのような場では聞きづらいのですよ」

 

「手下が多い分、ちょっとした噂が妙なところまで流れる可能性は否定できんか……

 伝えるのは構わんが、いい返事は期待するなよ?」

 

「むしろ、はっきりと断っていただいた方が楽ですね」

 

「だろうな」

 

 人を送るとなると、(人の)調整やら(宿や移動の)調整やら、余計な仕事が増えるだろうし。

 宿やらは本人がどうにかするにしても、人の調整は頭が痛いだろうな。

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 それからは、特に何事もなく。

 無事、幕田に帰ってきた。

 

「おかえりー。

 久しぶりの京都は、どうだった?」

 

 そして、ヴァンのドヤ顔が鬱陶しい。

 

「仕事と、襲撃と、接待の相手だぞ?

 ゆっくり観光という状態じゃないだろう」

 

「でも、久しぶりってのは間違いないわけだしさー。

 表面だけなら、前世の京都とそれほど変わんないとは思うけど」

 

「変化については、たぶんとしか言えんな。

 もともと京都に詳しいわけでもないし、600年以上前の事などそこまで細かく覚えてもいない」

 

「だよねー。

 京都の裏を牛耳ってる組織が身内だし、実はこんな組織がってドラマもないし」

 

「あってほしいのか?」

 

「やだよ。何もない時なら娯楽だけど、この時期だと確実に面倒ごとだし。

 でも、魔法を公開したらタケノコみたいにぽこぽこ生えてくるんじゃない?」

 

「厨二病ならともかく、終末思想やら選民思想やらに走る連中がいないと嬉しいが。

 絶対にいるんだろうなぁ……」

 

 今までの様式の生活が終わる、という意味では終末だろう。

 魔法の公開に反対の連中の一部、要するにメガロの老害みたいなお花畑は元々選民思想持ちだ。

 目に見える種がある以上、育つのは当然だと思った方が平和だ。

 

「フラグじゃなくて、いる前提で達観?」

 

「いや、確実にいるだろう?

 終末思想の方は、フェイトが受け皿になってくれるといいんだが」

 

「フェイトというか、完全なる世界ね。

 別にフェイトが受け止めるわけじゃないよ?」

 

「構想が造物主だろうが、実際に動いているのはフェイトだ。

 フェイトが目に見える受け皿でいいじゃないか」

 

「どちらかと言えば敵っぽい相手でも容赦なく利用するあたり、エヴァにゃんも悪よのぅ」

 

「お前に言われたくない。

 それに、フェイトに関しては、集まるだろう人物の予想を基に、うまくいくよう祈っているだけだ。手出しも、それを計画に組み込むこともしていないぞ?」

 

「効果に期待して放置してるんだから、利用してるのと一緒だよ。

 だいぶ手ぬるいとは思うけどねー」

 

「やっぱり、お前の方が悪じゃないか」

 

「僕が悪じゃないとは言ってないよ。

 むしろ、エヴァにゃん『も』悪って、同類扱いしてるしー」

 

「はいはい、同類同類。

 で、詠春から聞いた話だが……」

 

 詠春にはああ言ったが、私が有宣に会うのも結構面倒が多いんだ。

 普段行かないから、何事かと身構えられる的な意味で。

 そんなわけで、かくかくしかじか、と。

 

「あー、うん、人手は不足しそうだし、どうしようかって話は出てるよ。

 今のところ有力なのは、別荘の妖を大々的に表に出しちゃおうか、って案だし」

 

「それは……それ自体が騒動の種じゃないか?」

 

「そうなんだよねー。

 まあ、ヘラスの姫様が顔を出す予定だから、ある程度は一緒に出しちゃった方が有耶無耶になるだろうって話もあるし。どうしようねー」

 

「少なくとも、人とセットでないと対処できんだろう。

 だが……日本や幕田の妖とセットにするなら、呪術協会の連中を使う理由にはなるか?」

 

「ちょっと弱いけど……案としてはアリかな?

 それに追加で色々条件を付けると、他の組織とかから色々言われにくいかなー……」

 

「その辺は有宣達と相談してくれ。

 私が直接動いて、案だけが独り歩きするのも困る」

 

「ああ、エヴァにゃんがようやく自分の影響力を自覚したかもしれない……」

 

「ちょっと待て、何に感動しているんだお前は」

 

 裏付けのない思い付きで突っ走る脳筋だと思われていたのか?

 さすがにそれは泣くぞ。情けなくて。




いいえ、勘違いしているおばだかと思われていることに泣いてください。


先に宣言しておきますと、次回の4週間後=2019/01/03の投稿は無理だと思います。
正月の間はPCが使えないので、家にいる間に書き終えて投稿する必要があるのですが、実質3週間しかありません。
ただでさえ最近は時間がギリギリで、更に忙しくなりやすい12月です。「速さが足りない!」とか言われても「あ、はい」としか返せないので、次回はお休みして、2019/01/31の投稿を目標に頑張ります。
時間、確保できるといいな……


2018/12/17 以下を修正
 普通の質→普通の髪質
 関係すること可能性が→関係する可能性が
 宿屋らは本人が→宿やらは本人が

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