金色の娘は影の中で   作:deckstick

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おま……たせ……


終話 そして、これから

 もう、9月になっています。

 火星の大接近に合わせて発動させた魔法は無事に成功して、天体望遠鏡でも火星が変わったことがわかるようです。ゲートも無事でしたから、まだまだ限定的ですがヘラス帝国やウェスペルタティア王国との交流も始まりました。

 魔法を公開したことによる混乱との相乗効果は、想定範囲内にとどまっているそうです。少なくともテレビやネットを見る限りでは、目に余るような混乱はありません。

 ボクの立場は……予想通り、微妙です。儀式魔法に参加して無事に成功させた事は評価されています。でも、参加が少々強引だった点と、王子と言う立場が足を引っ張っています。それを理由に表舞台に立たないようにしているので、にやけながら計画通りとか言ったら似合わないとか腹黒さが足りないとか、ヴァンさん達に色々と言われちゃいました。

 結果的に時間があるので、以前やっていた研究を再開したりしています。

 こちらは、こんな感じです。

 あれから姿を消しているエヴァさんは、どうですか?

 雪花さんやイシュトさん、ゼロさん達が平然としているので、大丈夫だというのはわかります。

 アルさんなんか、20日も不眠不休で儀式魔法を制御していたのだから、その分の睡眠や休養は当然でしょう、とか言ってますし。

 でも、こうして湖が見える場所で回想し始めちゃう程度には、験を担ぎたいと思っています。

 こういう回想シーン的なところで後ろから現れるとか、ありがちでしょう? エヴァさんは見ていないと思いますけど、リリカルなノアの……

 

「やれやれ、こんなところで出待ちか?」

 

「あ、エヴァさん。おはようございます? お疲れさまでした?」

 

 もうお昼もだいぶ過ぎてますから、おはようという時間ではないですけど。

 

「今朝まで寝ていた上に、起きたらいろんな連中が押しかけてきたから、寝過ぎやらそれの相手やらで疲れたとは言えるな」

 

 表情は確かに疲れた感じですか? でも、髪や服装はきっちりと……ああ、後ろにいるイシュトさんが無表情なのにやり切った感じなので、ちゃんと直された後ですね。それもエヴァさんが疲れる原因ですけど。

 

「本当に今日まで寝てたんですか?

 もう、10日ほど経ってますよ」

 

「1日8時間睡眠の20日分、それを取り返すには1日の残り16時間全て寝て10日。

 計算上は正しいんじゃないか?」

 

「人間、寝溜めはできません。

 エヴァさん達にも適用できるのかは知りませんけど」

 

「私は人ではないナニカだから、その辺の常識は投げ捨てろ。

 まあ、私もどれくらい寝ていたかを聞いて驚いたが」

 

「あ、そこは驚くところなんですね」

 

 その辺は普通というか、人の感覚のままなんですね。

 

「昔、何か月か寝なかった事もあったからな。

 その後は特に寝たきりになる事もなかったから、そういうナマモノになったんだと思っていたんだが」

 

「えー……ちゃんと寝ましょうよ。

 頭がちゃんと働くために必要ですし、お肌にも……もしかして関係なかったりします?」

 

「特に変化はなかったな。

 というか、この体自体が魔法で作った人形に近いから、破損以外の要因で状態が変わるようにする方が面倒だ。

 食べたものを体積に反映するのは面倒だし、脂肪や筋肉をエネルギーに変える必要もない。肌の状態なんて要因が多すぎるから、その反映なんて面倒なことはしたくないぞ」

 

「そうなんですか?

 その割には、大人モードは普通に幻影系の詐称薬を使っていたような……」

 

 二次大戦の時に、年齢詐称薬を使って教師をしていたって話でしたよ?

 

「この姿で安定しすぎていて、別の形状に変更するのが難しいんだ。

 完成した絵に手を加えるより、上に別の絵を乗せる方が、変更も復元も楽だし確実だろう?」

 

「そこまで根本的なところに手を付けないといけないんですか?

 じゃあ、エヴァさんとボクの体の制御を交換するのって、思った以上に難しそうですね」

 

「太陽の化身のような何かになったお前なら、可能かもしれんがな。

 まあ、人としての精神が焼き切れる可能性は高いし、ゼロのような別の体を用意して動かす方がはるかに楽だろう」

 

「ですよねー」

 

 やっぱり方向性を変えて正解でした。

 というか、雑談している場合じゃありませんね。ちゃんと聞いておきたいことがありました。

 

「ところで、これからはどうするんですか?

 儀式魔法とエヴァさんが眠っている間に、幕田家の初代だとか、本当の幕田家の歴史だとか、中東の王家やいろんな地域の魔法関係組織の師匠だとか、いろんな情報が公開されてますけど」

 

「あー……うん、どうしようか」

 

 ああ、これは何も考えてない感じです。

 今は燃え尽き症候群ぽい感じになっちゃってる感じでしょうか。

 

「じゃあ、やりたいこと、とか?

 今までできなかった事で、やれるようになった事も、あるかもしれません」

 

「やれる事はあるかもしれんが……やりたいことは、少なくとも今は思いつかんな。

 まあ、急いで考える必要もない。当面はのんびりするさ」

 

「早めに決めないと、外野がうるさそうです。

 月関係の人達じゃなくて、マスコミとかが」

 

 その中でも、パパラッチとかゴシップ記者とかそっち方面の人が。

 

「……それは否定できん」

 

「ある程度は大丈夫だと思いますけど、方向性くらいは考えておいた方がいいと思います。

 というか、今まではどうだったんですか?」

 

「今までか?

 とりあえず、最初に私がやりたかった事は、ある意味で本来のエヴァ、つまりゼロを守る事だ。

 あと、未来を知る者として大きな悲劇の回避、という名目の自己満足か」

 

 ゼロさんは、経緯や状況を聞く限り当然ですね。

 でも、悲劇の回避を自己満足といっちゃうあたりは、手を出すのはこの辺までだと思ってるという事ですよね。

 

「ゼロさんに関しては、さほど守る必要が無いところまできているような?

 エヴァさんほどでないにしても、一般的には上位と言っていい実力ですし。しかも月の一族でない人という枠なので、月の一族の中でも重宝されていますよ」

 

「上には上がいるが……まあ、そうとも言えるな」

 

「それに、大きな悲劇の回避は……未来を知る者という前提が消えてますよね?」

 

「そうだな」

 

「つまり、今までの延長ではだめじゃないですか」

 

「だからすぐに決められんと言っている」

 

「納得です」

 

 うん、やっぱりこれ以上は手を出す気が無いというか、未来知識という前提が消える以上は、普通に予測できる範囲でしかできない事は理解できているし、納得もしているわけです。

 つまり、ボクの望む未来に向かう希望があるわけですね!

 

「じゃあ、もっと原点に立ち返りましょう。

 具体的には、人としてのアレコレを思い出す感じで!」

 

「いや、人外になって久しい自覚はあるが、何を思い出せと?」

 

「衣食住は間違いなく恵まれていますけど、環境全てがエヴァさん自身の好みかというと、違う場合もありますよね。立場的に、友人と趣味やくだらないことをするのも難しそうですし。

 それこそ、ゲームとかマンガとかだっていいじゃないですか。魔法世界のあれこれ的に、そういうのも嫌いじゃないですよね?」

 

「まあ、そうだが……下手に私が興味を持つと、色々荒らされそうだという問題もあってな」

 

「魔法関係の荒波次第ですけど、今からの時代、エヴァさんがそういうのを好きだとか言うと、文化的に保護されたりもするかもですよ?

 そういう意味では、広く浅く色々やってみるのもありです。放っておくと衰退するものとかもありそうですから、そういうのを見守るとか建前を作ってのつまみ食いですね」

 

「気に入るものがあるかもしれない、と?」

 

「はい」

 

 前世では少なくとも漫画を読むタイプの人だったわけですし。

 なんだかんだで、いろんな雑誌が手の届く範囲に来るような環境にはしてたようなので、気に入ったものがあれば一歩踏み出してみる、くらいでいいわけですよ!

 

「それはそれで、世間がうるさそうではあるな」

 

「そんなのどうでもいいです。

 というか、こういう時だけ影響力を心配しないでくださいよ」

 

「私が暴走しないための精神的なストッパーだからな。

 権力に溺れたら碌なことにならん」

 

「ああ、だから後ろ向きに全力なんですね。

 それでも、ここは自重しない方がいいと思いますよ。今後自由にやりたいなら、最初が肝心ですし」

 

「ここで前例を作ってしまえ、という事か。

 確かにそうだが……」

 

 そんなに難しい事は言ってないつもりなんですけどね。

 決断する、という点が問題ですか?

 

「全部決めろ、とは言ってませんよ」

 

「そうなんだが、そもそもの疑問としてだな。

 今日は、随分と常識的だな?」

 

「え、そうですか?」

 

「少なくとも、以前のようなビッチまがいな言動は無くなったな」

 

 いえ、性的な求愛はエヴァさんにしかやらないですから、ビッチじゃないです。

 夜は娼婦のようにとか、男の人なら喜ぶところだと思うんですけど。

 

「気分的なものですけど、危機感みたいなのは無くなりました。外見的に釣り合うくらいで固定になったので、急ぐ必要がなくなった安心感は大きいです」

 

「それもどうかと思うが。

 不老不死は祝福ではなく、呪いの類だぞ?」

 

「その辺は、イシュトさんや甚兵衛さんもかなり言ってましたよ。

 それでもボクは、エヴァさんと一緒にいたいんです」

 

「感情ほど不安定なものも無いぞ。

 それは、キリスト式で永遠の愛を誓いながら離婚する夫婦の多さが証明している」

 

「感情だけで結婚する人は、そこまで多くない気がしますけどね。少なくとも、経済的な理由とかはゼロにはならないと思いますし、特に昔は、家の繋がりとか見合いでとかも多かったんですよね?」

 

 それ以前に、独身だと白い目で見られるとか、結婚が当たり前みたいな風潮だったはずですし。

 結婚できないのは何か事情があるとかで信用が落ちるみたいな話とか。

 

「その手の、周囲の圧力で結婚する夫婦が減ったから独身の人が多くなった、とも聞くがな。

 人は個としては決して強い生き物でない以上、群れが力となるはずだが、個を無視できなくなり生物としては弱体化しているとも言えるか」

 

「人間って、とりあえず生物としては支配者みたいなものですよ?」

 

「少なくとも日本は、群れの数を維持する事すらままならなくなりつつあるぞ?

 それに、温暖化やらの環境破壊で、自分たちが生活する環境の維持も限界が見え始めてもいる。

 居住可能な土地の広さから言えば、日本の人口は江戸時代の3000万ちょいが適正という話もあるようだが……少なくとも今の人の在り方は、生物としては歪んでいるのだろうな。

 歪み切った私が言うのもなんだが」

 

「振り切れちゃってるからこそ、見える事もありますよ。

 この際、一緒に死ぬ方法でも探しますか?」

 

「ああ、それはいいかもしれんな」

 

 あ、すごく後ろ向きな話にエヴァさんが乗ってきたせいか、イシュトさんの目が怖いです。

 

「イシュトさんにも応用できるかもしれませんよ?

 今は太陽系ごと吹っ飛ばす、くらいしか思い付かないですけど……他の手段を探す方が、実現方法を考えると簡単な気がします」

 

「神に、勝てますか?」

 

 あれ、気になるのはそっちですか。

 共に死ぬならあり、みたいです。

 

「勝つ気でやらないと、ボクもエヴァさんも死ねないと思いますよ。

 神様がどこまで凄いかわかりませんけど、太陽神とかなら、ボクが自爆すればどうにかできるんじゃないですか?」

 

「……期待しておきましょう」

 

 ありでした!

 

「というわけで、ボクの目標が決まりました!

 当面はエヴァさんと幸せになる事、長期的に死ぬ方法を探すことです!」

 

「ああ、そこは、ぶれないんだな」

 

「もちろんです。

 もうちょっと正確に言えば、エヴァさん達と、ですね」

 

「複数形なのか?」

 

「今までエヴァさんと歩んできた人達を蔑ろになんてできません。

 そこも含めて今のエヴァさんですし、奪い合いなんてことになったら不毛じゃないですか。少なくとも、それは幸せじゃありません」

 

「……私のために争わないで、とか言うべき場面なのか?」

 

「争う気はありませんし、エヴァさんは二股してる悪女じゃないので、言わなくても大丈夫です。

 あの歌、元凶が争うなって言ってておかしいですよねー」

 

 どっちか選べないけど争うなって、今の関係をずるずる続けたいだけじゃないですか。

 

「世の中そんなものだぞ。

 国や大きな組織など、握手しながら足を踏むみたいな交渉ばかりだ」

 

「その辺が、エヴァさんが鬱陶しいと感じるところですよね。

 というわけで、表舞台に立たないままのんびりすればいいと思いますよ。月の一族の人達とかもそのつもりで準備してたと思いますし」

 

「それが可能なのか?」

 

「現時点で部外者の影すら見えない時点で、やる気だと思いますよ。

 ですよね?」

 

「はい。名は広めますが、外部からの干渉は排除します」

 

「魔法公開と同時に発行した法で、認識阻害や詐称関係の禁止があったはずだが?」

 

 はい、ありましたねー。

 正確には犯罪に使われやすい、精神干渉系魔法全般と光学迷彩系の制限ですけど。

 

「主要な国で、特別な許可を得た有名人が監視及び護衛付きで一般の生活に触れる場合に使用を許可する、という例外も定められています。

 端的に言えば、これらに国については、エヴァ様が比較的自由に出歩く事が可能となるよう調整が行われています」

 

「……比較的自由に?」

 

「例えば、ファーストフードを食べたい、でも構いません。

 許可を得たエヴァ様が、混乱なく一般人が使うファーストフードの店に訪れるために、私達を監視及び護衛として、認識阻害を使用しながら出かける。

 それが可能な手筈となっています」

 

「権力の乱用とか言われそうな抜け道だな」

 

「私的な外出を手間や費用がかかるイベントにせず、周囲や訪れる店への影響を抑えることが可能な手法に関する規定という扱いですので、これを否定するのは認識阻害や詐称系技術に対する原理主義的な拒絶くらいでしょう。

 また、行動を記録し犯罪行為を防ぐための監視と、問題発生時の対処要員としての護衛に関する認定を必須項目とすることで乱用を防ごうとする国が多く、行動記録の限定的な公開を必須とする場合もあります。

 そこそこ名前が売れている程度ならこの例外を使うまでもありませんし、権力に執着する者にとっては守りが薄すぎます。認識阻害や年齢詐称は絶対的な守りではありませんので」

 

「戦闘力に自信があり、かつ、それを誇示しないが、国の監視は受け入れるのが条件か……

 ナギやラカンその他英雄志望の連中は誇示したがるタイプか。造物主や後ろ暗い連中は監視を嫌がりそうだし、一般人はそもそも必要としない、と。

 国と繋がるお前達がいる私以外、使おうとする者は少なそうだな?」

 

「そうなる様に、調整しました」

 

「打ち合わせに書記として参加したことがありますけど、凄かったですよ?

 月の一族のいろんな組織のトップ級の人達が、どうやって法的な穴を小さくしながらエヴァさんとお出かけでするかで悩んでたんですから」

 

 娘と出かける理由を作ろうとする父親、みたいな雰囲気でした。

 いかに反論を抑えつつ自分達がいる理由を作るのかに腐心する、王様とか社長とか理事長とか取締役とか……元だったり補佐役だったり代理の人だったりもしましたけど、そんな人達が大真面目に話し合ってる内容がこれです。

 

「……よく潜り込めたな」

 

「月の一族の人だと口を出したくなって書記として駄目になる内容だから、という理由で呼ばれましたから。

 打ち合わせが始まるまで、内容も知らなかったですし」

 

「そう、か」

 

「というわけでですので、いろんな事をやってみる、というのはアリなわけです。

 ボクも研究だけをやっていたいわけじゃないですし、月の一族の人達だってこれからは普通に交友関係を作れます。

 これから、ボクや月の一族、その他幻想系の人達もですか。気が向いた時は、そういった人たちと一緒に色々やってみませんか?」

 

「……そうなると思って準備されているんだな?」

 

「少なくとも、今更権力者になりたいとは考えないだろう、と思われているのは確かです。

 それでも、幕田家の当主はいつでも当主の座を返還すると言っているそうですし、月の一族の王を名乗るならみんな従いそうです」

 

「引き籠るなら……」

 

「重荷が無くなるので、今までと大差ないように見えて悪化する気がします。

 定年退職後のお爺さんみたいな孤独な隠遁生活は、精神的によくないって聞きますよ」

 

「……逃げ出すと言ったら?」

 

「これだけ顔や名前が広まっていて、認識阻害やら抜きで身バレしないはずないじゃないですか。

 その手の魔法を使った時点で、嬉々として連れ戻しに来ると思います」

 

「逃げ道が塞がれてやがる……行動が遅すぎたんだ」

 

 事が起こってからじゃ、遅すぎですよ。

 ボクが参加した話し合いの時点で、最終調整に近い状態でしたし。

 

「早くて腐っている道を選ぶよりはよい選択だと思います。

 というか、急いで考える必要もない、とか聞きましたよ。ついさっき」

 

「うむ、言ったな。

 まあ、なんだ。結局権力をどうこうする気は無いし、目的もなく引き籠るのは飽きそうだ。だからと言って、いますぐやりたい事も特にない。

 気が向いた時に適当に色々やってみるのが一番、なんだろうな」

 

「というわけなので、基本はその方向で。言質を取るって大事ですよね。

 もちろん無理もよくないですから、気が向いた時に気が済むまで、が基本です」

 

「それはそれで、周囲を振り回しそうだがな」

 

「好き好んで振り回されに来る人もいれば、エヴァさんが無自覚に人を振り回しているのを見て楽しむ人もいます。エヴァさんがすぐ飽きた事をすごく気に入る人だっているかもしれませんし、その逆だってあり得ます。

 それくらいでいいんですよ。さっき説明した法は、副次的な影響を抑えるためのものでもありますから」

 

 一時的に注目されて調子に乗ったり、プレッシャーに負けたり。

 そういう事があるとエヴァさんは遠慮するようになる、と思われていましたし。

 

「やれやれ、私の事をよくわかっている阿呆が多いな。

 妙な方向に頭を使いおってからに」

 

「アホだから、妙な方向にばかり意識が向かうんです。

 一員のボクが言うんだから間違いありません!」

 

「自慢気に宣言する内容ではないぞ」

 

「だってたぶん普通の人にとっての永遠の命って、手に入ってからしばらくまでは大喜びで、周囲と隔絶する現実に絶望する代物です。

 それでもボクは! エヴァさんと! 一緒に居たいんです!」

 

「それも問題だな。

 落ち着いて考えると、それは家族を記憶ごと失った代償行動のようにも思える」

 

「家族ならナギやアリカもいますし、アーニャだって幼馴染枠でいます。

 影響が全く無いとは言えませんけど、エヴァさんがゼロさんに甘いのだって似たようなものじゃないですか」

 

「いや、ゼロはだな……」

 

「子供の代わりにみたいな感情が全くなかったと、断言できますか?

 ちなみに、リズさんの証言はゲットしています」

 

 あと、マシューさんの証言もあります。

 間違いなく父親が娘を見るような視線だった、と。

 

「言い逃れを許す気が、微塵も感じられんぞ」

 

「ありませんけど、必要だとも思っていないです。

 変に溜め込むよりはいいと思いますよ?」

 

「それで私に全力なのか?

 代償行動に恋の盲目さが加わったせいか、大変なことになっているように見えるぞ」

 

「うーん、どうなんでしょうね。

 というか、起きてからそっち方面に頭が回るようになってませんか?」

 

 儀式の前までは、こんな事言ってませんでしたし。

 

「落ち着いたせいなのか、目標が無くなったせいなのか、自分を見つめ直す的な何かなのか。

 理由はわからんが、色々やってみるの一環でいいんじゃないか?」

 

「自然にそういう事を考えたなら無理してるわけでもないですし、いいと思いますよ。

 マシューさん達も、エヴァさんが色々な事に目を向けるようになると思っていたようですし」

 

「いい事にしておく方が平和なのだろうな。

 誘導されているのか考えを読まれているのかは、この際置いておくが」

 

「エヴァさんが望むだろう方向に、誘導しているんじゃないかと。

 だからきっと、ボクがエヴァさんの隣にいる事も、ある程度認められていると思うんですよ」

 

 だって、リリカルなノアの本当の最後って、主人公のノアが足音で振り返って、何かを見て嬉しそうに笑うって場面なんです。

 エヴァさんが儀式魔法の後で姿を消していたのも一緒ですし、その上で、ボクが似た状況で迎える事を許されたんです。

 これはもう、頑張るしかないですよ!

 

 だから──覚悟してくださいね。

 エヴァさんと幸せな結末を迎えるまで、絶対に諦めませんから。




後半は投稿が滞りまくったり、間隔が空きすぎて余計に書けなくなったりしていましたが、何とか、一応の完結までこぎつけました。
とりあえず、二次創作としてはこれの小話的なものやチラ裏の艦これのやつをちまちま書くかもしれない程度で、新規にプロットを作る予定は今のところ無いです。最近の漫画やアニメをほとんど見てないですし。
むしろオリジナルのを書きたいなーとか思いつつ、時間とネタと書く速さが足りない模様。色々ダメダメですね。

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