◆◇ 福島県某所 冬 ◆◇
雪が、チラチラと降っている。
花びらのように舞う白い粉雪。
普段は茶色の地面が、白く染まっている。
庭に生えている木は、葉に雪化粧をしている。
白く染まった葉を備える樹木。
まるで別の物に生まれ変わったような姿。
童話の世界の光景。
一人の少女が暖かな部屋の中から外の白い世界を眺めている。
三つ編みのおさげ髪が特徴の少女。
僅かに頬を赤くする少女。
彼女は窓枠を掴み、見惚れるように外の世界を眺めている。
目をキラキラを輝かせ、白い世界を見ている。
頬を膨らまし、「ふぅ~」っと窓に息を吹きかける。
彼女の息で窓は白くそまる。
それを見て、ニコっと恥ずかしげに笑う彼女。
数秒後、何かを思い出したかのようにキョロキョロと頭をふる。
部屋の中を確認している彼女。
室内には彼女一人。
他には誰もいない。
それが確認できたのか、彼女は再び窓に向き直る。
窓枠を掴み、顔を窓に近づける。
彼女はさらに息を吹きかけながら顔を動かす。
円を描くようにゆっくと。
「げほっげほっげほっ」
息を吹きすぎたのか、咳をしながら胸を抑える少女。
毛糸のセーターが彼女の呼吸に合わせて揺れる。
彼女は床を見、肩を震わせながら、懸命に呼吸を整える。
呼吸が落ち着くと、再び彼女は窓枠に掴まる。
顔を窓に近づけ、再び「ふぅ~」と息を吹きかける。
そうして、窓に大きな白いキャンバスを創られる。
ニコニコと、彼女は幸せそうな表情で窓を見る。
小さな指でその白くそまった窓ガラスを触る。
キュッという音を立てながら指を動かす。
指を縦に、横に動かす。
キュッという音が時折鳴る。
少し描くと、彼女は服の袖で指をふき、再び絵を描きだす。
彼女は笑顔で、一生懸命描く。
窓にでき上がったのは、兎の絵。
兎がピョンピョンと春の野原を駆けまわる絵。
兎は楽しそうに駆け回る。
その周囲には、レジャーシートが引かれ、様々な動物達が楽しく料理を食べている。
熊やライオン、鶏など、様々な動物がいる。
皆笑顔で、料理を食べている。
何匹かは兎の事を呼んでいる。
彼女はその絵をニコニコしながら見つめる。
「わたし、頑張るんだべさ~」
彼女は小さな拳を握り、小さく呟く。
っと、その時。
「恵~いるの?ちょっとこっちに来てくれる?」
「は~い」
彼女はトコトコと駆け出し、部屋を出ていく。
窓に描かれた図は、水滴がたれ消えていく。
主がいなくなった部屋。
机の上には、一つの書類。
差出人は、「遠月学園中等部」。
田所恵、小学6年生。
12歳の冬。
遠月学園中等部への進学を控えた少女。
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