ユギトの提案で、場所を公園からユギトの家が経営する(オーナーはユギトらしい)カフェ移した。このカフェは来年七草と通う予定の中学校に比較的近場にあった。
木造の作りの建物に同じ木造のドアにユギトは開店を意味する『open』と描かれたプレートを閉店を意味する『closed』に裏返して、ドアを開け中に入る。
中の広さも一般のカフェと変わらない程の大きさで席はカウンターとテーブルの二種類。奥には小さいコンサートスペースがあった。
ユギトがカウンターの向こうで飲みものを勧めてきたので、コーヒーを頼むと数分後に頼んだコーヒーと自分の分のコーヒーを両手に持って片方を俺へ渡し、カウンターに席を勧めた。
十数年振り程の再会を喜ぶ一方、ユギトの表情には複雑さも混ざっていた。
「どうしたんだ?ユギト。そんな複雑そうな顔して。」
「分かっちまうんだね・・・。」
ユギトは悲しさの上に笑みを浮かべる。
「ああ、親友なんだから当たり前だろ?」
俺は、ニカッと笑って見せる。
「そうだね。付き合いも長いから流石にわかっちまうか。」
「おうよ、それでどうしたんだ?」
するとユギトは言いづらそうに口を開いた。
「・・・じゃあ、言うけど、あんたがこの世界にいるってことは、向こうでは死んだってことなんだろ?」
「なるほど、確かに、向こうで死んだ筈のユギトと再会している時点でそう思われても仕方ないなか。」
「ああ、だから、あまりおおっぴらには喜べないのさ。」
ユギトはそう締めくくるとコーヒーを口に運ぶ。
確かにユギトのその考え方は正しい。もしかしたら、俺はあの日の夜死んだのかもしれない。
しかし、それを裏付ける証言や証拠はないから証明の仕様がないし、今更証明されても困る。生活が安定してきて再び向こうの世界、あるいは別世界に転送されたらたまったものではない。
「でも、そんな心配はいらねぇよ。」
「・・・どういうことだい?」
俺のその言葉に怪訝そうに訊ねるユギト。
「例え、向こうで死んでいようといまいとも今は関係ない。俺たちは今を生き、こうして約束(再会)を果たしたわけだ。これから再び親友として共に歩むことが出来るんだ、素直に喜ぼうぜ。」
「・・・ふふっ、あんたは変わらないね、全く。」
俺の答えにユギトは小さく笑うと、再びコーヒーを口に運んでいた。
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しばらく話し込んでいると、ふと気になった事を思い出したので聞いてみることにした。
「なあ、ユギト。」
「ん?なんだい?」
ユギトは飲んでいたコーヒーカップに置きこちらに顔を向けた。
「俺たち以外にもいるのか?・・・転生者。」
それを聞くとユギトは一瞬目を見開くと顎に手を当て考えるそぶりを見せる。
転生者。今までで出会ってきた誰よりもそれを体験している俺にとって、最も気になる存在と言えるだろう。もし、向こうで死んでこの世界に転生していたならば、それは大変なことになるに違いない。下手したらこの世界のパワーバランスが崩壊するだろう。それだけ力を持った人物を俺は知っている。そいつらがもし戦略級魔法師なんて呼ばれたら無も当てられなくなるだろう。特にヤバいやつは特にヤバい。主に、うちはマダラとか、うちはマダラとか、うちはマダラとか・・・。あれ?マダラばっかじゃん。他にもいたはずだ。・・・ほら!オビト・・・は戦略級のものに輪廻眼以外持ってなかった筈だ。輪廻眼もマダラに奪われてたし。あとは・・・オビト・・・はさっき言ったし、・・・長門とかは・・・まあ、更正してるから大丈夫そうだけど・・・まあ、戦略級なのには違いないが・・・。後ほかにもいろいろヤバい奴やヤバくなくても強力な奴はいるわけだ。それに危ない性癖を持っている奴もそれなりにいるし・・・。
ーーー閑話休題
ユギトは座ったままの体勢で口を開いた。
「いる・・・、だろうね・・・。
向こうに居た頃の癖で周りを探っちまうんだけど・・・、
たまに探っていると、チャクラを纏った奴が稀に居るんだよ。」
「・・・そいつは本当か!」
俺の問いにユギトは査定するように頷く。
どうやら偶々、俺の近くに反応がアイツ以外無かっただけであって、実際には居る可能性が高いようだ。となるといよいよ懸念していたことが現実味を帯び始めてきたようだ。これで向こうで死んだ筈の人間は少なくとも、こっちの世界に居ても可笑しくなくなった。実際にユギトが姿を変えて目の前に現れているのが何よりもの証拠だし、チャクラを扱える時点で可能性が有ったことには変わりない。
「ああ。・・・たしか、あたしが大学生の時にボランティアでアフリカっていう大陸の南西部の『ヴィステオ王国』を訪れた時にも、見かけたよ。まあ、といっても、王室の人間だったから遠目に見ただけどね。他にも国内にも数人居たよ。」
「・・・そうか。・・・ありがとう。参考になった。アイツにも伝えとかないと。」
俺は情報をくれたユギトにお礼を言うと財布の中身を確認した。
「アイツって?」
最後に思わず呟いた言葉に対してユギトが問いをかける。
「ああ、俺の母方の従兄弟に居るんだよ。転生者。」
「!?そいつは本当かい!?」
今度はユギトが驚く瞬間だった。
「ああ、居るよ。うちはイタチが」
「っつ!?うちはイタチって、あの暁の!?」
「ああ、そうだよ。まあといっても、穢土転生以来、何があったのか知らないが、随分丸くなってやがったぜ。・・・しかも、ブラコンかと思ったがそれに加えてシスコンともきたもんだ。驚いたぜ、全く。」
まあ、実際に原作ではシスコンではないにしろ、ブラコンなのには違いない。それがまさか、この時代の弟(サスケ似)と妹に対しても発症するとは思わなかったがな。しかも今回はシスコン付きだ。見てるこっちからするとイタチがだらしなくはないにしろ、甘やかし振りが凄まじい。・・・有りすぎて例えが思いつかない程に。それにアレもなんと言えばいいのやらわからない。
きっと、前世で押さえ付けていた愛情が今、一気に吹き出したんだろうと推測する。原作でも穢土転生時の最後の時にしか、愛情を伝えていなかったし、そこで使えきれなかったのだろうーーーーーきっと。
「あのうちはイタチがねぇ・・・想像つかないよ。」
「ははは、俺もそうだったよ。」
一頻り店内に二人の笑い声に包まれると、俺はコーヒーを飲み終え、レジに向かうと、
「ああ、お代は良いよ。ただの余り物だからね。」
とユギトが手で制した。
「ああ、ありがとう。じゃあな。ユギト」
「ああ、またね。コテイ。」
そう別れを告げると店の出口に向かう。
「ああ、そうだ。聞きたいことがあるんだけど。」
俺が店をでる前にユギトが声をかける。
「なんだ?」
振り返って要件を聞く。
「あんたのこっちでの名前を聞いてなかったよ。なんて言うんだい?」
ユギトは親しみを感じさせる笑みで名前を聞いてきた。
ユギトは自己紹介のときはたまに、常識を忘れることは長い付き合いで分かっているため苦笑いをしながらも、俺は咎めることなく答えることにした。
「俺のこっちでの名前は『凪花 和也』だ。和也でいい。ユギトは?」
俺がそう聞くとユギトは一瞬、イタズラを思いついたような表情を浮かべると相変わらずの親しみのある笑みでその名を答えるために口を開いた。
「『和也』か良い名前だね。あたしの名前は『七瀬 明日香』。明日香でいいよ。」
サラッと似合わぬ名前(苗字の方)と共にどこかの身分の高い(実際にそれっぽいが)どこぞの令嬢のような洗練されたお辞儀をするユギトこと、明日香がしていた。
「うぁー、似合わねぇ~。キャラ的に。」
「・・・うるさいよ。」
思わず漏れた呟きに目ざとく(普通である)反応して、ジト眼で言葉を返す明日香。
しかし、その眼をすぐに収めると最後に親しみの籠もった笑みで俺の帰りを見送っていた。
それに見送られながら、俺は帰路につくのだった。
「って、締めると思ったか?」
「違うのかい?」
「違う。断じて違う。その右腕にキラリと光るCAD!!そのどこぞの令嬢と思わせる礼儀作法!!ーーーそ・し・て!!」
「顔近いよ!!」
おっと、いけないいけない。興奮のあまり、近づき過ぎた。
「失敬。では仕切り直して、・・・そ・し・て!!名前に『七』を関する苗字!!。
・・・全日本魔法師協会の頂点に君臨する『十師族』に次いでの師補十八家の
魔法師の名門の一つ。ユギトさん・・・あんた・・・師補十八家『七瀬家』・・・だね!!」
「そうだよ!!そして長い!!。ったく、あんたはどこぞの県民バラエティーに出てくるバーのおじさんか!!」
早口で突っ込みを入れながら、ハリセンでぶったたいた。あ、ブッダが叩いたでぶったたいた!
「あんた、今、すごく下らないこと考えたかい?」
「いえいえ、そのようなことはありません。気のせいです。」
「そうかい。今回はそういうことにしとくよ。それと、うち(七瀬家)のこと聞きたかったらまた今度だ。もう、子供は帰る時間だよ。」
「そうだな。まだ子供だったな。じゃあ帰らせてもらうよ。」
昔ながらの男勝りの口調でそういうと、カフェの出口で右手を腰に当て帰りを促した。俺はそういうと互いに手を振りながら帰路についた。
ユギトの口調ってこんな感じでしたっけ?