「そして、彼女らの魂が安らかな時を歩まんことを、切に願います」
戦いが空け、ことがことだったので政府はこの戦いを公表せずに事故と発表したが、多くの国民はその事実を知っていた。
それでも、IS登場初の多くの人が死んだこの戦いにおいて誰も口出しはしなかった。
事故の合同葬式にて、蓮花は一つの墓の前に立っていた。
そこにいつもの笑顔はなく、暗く沈んでいた。
「なんでだよ・・・こんなの、おかしいだろ」
彼の前にある墓には一つの名前が刻まれていた。
『マグノリア・カーチス』
共に戦い、共にこの時を刻んだ戦友の名前であった。多くの敵を倒し、中枢への侵入を阻んだのにも関わらず、彼女の扱いは事故死。しかし、それでも政府は彼女に多くの勲章を与えた。
マギーの墓地は街が見える軍人の丘にあった。遺体は母国へと移送されてしまったが、彼女の専用機の欠片が墓に埋め込まれていた。
魂はここに眠っていた。
「なんで・・・約束・・・約束しただろう!なんでだよ!」
蓮花は怒りと悲しみのあまり地面を何度も叩く。
戦いに死はつきものだと蓮花はちゃんと理解していた。だが、甘かったといえばそれまでだ。彼はきっと心のどこかで大丈夫。死ぬはずがないと思っていたのだ。
都合のいい死は世の中の常であることを蓮花は見過ごしていた。
彼の後ろには包帯を巻きながら立っている四人の姿があった。
誰もこの期に及んで蓮花に取り入れようなどという馬鹿な考えの持ち主ではなかった。振り付ける雪が冷たく、蓮花の服はビチョビチョだった。それでも、彼の気が済むまで誰も声はかけなかった。
それだけ、蓮花の気持ちは理解できるからだった。
「なんで逃げなかったんだよ・・・バカ野郎が」
「世界と、蓮花の未来を守る為だ・・・マギーを想うなら、これ以上は・・・」
ウィンディは蓮花の言葉を返した。
その言葉に蓮花は一瞬ぴくっと肩を動かすと、すっと立ち上がった。上を見上げる。暗黒の空が支配するこの世界は一種の鳥籠だ。
ISを中心にして世界はこれからも周り続けて、人は囚われ続ける。死がこの世界からの解放を意味するなら、迷わず死を選ぶだろう。
亡国はあの後の戦いで結局姿を隠した。今何処で何をしているのかはサッパリ分からない。結局彼女らのやりたかったことは蓮花は最後まで分からなかった。
その両手に残ったのは哀しみだけだった。
「皆・・・俺は誓うよ。守りぬく。何をしてでも!」
「そんなことがあったんだ・・・」
「言っとくが、ぜーんぶ軍事機密だから誰にも喋るなよ?」
「わ、分かってるよ。けど、なんで千冬姉はその傷を消さなかったんだ?」
長い話が終わり、一夏とそう会話を交わすと、疑問に思っていることが千冬に向いた。千冬は顔に手を当てながら答える。
「これは、蓮花が誓ったように私の誓いだ。あの戦いを刻むことによって、決して忘れはしない。だから、亡国が倒れるまでこの傷を消すわけにはいかない」
「そうか・・・分かったよ。千冬。ってことだ、一夏。まぁ、つまりだな。お前は俺が見るに確かな素質はある。訓練機ではなく、専用機がある。そして、最高の指導者だっている。だからな、強くなれ。誰にも負けることのない、守られる側じゃなくて、守る側になってみせろ」
俺はできる限り今の気持ちを全て伝えた。
「今は俺や千冬に守られている。だけどな、それを自覚して初めて漢ってのは強くなるんだ。自分のその行為がどれだけ他人を傷つけているのか、自分はどれだけ他人に守られているのか。それを知らずに生きている奴をバカっていうんだ。特に今の世の中はそのバカが大量生産されているようだがな」
「先生・・・・」
「まぁ、そのうちにってことだよ。今は気楽でいいさ。楽しくやろうぜ、一夏」
「分かったよ、俺。千冬姉や先生たちに守られるだけなんじゃなくて、いつか絶対守られる側から守る側になる」
そう言って一夏は部屋から出ていった。
「だってよ、良かったな。見ろよ。お前を見る憧れの瞳を」
「やめてくれ・・・けど、まぁ、ありがとう」
「おっ、千冬がデレたな」
「デレたとか言うんじゃない。さっ、私もそろそろ戻ることにする。明日の準備がまだ少し残っているからな」
「ああ、分かった。じゃぁな、千冬。おやすみ」
「ああ、蓮花。おやすみ。今夜はグッスリ眠れそうだよ」
「そりゃ良かった」
千冬が部屋から出ていった。
一人部屋に残った俺はベットに寝転がる。明日は朝から自身の専用機の調整をしなければならないし、更識簪のこともある。
「はぁ・・・最初の休日は休めそうにないな」
ポツリとそう呟くと安定の寝息をたてながら睡眠の中に沈んでいった。
過去編全部付き合ってもらってありがとうございました。
中にはさっさと進めろよという方もいらっしゃったと思いますが、色々とすみませんでした。
次回からはセシリア戦ということになっていきます。
今後ともよろしくお願いします。