やっと夏休みだぁぁぁぁぁぁぁ!!
地獄のテスト期間も終了し、作者は今日からやっと夏休みです。
海行って、BBQして、キャンプして、花火して、
いやぁ、夢が膨らみますなぁ・・・・という話は今回の話とまったく関係がありません。
「関節部は大丈夫だな。ジェネレーターの出力もコアの安定率も問題ないな」
俺は自身の専用機に乗りながら各部機関をチェックする。特別異常が特になかったので、背中の二本のサブアームに長刀を装備する。背中にサブアームがあるぶん、腰に二つのスラスターがついている。更に機体本体の微調整に脹脛にブースターがある。
「よし・・・こんなもんか。おーし、山田先生、俺は準備万端だ」
『分かりました。カタパルトに乗ってください』
指示通りカタパルトに両足を固定して腰を低くする。
「浅乃蓮花、不知火。出る!」
勢いよくカタパルトが動き出し、Aピットのゲートからアリーナへと出撃した。当然、既に上空では蒼い機体が停止しており、こちらをロックしていた。
「よし、オルコット。遠慮はいらねぇ。来いよ!」
『・・・先生、その装備は近接格闘装備。そんな装備で大丈夫なのですか?』
「伊達に集団戦じゃ突撃前衛を担っていた訳じゃないからな。さぁ・・・行くぞっ!」
俺はスラスターを噴かせて一瞬にしてオルコットとの距離を詰める。
『速い!スラスターだけでここまでの加速が出来るなんて!』
下からの長刀の斬撃をギリギリで回避したオルコットは回避したのと同時にターンを決めてレーザーライフルを構えて照準を合わせる。
続けて四発レーザーが飛んでくる。
が、正確無比な為射撃精度のおかげで両手のナイフシートを動かすだけで機体本体の直線距離を僅かにズラす。
『なっ!スラスターの動きはそれほど変化していないのにどうしてあれだけの動きで避けることが!こうなったら!』
すると、オルコットは更に距離を空けて四基のピットを飛ばしてきた。が、既にオルコットの機体の特徴をしている俺は大きく振りかぶってオルコットに向かって長刀を投げた。
『え?』
オルコットは全く予想だにしていない攻撃に思わず変な声を出す。同時にピットは動きを止め、長刀は機体本体に直撃して大きくバランスを崩した。
そんなことをしているオルコットを視界の端に捉えながら背中にある二本目の長刀を手に取る。
「はぁぁぁっ!」
そのまま上下左右に展開していたピット兵器を全て破壊し、オルコットに向かって飛ぶ。未だに体制を整えているオルコットを直線にロックオンしている。
が、ギリギリで体制を整えたオルコットはこれを景気とばかりにロケットランチャーを構えた。ロケットが二発飛んできた。真っ直ぐにこちらに向かって飛び、更に追尾機能があるので微妙な回避じゃ難しいだろう。
「甘いっ!」
刀身の先端でロケットの信管を狙い、二発とも一瞬で捌いてみせた。
『なっ、こんな!』
更にスラスターを噴かせて右旋回しながらオルコットに近づく。足掻きとばかりレーザーライフルで射撃してくるが、機体を微妙にズラして最低限の動きで避け続ける。
「しっ!」
長刀を振り上げて一直線に振り下ろす。オルコットは一夏との経験を覚えているのか、近接武器で受け止めるが、そんな甘っちょろい構えで受け止め切れるほど俺の斬撃は軽くはなく、オルコットはそのまま叩きつけられるように地上へと吸い込まれていく。
ギリギリ地面で着地したようだが反動によるオルコット自身のダメージは少なからずあるようだ。
『まだ終わっていませんわ!』
そう言ってオルコットが上空を見上げた瞬間、俺はオルコットの三十メートルほど前に立っていた。
『なっ・・・そんな、今まで上にいたのに』
長刀を構えて飛ぶ。
『ぐっ!』
こちらに向けてレーザーが飛んでくるがレーザーも曲げれない以上は俺を捉えることは出来ない。
専用機持ちと言っても、学生か。まっ、その学生だったんだけどな。俺も。
ラスト一発を長刀で相殺して下段からの斬り上げによってブルー・ティアーズのSEがなくなった。
『試合終了!勝者!浅乃蓮花!』
「当然の結果だったな」
「当たり前だ。何でヒヨっ子なんぞに負けるんだよ。理由が欲しいな」
ピットに戻るなり千冬が当たり前のことを言いながら出迎えて来た。俺は軽く肩を回しながら不知火を解除する。
待機状態は首輪であった。
「それがお前の専用機か。随分と懐かしいものだな」
「まぁな。こいつは前の専用機を今の技術主任と一緒に改造したものだからな」
正式名所は不知火弐型。俺の学生時代の専用機を改造したもので、第二世代型に該当する。
サブアームが背中にあるため、スラスターが腰についている。姿勢のみで機動の微調整が行えるように腕にナイフシートが備え付けてあり、全てをPICとスラスターのみで動かしている訳ではない。
稼働時間の短さを解消するため、機体各部に出力効率が高く消費電力が少ない新開発の米国製パーツが組み込まれており、跳躍ユニットのエンジンも従来より高出力のジネラルエレクトロニクス製F-140エンジンに換装されている。
新方式の戦術前方監視赤外線装置を搭載して索敵・目標補足能力を強化されている。
「学生の時はおかげでヒューマンエラーが多かったが、弐型になったこいつはなんだかしっくりくるよ。流石は主任としか言いようがない」
「まぁ、随分とおまえらしい機体だな。それじゃぁ、各自のフィードバックは寮で個人的に行う。それで構わないな」
「ああ、問題ないさ。どっちがどっち担当する?」
「実際に戦った方がいいだろう。織斑は私を。浅野先生にはオルコットをお願いしたい」
「りょーかい。それじゃぁ、それまで一旦解散ということで。流石に俺は疲れたよ。また、鍛え直しだわ」
「ふふ、そのようだな。朝の組手なら付き合うが?」
「・・・剣道ならまだしも、お前との組手は命がいくらあっても足りなさそうだ」
実際に学生時代やったら死ぬかと思ったからな。現役を引退していると言っても、あの様子じゃ腕は衰えていなさそうに見えるからな。やめておこう。
「はは、なるほどな。ま、今度飲みに行こうか」
「おーう」
それから少しして俺は寮に戻ってシャワーを浴び着替えを済ます。それから時間まで今日の授業のまとめを行い、明日の授業の用意を済ませ、今回の戦闘データをまとめた。
会社に戦闘データを送った時点で、軽く夜の八時を越えていた。すると、不意にドアをノックする音がした。
「どうぞ」
「失礼します」
戦闘後の反省会、所謂フィードバックを行う為にオルコットを呼んでいたのが、その彼女が制服姿で入って来た。一応、シャワーは浴びて来たのか、ほんのりと湯気を感じるし、髪もしっとり濡れている。
「まぁ、座れよ」
「はい」
デスクの椅子でクルリと回ってオルコットの正面に向く。少し緊張をしているようだが、いつもの男を軽蔑するような視線ではなかった。
「まずは先の戦闘における、お前自身の敗因は何だったと思う?」
オルコットは少し考えた後、素直に答えた。
「まず相手の力量を見誤っていたことと、自分の力不足かと」
「うん、まぁ、その通りだな。最初の俺の高速移動は驚いただろ?」
「はい、瞬時加速でもないので・・・どうやったのかと」
「ふむ・・・オルコットのIS、ブルー・ティアーズの飛行、停止は何で行っている?」
「PICですが?」
「俺のISにはなんと、跳躍ユニットのスラスターが腰についているんだよ。つまり、移動をスラスターとPICによる併用によってかなり多様化している訳なのさ」
「確かにISには追加装備をつけることによって能力を引き上げるものもありますが、それだけであれだけ一直線に瞬時加速なしで近づけるものなのでしょうか?」
オルコットの言う通りでスラスターとPICのみではあそこまでの高速移動は難しい。
「ロケットモーターさ。何度かしか使えない上にパイロットに若干の負荷がかかるけどな。初っ端から使って一気にお前に近づいたって訳さ。それで次の攻撃だ。オルコットは射撃してきたが、何故当たらなかったと思う?」
「そ、それは・・わたくしの命中精度の問題だと思います。曲げる。ということを踏まえた」
「そうだな。レーザー兵器を使うなら曲げるぐらいのことをやってみせてもらわないとな。今はまだいいかもしれんが、近い将来通じなくなる。それは何故かというと、お前の射撃能力が良いからだよ」
「え?」
「いいから逆に射線が読みやすい。おかげで、ナイフシートをズラスだけの簡単な回避で避けることが出来た。三度でも一度でもいい。今のお前にとっての課題はそれだけかな?」
「なるほど・・・前々から理解していたのですが、改めて見て見ると難しいものです・・・せ、先生!」
と、話の終盤にいきなりオルコットが立ち上がって俺を真っ直ぐに見たと思ったらキッチリ九十度頭を下げて来た。
「先程の試合・・・わ、わたくしの完敗でした。男だと侮っていて、それで・・・それで・・・今まで先生のことを敵視していてすみませんでした」
「・・・なんだ、そんなことか。驚かせるなよ。俺は盗聴器でも仕掛けたのかと思ったぞ」
そう言いながら徐に机の下にある盗聴器を一つ剥がして、
「更識・・・明日、俺のところにこい」
それだけ言ってパキッと盗聴器を潰して、俺は再度オルコットを見た。
「確かに授業中のお前の敵意についてはあまり褒められたものじゃないが、そこまで問題にすることではない。お前の家のことだって理解しているつもりだからな。まだ、15歳に甘えるつもりもないし、もう15歳という血も涙もないことは言わない」
俺は立ち上がってオルコットの頭の上に手を置いてゆっくりと撫でてやる。まるで、泣きじゃくる自分の子供をあやすように。
「今まで頑張ってきたな。オルコット」
同時にオルコットの涙腺が崩壊したのか、その両目からゆっくりと涙が流れて来た。
「わ、わたくしは・・・強く、強くならなければならない・・・オルコット家の当主として・・で・・でも・・・・」
彼女の経歴は知っている。敢えてもう何も言わないが、一人の少女が生きていくには随分と酷な環境であっただろう。
だからこそ、誰が彼女を認めてやらねばならない。
ここにいろと、彼女の存在意義を肯定しなければ、きっと何処かで破産してしまうだろう。
「わたくしは・・・あ・・・あああああああ!」
涙を流しながら胸に飛び込んで来るオルコットを優しく抱きしめながらその金髪の髪をゆっくりと撫でた。
泣きじゃくるセシリア・オルコットには気品という文字は似合わなく、とても貴族らしくはない。それでも、そこには一人の少女がいた。
たった数度しか会話は交わしたことはない。それでも、何故か心は通じ合った気がした。
「辛いときに辛いと言えれば、どれだけ楽なんだろうな」
それ以上俺は何も言わなかった。