「各部センサーよし、コアの安定率よし、ノイズもなし、関節部に異常なし・・・まぁ、こんなもんか。主任、チェックしゅーりょー」
「こちらも最終調整完了。各部機関の異常は見られなかった」
週末、俺と長門は倉持と雌雄を決する為に公開ISアリーナ闘技場のピットにて最終調整を行っていた。アリーナの観客席には既に大量のメディアが何処からか湧いており、カメラを構えて待っている。
その中に社長の姿もあった。
「はぁ、社長が見に来ているとかまじで誰得だよ。これ、負けたら減給だけじゃすまないよな?」
「それで済むならまだいいかも。もしかしたら、あなたの首が飛ぶ可能性も」
「え!?はっ、はは!や、やだなぁ主任。滅多に冗談言わないのに、こんな時に」
「私は確率論をしただけ。涼宮ハルヒなら・・・」
「・・・・・・」
て、手が震えてやがる。いや、違う。これは武者震いだ。背負っているプレッシャーに負けそうになっているとかそういうのじゃない!
っと、そろそろ準備が完了したか。全てのチェックを終了し、もう直ぐ模擬戦が開始されようとしていた。
「さっ、がっちりやってきますか」
アサルトライフルを二丁携えて脚部をカタパルトに固定する。光がグリーンになるのと同時にカタパルトと共に勢いよくアリーナに飛び出る。そのまま滑空しながら指定されている位置に着地した。
反対側には既に倉持側のISが待機していた。
「まさか、こんな形で出会うことになるとは。一人目の男性操縦者の浅乃蓮花だな。出来ると聞いている」
黒がメイン色の少しだけごついISであった。操縦するパイロットは黒髪ポニーテールの女性、アンジェであった。『鳥殺し』の異名を持つ、最高クラスの実力を持ち合わせるパイロットである。
すると、長門から通信が入る。彼女にはこういう企業間の模擬戦にはいつもオペレーターをお願いしている。
『相手の機体はオルレア。小型マシンガンにフラッシュロケット、プラズマキャノンを装備している。それと、彼女の最大の攻撃は知っていると思うが、両腕の籠手に備え付けられてる近接用ブレード。適切な距離を保ちつつSEを削るのを勧める』
なるほど、そりゃそうだよな。相手の距離にいてフラフラとしていたらロックされてフラッシュロケット、距離を詰められてブレードの餌食になるのが落ちか。
「俺もあんたとこんな形で戦うことになるとはな。まぁ、いい。今日は互いに全力を出し切ろう」
そう言いながら両手のアサルトライフルを構える。
「・・・そうだな。ならば、私も手加減は一切しない」
そう言ってアンジェも小型マシンガンを構える。
その構えは一見小型マシンガンのみしかこちらに向いていないように見えるが、足の構えから見るに開始と同時に速攻で後退して、肩のフラッシュロケットでも撃つように見える。
ならば俺も開始と同時に後退してロケットを撃墜するのに専念したほうがいいな。
目の前にある数字が0になったのと同時に模擬戦が開始された。
開始と同時に読み通りアンジェはブースターを前に使って後退して、フラッシュロケットを発射する。
俺も後退して冷静に飛んでくるロケットを全て撃ち落とした。
目の前で爆発と黒煙が発生した。
「よし」
この調子ならいける。
そう思った瞬間、爆炎の中を物ともせずに瞬時加速を使って正面から小型マシンガンを連射しながら突っ込んできた。
「っ!」
「はぁっ!」
正面からの縦斬りを地面を蹴ってギリギリ回避する。横に一回転して再び構えを取ると、向かってくるアンジェにアサルトライフルを連射する。
彼女は機体を左右に振って銃弾を避けると地味にジリジリと近づき、ブレードをふりかぶってくる。
連撃性能はかなりのもので、接近されてしまってはこちらとしても積極的に反撃が出来ず、一方的な防戦に追い込まれる。そうなる前に出来るだけ距離をとって射撃をしているのだが、流石は接近戦を主体としている機体で、かなり機動力を誇っていた。
それだけじゃない。
彼女自身がかなりの接近戦の使い手。中近戦闘は今までに幾度となく行ってきたに違いない。俺よりかは経験が違う。
だが、俺もそれなりの場数は踏んできている。
アンジェ、あんたみたいな接近戦の使い手とだって。
次の瞬間、地面に着地したのと同時に相手のプラズマキャノンが襲ってきた。間を置かずに空中に避けると、斜め上。こちらに向かってフラッシュロケットが飛んできた。
思わず銃を盾にして正面から受ける。爆発によって後ろに後退する。だが、そこで攻撃が終わることはなく、更に追撃をかけるように右からアンジェが仕掛けてきた。
「甘いっ!」
それを読んでいた俺は身を屈めて正面から肩のミサイルを浴びせた。
「ぐっ!」
アンジェは機体から煙をだしながら一旦後ろに後退した。
「なるほど、できる」
そう言って彼女は右手に持っていた小型マシンガンを捨てた。
なるほど、二刀流って訳か。
両手のアサルトライフルを見ると、どうにもさきほどのフラッシュロケットの損傷が酷く、正確に弾を浴びせられそうにない。
そう思った俺は少し息を吐きながら両手のアサルトライフルを捨てる。背中の右側のサブアームが上に上がり、長刀の固定ロックが解除された。
徐に背中の長刀の柄を握り締めると、ガクッという音ともにサブアームから長刀を取り外した。
対するアンジェは少しばかり驚いた顔をしていたが、
「面白い!」
自分と同じ接近戦にこちらがシフトしたのが嬉しいのか、彼女はそう微笑みながら突撃してきた。
長刀でその二振りを受けるが、連撃性能がこちらによりも優れているため中々反撃出来ない。
「はぁっ!」
一歩後ろに脚を引き長刀を右横に構えた。間合いに入った瞬間、相手の攻撃を無視して左横に薙ぎ払う。その強烈な一撃に彼女は咄嗟にブレードで盾を作ってみせたが、少し後ろへと後ずさる。
それを逃さず俺は前に出てドロップキックを食らわすのと同時にその反動で空中へと逃げた。
彼女がこちらをロックしたのと同時に互いにミサイルとロケットを発射した。
俺とアンジェの間で爆発が起こる。
「この感覚・・・行くぞ!」
アンジェはそう言いながら飛びかかってきた。向かってくる斬撃の嵐に負けないようにこちらも長刀を振るう。だが、あちらの方が一手多いため、所々擦り地味にSEが削られる。
このまま長期戦になるのはめんどうだな。こうなれば・・・。
「ふっ!」
正面クロス斬りがくる。それを直前でかなり強引なブーストステップで避けると彼女の真横に出る。直ぐに片方のブレードで対応してきたが、俺の狙いは彼女ではなく、彼女の腕に斬撃を与えた。
衝撃とともに彼女の左腕のブレードが損傷し、その光を失う。
「何っ!ブレードを狙ったか」
これで互いに一本。相手の武器を潰すのは正当な戦いでは評価がいいとは言えないが、この機体で彼女と戦うならこれくらいのことぐらいしないとダメだろう。
「ははっ、過程は関係ない。最後まで立っていれば!」
まるで戦いを楽しんでいるかのように彼女はそう言いながらプラズマキャノンとフラッシュロケットをパージしてブレード一本で突撃してきた。
なるほど、それがあんたなりのやり方って訳か。
「ああ、行くぞ!」
こちらも長刀を振りかぶって突撃した。正面からのぶつかり合い。
彼女は右手のブレードを左から払う。こちらもそれに合わせて上段から振り下ろして刃を交えた。
突然、ビキッと長刀の刃にヒビが入った。咄嗟に長刀を捨て、互いに背中を見せるような形になったその瞬間、左側のサブアームに装備されているアサルトライフルが固定解除されてそのままアンジェに向かって射撃する。
「なっ!」
ガガガガガッ!とアンジェの背中に大量の弾丸が浴びせられる。同時にクイックターンで彼女よりも速く反転すると、ミサイルを発射した。その無防備な背中に連続してダメージが入り、煙が空けてオルレアのSEは0と表示された。
「はぁ・・・はぁ・・・」
少し運動していないのが効いたのかゼェハァと息が出る。対する彼女は負けたというのに俺に向かって微笑んでおり、真っ直ぐ俺に向かっていった。
「誇ってくれ。それが手向けだ」
こうして、打鉄弐式の取引金額を賭けての大企業間の模擬戦はSOS財団が勝利で幕を閉じた。
「なるほど、腕は衰えていないようだな」
「体力は落ちてるけどな。少し鍛え直さないとダメだな」
その日、学園に戻ってくると千冬に夕食を誘われ、倉持との模擬戦のことを少し話した。
千冬はカツ丼で俺は鯖の味噌煮定食だ。
「朝なら私と組手が出来るが?」
「嫌だよ。痛いもん」
まだ負けはしないかもしれないが、相当苦戦するかもしれないのでやめておく。ブリュンヒルデは生身でも強いです。
「子供みたいなことを言って。まぁ、いいさ。それで、更識簪はSOS財団に打鉄弐式と一緒に移転するということでいいんだな?」
「ああ、それで大丈夫だ。弐式の方も会社で作ることになったが、それでもクラス対抗戦までに仕上がるのは難しそうだ。タッグマッチに間に合うかどうかって感じだ」
「ふむ、なるほど。そういうことならこちらとしても色々と調整が出来る。助かる」
「礼を言われることでもないよ。そうだな、そのカツを一キレでいいぞ」
そう言うと千冬は呆けたような顔から苦笑しながらカツを箸で挟む。
「はは、お前は相変わらずカツ丼が好きだな。何故カツ丼を頼まない?」
「別にいいだろ。他人が食べている物ほど食べたくなるんだよ」
「分かったよ。ほら、口を開けろ」
「・・・えっと、千冬さん。何?」
そう問いかける。何故なら千冬がカツを俺の口の前まで持ってきているのだ。所謂、あーん♡というやつだ。
「別に恥ずかしがる必要ないだろう」
「・・・・・・」
黙ると千冬は何故か拗ねたように顔をプイッとしてボソッと言う。
「学生時代はしてくれたのに」
・・・・プイッてなんだよ。ていうか、学生時代は学生時代というか。それに食堂には少しばかり他の生徒だっているっていうのに。
「・・・・・」
けどまぁ・・・なんつーか、こっちに来てから忙しかったし、俺も千冬もちゃんと話をしたりゆったり出来る時間はなかったからな。
というのとあーん♡は関係ないと思うのだが、たまには俺だって甘えてもいいだろう。
パクリと千冬の箸ごとカツを口を含み、咀嚼する。
それを見て千冬は少しだけ嬉しそうに微笑むと、再びカツ丼を食べ始めた。俺もそれに習って鯖の味噌煮を食べる。
ゆったりと、何かほんわかとした空気の中、食事は終了した。
夕食を済ませた俺は千冬と分かれて自室にて模擬戦の戦闘データを見ていた。長門がまとめてくれたもので、自身の立ち回りなどがよく見える。
アンジェとの戦闘では近接戦における決定打がなかったため、トドメをミサイルに頼る他なかった。
約束をした訳ではないが、それでも相手が近接戦のみで挑んでくるなら俺も純粋に近接にいくしかないか?
「・・・・いや」
確実に勝たなければならない場合以外はそんな決闘地味たことをするのはやめておこう。負けて後悔だけはしたくないからな。
「なんか、先生悩んでいますね」
「実はな、自分の戦闘スタイルが・・・どうしてもなぁ」
「なるほどぉ、ガンランスとかどうです?」
「ランスかぁ。まぁ、接近戦でリーチを考えるなら悪くはないんだが・・・って、なんでお前が俺の部屋のベットに寝ているんだよ」
見ればニヤニヤしながら更識がベットの上で寝ている。
「えっ!」
「いや、意外そうな顔してんじゃねーよ。こちとら倉持との模擬戦後で疲れてんの。分かる?お前の相手をしている場合じゃないんだ。明日から学校だし。一限目から授業だし」
「あはは、まぁ、いいじゃないですか。私だって先生の苦労は分かっていますよ。大丈夫です。今日はちゃんと明確な目標があって来たんで」
「ほう?」
なんだと思って更識を見るとベットから降りてペコリと頭を下げた。いつもの悪戯でもしでかしそうな表情とは違い、何処か真面目な表情だ。
それでも相手が教師だからか、少しばかり緊張が見て取れる。
「妹のこと、ありがとうございます。私一人だとどうしようもなくて」
「・・・別に構わんさ。誰だって出来ないこととか、苦手なこととかあるからな。まぁ、仲直り出来たならそれでいい。折角の姉妹なんだ」
「そうですよね。ありがとうございます」
案外更識もちゃんとやる場面にはちゃんとやるものだと、改めてそう思った。
その頃
ウィンディは若干悔しそうに遠くへ逃げる二機のISを見ていた。もう少しのところで織斑マドカを捕まえることができたのだが、そのタイミングでアラクネを身に纏ったオータムに邪魔をされたのだ。
前回戦った時よりもかなりパワーアップしていたオータムに不意を突かれ、気が付けば二人は遠くへ逃げていた。
「・・・まぁ、いいか」
女性権利団体、亡国と連戦を強いられていたので遠くへ消え去る敵影を見て、どこか脱力しているウィンディはため息を吐いた。
「上も人使いが荒い」
そう愚痴るとオペレーターから通信が入った。
『ウィンディ、作戦は終了よ。お疲れ様。そちらに回収ヘリを向かわせたらからもう少し待っていてね』
「ああ、分かった」
『ああ、それと次の任務が入ったわ』
「・・・はぁ」
最近疲れていたのでその任務という言葉に少しばかりため息が出る。が、オペレーターはそんなウィンディにニヤニヤしたような声で言う。
『いいの?次の任務は日本なのよ?』
「・・・?」
『IS学園の護衛任務よ。ロシア軍のエースさんと、一人目の男性操縦者も護衛任務らしいわ。上からは休暇だと思って気楽にいけだってさ。良かったね?』
「・・・なるほど。分かった。飛行機を手配してくれ」
『はーい、了解です。中尉殿』
ウィンディは不意に空を見る。頭上から見える太陽は彼女の体を徐々に温めてはくれるが、マドカとオータムが逃げていった方向からは黒い雲が何か厄災でも知らせるかのように近づいて来るのが見えた。
「・・・ふっ」
これから起こるかもしれない厄災について、ウィンディは不敵に笑ってみせた。それが彼女なりの運命へ対する強がりだったのかもしれない。
ハルヒ「浅乃君!よくやったわよ!これでウハウハよ!ウハウハ!」
キョン「ハルヒ、分かったから落ち着け。見ろ、浅乃の顔を」
蓮花「(´・Д・)」」
ハルヒ「その顔は一体どういう顔なのか私にはさっぱり分からないわ」
キョン「・・・・はっはっはっはっ」
次回もよろしくお願いしますーー