紹介が終わり、俺と千冬は久しぶりの再会を果たした。別室で互いに千冬はコーヒーを、俺はココアを飲みながらソファーに腰を下ろす。
「久しぶりだな、千冬」
「ああ、蓮花。元気そうでなによりだ」
学園を卒業して俺はSOS財団へ入りつつも大学へ。千冬は世界へと羽ばたいていった。そして、なんの因果か知らないが、こうして再会することになった。
「そう言えば、SOS財団に所属しているんだな」
「ああ、まぁそうだな。ホントは企業所属の者が教師なんぞやるもんじゃないが、お前の弟を一応、サポートするために来た」
「よく社長が許したな。普通は色々と面倒なことになるのじゃないか?」
「まさかな。あの人は世界を大いに盛り上げるのであれば、行ってこいと俺の穴を蹴るような人だ」
「なんというか、あまり想像の出来ない人物なのだな」
千冬は苦笑いしながらコーヒーを一口飲む。
「蓮花・・・浅乃先生には明日からの入学式を終えて授業をしてもらうことになる。基本的には一年生に教えてもらいたいが、一応二年生もやってもらう。時間割的にもさほど忙しくはないよう、スケジュールを組んだつもりだ。確認してくれ」
そう言われて一週間の授業内容を確認する。
「ああ、分かった。織斑一夏は一年一組なんだな」
「そうだ。私の受け持つクラスになっている」
「ほう・・・ほほう。了解した・・まぁ、こんなもんか」
「取り敢えずはな。詳細はこちらの用紙に記入してある。改めて確認しておいてくれ。じゃぁ、私は行かせてもらう」
「ん?もう行くのか?」
「まぁな。明日の入学式について、生徒会と話があってな。蓮花は今日は戻った方がいい。色々と疲れただろうし、まだ荷解きも終わっていないのだろう?」
「それもそうだな。それじゃぁ、明日からよろしくな、織斑先生」
千冬が部屋から出て行き、俺は机の上に置かれた分厚い参考書を次々に鞄の中に入れていく。
特にIS機構学、IS整備学、IS基礎学、IS実習学、IS概論学、の文字が見える。
それから数人の他の先生方と授業内容の打ち合わせを行い、俺は一足先に学園を後にして、寮へと向かっていく。
とういうが、
「ここって、絶対に女子寮だよな?」
俺が見上げるのは大きな建造物。生徒寮であった。千冬曰く、教師寮は既に定員が埋まっているらしく、俺を含む教師は寮の担当教師として生徒と同じ寮に住むことになっているらしい。
時刻は午後六時。明日は入学式なので、大半の生徒は既に入寮しているであろう。
「まぁ、いっか。ここは大体わかっているし」
そう思い、俺は参考書の詰まった鞄を手に寮の中に入っていった。
寮の部屋に入ると昔とあまり変わらず、寮部屋にしては豪華過ぎで、寝心地の良さそうなフカフカのベット。調理台にシャワーにトレイ。高級ホテルの一室にでも案内されたようなところである。
二人部屋にしては極度に狭いと思ったが、ベットの一つが何処かされて色々な機材が設置されてあった。
俺が来る前に研究室においていたものと、色々と申請しておいたものばかりである。その分部屋が少しばかり狭いように感じてしまうが、俺が過ごすので特別何か気にする必要もないだろう。
講堂にて、ズラリといるのは女子生徒。
JKだよ!JK!って、俺も女子高生に興奮している場合ではない。状況だ、状況。ホントにいたよ。女子に混じって一人だけ男がいるよ。
ああ、俺もきっとあんな風に一人でオロオロしていたんだろうなぁ。懐かしいな。
「でー、あるからにして・・・」
女であろうと男であろうと、相変わらず校長の挨拶は長く、特別何か意味があるかと言われれば大したことはない。
「それでは、今年度から我が学園の、IS関連の授業を受けつ持つことになる先生を紹介したいと思います。浅乃蓮花先生、どうぞ」
と、校長に呼ばれて俺は打ち合わせ通りに壇上へと上がる。同時にヒソヒソと俺の姿を見て話声が聞こえてくるが、何を話しているのかまでは分からない。
この壇上に立つのは何度目だろうか。
最後にここに立ったのは生徒会長の座を後輩に任せて最後の挨拶をしたときだっけ。まぁ、何にせよ久しぶりだとしてもここで話すには緊張してしまう。
少し眩しい光を感じながらも、俺はマイクに口を近づけた。
「えー、今日から君たちにIS関連の授業を受け持つことになった、浅乃蓮花だ。一応はここの卒業生なので、特別何かいうことはない。ただ、先輩として言えることはISは決しておもちゃでもなんでもないということを、刻んでもらいたい。それでは、今日からよろしく頼む。後輩たちよ」
数秒の沈黙からパチパチと数十人の生徒たちが拍手をしてくれる。
一瞥して俺はゆっくりと壇上から降りた。
「ということで、今日から二年一組のIS機構学を教えることになった浅乃蓮花だ。よろしくな」
「おおー」
「本物だー」
「やった!ラッキー!」
と、拍手にまざって色々と歓迎してくれる声が耳に届く。良かったぁ。男にIS習うなんて嫌だという人がいるかと思ったが、案外そんなことはなかった。
いや、そうじゃないな。
確かに世界は女尊男卑という風潮があるが、それもここに来て一年で変わるか。一年のように二年には浮かれている表情は読み取れない。
まぁ、一年も勉強すればそれが分かるものか。
「はい、先生。質問です」
と、見れば最前列にいる生徒がニヤニヤしながら手を挙げてこちらを見ている。
蒼ほど濃くはないが、水色のショートの生徒である。
って、更識楯無か。生徒会長だったよな。挨拶してたし、うん。
「ああ、何だ?」
「先生って彼女とかいるんですか?」
そう聞いてきた。同時に「あ、それ私も聞きたい!」「私も!」「先生どうなんですか!」などと周りから同意見が聞こえてくる。
「ったく、これが学生の力というものか。んー、まぁ、彼女はいないな」
「えっ!ホントですか!」
「あ、ああ。まぁな。質問はそれだけか?」
Σ(-ω-*)フム
まぁ、こんなものか。
「じゃぁ、授業始めるぞ。教科書の四ページから・・・」
やはり二年ということだけにあって皆授業を集中して受けている。のだが、一つ気に食わないのは最前列にいる更識である。
先ほどからニコニコしながらこちらを見ている。ノートも取らずにだ。こちらは黒板に全て電子パネルによって授業資料が映し出されるので、俺が黒板にチョークで何かという話ではない。
が、その分映し出す資料を分かりやすく俺が作らなければならないのだがな。
「んで、お前はなんでそんなんなの?生徒でしょ?ニコニコして前向いてんのはいいけど、せめてノートぐらいとれよ」
「えー、別にいいじゃないですかぁ。ノートチェックとかないんですから」
「いや、そういう問題じゃないだろ。お前あれか?テストで高得点ならノート取らなくてもオッケーみたいな感じだろ?」
「あー、いえいえそういう訳じゃありませんよ。まぁ、確かに特別ノートとらなくても高得点は取れると思いますけど。あっ、別に授業舐めているとかじゃなくて先生の授業が分かりやすいのでここで全部覚えられそうだなぁって」
「うむ、そう言われると悪い気はしないが・・・・・・」
なるほど、分かりやすいか。いやぁ、そう言われると先生照れちゃうぜ。
ニヤニヤと数十秒してみるが、あることに気づいた俺は今一度更識の前まで戻る。
「えっ、どうかしたんですか?先生。あっ、まさか生徒と教師の禁断の愛が!」
「なるかぁぁぁぁぁ!!」
と、俺は更識の頭をチョップする。千冬ほどの威力はないが、今は痛めつけるよりかは取り敢えずアホかとツッコミをするべきである。
「ったく、今の生徒会長はこんな奴がやっているのか」
「ちょっと先生。こんな奴とは酷くないですか?」
「別に酷くねぇよ。あそこでツッコンデないとお前に今後舐められたらどうすんだよ。教師としての立場がなくなっちゃうだろうが」
とか言いつつも更識はニヤニヤと微笑み続ける。それに若干のイラつきを感じるが、そうなってしまえばこいつの思うツボだと思い冷静になる。
「はぁ、更識。お前が生徒会長で学年最強でクソ頭がいいのは分かるが、せめて次の中間考査でトップ取ってからにしろ」
「ええー、そんなの別にいいじゃないですかぁ」
などと甘えるような声ですがってくるのだが、
「俺はお前の満点の答案用紙を見たことがない」
「それはぁ、前の私の成績を見ればいいじゃないですかぁ」
「悪いが、俺は信じられないものは自分の目で見ないと信じない主義なんだよ」
いや、まぁ知っているけど。こいつは頭がいいのは知っているけど。
「ってことは私の成績は信じられないということなんですか!?」
「ふっ、更識。残念だがそういうことのようだな。分かってほしければ全教科満点取ってからにしろ」
「うぇっ!?全教科満点って、流石の私でも無理があるっていうか、なんというか。あ、はははははは・・・」
と、苦笑いする更識をほっときながら俺は戻った。
それから数十分して予定通りに授業が終了する。すると、生徒たちは俺の元へやってきて若干よく分からなかったことを聞いてきたりしてきたが、反面よく分かったなどと感想を言ってくれた。
(´-ω-)なるほど。
取り敢えずはこのままやって、今度のテスト次第で色々と改良したりするか。
「さてと・・・次はお待ちかねの一年一組か・・・」
俺は初授業ということもあり、若干フラつきながらも、一年生教室への廊下を歩き始めた。
とまぁ、こんな感じにやっていきます。
次回は一年生ですね。
よろしくお願いします。