翌日の放課後。
「へぇ、そういうことだったんですね。ありがとうございます」
そう言ってお礼を言って立ち去る一人の生徒。シャルル・デュノアの後ろ姿を見ながら思う。
やっぱどう見ても女だよなぁ。まぁ、向こうが動くまでこちらも干渉しないという指示が出ている。ここで俺が下手に手を出して事態がややこしくなるのは避けた方がいいよな。
それに、今は学園のことばかりに目を向けていられる状況ではない。どうにも、亡国の動きについて怪しい。各国もそれについては色々と探りを入れているようだが、アメリカ海軍が攻撃された時点でおそらくアメリカのIS部隊がカブラカン撃破のために動き始めているだろう。
上手くやってくれることを祈るしかないか。
そう思いながらオレンジ色に照らされる寮への帰り道を歩いていた。すると、少し甲高い声が耳に響く。
「何故ですか教官!」
声がする方に視線を向けるとそこには千冬とボーデヴィッヒが話し合っていた。
「ここの者たちはISが何たるものなのか全く理解していません!ただのファッションか、アクセサリーかなんかだと勘違いしています!」
それには深く同意する。
ISは現実に戦争に使われている。IS大戦においては全ての兵器を巻き込んだ戦争で、数万人という死者が実際には出ている。そして、友が死んだ国家解体戦争を俺は絶対に忘れない。
「そこまでにしておけよ、小娘。少し見ない間に偉くなったな?」
「なっ!?」
「ほう、十五歳の分際でもう選ばれた気でいるのか?恐れ入るな」
「わ、私は!」
「もういい、寮に戻れ。お前はトーナメントまで停学処分中だ。無駄にほっつき歩くな」
「・・・りょ、了解しました」
千冬の言葉を聞いてボーデヴィッヒさんは少しばかりしょんぼりしながら寮の方向へと歩いて行った。
「手厳しいな、織斑教官は」
「蓮花か・・・」
千冬と肩を並べて道を歩く。
「私がドイツに行った話は知っているな?」
「ああ、モンドグロッソで攫われた一夏の情報を提供したドイツ軍にIS指導をしに行ったんだろう?」
「その時にな、あいつと出会ったんだ。あいつは兵士として作られた所謂デザイナーズチルドレンという奴だ。軍人に必要な全てを持っていた。だが、唯一IS適性だけがなかった。軍の中じゃ落ちこぼれの烙印を押されていたらしいが、私が軍で最強になれるほど鍛え上げた」
「・・・なるほど。それで、お前のことをあんなにも慕っているんだな」
「あれは慕っているなんてレベルじゃない・・・まぁ、兎に角そういう訳で色々と面倒なことになっているんだ。私が何を言っても言うことを聞かん」
「そうか。お前も随分と苦労しているんだな」
「ああ、そうだ。そうなんだ。という訳で、トーナメントが終わったら買い物に付き合ってもらうからな」
「お、おう。別にそれくらい構わんけどな」
なんだか千冬も随分と大変なことになっているんだなぁ・・・って、他人事じゃないだろ。そうは言っても当人じゃないので千冬に何か言えることもないし、ボーデヴィッヒに対しても俺がなんらかのアクションが出来る訳ではない。
「それじゃぁな」
「ああ、また明日」
寮に入ると千冬は自分の部屋に戻っていく。俺も自分の部屋に戻ろうとすると、背後から何やら視線を感じた。
ゆっくりと振り返ってみるのだがそこには誰もいない。
疲れているのかと一瞬思ったが、コソッと影が動くのを見て自分が尾行されているのに気づく。
そこで犯人を突き詰めても良かったのだが、敢えて流して自分の部屋に戻る。廊下を曲がり、二階へと上がる。そのまま自分の部屋に戻った。
静かにしているとカサッと誰か俺の部屋の前にへばりつくのを感じる。
「・・・・・・・」
尾行から俺の部屋でも盗み聞きしているつもりなのだろうが、ある程度の殺意を持っているので気配を感じ取れる。
仕方がないので持ってきていたAVを流してみせた。
「自主規制音」
が、ある程度流れたところで、ドアを開けると顔を真っ赤にしながら耳を塞いでプルプルと蹲っている銀髪幼女がいた。
ラウラ・ボーデヴィッヒである。
「何やってんだ?」
俺がそう問うとクルッとこちらを向いたボーデヴィッヒが、
「獣!!!!」
そう言いながら走り去っていった。
翌日から俺は彼女に鬼畜変態クソ野郎と罵声を浴びせられることとなった。
その頃、亡国のスコールとオータムは秘密基地にて今後の作戦展開について計画を練っていた。
スコールの読み通り、極秘で手に入れた旧世代の異物であるAFを使って最近秘密基地周辺を探っているアメリカ軍の注意をハワイ沖合に向けた。
本命はそこではない。
「作戦は上手くいったわ。AF・・・と言っても大げさ。新世代のISが数十機もあればそこまで苦戦するものではないわ」
「まぁ、それが目的なんだからな。それで、スコールさんよ。次は一体どうしよっているんだ?」
「世界の目をハワイに向けている間に一気に完成まで近づける必要があるわ」
そう言ってスコールは計画書に再び目を通す。それは、とある兵器についての作成図である。
彼女が数年前に国家解体戦争と称した戦いによって政府から強奪した物である。
「ったく、おかしな世界になったな。自ら宇宙への進出を拒みつつも、それから脱却する手段を考えておくなんて。まぁ、修羅の方法だがな。こればっかりはしょうがねぇ」
「どちらにせよ、世界を救うにはこの方法しかないのよ。男尊女卑なんておかしな考えただけど、女尊男卑もおかしなものよ。地球上のみでの開発には無理があるわ。だからこそ・・・人類は宇宙へ行くべきなのよ。その為に、亡国を私は作り上げた」
スコールは基地から出て外に出る。外は既に夜になっていたのか、数え切れない星によって埋め尽くされていた。
ISによる開発は元より宇宙服としてのものであった。だが、その開発は宇宙から地上のみへと限局され、いつしか空に憧れを抱く者はいなくなっていた。
ISも第三世代機と開発が移行しているが、どの開発も最高ランクに仕上がっているとは言えない。そして、いつしかIS経済は詰んでしまう時が来る。
そんなふうにスコールはこの世界の流れを読んでいた。だからこそ、革命が必要だった。
再び、人類が宇宙へ進出するために。
人類に・・・黄金の時代を