来賓を特殊バリアが張られた来賓席へ案内させ、今一度スケジュールのチェックをして豪快にバカ笑いする社長を静かにさせてるのをキョンに任せて監視ルームに入る。
中には既に山田先生と千冬が待機していた。
「遅かったな」
「社長の相手をするのが大変でな。悪い」
「いいさ、別に今に始まったことではない。さぁ、そろそろ開始するぞ」
モニターには一夏とデュノア、対峙するようにボーデヴィッヒと篠ノ之が立っていた。なんとまぁ、因縁のある対決だろうかと教職員一同思っているに違いない。
そんなことを思っていると試合が開始された。
試合は予想通りで突っ込む一夏に援護するデュノアという構図が機体構成からも近距離格闘と中距離射撃というものがうまい具合に組み合わさっている。よくできた前衛、後衛であった。
それに対してボーデヴィッヒ、篠ノ之ペアはてんでバラバラでコンビネーションなんてあったもんじゃない。最悪なコンビであった。
「あらら・・・」
「ボーデヴィッヒさんと篠ノ之箒さんペアは、ボーデヴィッヒさんが独断で先行し過ぎていて上手くコンビネーションが取れていませんね。それに比べて織斑君とデュノア君のペアは素晴らしいの一言ですね」
「ふん、あれくらい当然だ」
「千冬先生、厳しすぎですよ」
「そういうお前はどうなんだ?」
「・・・及第点」
「・・・・・」
試合は確実に一夏たちが優勢のまま進んでいた。そして、試合の中盤。白式の零落白夜が発動すると、一気にボーデヴィッヒを追い詰めていく。しかし、最悪のタイミングで零落白夜が切れてしまった。
それを好機と見たボーデヴィッヒは一気に一夏を叩こうとするのだが、逆に隙を作ってしまいデュノアのパイルバンカーを正面から受けた。
誰もが負けたな。そう思った時だった。
「なんだあれは!」
ボーデヴィッヒの専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンがドロドロした液状に変わり、彼女を包み始めた。
それを見た千冬が直ぐに教員部隊に出撃を命じる。俺も直ぐにアリーナに出て専用機を展開した。
その頃には液体はボーデヴィッヒを完全に包み込み、金属の塊となっていた。どこか、千冬のような形状になっている。
「野郎!!」
そう言って横にいた一夏が千冬もどきに向かって突撃し始めた。馬鹿と思ったが、止めることも出来ずに一夏は千冬もどきの攻撃によって大きく後方に弾きとんだ。
「アホか、何やってんだよ」
「だ、だって、先生。あれは千冬姉の太刀筋なんだ・・・そんなのを、あんな偽物なんか真似られて」
大好きな姉の技をパクったやつが許せないと。なるほど、こいつの気持ちはよく分かる。が、その同じ道を歩むことすら止めてしまったお前がそんなことを言える権利があるのか?
そう思ってしまった。
だが、生徒を時には危険な目に合わせて成長を促すのも教師としての職務だと思う。
「デュノア、ラファールのエネルギーを一夏に譲渡出来るか?」
白式のエネルギーはもうない。不知火のエネルギーは温存していたので、近くにいたまだ余力のあるディノアに頼んだ。
彼は「はい、問題ありません」と言って白式にエネルギーを分ける。それを確認して一夏は部分展開をする。
「一夏、やるなら中途半端は許さん。必ずあいつを倒して、ボーデヴィッヒを助けろ。わかったな?」
「はい、絶対成功してみます」
一夏はそう力強く頷いた。まるで、いつかの自分を見ているかのようだった。根拠もなく、保証された訳でもないのに雰囲気と妙な自信から自分はなんでも出来るのだと思っていた。いや、思い込んでいた。
それがどんな結果になろうとも知らずに。だけど、一夏は違う。俺とは違うんだ。
一夏がステップを踏んで飛び込む。正面からの一撃を体を捻って避けると、上段から一気に振り下ろした。
決着はその一瞬だった。
斬撃痕からズルッと小さな女の子が。ボーデヴィッヒが出てきて、うまくそれを一夏がキャッチした。
事態はそこで収束したかに思えた。
「・・・っ!一夏そいつから離れろ!」
「え?」
次の瞬間、ボーデヴィッヒがいなくなったというのに千冬もどきは剣を振りかざして一夏に攻撃をしてきた。ボーデヴィッヒを抱えているので身動きが取れない。
瞬時に持っていた銃を盾のようにして一夏と千冬もどきの間に滑り込む。ガキンッ!と銃は切断されて強烈な一撃が左腕に当たる。
ビキビキビキと衝撃が腕をもぎ落とそうとするのだが、なんとか堪える。
その二撃目が来るのだが、後方からウィンディのレイテルパラッシュのレールガンが弾いた。
間髪入れずに間合いに絵里のチェルミナートルのモーターブレードが千冬もどきを襲う。
「逃げろ!」
その言葉に一夏はボーデヴィッヒを背負ってすぐに退場する。
「蓮花、大丈夫か?」
ウィンディがそう声をかけてくる。
「ああ、なんとかな。正直、左腕がもげそうだ」
「一旦下がったらどうだ?」
「この距離だ。右手で射撃する分なら問題ねぇよ」
「・・そうか。無理はするなよ」
俺、ウィンディ、絵里の三人で千冬もどきの相手をする。恐らく、千冬の動きをトレースしたものだと思っているのだが、その一撃一撃は重たい。
それにパイロットもいないのに一体どうやって動いているのだろうか。
それでも、数の暴力によってこちらが優勢で戦闘は終を迎えようとしていた。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
千冬もどきが吠えたと思うといきなり空に向かって飛び始めた。
しまったと思って追うのだが、奴はアリーナのバリアを破壊して更に空を目指した。追いながら射撃するのだが中々命中してくれない。
ドンドンと高度が上がって行く。
「蓮花、ISの高度限界に近くなっているぞ!」
ウィンディが叫ぶ。
ISの飛行高度の限界はおよそ七千メートルだと言われている。それを越えるならば人間もISも耐えられないそうだ。
「だけど、あともう少しで」
数十メートル先を飛ぶ影にもう少しで落ち着きそうだった。
高度二万メートルを超えて三万メートル付近に到達しようとした瞬間、いきなり警告音が鳴り響いた。同時に目の前を飛んでいた千冬もどきが無残に爆散する。
「なっ・・・・」
「蓮花逃げて!」
絵里の言葉が聞こえるのと同時に星の数だけのレーザーが俺に向かって振り注いできた。