タッグマッチトーナメントから一週間が過ぎた。ある程度のことが起こったとしてもそれに大きな支障がなければ学園のイベントは実行していかなければならない。
「いや、俺に出来ることはほぼないんだけど」
保健室のベットで俺は寝ていた。
無数のレーザーを受けて地上へと墜落した俺はなんとかウィンディと絵里によって受け止められ、衝突は回避された。だが、受けた傷はかなりのもので不知火はほぼ大破。俺自身も長時間の療養を余儀なくされた。
「にしても・・・あの、攻撃」
ベットに寝ながらずっと考えていた。あの時、俺を攻撃したのは数百という無数のレーザーだった。その元を探ったとしても、レーダーには反応がない。どのデーターを調べても何も掲載はされていない。
俺のこともあの後、録に調べることもなく事故として処理されてしまった。それに、注目としてはボーデヴィッヒの機体に搭載されていたVTシステムの方に注目がいってしまい、俺のことは後回し状態である。
「・・・・・・・」
明らかな不自然な流れだ。政府へ対して質問しても、口を揃えて「分からない」の一点張りだ。
自国の空域内で起こった出来事だというのに。
「蓮花、大丈夫か」
そうこうしていると千冬と山田先生が入って来た。
「浅乃先生、調子はどうですか?」
「ボチボチですわ。数日もすれば歩行訓練もあるので・・・正直に言って微妙に臨海学校には間に合いそうにありません。すみません」
「いえ、いいんですよ。先生はしっかりと療養して万全の状態になってくださいね」
プルンッと二つのプリンが揺れる。
おっと、いかんいかん。千冬もいるのだ。視線は少し自重した方がいい。
「千冬も悪いな。ほぼ全て任せてしまって」
「何を言っている。怪我人に出来ることはないさ。これに懲りたらIS高度を守ることだな」
「はは、そうだな」
千冬たちは俺が高度二万メートルを超えたことによって機体のエンジン爆発が起きたと思っているらしい。実際の報告書にはそう記されているからだ。
俺が起こったことを説明したのが、俄かに信じられていないようだ。レーダーに反応がないのでなんにも説明出来ないのが悔しい。
「兎に角、元気ならいい。それでは、私たちはもう行くからな」
千冬がそう言って山田先生を連れて行ってしまった。ちょっと、寂しいが考えなければならないことがあるので、まぁ、いいだろう。
彼女らが出て行って次に長門主任がやって来た。
「調子はどう?」
「主任・・・まぁ、もうちょいです」
「ならいい。では、仕事の話をする」
「仕事・・・ぐへ」
パソコンの画面を見せてきた。
「これは、不知火の残ったデータから回収できた唯一の証拠になる」
「証拠?なんの?」
ノイズ混じりの動画が再生されると長門主任は言う。
「あなたが撃墜されたという証拠。あれは決して事故なんかではない。政府はこの世界の空の全てを隠している」
映像には俺が体験した通り、無数のレーザーによって撃墜されるシーンであった。俺の妄想ではない。確かに俺は撃墜されたのだ。
そこで、映像は停止されてある一部分が拡大される。
そこにはレーザーの照射源が映っていたのだ。円盤状の人工物である。それが、レーザーの元であった。
「これは?」
「分からない。恐らく、人工物の自律兵器かと推測される」
「だが、そんなものが何故」
「過去に遡って調べてみると色々とおもしろものが出てきた」
主任はそう言うと調べた多くの資料が映し出される。
「ISが開発されて直ぐ、多くの国家は他国がISを使用しての宇宙空間の進出を驚異に感じた。それから、数百以上のロケットが宇宙へと放たれている」
「つまり、そのロケットに搭載されていたのがこの自律兵器・・・」
「仮定の話だ。問題の本質はそこではない。この自律兵器がもたらした弊害がここにある」
考えてみれば分かることだった。
この自律兵器は俺のようにある高度を超えた時に襲ってくる。つまりだ。人類は宇宙へ行けないのだ。行こうと思えばこれによって撃墜される。
「だから、ISの開発は宇宙じゃなくて地上の開発に限局されたのか」
「恐らく・・・だが、これ以上深入りすることはあまりおすすめ出来ない。私も、この件からは手を引くとする」
「・・・・・・・」
「それと、不知火はほぼ修復不可能なので、以前のデータを基にしてISを組み立てることにした。これは、会社としての決定でもある。要望があれば、聞くが」
可能性としてはあると思っていが、そこまで俺のISは酷い状況になっているとは・・・悲しいが仕方ないことである。
「機動力が欲しいな」
「分かった。では、失礼する」
長門主任はそう言って出ていった。
胸の中に残ったのはなんとも言えないもどかしさであった。それから、俺に訪問者はなく、一人で考えながらその夜を迎えた。
次の日・・・と言っても深夜0時を超えた時に一人の訪問者が現れた。無作法にも窓からである。
月夜に照らされた金髪の女性である。
「まさか、こんな時に遭うなんてな。スコール・ミューゼル」
相変わらず何を考えているのか分からないその表情は久しぶりに出会っても読み取ることは出来ない。
「あら、私のことを覚えてくれていたの?嬉しいわ」
「要件を言え」
「冷たいのね」
そういうスコールは続ける・
「あなたのことだからもう分かっているんじゃないの?見たのでしょ?世界の真実を」
彼女のその言葉が主任に見せてもらった自律兵器のことを連想させてくれる。
「・・・自律兵器によって人類を地球圏に抑える。だが、世界中に散布してしまって自分たちで排除することが出来なくなってしまった。だから、ISの高度限界が二万メートルとされているんだな」
「大正解。その通りよ。人類は自ら放った兵器によって出られなくなった檻を作ってしまったのよ。ISのせいで女尊男劣という愚かな思想が生まれ、それは日に日に酷くなっているわ。更に、篠ノ之博士にしか作れないコアという時点でIS開発は目に見えて限界がある」
「・・・・・・」
「・・・全部はやはり話すことは出来ないわ。だけど、あなたがもしこの世界を良しとしないのであれば・・・連絡を頂戴」
そう言って連絡先を書いたカードを枕元においた。
「いい返事があることを願っているわ。じゃぁね」
そよ風のように彼女は視界から消えてしまった。