IS学園の教職員になりました   作:青野

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第27話 新機体

 

 

 一夏たちの臨海学校が無事に終了して一ヶ月。

 彼らの報告内容は思いの他とんでもない内容で、ナターシャの乗る福音含むアメリカのIS部隊がカブラカンを撃破したのだが、突如謎のハッキングにあってナターシャは福音ごと暴走してしまったらしい。

 突如、学園として対処を求められ、なんと篠ノ之博士が第四世代機なる篠ノ之箒の専用機を投入。

 激闘の末、白式がセカンドシフトして最終的に福音のSEを削りきり、ナターシャを無事に助けたということになる。

 

 随分と濃密な時間であったらしいし、俺としても戦いの中に一夏の成長があったならそれでいい。

 ただ、博士のやり方は気に食わないがな。

 

 まぁ、そんなことはさておいて今現在IS学園は夏期休暇に入っていた。学生たちは寮生活なので次々に帰省をしている。が、教員側としても色々と仕事があるのだが、土曜日ということで学園も教師勢は殆どが休暇になっている。

 それを利用して俺は久しぶりにこの炎天下の中会社に来ていた。主任から新機体が完成したとの連絡を受けたからだ。

 

 高層ビルに入り、受付を通って研究室に入ると既に主任が待機していた。他にも複数の技術研究員たちの姿も見える。軽く挨拶して奥に通されると、そこには一機のISが鎮座していた。

 

「あなたの要望通り、高速戦闘を視野にいれた機体構成になっている。なお、OSを最新バージョンにアップデートしたおかげで武器の量子変換が可能。背部にあるサブアームは取り除いた。おかげでブースターを背中に装着する。機体が軽くなった分、防御力に多少の変動があるので、その点は注意して欲しい」

 

 黒を几帳面としたカラーに青のサブ色。そこには不知火の外観とは全く異なるものであるが、手に取って触ってみればコアが感じ取れる意思が伝わってくる。

『大丈夫、私は変わってないよ』

 そんな言葉が聞こえてくるのだ。ISが俺を感じ取っているように、俺もISを感じ取れている。

 

「これは、私たちの新技術を投入したSOS財団標準機不知火の最高傑作、不知火参型になる。どうか、大切に扱ってもらえると嬉しい」

 

「勿論だ・・・ありがとう、長門主任」

 

「驚いた。あなたから感謝の言葉があるなんて」

 

「えっ、今までちゃんと言葉にしてたよね!まぁ・・・主任には世話になったし」

 

 少しの沈黙を置いて主任は言った。

 

「あなたが何をしようとしているのかは私には推測出来ない。だが、そこにあなたの信念があるというのなら、私はそれを貫いて欲しい」

 

 その真剣な眼差しでそんな言葉を言われたら全身の血が熱くなるのが分かる。分かる、気持ちが高ぶっている。その言葉に「ありがとう」と、そう言った。

 

 その後数時間ほど起動実験をして新しい待機状態の首輪に参型をすると、終わったら来いと言われていた社長室へと入室する。

 

「失礼します」

 

「浅乃、別に敬語とかいらねーぞ。こいつには」

 

 入室すると、いきなりキョンにそんなことを言われる。が、目の前の社長室でふんぞり返っている我らが社長はそのキョンの態度が気に食わなかったのか腹パンを食らわす。

 腹を抑えながら蹲るキョンを無視して涼宮ハルヒ社長は言葉を並べる。

 

「浅乃君、いつもこの会社のために働いてくれてありがとうね」

 

「いや、別に社畜として当然の責務を全うしているといいますかね」

 

「奴隷みたいな言い方ね。まぁ、別にいいわ。それで、最近委員会側があなたに対して探りを入れているみたいなの。何か、心当たりある?」

 

「心当たりと言われましても」

 

「浅乃、何かあるなら言った方がいいぞ。こいつ、直ぐ手出すから」

 

「あら、キョン。こんな風に?」

 

 腹パン二回目。うわぁ・・痛そう。

 

「えっと、簡潔に申し上げますと・・・」

 

 ぱっと見て美女。テンションとノリ。そして、おもしろさを追求して可能性を見出していく存在がこのSOS財団の社長、涼宮ハルヒである。

 彼女のおかげでこの会社はあらゆる業界において上位に食い込んでいる。それは、彼女の考え方である「おもしろい」を中心にして会社が回っているからだ。

 当初、それはそれは無理があったことも少なくないが、それでも最後には認められて実績を残している。

 

 そんな彼女に俺は今真剣な眼差しで見つめられている。ガチな奴だ。いつものお調子ものではなく、そこには一人の人格者として、俺を見定めているのだ。

 

 この空気にキョンも黙って結末を見届ける。

 

「浅乃君、あなたは何をしようとしているの?」

 

 その質問ギョッとする。これから世界の全てを覆すためにテロリストになります。だから、専用機が完成するまで待ってました。それでは・・・。

 なんてこと言える訳がない。社長も社長だ。世界に認められてここにいるのだ。なのに、社員が今からテロしますと言って、社長としてそれを許さないだろう。

 きっと、迷惑がかかる。

 だが、デスクの中に退職願いは置いてきた。長門がそれを発見する頃にはこの参型を回収することは出来ない。

 

 世界の敵と分かった時点で浅乃蓮花は会社を止めて専用機を強奪して逃げた。

 

 これがシナリオだ。だが、ここで彼女の答えに間違えたらそこで即座に終了する。だが、どう答えたらいい?

 なんといえばいいのだ。この人に嘘は通じない。それは俺も十分承知だ。

 

 いや、そうじゃない。嘘を言うんじゃない。本当のことを言えばいいんだ。俺が今からすることを、俺の目線で何をするか。

 

「社長、少しだけ世界を大いにおもしろくしてきます」

 

 その言葉に彼女は驚いたのかぱちくりとした後、ニヤリと笑って、

 

「ならよし!行ってこい!!」

 

 そう俺の背中を勢いよく押したのだ。

 

 夜遅くに会社が終わり、待ち合わせ場所である繁華街にある居酒屋に入る。そこには一足先に酒を飲んでいる女性が一人。綺麗な金色の髪。スコール・ミューゼルである。

 

「日本の居酒屋というのも悪くないわね。ワインもいいけど、日本酒もいいわね」

 

「だろ?」

 

 隣の席についてビールとつまみを注文してグビッと飲む。

 

「あなたのおかげで作戦は第二段階へ移行したわ。ただ、めんどうなのは女性権利団体があなたのことを探っていること」

 

「分かっている。あいつらウチの会社まで手を出してきた。そろそろ俺も潮時なのかもしれん。辞表はデスクの中に入れたからいつ辞めたとなっても問題ない手はずになっている」

 

 俺の意図をうまく汲み取って長門主任がやってくれる。

 

「そう、ならいいわ。あなたも速く秘密基地に移動してちょうだい。なんなら、迎えでも呼ぶ?」

 

「冗談言うな。お前らが来たら一発でバレるだろうが」

 

「それもそうね。けど、あなたがこちら側についてくれて頼もしいわ」

 

「・・・別にお前らを許した訳じゃない。ただ、利害が一致しているだけだ」

 

「ツンデレなのね。そういうところ好きだわ」

 

「ツンデレ言うな。マギーのこと・・・俺は忘れた訳じゃない。だけど、その原因がそもそものこの世界にあるのだとするなら、迷いなくこの選択を取る」

 

「それでも、人はきっと死ぬわ。この先、色んな戦いのせいでね。ISがこの世界から消えたとしても、数年もすればISの技術を元にISに代替わりする何かが出てくる。そして、今みたいに争いが起こる」

 

「だけど、それでも宇宙という可能性は見いだせるんだ。これで、国も企業も教わることになる。自分たちが行ったことがどれだけ愚かな行為だったのか」

 

「随分と、亡国に染まったじゃない」

 

「馬鹿言うな」

 

 それから数時間スコールと話をして俺は学園に戻った。

 

 

 

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