IS学園の教職員になりました   作:青野

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すみません、前回の投稿より大分空いてしまいましたね。
学校の方がそれなりと忙しくなったので、ちょっと遅れちゃいました。
それでは、第三話でございます。


第3話 授業

 

 女子の中にポツンとこちらを満面の笑みで見ているのは織斑一夏。まるで、砂漠にオアシスでも見つけたかのような表情である。

 

「ということで、今日からこの一年一組のIS機構学を教えることになる、浅乃蓮花だ。君たちに初めに言っておく、女尊男卑という風潮がこの世を支配しているようかに見えるが、もしそんな考えの主がここにいるのであれば今すぐ考え直せ」

 

 と、俺のそんな発言に複数の生徒の眉がピクリと動く。酷いのは後ろの席に座っている金髪の生徒であろうか。

 表情が一瞬だが歪んだ。

 

「今すぐ無理だというのなら、この一年でせめてその考えをどうか改めてほしい。これは、俺が在学中に感じ、社会に出て思ったことだ。それでも女尊男卑と主張するならそれもいい。考え方まで強要するのは俺がやることではない。それじゃぁ、よろしくな」

 

 自己紹介が終了し、俺は第一回目の授業を開始する。二年ほどでもないが、それなりに一年生も授業に集中しており、少しばかり関心してしまう。

 

「でー、あるからにして、第二世代機というのは後付武装によって、戦闘での用途の多様化に主眼が置かれた世代機であるということで、今現在最も多く実戦配備されている世代機になる」

「はいはい、浅乃先生。つまりどういうことですか?」

 

 と、早速、織斑が手を挙げて質問してきた。

 

「つまり、第二世代機ってのは今現在大量に量産されており、戦闘において様々な局面に対応出来る仕組みになってんだ。それで、第三世代機は操縦者のイメージ・インターフェイス、まぁ、特殊兵器を用いた世代機で、その特殊兵器は操縦者の技量ではなく精神部分に大きな負担がかかるもんなんだよ」

「ほー、なるほど」

「まぁ、その分燃費が悪いのが痛い問題だがな。それでも、燃費向上を重点においた機体も製造されているからな」

 

 俺は再び壇に戻って授業を再開した。

 千冬の弟ということもあってそれなりに授業には食いついてきているようだが、先ほど千冬から愚弟は参考書を捨てていた。

 という話を聞いているので、IS座学については相当苦戦するだろうと思う。

 

 まぁ、そこをサポートするのが俺の役目なんだよな。

 

 全体としてはそれなりに生徒たちは集中していた。一日目ということもあるのだろうし、この授業を実感できるようになるのは実習が始まってからだろう。

 

 それでも、端っこの金髪の眉間には若干シワが寄っていた。

 

 

 

 それから暫くして授業が終了し念願の昼休みが始まった。何人かの生徒たちが質問をしに俺の元へやってきたが、今後のことついて千冬たちと話し合いがあるので、丁寧に断って職員室へと戻ってきた。

 

 職員室の隣にある応接室へと入ると、千冬とその副担任である山田真耶がお弁当を持って座っていた。

 俺の姿を確認するなり山田先生が立ち上がってこちらを見て立ち上がった。

 

「改めまして一年一組の副担任を担っています。山田真耶です。浅乃先生、よろしくお願いしますね」

「ええ、よろしくお願いしますね、山田先生」

 

 俺は一つ空いている席に座り、弁当の横に置いてあるお茶のペットボトルのキャップを開け、カラカラの喉を潤した。

 

「それで、今年の一年はどうだ?」

「色々と癖の多いやつがいると思ったさ。まぁ、俺たちも入学当初はそんなもんだったんじゃないかと思うがな」

「はは、それは違いない」

「あの、織斑先生。浅乃先生とはどういうご関係なんですか?」

 

 そんな仲の良い俺と千冬のやり取りを見て山田先生が声をかけてきた。

 

「ああ、山田先生。蓮花・・・浅乃先生とは同期で、学園時代はライバル同士だったんですよ」

「その通りだな。千冬とは生徒会長の座を賭けて全力勝負したんだよ」

「へぇ、そうなんですか。それで、勝敗はどうだったんですか?」

「あの時は第一世代型がまだ主流だったからな。今みたいに派手な戦闘は無理だったけど、千冬は学園時代から化物だったからなぁ」

「誰が化物だ。言っておくが、その化物を倒して生徒会長になったお前もお前で化物だからな」

「それもそうだな」

 

 などと更に談笑しながら食事を進めていく。

 

「浅乃先生、少しは慣れましたか?」

「んー、まぁ、そうだな。それなりにと言ったところだな。正直、あんま校舎が変わっていなかったし、他の先生たちも特別男に恨みがあるような人じゃないみたいだったから、なんとかやっていけそうですな」

「そうでしたか。それは良かったです。浅乃先生の時はすごかったですもんね」

 

 当時、俺はヤバイくらい女性権利団体から命を狙われていた。今でもそれは変わらないのだが、IS発表と同時に女尊男卑の風潮が流行りだした矢先に初の男性操縦者だ。

 女尊男卑で喜んでいた輩からすれば排除したくてたまらなかったであろう。

 束、千冬の友人ということで学園ではなんとかなっていた俺にとっては、外を歩くなど論外であったし、そういった事柄で事件に巻き込まれたことなど両手じゃ足りない。

 

「まぁ、織斑・・・一夏については千冬の弟だしな。特別何か巻き込まれることもないだろう」

「そうだな。外部からも何らかの団体が特別行動を起こしているという話はあまり耳にしない。だが、問題はそこじゃない」

「と、言うと?」

 

 すると、千冬は今まで食べ進んでいた弁当箱を置き、お茶を一口飲んで少しばかり真剣な表情で俺に言った。

 

「亡国企業を知っているな?」

「あー、そういやそういう連中がいたな」

「ああ、山田先生も知ってのとおり、亡国企業、ファントムタスクによる攻撃も想定していなければならない。そこで、念の為に蓮花には専用機を学園に持ち込んできてもらいたい」

「それは、敵が来訪したら俺が戦えと?」

「悪いがそういうことになる。こんなことにならないよう私も尽力しようとしたのだが、私のISは学園の地下に封印されていてな。それに、教師は訓練機しか扱えなくてな。幾ら教師が凄腕の操縦者だとしても、亡国企業のISと戦い合えるのは難しいと鑑みた」

「なるほど、なるほど。まぁ、そういうもんだよな」

「すまないな。お前には何度も助けてもらって」

「いいさ、別に。俺と千冬の仲だろ?友が助けをもとめているのなら、俺は黙って手を貸すぜ?」

 

 後で長門に連絡しておかないとダメだな。

 

「分かった。この話もつい最近決まったことでな。教師兼企業所属のお前にしか頼めなかったことなんだ。それでは、詳細は追って企業側に提出させてもらう。こちらとしても、それなりの報酬は出すつもりだ」

 

 楽しい楽しいお昼の時間だというのに少しばかり固い話になってしまったが、別に悪い気はしなかった。

 むしろ色々と感じることがあって楽しかったというべきか。山田先生とも仲良く打ち解けることが出来たし、それなりと気分の良い食事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、織斑先生!」

「なんだ?オルコット」

 

 放課後、セシリア・オルコットは廊下を歩いていた千冬を呼び止めた。

 

「何故、男が教師などやっているのでしょうか?通常科目ならまだ理解出来ますが、何故IS機構学を男に教えてもらわねばならないのでしょうか?」

 

 セシリアは典型的な女尊男卑の一例であった。その為、蓮花がはじめの授業で言ったことにあまり納得がいかず、更にその彼がIS関連の授業を受け持つことが彼女にとっては何よりも屈辱的であった。

 

 蔑んでいるはずの男に何故ISを教えてもらわなければならないのか。

 

「ほう、生徒の分際で教師に意見か?そんなもの、一教員の私に言っても無理なことは明白だろうに?」

「で、ですが、わたくしは男にISを教えてもらわれるほど落ちてはいませんわ」

 

 セシリアの境遇についてはあまり多くは語らないが、セシリアの父はいつも頭をヘコヘコ下げる男であった。その為、何故もっと堂々していないのか。何故母はこのような男と結婚してしまったのか。

 確かに父と母で結婚していなければ当然自分という存在がこの世にいないことは分かっている。分かっているがそれでもどうしてもあの情けなさそうな父の後ろ姿は見るに堪えないものがあった。

 それでも母はそんな父に惚れていた。

何故好きなのかと聞いてみれば当時のセシリアにとってはなんとも理解出来ず、分からない答えであった。

 

 それは彼女自身にある程度の女尊男卑の自覚があった為であった。人間、そうそう考えを変えれるほど強い心の持ち主ではない。セシリアもまたその一人であった。

 

一度定まってしまった思想を変えることはなかった。そして、それは両親の事故死ということで勢いが増したのは彼女の背景を見るにごく自然のことであった。

 

「オルコット、初めに言っておくが現時点で恐らくあいつは私よりも強い」

 

 その言葉を聞いてセシリアは驚く。それも当然だろうか。

 あのISにおいて世界最強を決める大会の第一回優勝者が自ら自分よりも強いと言ったのだから。

 

「そ、それはどういう意味ですか?」

「言葉通りの意味だ。私は操縦者としては引退している身だからな」

「・・・納得がいきませんわ」

「まぁ、それもいいだろう。あいつの言うとおり、お前の考えがこれから世間の通じる、通じないに限らず何かを強要することは私もしない。そんなに認めたくないのであれば、一度手合わせをしてもらえばいい」

 

 千冬がそういうとセシリアは数秒の沈黙のあとに言葉をこぼした。

 

「それで、何か得るものが?」

「お前の中にある考えが少しは変わるかもしれん。結局のところ、何かを与えてくれる、何かを変えてくれる。そんなきっかけをくれるのはいつも突拍子もないものだ。オルコット、お前はまだ若い。その歳で何らかの思想を定着するのは速いと思うがな?」

 

 千冬はそれだけ言うと明日の授業の為に職員室へと戻り始めた。その後ろ姿をセシリアは見送っていた。

 

「何を変えてくれるきっかけ・・・」

 

 千冬の言った言葉がまるで残響のように耳に残ったまま、セシリアは一人寮へと帰り始めた。

 

 

 

 

 

 

 




次回もよろしくお願いします。
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