もういっこ話でも書こうかなと考えていたので・・・すみません、
俺が教室に入ると机に突っ伏している一夏が見えた。昨日の今日ということもあり、慣れていない学園生活に疲れが出たのであろうが、一週間、一ヶ月ならまだしもこの前入学したばかりなのにもう疲れているのは何故なのか。
答えはオルコットとの勝負であろう。
慣れないISの授業に放課後は篠ノ之との剣道の打ち合い。そして、オルコットという強敵のプレッシャー。
これに耐えろという方が無理であろう。一学生にな。
授業がすると、一夏はフラフラとしながら俺の元へやってきた。
「あの・・・先生」
「あ、ああ・・・朝から元気がないな?そんなにここ最近は忙しいか?」
そういうと一夏は唸って、数秒間黙りこくってから言った。
「いえ、あの俺はそんなに疲れていないんですが・・・浅乃先生なら千冬姉のことを知っていると思いまして、質問があるんですけど」
ふむ、千冬のことか。
「答えられる範囲でなら話を聞こう」
「・・・・・実は・・・・・」
一夏は少し暗そうに言葉を発した。
一瞬驚きつつも一夏の頭に手を置いて一言。
「その話は後でな」
「千冬っ!」
朝の一夏の言葉が気になり、俺は確認をすべくその日の夜にいきなり千冬の部屋に押し掛けた。
「っ!蓮花!い、いきなりなんだ!」
「・・・・・・おい、千冬。お前、まさか・・・」
部屋には一人千冬が上着をハンガーにかけていた途中で、カッターシャツ姿であった。俺はズンズンと彼女に近寄る。
俺は千冬のことなど気にせずに彼女の腕を掴む。
だが、千冬は反射的にその手を払い退け、俺の襟首と袖に掴んで思いっ切り床へと叩きつける。
所謂、背負い投げというものをしてきた。
いつもの俺ならばそう簡単に背負い投げを受ける訳がないのだが、興奮していたのか思いっ切り床に叩きつけられる。
しかし、その衝撃もあってか、俺はいつもの冷静さを取り戻して俺を無力化したと勘違いしている千冬に飛びかかる。
「ぐっ!」
「おおお!」
千冬を床に押し付け、強引に彼女のシャツを引き剥がそうと引っ張る。そして、俺は見た。
彼女の背中に見える傷の跡を。
そこまでして、千冬は諦めがついたのかぐったりと力を抜く。
「・・・・・・」
俺は黙って千冬の背中から離れた。
「一夏が言っていたよ。姉貴の背中に傷痕があるってな。お前・・・」
彼女はシャツを着直しながら立ち上がる。
「笑えるだろ?あれだけ過去とは決着がついたと言うのに、私はこうしてこの体に刻んでいるんだ。矛盾しているにも程がある」
俯きながら悲しげに言う。
「その傷を見られたなら、もう話しても構わないんじゃないか?」
「それは、難しい話だ」
「責任を感じているのか?」
その俺の言葉に千冬は一瞬顔が強張る。
「わ、私は・・・」
「お前だけじゃないだろ?多分、俺のほうがもっと多い。多くの・・・命を奪った」
俺はこの手で実際に何十人という人を殺した。正確な数字はもう覚えちゃいない。だけど、それでもこの手で殺した数は千冬を上回っている。
「それに負い目に感じているなら「そうじゃない、そうじゃないんだ」・・・・」
千冬は片手で顔を覆い、もう片方の掌を見る。
「私は一夏に、弟に嫌われるんじゃないかって、軽蔑されるんじゃないかって、思うんだ。あいつは見たまんまの奴だからな。世界はあいつが思っている程美しくないから。数など関係ない。私はこの手で人を殺した」
「だったら、余計話さないとダメだろうが。一夏に改めて現実を見させないと、あいつは強くなれない。それはお前だって分かっているだろう?」
「・・・・・・・」
「もし、軽蔑されるなんて思っているなら、それはあいつに対して失礼だ。お前と一夏の関係はもっと深くて根深いものなんじゃないのか?」
数秒して千冬はコクりと頷いた。
きっと、織斑一夏という男は姉の織斑千冬という存在によって全くの裏表もない真っ直ぐな人間なのだろう。だが、その他の男性にとってここ数年はあまりにも酷い状況だと思えるだろう。
女尊男卑のおかげで世界は変わった。
織斑一夏が変わった世界の表で生きた人間ならば俺はその裏で生きた人間だ。もしこの世界で強くなりたいと思うなら、表だけしか知らないならきっと彼は強くなれない。
人は光と闇。どちらも理解した上で強くなる。俺を含めて。
「おっ、来たな」
明日はクラス代表決定戦という大事な決闘を前に俺は一夏を部屋に呼んだ。
「なんですかー、先生。明日は決闘があるんですけど・・・って、千冬姉までいて何かあるんですか?」
一夏は俺の部屋に入るなり何故姉がここにいるのかと尋ねてきた。
「まぁ、座れ。今日は俺と千冬から少しだけ話があってな」
「話?」
「お前にはISのことついて何も知らなさすぎだが、もう一つ教えなければならないことがある」
千冬のその言葉に一夏は首を捻った。
「そうだな。一つはこの私の傷のこと。それと、歴史に残らない、とある戦いだ」
はい、次回もよろしくお願いします。