時を同じくして蓮花以外の専用機持ちたちは暗い表情を見せながら椅子に座っていた。
「ねぇ、本当にあんたたちはこれでいいの?」
ナターシャがそう言う。
「ナターシャ、怖かったら別に逃げてもいいんだぞ?」
千冬がイタズラのようにそう言い返した。他の者たちも同じのようでゆっくりと頷いた。もはや自分たちの行く末は決まっていた。
だが、不安だったからこそナターシャは敢えて口に出したのであった。
「ふぅん・・・まぁ、いいけど。だったらさぁ、千冬とマギー、それと絵里はそろそろ答え出さないといけないんじゃないの?」
と、ナターシャはそう言った。ナターシャの言葉にピンとくるものがあるのか、三人は明らかに動揺していた。
「ナターシャ、今私たちはそういう話をしているのではないのだけれど?」
次に金髪のポニーテール娘、綾瀬絵里がそう言った。彼女はロシアとのクォーターであり、ロシアの代表候補生として身を置いていた。
「絵里。こんな状況だからなんだけど。このままいけばこの中の誰かが死ぬかもしれない。だからこそ、今自分の思いを隠すと一生後悔すると思うんだけど・・・」
「っ・・・そ、それは分かっているけど・・・」
「ナターシャ、そこまでにしておけ。私たちは恋愛戦争をしているのではないんだぞ?」
絵里の言葉にちょいちょい口を挟むナターシャなのだが、それを千冬は遮る。のだがナターシャは素直にならない彼女らに若干の苛立ちを感じる。
「何それ?二人ともつまんないこと言うわね。あーあ、これじゃぁ蓮花が可愛そう」
「どういう意味だ!」
「そのまんまの意味だって言ってんの!あんたらふざけてんの?もう私たちは学生なんて気取っていられないの。死んだらそれで終わりなんだよ?このまま思いを伝えられないまま死んじゃうかもしれないんだよ?」
「「「・・・・・・・」」」
そこまで言って三人は押し黙った。
それを見ていたウィンディが口を開ける。
彼女の本名は、ウィン・D・ファンション。イギリスの代表候補生であり、金髪のショートカットの女性である。回りくどい言い方や下手な表現はめんどくさいとのことである。
「まぁまぁ、そこまでにしておいてやれ。皆、状況が突然過ぎてうまく掴めていないところが多いすぎるんだ。いきなり死ぬかもしれない状況なんて、私でも混乱するからな。まぁ、ある程度わかっていたことだが」
「まっ、ウィンディがそういうなら別にいいけど・・・言っとくけど、私は蓮花にフラれた。けど、諦めた訳じゃないんだからね」
ナターシャは少し負け惜しみを言うように三人にそう言った。ナターシャは蓮花にフラレた。これは学園でも割と有名なことであり、周知の事実であった。
だが、千冬、マギー、絵里の三人は結局今の今までズルズルと引きずって自身の気持ちを告白出来ずにいた。
三人ともそれを今まで一度も後悔はしていなかったが、勇気を出して前に出たナターシャに一種の嫉妬ともいえる感情を持っていたのは間違いなかった。
だからこそ、ナターシャは三人のためにもそういった。
死んだら、思いは伝えられない。と。
「はぁ・・・ちょっとトイレ行ってくる」
そう言ってナターシャは席を外す。
「自分の気持ちか・・・」
最初に立ち上がったのはマギーであった。彼女の瞳にはしっかりとした執念、いや確固たる意思の炎が見えた。
「マギー・・・あなた」
「ごめんなさい、千冬。絵里。私はあなたたちのように器用に生きることは出来ないわ。だから・・・もう、私の昔話はおしまい」
彼女は一人ドアを開けてる。
「そうか。分かったよ、マギー。私にそれをとめる権利はないからな」
「そうね。私も千冬と同じ意見よ。限られた時間しかない以上、確かにナターシャの言うことは一理あるわ。私は思いを伝えたナターシャに嫉妬していたのかもしれない」
ドアが閉まり、部屋の中は少しだけ静けさを取り戻した。が、直ぐにウィンディが口を開く。
「さぁ、私たちは私たちの出来ることをしよう」
「そうだな」
「そうね」
部屋を出たマギーはトボトボと歩きながら蓮花のことを考えていた。彼との出会いはとてもおかしなものであった。
入学して周りは日本人ということもありマギーは少し距離を取っていた。友人も作らず、一人孤独に生活していた。
一つ気がかりだったのは唯一の男性操縦者である蓮花のことであった。
物珍しさに彼女は時折顔を出してみたりして、その顔を拝んでいたものだ。それなりに顔はいいほうだと思ったが、学園には男を毛嫌いする生徒も少ないわけではない、彼は蓮花は彼女らと何度もぶつかりあっていた。
初心者だったからこそ、決闘では何度も敗れていた。だが、彼は諦めなかった。専用機持ちしか通用はしないであろう生徒会戦にだって出場していた。
非力なIS操縦者、劣等生、所詮は男・・・当時は皆そう思っていた。
何度も何度も何度も練習を熟し、熟練度を高めていく。
マギーが蓮花に声をかけたのはアリーナで一人倒れている時だった。夜ということもあって周りには誰もおらず、彼女は一人で蓮花を保健室へと連れて行った。
それからだった。蓮花とマギーがよく話すようになったのは。そして、いつの間にか二人の周りはそれなりのメンバーが集うようになり、楽しい時間をマギーは過ごした。
そして、誰もが予想しなかった。
生徒会戦 優勝 浅乃蓮花
彼は学園最強の名を手に入れた。
浅乃蓮花はその執念と努力によってIS学園最強の座を手にれたのだ。
「蓮花、ちょっといい?」
丁度、瑞鶴の調整が終了した蓮花にマギーは声をかけた。
「ああ、どうした?」
「その・・・実は蓮花に言わないといけないことがあるの」
若干もじもじするマギーは数秒して意を決したかのように蓮花にいった。
「私はあなたのことが好き。ずっと・・・ずっと好きだった」
「俺は・・・」
「待って・・・その先はこの戦いが終わってからでもいい?例え蓮花の答えがなんであれ、私はここで生き残れる気がするから」
「・・・そうか。なら、絶対勝つぞ?」
「・・・・うん!」
「既にこの区間全体には避難命令を出しているが、我々がどれだけ被害を最小限に留められるかが問題だ。奴らの機体は恐らく第一世代機陽炎、第二世代機のストライク・イーグルだろう。他にも最新鋭機が確認されている。十分に気をつけろ!」
ブリーフィングが終了し、蓮花たちは遊撃隊ということになっていた。一個小隊としては一機多いが何も問題はなかろう。
「敢えて敵を基地の地下内にいれてそこで倒すか」
「随分とこちらに損害を負わすようなことになったが、それでも市街地で戦闘をするよりかはいい判断だろう」
「地上へのゲートは北と南に一つずつ、要人用シェルターに向かうにはどのみち、間にあるこのメインハンガーを通らなければならない。どちらもな。そこで、押し留めるんだ」
蓮花と千冬が今回の作戦について簡単に考察をしてみる。戦場が二つあるなら遊撃隊はどちらかに別れて戦った方がいいと蓮花は考える。
「っていうことだ。俺たちは二手に分散して戦った方がいいだろう。分担はどうする?」
すると、ウィンディが言う。
「ここは私と絵里、それとマギーが南を与ろう。蓮花と千冬、ナターシャが北ということで構わないな?」
なるほどなと頷けることなので、蓮花たちは頷いた。
所定の時間が来たので全員それぞれの持ち場へと移動するのだが、蓮花は今一度全員を集めた。
これから始まるのは戦争であり、学園の模擬戦などではないから。
しかし、自分たちがいつかこうなるのはもう随分と昔からわかっていたことであった。皆、それぞれその覚悟があってこの場にいるのだから。
「なぁ、俺たちが前に約束したことって覚えているか?」
すると、それに反応して絵里が言う。
「それは、『こういう状況になったら』と言って皆で約束したこと?」
「ああ、そうだ。いつかはこういう日が来ると思っていた・・・分かっているよな?」
蓮花のその言葉に全員が頷く。
戦争において絶対生きて帰るなんて言葉は自身の励ましになり、それでいて最高の生きる意味であろう。
だけど、それが成就するのは難しい。そんなに戦争は甘くはないから。それでも蓮花はこの言葉を口にした。
「絶対皆で生きて、戦い抜く」
はい、今回は短かったですね、すみません。
次回はいよいよ、亡国VS政府といった形になります。
時系列は過去話になっているので、今回の戦いでは第三世代機は登場しません。
第一、第二世代機が主に出てくるんですが、原作開始時のように、ラファール、打鉄は登場しませんがご了承ください。
ここまでのIS
高等訓練機 吹雪
藍色のカラーリングで全体的にシャープは装甲を持っている。これといった特徴はないが姿勢制御が難しく、まさしく高等訓練機である。コツを掴めば高い機動能力を手にする。
日本帝国軍IS部隊次期主力機 瑞鶴
白のカラーリングでパイロットの安全性を重視しており、若干の機動性を欠いているも、スペックはかなり高い。特に登録していない同機の武装を使うことが出来、仲間が倒れてもその武器の使用が可能。
ストライク・イーグル
アメリカで開発された第二世代機。機体の凡庸性ではな吹雪を超えているが、若干の出力負けをしているので、長期戦になると不利になる可能性があるがそれもパイロットの腕次第。
試作機 陽炎
青のカラーリングでスペックだけでは吹雪と同じであるが、安定性はかなり向上している。