当方小五ロリ   作:真暇 日間

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66 私はこうしてペット達を褒める

 

 お燐は、自分を沢山撫でてほしいと私に願った。そして私はつい先日にその願いを叶え、沢山沢山撫でてあげた。

 そして、少し時間は空いてしまったが今度はお空のお願いを聞いてあげるべきだろう。

 

 お空のお願いは、私にたくさん撫でてもらうこと。ただし、お燐も一緒に三人で。そんな可愛らしいお願いをされてしまったら、叶えてあげない理由はない。もちろんちゃんと仕事をしていたご褒美としてなのだから、私がちょっと頑張って時間を詰めればいけないけれど、そんな物は苦労のうちには入らないだろう。

 そう言う訳で、お空とお燐を私の部屋に呼んだ。お空は自分の言ったことを忘れているようだし、お燐も自身へのご褒美はもう受け取り終わったと思っているので少しびくびくとしているようだけれど……そんなに怖がらなくてもいいんですけどね? 実際に痛いことをしたり苦しいことをしたりするつもりはないんですから。痛いのも汚いのも苦しいのも、私は好きではないですし。

 ……たまに食べたくなることはありますが、そういう時は外の世界の人間の感情をこっそり頂いています。今までで一番記憶に残っている味は、被虐の快感でしたね。人間の味覚に直して言えば……痛いほどに辛く、同時に忘れられないほどに旨味が詰まっている、といったところですか。大体の感情と言うのは覚妖怪にとっては美味しいものなのですが、個人の好みというのもありますから。

 ちなみに、在りし日のこいしはかなりの偏食家で、自分が今その時に食べたい感情しか食べようとしなかった。今では感情の代わりに人間が食べるのとそう変わらないものを食べたり、あるいは妖怪が食べるものと同じものを食べたりしているけれど……覚妖怪としてはかなりの変わり者という扱いを受けることは間違いない。なにしろ本来他者の嫌悪感や忌避感、恐怖心などを主食としているところを大して栄養にもならない人間の食料なんかを食べているのだから。

 ……美味しければいいと思うんだけどね。概念的には人間を食べているのと同じような効果を得られるようになっているから、妖怪としては不味いと感じるようなことは無い筈なんだけれど……。

 

 けれど今はそれを考えることより重要なことがある。簡単に言ってしまえば、過去を想うより今を見つめることの方が大切だってこと。過去を本当の意味で取り戻すことなんてできないのだから、できることから見つめていこう。

 

「そう言う訳だから、おいで。お燐は二回目だけど、気にしないでいいからね」

「わーい!」

「え……でも……」

「ほら行こうよ!さとり様ー!」

 

 ぴょんと私の胸に飛び込んでくるお燐とお空。空を飛んでいるため重くはないけれど、代わりに結構な勢いがついていたので咳き込みそうになってしまった。それを押さえ込み、お燐とお空の頭を抱き寄せて一緒に撫でる。お燐は……まあともかく、お空の胸はかなり大きいので正直背中に手を回して抱き締めようとすると邪魔なことこの上無いのだけれど、頭なら全く問題ない。

 お燐も結構ある方……と言うか、胸の格差で言うと一番ぺったんこなのは私だから私から見れば誰も彼もある方に見えるのだけれど、それでもお燐は結構ある方なのだけれど、今回はどちらかと言うとお空が主体だと理解しているようでさっさと動物形態になってくれているのであまり問題はない。

 私は膝の上に身体を乗せたお空を撫で、私のすぐ隣で丸くなったお燐の身体にも触れる。人型の時の指に吸い付くような柔らかでしっとりした肌も捨てがたいけれど、獣型の時のふわふわですべすべな毛皮の感触も素晴らしい。女の子らしくしっかりと手入れしてあるようだ。

 対してお空はそう言ったことにかなり無頓着だ。お風呂は文字通りに烏の行水だし、髪だって軽く拭いて放置するか、仕事場の熱で一気に乾燥させてしまう。妖怪だしそんな風に手荒く扱っても髪や肌にはあまり影響しないのがそう言ったことに拍車をかけているようだけれど……裸で家の中を歩いたり飛び回ったりしなければ私だって叱ることはない。男性が居るならともかく、女性しかいない現状においてならば、下着姿までならまあ許容範囲内ではある。私は恥ずかしいので下着姿で歩き回ったりはしないけれどね。

 そんなお空は、頭を撫でられるのが好きだ。耳ではなく、頭。ゆっくりと抱き締められるように撫でられると安心したようにえへへと笑うのだ。

 それから……これは元が鳥類だからなのか、それともお空が単に好きなのかはわからないけれど、唇を指で上下から挟まれるとちょっと嬉しいらしい。他の鳥類なペット達はそんなことはないので恐らくお空の好みの問題なのだろうけれど……いったい何を求めているのだろうか。私にはよくわからない。無意識相手では全くわからないけれど、お空のように思考回路が凄い方向に向いてしまっている相手と言うのも読み取りにくいものだ。

 正確には読み取れないことはないのだけれど、読み取った直後に考えを変えられたり、あるいは明らかに奇妙な方向に結果が飛んでいってしまうために読みきれない。

 ……まあ、それも今こうしてお空を撫でることに関して言えば全く問題ないんですけどね。ただ撫でられたいところを教えてもらったり、触れられたい場所を聞き取ったりするには全く問題ない。駆け引きは……まあ、ちょっと焦らすくらいにしか使うことはないし、そのくらいなら簡単にできる。特にお空が相手なら簡単だ。

 

 ……ちなみに、純粋な駆け引き等と言う部類で一番手強いのは八意思兼神永琳か八雲紫のどちらかだろう。勿論色々と姑息な手を使うことで八雲紫はかなり楽な相手になるのだが、しかしそれでも実力行使されれば私のような弱小妖怪など簡単に殺されてしまう。私が八雲紫に勝つには、相手の油断を付いた上で一瞬で殺害しなければならない。妙な手心を加えて相手が生き延びてしまえば、こちらに勝ち目はないのだ。

 そう、発情期のお空やお燐の相手をする時のように、一瞬で決める。そうでなければやられてしまう。それが嫌なら、一瞬で!

 ……お空やお燐のあれは、回数が多かったり異様にねちっこかったりするので大変なんですよね。私ばっかり疲れますし。

 

「……うにゅ? さとり様?」

「……ああ、いえ、ちょっとした考え事ですよ。気にしなくて結構です」

 

 私はそう囁きながら、動物形態になったお空をお燐と並べて膝の上に乗せ、撫でる。お空の羽は柔らかくてきめ細やかで……あんな風にしかお風呂に入っていないのにどうしてこんなにも綺麗なのか不思議になってくる。

 右手でお空の翼の付け根を優しく揉み解し、左手でお燐の尻尾の付け根を擽るように。お燐とお空はこれが好きですからね。お燐の場合は尻尾の付け根を擽るよりも耳の穴に舌を入れて奥まで舐めてあげると可愛く鳴いてくれるんですけどね。

 こうして私は私のペット達をたくさん可愛がる。

 たくさん撫でてあげて、疲れを取るために筋肉を解してあげる。

 たくさん話をして、精神的に溜まったものを吐き出させてあげる。

 たくさん甘えさせてあげて、生物として捨てることのできない欲を発散させてあげる。

 いつも構ってあげられないから、こうして構ってほしいと言うサインを見かけた時くらいは、たくさんたくさん構ってあげる。飼い主として、大切なペットのためにせめてこれくらいはしてあげないと。

 

 愛情を込めて、私はかわいいペット達のことを撫で続けた。

 




 
 ※さとりんはノーマルです。

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