当方小五ロリ   作:真暇 日間

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 連続投稿2/12です。


72 私はこうして外出を目指す

 

 とにもかくにも私は一度外の世界に出なければいけない。その為には他のオカルトボール所持者を打倒し、オカルトボールを集める必要がある。

 近場に居るオカルトボールの所持者は、こいしとこころ。けれど私はこいしともこころとも戦う気は無い。となると、博麗の巫女、白黒の魔法使い、聖徳太子、私のオトモダチ、白蓮和尚、尼入道、二ツ岩大明神、河童さん、不老不滅の妖術使い、小人族の姫、茨木童子、クトゥルーの狂信者。この十二名の誰かからオカルトボールを集めなければいけないわけだ。

 

 ……とりあえず、集めなければいけない個数は七つ。このうち話し合いでオカルトボールのやり取りができそうなのは、こいし、こころ、狂信者、河童さん、私のオトモダチの五名。私の分を一つとして、出入り口の前に陣取っているのが……茨木童子。合計七つ。

 よし、それじゃあ近場から行くとしよう。近くに居るのは……こころだ。どこかに出掛けてしまう前にオカルトボールを頂いてしまおうか。

 

 

 

 □

 

 

 

 あ、ありのまま今起こったことを話したいと思う!

『私はさとりさんを見つけたと思ったらベッドで寝ていた』

 

 な、何を言っているのかわからないと思うが私も何が起きたのかわからない。超スピードとか催眠術とか空間転移とか時間停止とかそんなちゃちなものじゃ断じて無い!もっと恐ろしい覚妖怪の実力の片鱗ってやつを思い知らされたような気がする……!

 

 ……うそですごめんなさいぜんぶおぼえてますはずかしくてそんなことをいっちゃっただけなんですゆるしてくださいおねがいしますなんでもしますから。

 実際には、あるプロレス技をかけられただけで身体には傷一つつけられていない。ただ、精神的に大きすぎる衝撃を受けて気絶してしまった。あんな技考えたの誰だよぉ……?

 

「ちなみに技の名前は『リップロック』です。精神的な衝撃を与えやすい技ですから、私の能力でその威力を上げることが容易にできます。上げすぎると恐怖症になってしまったりもしますけどね。八雲紫とか」

 

 そう、リップロックとか言う技で、いきなり使われるとぉぉぉぉぉ!?!?

 

「あら、やっと気付いた。中々可愛らしい思考だったわ」

「さささささっささっさっりさん!?」

「ええ、私よ」

「いいっいっいいいっ!?」

「いつからここにいたかって? 貴女を寝かせてすぐ一緒に居たけれど?」

「どっどどどっ」

「どうしてか? だってこころが可愛いんだもの」

「なっなっなななっ!」

「こころは可愛い。とっても可愛いわ」

 

 ……顔が熱い。きっと今、凄く顔が赤くなってるに違いない。絶対に顔が真っ赤っかだ。

 さとりさんはずるい。あんなことを簡単に言って、私をからかってくる。さとりさんはずるい。きっとさとりさんはああいう言葉を言い慣れてる。こいしやフラン以外にも言っている相手がいるに違いない。

 

「お燐やお空にも言っているから間違いではないわ」

「……むぅ」

「ふふふ……そんなにむくれないの。むくれてみても可愛いだけよ?」

 

 ぷくっと膨れさせたほっぺをぷにぷにとつつくさとりさんに毒気を抜かれてしまう。このほのぼのとした空気を相手に怒りを持続させることは難しいと言うことはわかる。例え、さとりさんがそれをわかっていてやっているんだろうとなんとなくわかっていたとしても、それでもついつい誤魔化されてしまう。

 

 ───やっぱり、さとりさんはずるい。

 

「ずるいだなんて、酷いわね。そんなことを言う口は……また、塞いじゃいましょうか」

 

 さとりさんはそう言って、私の両頬を手で挟んで視線を上げさせた。そして───私の意識は再び途切れることになる。

 

 

 ■

 

 

 

 こころとの戦闘(意味深)は終始私が優勢なままに幕を閉じた。今、私の前には『何故か』『不思議なことに』服がはだけ、『どうしてかわからないけれど』頬を上気させたこころが『理由はわからないけれど』『奇妙とも言えるほど』幸せそうな雰囲気のまま眠りについている。

 まあ、とにかく今回の勝負で私はオカルトボールを手に入れた。次に近場にいるのは……こいしだろうか。感知しづらい感情だけの存在がドアの外にいるのがわかる。

 

「……こいし。覗いているくらいなら入っていらっしゃい」

 

 ……数秒後、ドアが静かに開いてこいしが入ってくる。『不思議と』こころと同じように頬を上気させ、息を荒げている。『どうしてか』こころと同じような状態にあるが、『きっと』さっきまで扉の前で運動(意味深)でもしていたのだろう。正確にいつからかと言えば───

 

「……気付いて、たんだね」

「こころに感情をもらって以来、少しだけ分かりやすくなったのよ」

「そっか……いつから気付いてたのか、教えて?」

「そうね……こいしがドアの隙間からこころの声を聞いて、こっそりと聞き耳をたててみると中で私とこころが何をしているのかがわかってしまい、いけないと思いつつもついつい覗くことを止められなくて結局私に呼ばれるまでドアの前で色々とやっていたことくらいしか知らないわ」

「……むぅ……こころも言ってたけど、お姉ちゃんってばちょっと意地悪だよ」

「あら、ごめんなさいね。ついつい本能的にやってしまうのよ。他者の感情を励起させたがるのは覚妖怪の本能であって仕方のないものでもあるって許してくれないかしら?」

「……しょーがないなあ、お姉ちゃんは。でも、私にはその本能はよくわからないかな」

「? 何を言っているの? あなたがよく無意識にポーズをとるのはそのポーズを見た何者かの感情を煽るための覚妖怪の本能でもあるから、わからないと言うことは無いはずだけれど」

「え? そうなの?」

「そうなのよ」

 

 私がそう伝えると、こいしは嬉しそうに表情を緩ませる。残念なことにこいしのことに関しては心を読むことができないために何にそこまで喜んでいるのかはわからないけれど、感情を読んでどう思っているのかだけは知ることができるのだ。

 こいしは喜んでいた。何に喜んでいるのかはわからないけれど、確かに何かに喜んでいた。

 

「えへへへ……そっかぁ。私も覚妖怪なんだね」

「ええ、そうよ。第三の目を閉じようと、集合知と無意識の海を漂っていようと、貴女は覚妖怪で、そして私の妹であることには変わりないわ」

「ん~……えへへへ」

 

 こいしはベッドの上で身体を起こしている私に抱き着いて、目を閉じる。……この部屋は私の部屋ではなくてこころの部屋なのだけれど……そして私はそろそろお暇しようとしていたところなのだけれど……などと言う暇もなく、こいしは私に抱き着いたまま眠ってしまった。それを『戦闘不能』として扱ったのかどうかは知らないけれど、こいしの持っていたオカルトボールが私の下に飛んできたことで目的自体は果たすことができた。

 ……いったい何をもって戦闘とし、何をもって決着としているのかはわからないが……こころやこいしの例が全般に通用するならば色々とやりようはありそうだ。もしかしたら口喧嘩でもいけるかもしれないし、それどころかなにもしないでも相手に『まいった』等の言葉を言わせるだけでもオカルトボールのやりとりができるかもしれない。

 

 ……となると、魔理沙さんからオカルトボールを貰うのは簡単かもしれませんね。昔に書いて捨てられずにとってある某古道具屋の店主への恋文でも読み上げてあげれば以前と同じように敗けを認めてくれそうです。

 手を選ぶ? 弱者がそんなことできるわけないでしょうに。そんなことをして死んでしまっては元も子もありません。できる限り全力で、最大効果を得られるものを実行しなければ。

 ……この地霊殿を。家族を。そして幻想郷を守るためです。黒歴史を暴かれてしまってください。その黒歴史は私が効果的に活用させていただきますのでご安心を。

 例えば……香林堂に売ると言うのはどうでしょうね? わざわざ紙を非常に高価かつ魔導書のような効果もつけられるようなものに書き写してしまえば……きっと中身をしっかりと読んでも買い取ってくれることでしょう。ちゃんと肉体の保護の魔術を組み込んでおけば身に付けておいてくれるでしょう。

 

 ……その場合、名前は恐らく『護符』として扱われることになるでしょうが、説明文に『霧雨魔理沙が幼少の砌に想いを込めて書き上げた恋文が魔力を吸って護符となったもので、身に付けている者への防御を行う』とでもあれば……まあ、少なくとも捨てることはなくなるでしょう。いつでも懐にしまっておいてくれれば、なんやかんやでくっつけて見せますけどね。

 

 ……そうそう上手くは行かないでしょうけど。

 

 


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