当方小五ロリ   作:真暇 日間

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 連続投稿3/12。同時進行の聖者編となります。


貴人聖者は状況を聞き、世界を救うと動き出す○

 

 像の前に跪き、祈りを捧げる。偉大なる神に我が祈りを捧げ、私が正しく在れることを願う。

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 私がそう言葉にする度に、彼の神の神威が像より放たれ教会を満たす。その神威は私を含む全てに浸透し、神威にて私を満たす。

 私が正しく成っていく。正しき場で、正しき祈りを正しき神に正しく捧げば正しくそうなるのは当然のこと。つまりこれこそが正しいことなのは間違いない。

 そう、正しく在ることは正しいことであり、正しくないところを正すのもまた正しきことだ。

 

 そして、現在この幻想郷に起きている異変は正しくないことだ。正しくないことは正さなければならない。かつての『私』が起こした異変と同じように、何者かの手によって正しき姿へと戻さなければならない。

 ……しかし、私の能力は広範囲には使うことができない。故に、正しく在るために必要なことを為さなければならない。

 

「……教祖様。私も、教祖様と同じようにこの幻想の楽園をあるべき正しい形のまま保持させるべく行動しようと思います」

「……そうですか。わかりました。……それでは、私は別の方に融通してもらって動こうと思います。くれぐれも気を付けるのですよ?」

「委細承知しております。」

 

 教祖様に伏して奉れば、心優しき教祖様は私の行動を許してくださる。偉大なる彼の神の足元に座し、私を見下ろすその姿。私はその傍にて平伏し、許しを与えられたことに感謝を示す。

 

「……実に利口な思考ですね。嫌いではありませんよ」

 

 平伏す私の頭に柔らかなものが置かれ、ふわふわと髪が撫でられる。それは母親がいとし子の頭を撫でるような、とてもとても優しい手つき。暖かく、心に燃料を注がれるようだ。

 

「……それでは、貴女の持つその石ですが、それは失ってもしばらくすると戻ってくるようです。しかし、失うたびに時間の無駄はできてしまうため、できれば失われないようにすること。それと、七つ集まったら博麗神社に行きなさい。そこにいる仙人に話をつけておきますから、その穴を通ってその先にいるものと話をする。それが必要なのです」

「はい。お任せください、教祖様」

「それと、貴女の能力は非常に強力ですが、強力すぎるが故にある程度抑えて使いなさい。結果だけを正しくすることで満足するのではなく、根源から正しくすることが必要な時にはその能力は時に障害ともなりえます。全力でその能力を使うのは、この教会の中だけにしておきなさい。そうでなければ貴女自身が異変と認識され、博麗の巫女だけでなく無数の妖怪が貴女を殺害しに来るでしょうからね」

「肝に命じます」

 

 そう答えると、ふっ、と髪に触れていた熱が消えた。顔を上げてみれば、そこに広がっていたのはいつもと何ら変わらない神殿の景色。彼の神の像があり、私が正しくした台座と教会が静かに佇んでいる。

 ……ああ、もう行ってしまわれたのか……と少し落ち込み、しかしすぐにまたやる気を出す。何故なら私にはやらなければならない事ができたからだ。

 この幻想の郷を正しいままに。幻想を否定する世界と一つにさせるようなこともなく、正しく存在する命を穢れと呼んで忌み嫌うような月人や天津神のような者の都市に塗り替えさせてたまるものか。

 それに天津神には、鬼人正邪を切り離した存在が居る。その存在は鬼人正邪から貴人聖者となった私からしても好意的とは言えない存在だ。何しろ、あれが力の大半を鬼人正邪から持っていってしまったせいで鬼人正邪は自身の能力を満足に使うこともできず、そしてそんな状態であってもかつて存在した自身の力と現在の自身の力の差異に感覚がついて行かず、あんなことまでしてしまったのだから。

 そのお陰で私は生まれ、そして彼の神に仕える神官として生まれ変わることができたのだが……だからと言って罪が消えたわけではない。

 罪には罰を。あの女……天探女より別れたもう一人の私……稀神サグメ。半身に行く分の力も奪い、自身が月に行くにあたって不要となった罪と穢れだけを集めて固めた綺麗なだけの大罪人。 罰が当たったところでおかしいことは無いだろう。

 では、これより私は正しく在るために歩を進めよう。教祖様はこの教会の外において私の能力の使用を制限したが、しかし私自身に対しての能力の使用は制限することはなかった。ならば私が私を正しくすることにいったい何の問題があろうか。否、問題など在りはしない。

 今更サグメに対して思うことなど無い。鬼人正邪がいくら苦労していようと、私には関係の無いことだ。

 ただ、罪を他人に被せると言う行為は誉められたものではない。良い行いではない。間違っている。───正しくない。

 ならば私がそれを正そう。今回の異変もサグメが関わっていると言うのなら、まずはそれから正して行こう。

 

 私は祈る。彼の神、偉大なる水神、ルルイエに眠る大神、クトゥルフ様へ。クトゥルフ様の姿を象る像を通し、祈る。

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 五度、彼の神に捧げる祝詞を唱る。その度に私に彼の神の神威が浴びせられ、私の在るべき姿を教え込まれる。

 そう、私はこれが正しいのだ。稀神サグメでなく鬼人正邪でなく、ましてや天探女でもない。貴人聖者。それが私の在るべき正しい姿。正しい結果。それを塗り潰そうとするもの。正しき現実を独善によって押し潰し、排斥しようとする者。それらは正しくはない。

 正しくない相手。ならば私は正しくするのみ。さあ進もう、私の思う正しき道のために。正しき信仰のために。正しき生のために。

 そのために私は地底を飛び出す。必要ならば私はどこまでも進もう。どのような事でも成そう。我が信仰のための行為を正しきものとするために。

 まずは近くにいるあの石を持つ者と戦おう。戦うと言う行為は、生きるためには必要なもの。その全てにおいて正しいと言えるものではないが、戦わなければ生き残ることができないのならば戦うのも仕方の無いことだ。生きるために行われた争いに罪が生じると言うのもおかしな話だが、死んでしまえばそれはそれで罪となる。ならば戦うことは悪ではないし、間違ってもいない。正しいかと言われれば首をかしげるが、必要ならば戦わなければ。

 そして初めに見付けたのは、私が鬼人正邪であった頃に散々追いかけ回してきた何人かの内の一人。白と黒の魔法使い。……今では白黒と言うよりも青白と言った方が良いような色合いをしているが、当時はしっかりとした白黒だった。

 彼女はどうやらオカルトボールと呼ばれている物を持っていて、なおかつ集めようとしているらしい。集めた結果どうなるかは噂でしか知らないのだろう。私が聞いた話では、実行犯の狙いとしては幻想郷を外の世界と繋げるために結界を打ち破ると言うもので、実行犯だけでなく運命すらも操ろうとしたその黒幕は幻想郷を月の都で上書きしようとしていると言う。

 どちらにしろ、幻想郷の危機であることには変わりない。だと言うのにこの白黒魔法使いは……なんとものんびりしているものだ。

 まあ、若いのだから時間はたっぷりある。若いうちは色々とやりたいようにやるべきだ。私のように産まれて間もない訳ではなく、自身で考え、自身で行動でき、自由に動くことができるのだから。

 親に逆らい、自分の思う通りに動く。それは生きるものとして当然だ。親を大切なものだと思う動物は、人間くらいのものだ。神や悪魔と言った存在は、人間の概念によって一部作り替えられてしまった存在以外は親を大切なものだと思うことは少ない。なにしろ多くの神と言うものは人間あるいはそれ以外の存在によって観測される理不尽だったり理解不能だったりする現象へ向けられる畏怖や恐怖といった感情などから生まれてくるのだから、そんな無駄なものが存在するはずもない。

 

「こんばんは」

「……おいおい、誰かと思ったらお前かよ」

「一応、別人なのですけどね」

 

 私がいつも通りの緩やかな笑顔を浮かべ、彼女が挑戦的な笑顔を浮かべる。そして、私達は空の上でぶつかり合った。

 


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