当方小五ロリ   作:真暇 日間

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80 私はこうして異変を始める

 

 さて、それでは……私はこれより異変を起こす。しかし、これは決して誰にも気付かれてはいけない。数十年、あるいは数百年スパンで行われる変化。この世界の在り方をたったの百年程度で変えるのは難しいが、できないことではない。何しろ力づくで『はいこんな風な新しい理論が見つかりました』とやってしまえばそれで終わりだ。

 問題は、それを(・・・)誰にも(・・・)気付かれないように(・・・・・・・・・)やると言うことで、誰かが気付いた時にはすでに世界がその形になっているか、あるいはその流れが止められないようになっている必要がある。

 行動を邪魔されないようにするならば、一番の方法は私自身の存在を誰にも知られないようにしたまま行動するのが最も理にかなっている。知られていないことで邪魔される方が知られた上で邪魔されるより遥かに良い。頻度はともかくとして、効果的な邪魔が入る可能性がぐんと減る。

 

 ……私の事を知る存在は殆どが幻想郷に住んでいる。その上、外の世界に残っている私を知る存在は殆ど人間に関わろうとはしていないか、あるいは存在を保つことができずに消えている。

 そういった点では有名どころの悪魔や神と言うのは早々消滅することはないと言うのは少し羨ましい。私は私で私の存在を認識させ続けることで外の世界でも消えないでいられるが、なにもしないでも存在を保てると言うのは非常に羨ましい。

 まあ、最近私も外の世界に端末を手に入れたので私が外に出なくとも外の世界に干渉することができるようになったんですよね。少し手順を踏みはしますが、そう不便でもなくなった。結界を抜いて外の世界に干渉するのは難しくはないとはいえ、回数が重なると時々面倒にも思えるのだ。

 けれど端末を手に入れてからはそんな面倒もなくなった。少し手間はかかるけれど、ちゃんと手入れをしてやれば世代が変わっても同じように使うことができるのだから、そのほんの少しの手間を惜しむようなことはしない。一手間で使える年数に相当な差が出てくるのだから、もったいない。

 

 色々と言葉にしてみたけれど、私がどうして異変を起こそうとしているのかという理由はまた別にある。

 

 確かに私は外の世界に再び幻想の種を蒔いた。時間はかかるだろうが、おそらくはこれで再び幻想が世界を席巻する時代が来るだろう。そうなれば当然、新たな神も産まれてくる。

 私の中に居る、無数の邪神や悪神も、だ。

 

 私だけならばまだいい。しかし現在、世界には狂気神話の邪神の一柱、クトゥルフの狂信者が存在する。その信仰は恐らく、長い長い時間をかければ外の世界の太平洋に沈んだ海底都市とそこで眠りにつく邪神を生み出す可能性が非常に高い。また、狂気神話は外の世界ではゲームとして遊ばれているが、魔法を研究していれば必ず一度は人造の神の研究に辿り着くものだ。

 その時に作られる神の元がユダヤ教やキリスト教の旧約・新約聖書の神であるならばまず問題はない。自身と全く同じ存在を認めないという本能により、かの神はその存在を天罰によって滅ぼすことだろう。

 しかし、理性を失った神や破壊という現象から人間が見出した破壊神が雛型になってしまえばその暴走はまず間違いなく止まらないだろうし、制御もおそらく非常に難しくなる。最悪の場合、存在しなかった狂気神話……クトゥルフ神話の神格を元にして作られでもしたらたまったものではない。一柱でも作られてしまえばそこからは次々と作られていくことだろう。本人たちが作ろうとしなくとも、自身が存在しようがしまいが関係なしに過去に、あるいは未来や平行世界に干渉することのできる神も狂気神話には存在するのだ。

 

 だから、私は少しずつ世界を変えていく。狂気神話の全ての記憶が。全ての記録が。書物が。媒体が。この幻想郷の、この地底の、この私の頭の中に全て集積するように世界中の情報を流れを集めて私の思い通りの形に直していく。誰に知られるでもなく、誰にも知られぬように。

 決して誰にも知られてはならないし、知られてしまったならばその記憶を喰らって忘れさせるか―――殺して魂ごと喰らわなければならない。

 幻想郷は結界で区切られているため内側で誰がどんな神を信仰していようと外の世界でその神が生まれることもないし、トラウマとして狂気神話の神が記憶の奥底に刻み込まれていたとしても実際にその神が突然現れるということはない。そして信仰から生まれた神は、生まれたてあるいは生まれる少し前ならば私の能力によって問題なく喰らうことができる。だから私は外の世界に根を張るものに狂気神話の神をイメージだとしても見せたことはないし、これからも見せるつもりはない。幻想郷ならば即座に対処できることでも、流石に全世界となると広すぎる。常に全世界……宇宙の隅々にまで読心を行い続けるのは難しいし、できたとしてもその状態に慣れるまでは相当の時間がかかることだろう。その間が何年かかるかはわからないので、今は少しずつでも能力を常時発動しておける範囲を広げていく事にする。宇宙にはもう限りがないが、それでも無限に広がっているということはまずない。ならば宇宙のどんな場所であろうとも生まれたばかりの神話生物を殺せるようになるはずだ。

 それができるようになるまでは聖者には幻想郷の外に出ないでもらわないといけないし、こいしにこの事を知られるわけにもいかない。全生物、全存在の無意識と繋がりのあるこいしに知られてしまうと言うことは、その事を全生物が無意識のうちに知ってしまうと言うこと。TRPG風に言えば、出てくるキャラクター(PCNPC問わず)に例外なくクトゥルフ神話技能が1点存在するようになってしまうと言うことでもある。

 無意識のうちに誰もが知る神話生物のイメージから産まれた新たな神話生物など相手にしたくない。する気もない。享楽的で悪戯好きなどこにでも出てきては引っ掻き回していくアザトースなんて相手にすることを考えただけで頭痛がしてきそうだ。

 

 ……まあとにかくそう言う理由でこいしと聖者には絶対に教えることができない。知られるわけにもいかない。無意識に干渉されると非常に困るので今は全ての神話生物の知識と記憶を隔離した上で意識し続けているけれど……こいしの眼がもう一度開くようになってくれていればもう少し楽だったのだけどね。

 今でもこいしは以前に比べれば無意識のうちの行動が減り、代わりに無意識的な行動ではなく感情的な行動が増えてきた。縫い合わされた第三の眼が開くまで、あと少しと言うところまで来ている。

 できればしっかりと眼を治してからにしたかったのだけれど……やっぱり考えた通りには進まないものだ。

 それでも時期は来てしまったし、時計の針を逆に進めることも私にはできない。ならば私にできる最善の道を選び取るのみだ。今までと何も変わりはしない。

 

 ……できることならば、八雲紫にも、四季さんにも、霊夢さんにも敵対されないうちに全てを終わりにしてしまいたい。敵は少ない方がいいし、実質敵のような相手でも相手から見て私が敵対者でないと思わせることができればそれでも構わない。

 それがいったいどんな結果を導くことになるかは、神ならぬ私には到底理解の及ぶ範囲ではない。ただ願うのは、私の生きるこの世界がいつまでも楽園の体を保っていられるように、と言う事くらいだ。

 

 

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