当方小五ロリ   作:真暇 日間

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 日間二位……だと!?
 ありがとうございます。

 なお、作者は戦闘描写が苦手です。ご理解ください。


12 私はこうして正体不明と争う

 

 博麗神社には、食べ物と言うカテゴリに入れられる物が調味料と僅かな食材くらいしか存在していなかった。

 まあ、そのことは博麗の巫女の記憶からすでに知っていたのだから驚いたりはしないけれど、代わりに目頭は熱くなる。

 ……育ち盛りなのだからしっかり食べなさい、と言うのはやめておこう。どうもそれを言ってしまうと年寄り扱いされてしまいそうな気がする。

 実際に人間である博麗の巫女と比べてしまえばかなり年を食っていると言うのは認めざるを得ない事だが、それでもわざわざ年寄りだと思われたくはない。乙女とか言っていると色々な所からツッコミを受けそうだから何も言わないでおくとして、とにかく今は料理に専念しようと思う。

 

 と言ってもやること自体は実に簡単。まずは茸と細切りにした干し肉を水を張った鍋に投入。沸騰させないように気を付けておく。薪に関しては気にしなくともその辺りを走っていた木っ端妖怪を使って枯れ枝を拾ってきてもらったので問題ない。本人は神社の境内に入ったところで結界にでも触れたのかぼろぼろになって消滅しかかっていたが、まあ問題は無い。加減した想起で心だけを一時的に砕いてやったものを使ったのだが、結界に対しての恐怖心まで失わせてしまったせいで自滅してしまったようだ。

 結果として私は境内の端から散らばった薪をいくつか集めなければいけなくなったのだけれど、まあ仕方ない。これも私の失敗によるものだし、甘んじて受け入れようと思う。

 出汁はこれで大体いいとして、後は買ってきた野菜などを新鮮なまま保存するためにちょっと手水場の水を借りて野菜を水につけておく。あの場からここに戻ってくるには大分時間がかかりそうだし、先に時間がかかるものだけはやってしまおうと言うわけだ。

 未来の内容まで……やろうとすれば知ること自体はできそうだけれど、代わりにまた箍が緩みそうだ。壊れてしまっては間違いなく精神崩壊を起こすと言うのがわかるので、無理も無茶もするつもりはない。私はまだまだ死にたくはないのだ。

 

 灰汁抜きはそれなりに時間のかかることではあるが、私はあまり酷くなければ灰汁自体は一種の味付けのようなものだと思っているし、完全に灰汁を出し切るようなことをしてしまっては野菜が煮崩れてしまう。何事も程よいところと言うものがあるのだ。

 出汁に醤油と多少の酒精を加えるのと同時に、八雲紫に買ってきてもらった肉も同じように酒精に漬け込む。こうすると火が通った後も柔らかく仕上がるのだ。

 焼く時も同じようにすれば焼きあがった肉が柔らかく仕上がるのだが、地底では場所によっては気温で火が通ってしまうようなこともあるし、あるいはお空の出した火が強すぎて一瞬にして炭になってしまうこともある。実に悲しいことだが、まあそれも仕方がない。ペットの失態は飼い主の失態だと諦めることにしている。

 後は出汁に調味料を加えて火から降ろす。代わりに研いだ米と適量の水を入れた釜を竈にかけて、ご飯を炊く。灼熱地獄の熱を使った竈と違って地上の竈は使いやすくていい。

 

 ……さて、これで時間のかかることは最低限終えることができた。そして、ちょうど私に用のあるらしいお三方がすぐ近くにまで来ている。私は別にここの主と言うわけでもないのだけれど、私に用事があってきた私の客なのだからおもてなしはしておくべきだろう。

 たとえ、片方は明らかに私に害意があり、もう片方は怯えていて話すのが大変だと言う事実があったとしても。

 

 私はとりあえず、炊こうとしているご飯を無駄にする気はないためこれらの話をさっさと終わらせようと思う。まあ、できれば乱暴な手は使いたくないのだけれど……相手が初めからやる気満々ならば仕方ないと割り切ることにした。

 

 

 

 ■

 

 

 

「……私に用があるのでしょう? 正体不明の大妖怪さん」

 

 その小さく弱々しい妖怪に見えるそいつは、私のいるところに視線を向けて言い切った。間違いなく、私がここにいることに気付いている。しかも私の名前まで知っていた。

 私はその小さく弱く見えるだけの妖怪の前に姿を出す。けれど、こいつがどうやって私の正体を知ったのか、そしてまさか、私の名前すらも知っているのではないかと考えた。

 

「知っていますとも。貴女が考えなかった(・・・・・・)ので二つ名だけですがね」

 

 口元を抑える。しかし、私の口は全く動いていない。これは、まさか――――――っ!?

 

「ええ、そうです。貴女の考えた通りですよ。えぇと―――封獣ぬえ、さん?」

 

 こいつ、心が読めるのか!? と考えた瞬間、私の思考を肯定される。こいつは間違いない、絶対に私の思考を読み取っている。

 なるほど、確かにそれなら私の正体を知ってもおかしくはない。私の正体は私しか知らない正体不明。私以外の誰かが知るには多くの実験や理論の組み立てなどをして時間をかけて解き明かしていかなければならないところを、私の心を読むと言う方法で一瞬にして正体を読み取ったのか!

 

「そうなりますね。安心してください。私は別にあなたの正体を易々と話したりはしませんよ。貴女と戦うとなると、それは面倒なことになりかねませんしね」

「……証明してほしい」

「どのように? ……などと、聞くだけ野暮と言うものなのでしょうね」

 

 小さな妖怪の言葉に鵺は頷く。

 なにしろ自分は嫌われものの妖怪だ。一般的に悪事と言われることを繰り返してきたし、周囲の妖怪達とも折り合いはよくない。恨みを買っている自覚もある。

 だからこそ、もしもこの小さな妖怪が自分に恨みを持つ何者かに暴力などで脅された時に自分の情報を売ってしまわないか。また、そういった時に自分で自分の身を守れるのか。そういった事を確認したいと言う思いがあった。

 ……それに、もしも力が足りていなかった場合に問答無用で殺す事ができ、かつ自分が負けたとしても『確かにこれなら大丈夫だ』とでも言えば自分の命は守られるだろう、と言う打算も少しはあった。勝とうが負けようが自分に深いダメージは無く、勝っても負けても自分に益がある。

 そんなことを考えながら、鵺はさとりの後を追って空を飛ぶ。いきなりあんなところで戦いを始めれば、辺りにどんな被害が出るかわからない。そう考えれば、今のようにさとりが空を飛んでいると言うのは効率的に思えた。

 

「戦闘のルールはどうします? スペルカードルールによる弾幕決闘ですか? それとも本気の殺し合いですか?」

 

 殺し合いの方なら幻想郷の管理者さんを呼ばせていただきますが、と嘯く小さな妖怪に向け、鵺は自分のスペルカードを数枚付き出す。面倒だとは思うが、確かにこれが今の幻想郷においては力の象徴とも言える『遊び』だ。

 もしもそれを破ればどこにでもいてどこにもいないスキマ妖怪によって制裁を受けることもあるらしいし、まあこれも一つの戦いだと考えてもいいだろう。

 鵺が出したカードの数は十枚。それに対して小さな妖怪の出したカードの数は八枚。その内容がどんなものかはまだ分からないが、ただそれを見ただけでも鵺の背筋に嫌な汗が噴き出す。

 じっとりと肌が湿り、スペルカードを握る手に力が入る。

 

「それでは、始める前に済ませるべきことは済ませておきましょうか」

「……なにを?」

「『はじめまして、封獣ぬえさん。私は古明地さとりと言います。とても平凡な覚妖怪です』」

 

 ぺこり、と頭を下げるその姿に、鵺は一瞬毒気を抜かれてしまう。そして鵺自身も一応形だけではあるが頭を下げた。

 

「……初めまして、古明地さとりさん。私は封獣ぬえと言います。正体不明を基とする大妖怪です」

「ご丁寧にどうも。それでは、始めましょうか」

 

 古明地さとりはそう言って弾幕を張り始める。鵺もまた弾幕を張り、弾幕同士がぶつかり合い、干渉しあって相殺されていく。

 戦いはまだ始まったばかり。そして、その戦いを眺めるとある尼入道の恐怖の想起も、未だに始まったばかりであった。

 




 
 ※ただし今回戦闘があるとは言ってない

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