当方小五ロリ   作:真暇 日間

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 今回の話、一部死ぬほど疲れました。もうこういう表現絶対しない。
 また、一部が非常に読みにくくなっています。


月の兎は幻魔に抗い、地上の兎は息を潜める

 

 目の前にいる『これ』はなんなのか。そんなことを考える余裕もなく、私はただ濁流のように流れ来る弾幕を避けながらこちらも弾を撃ち込んでいく。

 しかし、私の撃った弾は一発も相手に当たることはなく、逆に相手の弾幕は威力こそそう高くないものの私の身体に何度も当たっている。

 今の私が撃つ弾は相手を殺せるだけの威力がある。弾幕ごっこに慣れてしまっている相手なら、私の撃った弾を避けきれなければ仕方ないと簡単に当たり、そして死んでいくだろう弾幕。それを『あれ』は平然と、余裕をもって避け続けていた。

 

「もう勝負はついているはずですが……いつまで続けるのですか?」

 

 私はそれに答えない。答えられない。『これ』が、私と同じ言葉を使っているなんてことはあり得ない。あるはずがない。あってはいけない。

 

 だから殺す。

 

『あれ』は私の能力が通用しない。

 だから殺す。

『あれ』は師匠達に勝ててしまう可能性がある。

 だから殺す。

『あれ』は危険だ。

 だから殺す。

『あれ』に勝てるモノは存在しない。

 だから殺す。

『あれ』は存在してはいけない。

 だから殺す。

『あれ』が存在しているということが許せない

 だから殺す。

『あれ』に魅入られた自分が情けない。

 だから殺す。

『あれ』が怖い。

 だからころす。

『あれ』にかかわわりたくない。

 だからころす。

『あれ』はいまならころせるかもしれない。

 だからころす。

『あれ』がわタしをみタ。

 だからころス。

『あレ』のなかミをみた。

 だからコろス。

『アレ』のナカみをしッた。

 だかラこロす。

『アれ』ヲころさナくちゃイケなイ。

 ダからコロす。

 

 ころすころすころすころすこロすころすころすころすころスころすころすころすころすころすころすころスころすこロすころすころすころすコろすころすころスころすこロすころスころすころすコろすころすころスころすころすころスころすころすこロすころすコろすころすころスころすころすこロすころすコろすコろすこロすころスころすこロすコろスころすこロすころすころすころすコろスコろすころスこロすコろすこロすころすこロすころスころすコロすこロスころすコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 赤い。

 いつの間にか見える全てが赤くなっている。

 『アレ』もあカい。

 アかい。

 ころス。

 あたルまでウつ。

 あたレ。

 うツ。

 ウツ。

 あたル。

 あカクなル。

 いたクハナい。

 ウごカナイ。

 アタル。

 うごカナい。

 イタクはナい。

 うteなイ。

 aたらナi。

 イたkuhaナい。

 

       おくつほあひしもごこじしてあよもいのあてわしつせは

     ちらちねかめしうめろゅぬゐのりうしうあゐたてきめし

    るいのがにさょいんすみいもこひわきりあのしおかてん

      あさあおうまうやなのょやすにめたはょれやはからさで

   たむじれももわださはうだこまさしうくがつもなにいも

       るいててれうたいいいがめしたまにすもわはうけげごし

   いこついくししたゆやけいはあにでれつたうだれだにに

       たわのたろわをいるきずきおいもきせかしまめばしそき

 みいにみにけひのしずれたしたまるかえにくだわたれれ

   はなおがぬあろはてつるいしかたこいずちしけたこだな

     なにいきらりっいくけさまょっあともだかしれしのけい

 いもうえれまてやだたきだうたっはきんづょどはみはど

  うかでてつせくださくがいさまてなえまいうせたをかう

      ごんがひきんれこいなみきまたいいてくてにめだひえか

  かじおかがあてわもいえたのわいていもくつてのろしさ

    ななちりかなあいうけないいらたもただるたさけってい

 いいるがくたりのたがいしういいあみせもえいだてかご

    いよあうれをがもたれのにこあこしもなうてごもくらに

       たわかすきまとおかにがたとっともなくこくののだでこ

   くいいれりもうちいふこくをてもうくなれれほにさなれ

    なこいめがれごてはれわなきいあごなっでたうすっいに

 いろたがこなざいいたいいきたっかっておのこらたとい

     あさくいくかいくやくいこなかたせてしわかうおおわち

  かれなたなっまのでなたわさっのないまりしだとんたげ

 いるいいるたすもすいいいいたにいくうからけるはしき

 

 

 

「無理ですよ」

 

 

 

 ぶちり、と意識を繋いでいた紐が切れ落ちたような嫌な音が私の頭の中から聞こえた気がした。

 同時に、あれだけ痛くて苦しくて死にたくて赤くて仕方なかったにも拘らず全く失われる気配のなかった私の意識が消し飛ばされるように消えていく。

 苦しかったのに苦しくなくて、痛かったのに痛みなんてなくて、動かそうとしても動かなくなっていた身体がやっと完全に動きを止めた。

 

 

 

 ■

 

 

 

(冗談じゃない……なんだよアレは!?)

 

 てゐは焦っていた。本当ならばこんなところで仕掛けるつもりなんてさらさらなかったはずだというのに、あの小さな妖怪を鈴仙が能力を使って見た瞬間に鈴仙が壊れ始めていた。

 自分の話を聞かずに草叢からその姿を見せ、そして真正面から。アレに向き合う。そして突然始まった、明らかに相手を殺すための弾幕の張られた弾幕ごっこ。

 女子供の遊びである、と言われていたそれは、初めからルールを守ろうとしていなかった鈴仙によって蹂躙された。同時に、相手の小さな妖怪の張った弾幕は本来の弾幕ごっこ用に張られたものらしく、当たったところであまり大きなダメージは入っていない。

 しかし、いくら一発一発の威力が低かろうが、弾のぶつかった回数が百を超え二百を超えてどんどんと大きくなっていけば当然のこととしてダメージは蓄積する。てゐの知る鬼などの理外の存在でもなければ、そう簡単に回復していったりはしない。

 

 だが、てゐの驚いたことはそれではない。そんな小さなことではない。

 鈴仙の能力は非常に強力なものだ。てゐはそれを何度も出し抜いたことはあるが、それも一度受けた能力を何とかして解除する方法ではなく、初めから能力を受けることのないように立ち回る方法で、だ。

 それをあの小さな妖怪は、まるで呼吸することと同じであるかのように。細い木の枝をべきりとへし折るように。ごく当たり前のこととしてやってのけた。

 自分の師匠……八意永琳ですら多少の溜めを必要とする鈴仙の能力。それを真正面から打ち破るのは、よほど隔絶した実力差があるか、あるいは鈴仙の能力に対してありえないレベルで相性が良いかのどちらか。鈴仙の能力を考えればそれに相性などというものがあるとは思えないし、たとえあったとしてもそもそもの実力が違いすぎれば今のように鈴仙がボロボロになるようなことにはなっていないはずだ。

 つまり、あの小さな妖怪は、あの身体の中に無茶苦茶な量の力を内包しているということだ。

 

(……お師匠様に報告しなくちゃ)

「行かなくていいですよ」

 

 瞬間、背筋に氷柱を突きこまれたような寒気がてゐの身体を襲う。普段ならば驚愕したのと同時に跳ねるはずのてゐの足が、地面に縫い付けられたかのように動かない。

 

「これはこれは白兎明神様、未だ外界に信仰する者を残す其の身が、何故幻想郷に?」

「……」

 

 状況は最悪。私と鈴仙の間にあの化け物。しかも、ずっと隠れ続けていた私を見つけ出し、当然のように話しかける。少なくとも何らかの索敵ができ、ここで逃げたとしてもあれは正確に永遠亭のほうに向かうことになるだろう。

 ……私に『これ』は荷が重い。絶対に勝てないだろう。けれど逃げたなら逃げたで私たちの住むこの場所が失われてしまう可能性もある。

 なら、私にできることは―――

 

「『こいつをここに足止めして、お師匠様と姫様との全員で叩く』ですか」

「っ!?」

「ええ、読めますよ。覚妖怪ですので」

 

 ――――――最悪だ。もしもこいつが覚妖怪で、今やって見せたあれが連発できるなら……こいつの手はお師匠様にも届きうる。もしかしたら、ここからでも―――

 

「安心してほしいのは、私は別に戦いに来たわけではないと言うことよ。襲われたから反撃したけれど、それがなければこちらから攻撃なんて面倒なことはしませんよ」

「……そうかい」

「『信用できない』? まあ、そうでしょう。けれど、争いを持ち込みに来たならこの玉兎は死んでるわよ。服とかはだいぶボロボロだけれど、生きているでしょう? 発狂した相手を殺さずに無力化するのって手間がかかって面倒なのですよ」

「……お師匠様や姫様には―――」

「『攻撃されない限りこちらからは攻撃しない』。……それで、案内してくれますか?」

「……………………こっちだよ」

 

 伏した鈴仙を視界に入れながら、てゐはゆっくりと永遠亭に歩を進め始めた。しかし小さな妖怪はそこから動かず、倒れ伏した鈴仙をじっと眺めている。

 

「―――なに? 行くのをやめたとか?」

「まさか。ただ、この玉兎をそのままにしておくのもどうかと思いましてね」

 

 小さな妖怪は、右の人差し指で鈴仙の身体を指し、指先をくいっと招くように動かした。

 

 すると、動かなかったはずの鈴仙の身体がまるで下手な人形繰りのように持ち上がった。両足の位置を変えず、倒れていた身体だけがそのまま持ち上がってくるような奇妙な動き。それを、目の前にいる小さな妖怪がやっているのは一目瞭然だった。

 

「玉兎の身体も大雑把なところは人間と変わらないですね。……では、行きましょうか」

「……はいよ」

 

 てゐは短くそれだけ返し、永遠亭への道を進む。小さな覚妖怪と、奇妙に動かされる自分の同僚を連れて。

 

 


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