今回だいぶ短いです。
私が到着した先には、既に幾つもの姿が揃っていた。
紅い館に棲む吸血鬼、レミリア・スカーレット。
そしてその従者である十六夜咲夜と、紅魔の頭脳であるパチュリー・ノーレッジ。
白玉楼の主である亡霊姫、西行寺幽々子。
その従者であり、庭師であり、料理人であり、たまに門番の役目も行う多才な半人半霊の剣士、魂魄妖夢。
博麗神社に住み付く鬼、鬼の四天王、伊吹萃香。その隣には博麗霊夢が座っていて、更に人間代表の白黒の魔法使いまでもその近くにいる。その事から考えて、恐らく彼女たちはおよそ自分たちを一つのグループのようなものだと思っているのだろう。事実はどうであろうと構いはしないが。
永遠亭からは主ではなく、月の最高頭脳の保持者にして神格をも持つ賢人、八意永琳が、因幡てゐを連れて参加している。優曇華さんを連れてこなかったのは、私が来ると知っていたかららしい。
太陽の畑から外出することはあまりないと言われている幽香さんがここにいるのは、恐らく彼女の愛用の如雨露や日傘が一本今回の異変によって持っていかれてしまったからだろう。愛用の道具とは、妖怪にとってはある意味で自分の体と変わらないところがある。
天狗からは二人の記者が座布団を半分ずつ奪い合うようにして座り、その後ろには白狼天狗が一匹、そんな光景を見ながら溜息をついている。こういった喧嘩はいつものことであるらしいが、こんな場に来てまでやるものでもないだろう。
そして、守矢神社から三柱全ての神がやって来ている。軍神、祟り神、そして現人神。主体は座布団に座っている軍神と祟り神のようだが、現人神のほうもやる気は十分。期待はまあ、持てそうだ。
天界より来た悲想非非想天の娘、比那名居天子。
その従者……と言う訳ではないけれど、お目付け役として同行している永江衣玖。彼女のお目付け役というのなら、もう少し大人しくさせたほうがいいような気もするけれど……その辺りは結局どれだけ暴走させないかということで、結局は一度や二度の暴走はさせてしまうものだ。仕方ない。
命蓮寺からは霊長類を超えた阿闍梨と有名な白蓮和尚と、最近になって命蓮寺に住み込みで掃除やら何やらをこなしている山彦、幽谷響子が参戦している。恐らく、圧倒する妖怪行者は私が少し精神的に痛めつけすぎたせいでまだ回復していないのだろう。あまりにも軽々と無力化してしまったため、自身の実力に不安を覚えるようになってしまったというところか。また今度にでもお邪魔しに行くことにしよう。
そしてなんと、妖精からも参加者がいる。まあ確かに、純粋な力であればこの氷の妖精、チルノならばあの天邪鬼を打ち取ることもできる可能性があるけれど……どうだろうか?
人里からは、半人半獣の教師、上白沢慧音と、竹林警備員だとか健康マニアの焼鳥屋だとかいろいろな呼ばれ方をしている藤原妹紅。なんとも対照的な性格の二人だが、相性は悪くないようだ。
そして仙人にして宇宙を司りながらもちょっと抜けているところもある全能(笑)道士、豊聡耳神子。私の前に放火魔を出すのは流石に憚られたのか連れて来てはいないようだけれど、その代わりにちょっと子供っぽいところのある邪仙が隣に立っている。なんというか嫌な笑顔を向けられている気がするので、正直こっちを見ないでほしい。
また、それらを一時的にとはいえ纏めている立場にいるのが、我等がスキマ妖怪である八雲紫。己の式である八雲藍を侍らせ、堂々と姿を見せていた。
錚々たる面子が揃っている中で、私だけが浮いているような気もしますが……それも仕方のないこと。これだけの強力な妖怪達(一部除く)を前にして、私が彼女たちに匹敵する存在であるなどとは決して言えない。
私はあくまでも単なる覚妖怪なのだ。自分の限界くらいは理解している。できないこととできることの境界、可能と不可能の境界。それに幾度も悩まされてきた私は、それを一番よく理解している。
けれどこの場ではそんな理由は通用しない。私が退いては地底の格が疑われてしまうし、そうなれば平穏な地底に干渉しようとしてくる相手も出てくるかもしれない。
……それは許されないし、許さない。いつの間にかそうなっていただけだろうと、地底に住む多くの存在に嫌われていようと、地底を治めているのは私なのだ。平穏のためにも、私の家族のためにも、ここで退くと言う選択肢はあり得ない。
私は笑みを浮かべ、その場にいる神魔人妖を睥睨する。一部は好意的、多くはやや敵対的な中立、極一部は完全に敵対……まあ、それは仕方の無いことかもしれないけれど、完全な勘違いでここまで嫌われると言うのも悲しいものだ。
確かに勇儀さんとの決闘に巻き込んでややトラウマを作ってしまったのは悪かったと言わざるを得ないけれど、まさかあの光景を日常だと思うとは私も予想外だった。あんなのが日常では、どう考えても人間も妖怪もあっという間に消滅してしまうでしょうに。
けれど、嫌われていることには慣れている。私はいつもと変わらぬ無表情を笑顔に変えて、この場にいる彼女達に語りかける。
「これはこれは皆様、どうやら誰一人として不健康な者などいらっしゃらないようでお喜び申し上げましょう」
「御託はいい。さっさと終わらせろ」
私の言葉を無理矢理に打ち切ったのは、私の事を完全に敵視している永遠に幼い紅き月、レミリア・スカーレットだった。その敵意は的外れ……とまでは言わないものの、本人達の中で大分誇張されてしまっている。私はわざわざこうしてゆっくりと会話をしようとしているのに、その機会を全て潰してしまいたいらしい。
まあ、確かにこの場で必要なことではないし、私は軽く肩をすくめるくらいで何も返さないでおく。
「それで───ああ、貴方ですね」
「はい。少彦名が末裔、小人族の少名針妙丸と申します」
私に深々と頭を下げるのは、名乗りを上げた通りの小人族。ただ、小人族と言ってもあまりに小さすぎるその身体は、明らかに何らかの呪い、あるいは術や道具の代償による影響が見受けられる。
「───なるほど。では、私がこの場に呼ばれた以上、仕事はしっかりとしましょうか。皆様、これより彼女の記憶を皆様に直接『想起』いたします。可能ならば精神障壁を緩めておいてください」
「緩めなかったらどうなるのかしら?」
「出力を上げて真正面から貫きます。その際、加減を間違えて自分が少名針妙丸だと思い込んで行動してしまう可能性もありますが、私は謝りませんし賠償もしませんので悪しからず」
では───想起。