右手に本。左手に面。使ってみてわかったんだが、面は私の弾幕の威力と範囲を一段階上げてくれるようだ。なにかを消費しているような感覚もなく、とても使いやすい。
しかし、何だろうか。私はこの面をさっき拾っただけで詳しいことは何も知らないはずなのに、さっきの実験の時にはまるで使い方が頭に流れ込むようにわかってしまった。
この面は、私の周囲に浮かせておく。そして私が弾幕を撃つと、威力と範囲を上昇させる効果がある。
同時にこの面自体からも弾幕が出るが、私が撃つ弾幕とほぼ重なった状態で飛んでいくため相手からは何か変ったようには見えない。まだ細かいことはわかっていないが、それでもこの面が十分に役に立つものだということはわかった。
……こんな便利な物なら、壊さず全部拝借してくるんだったぜ。勿体無いことしたな。
そんなことを考えながらどこかに逃げる場所がないかと周囲を見回しながらこそこそと隠れて移動する。
「まるでゴキブリみたいだね」
「ああ、あいつらは時代への反逆者だ。ある意味尊敬してるよ」
「そうなの?」
「ああ。どれほど年月を重ね、世代交代を繰り返しても変わることのないあの姿と在り方。そして何よりも誰からも嫌われ、見付かった瞬間に殺意を向けられながらも今でもどこでも生き延びている。隠遁と逃亡の天才だよ」
「ふーん、そうなんだ……それじゃあ───
───ゴキブリみたいに潰れて死んで?」
無貌『普遍的無意識の破壊性』
耳元で、それこそ息がかかるほど近くで唱えられたスペル宣言に反応できたのはもはや奇跡みたいなものだろう。貯めておいた水を盾として呼び出し、私自身は前方へと転がるように飛び込んで距離を取る。
そしてさっきまで私が居た岩陰に視線を向けてみれば───そこには何も残っていなかった。
「なんで避けるのー?」
「そりゃ避けるわ!」
ようやく見えたそいつは……そいつは……そイつは…………ソイつha───
うわぁぁぁaぁあああぁあああぁぁあっあっあああっあぁぁっあぁぁあっああああああっぁぁっぁああああぁあぁぁあっaaaあっあああっあぁぁっあぁぁあっああああああっぁぁっぁあぁっあああっぁあっあっああああぁあぁぁあっaaaあっあぁぁあaaaaaっああぁあぁぁあaっあっああaaaaあっあぁぁっあaaぁぁあaaaaaっあああっあぁぁあっああああああっぁaaぁっぁああああaaぁあぁぁあっあっあああっあぁaaaaaっあぁぁあっあああああaaああああっぁaぁあぁあああっあぁaaaぁあっああああああっぁぁっaaぁああああぁあぁぁあっあaaっあああaっあぁぁっあぁぁあっああああああaaaaaっあぁぁあっaaああああああっぁぁaaaaaっぁああああぁあぁぁあaっあっあああっあぁぁっあaaぁぁあっあああああああaaaaああっぁぁあぁaaaaaああああぁあぁaぁあっあっあaaああっあぁぁっあぁぁあaっあああaaaあああっぁぁっaaaaaぁああああぁあぁぁあっあっあああっあぁぁっあぁぁaあっあっあっああああぁあぁぁあっあっaaあああっあぁぁっあぁぁあっあああaaあっあっあああaaaaあぁあぁぁあっあっあああっあぁぁっあぁぁあっあaaあああっあっあaあああぁあぁぁあっあっあああっあぁぁっあぁぁあっあaaaaあああああっぁぁあぁああああぁあぁぁあっあっああaaaaaあっあぁぁっあああっぁぁaaあぁああああぁあぁぁあっaaaaaっあああっあぁぁっあああaaaaぁぁあぁあっあっあああaaあぁあぁぁあっあっああaaあっあぁぁっあぁぁあっaaaaあっあっああああぁあぁaaaaaぁあっあっあああっあぁaaaaぁっあぁぁあっああああaああっぁぁあぁああああぁaaあぁぁあっあっあああっaaaaaあぁぁっああああああっぁaaaぁあぁああっあっああああaぁあぁぁあaaaっあっあああっaaaaaあぁぁっあぁぁあっああaaaあああっぁぁあぁああああaaaaぁあぁぁあっあっああaaあaっあぁぁっあああぁあぁぁaaaaあっあっあああaaaっあぁぁaaaっああああぁあぁぁあっあaっあああっあっああああぁaaaaあぁぁあっあっあああっaaaあぁぁっあぁぁあっあああaあああっぁぁあぁああaaaaaああぁあぁぁあっあっあaaああaっあぁぁっあっあぁぁっあaaaaaあっあっああああぁあぁぁaaaあっあっあああっあぁぁaaaaaっあぁぁあっあっあっああaaaああぁaaaあぁぁあっあっあああっあaaaaaぁぁっあぁaぁあっあああaaaaああっぁaaぁあぁああaaaああぁあぁぁあっあっああaaあっあぁaaaaぁっああああああっぁぁaaあぁああっaあっああああaaぁあぁぁあっaaaaaあっあああっあぁぁっあぁぁaaあっああああaaaaああっぁぁaあぁああああaaぁあぁぁあっあっあああaaaaaっあぁぁaaaっあああぁあぁぁaaあっあaaっあああっあぁぁっああaaaaaあああっっあっああああぁaaあぁぁあaaaっあっあああっaあぁぁっaあぁぁあっああああああっぁぁaaaaaあぁああaああぁあぁぁあっaaあっあaaああっあぁぁっあぁぁっaaaaaぁあぁっあああっぁあっあaaaaっあああaあぁあぁぁあっaaあっあぁaaぁあっああああああっぁaaaぁっぁああああっあっああaaaaああぁあぁaぁあっあっあaaaaaああっaaaaあぁぁっあぁぁあっああaaaああああっぁぁあぁあああaaaaあぁあaぁぁあっあっああaaaaaあaっあぁぁっあぁあぁぁあっaaaaあっあああっあぁぁっあaaaぁぁあっああああああっぁaぁっぁあぁっあっあっああaaああぁあぁぁあっあっあaaaああっaあぁぁっあぁぁあっaaああaaaああああっぁぁあぁあああaaaaあぁあぁぁあっあっああaaあっあぁぁっあああっぁaaaaaあっあっaaああああぁあぁぁaあっあaっあああっあぁぁっあぁぁaaaaaあっああああああっぁぁあaaaaぁあああaaあぁあぁぁあっaaあっあaaaaああっあぁぁっあぁぁあaaっああああああっぁぁっaぁあぁっあああっぁあっaaあ──────
■
……私を見た途端に、びくんびくんと気持ち悪く体を痙攣させながら泡を噴き、顔を土気色に変えながら私を指差しつつ白目を剥いて膝から崩れ落ち、地に伏せる。正直予想はできていたし、期待していたのも間違いないけれど……あまりに予想通り過ぎて少し不満。
どうせ今こうして地に伏せるくらいなら、あの時大人しく壊れてればよかったのに。
私は天の邪鬼を蹴りつける。何度も蹴りつける。何度も何度も蹴りつける。何度も何度も何度も蹴りつける。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も蹴りつける。
……乙女の唇を奪った罪は重い。それは私であったら余計にそうだけれど、私でなくてもそうだ。特に、恋する乙女の唇はとてもとても神聖なものだ。だからこそそれを無理矢理に奪ったのは許してはいけない重大な罪だ。
だからこそ、ここで終わらせるような事はしない。もっともっと、苦しんでもらう。
私は天邪鬼を一瞥し、さっさとお姉ちゃんのところに戻る。
……たくさん追い詰めることができた。これできっとお姉ちゃんにたくさん誉めてもらえるはずだ。
だっこしてもらえるかな?
髪を撫でてもらえるかも?
もしかしたら、ちゅーしてくれたりして!
ウキウキしながら、私は空を飛ぶ。久しく忘れていた感情というものに振り回されているけれど、それはそれでまた面白い。
スペル解説
無貌『普遍的無意識の破壊性』
こいしとニャルの合わせ技。集合的無意識の中から破壊性だけを取り出し、破壊という概念のまま撃ち出す。当たると物理的精神的問わず壊れる。さとりんの場合は飲み込む。
なお、こいしを見ただけで壊れた正邪はそのおかげで追撃されずに済んだ。代わりにSANチェック、5D10。