当方小五ロリ   作:真暇 日間

98 / 129
EXステージ シーン7 「ぶっ殺せー♪」 フラン&こころ&こいし ○

 

「ぜひゅ!ぜひゅ!ひぎっ、ぜひゅぅぅ……がっほごほ!」

 

 目前に迫っていた死からぎりぎりで逃れることができた正邪だったが、その代わりに恐怖から喉がひきつるのを止めることができないでいた。

 まるで喘息を患っているかのように喉から喘鳴音が止まず、吐き気すらこみあげてくる。

 そんな状態になっても、周囲の状況を把握しようとする正邪の危機察知能力は間違いなく一流のものであり―――そして、それが正邪の身を救った。

 

 狂遊『黒い神父の導き』

 千顔『月に吠える黒い人面獅子の無面』

 無貌『集合的無意識の破壊性』

 

 正邪はその身に降りかかる無数の死を知覚し、紙一重で避けた。しかし直撃は避けることができたものの余波まで避けるには距離が足りず、正邪は吹き飛ばされて大地に叩きつけられる。致命的な傷もなければすぐに動けなくなるような怪我も無いが、しかし衝撃が身体の奥底に残っている。先程、星熊勇儀によって体内に叩き込まれた衝撃と合わさり内臓が丸ごと溶け出しそうなほどの灼熱感が正邪を襲う。

 

「フフフフ!アハハハッ!アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺スコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス―――――――――」

「……」

 

 正邪にとって幸運だったのは、そのスペルの性質上、全力を出した時には顔と姿を認識することができなくなることだろう。ただそこにいることはわかっても、そこに誰がいるのか。どんな顔をしているのか。声はどんなものだったか。どんな服を着ていて、どんな髪型で、どんな目をしているのか。そういった外見に関するありとあらゆる情報が認識できなくなる。

 もしもそれがなければ、再び目の前に現れたこいしを見て発狂している間に、殺意に塗れたこころによって殺害されていただろうことは間違いない。異様なほどに強力な、三枚のスペルは、同時に正邪が逃れることのできる限界値の上限をぎりぎりではあるがかすめていた。

 故に、これから行われるのは命を懸けた逃亡劇。触れるどころか掠るだけでも腕の一本くらいは簡単に持っていくだろうその攻撃を、正邪は必死に回避していく。正邪の撃つ弾幕は全てが敵の弾幕に撃ち落とされ、僅かに威力を削ぐ事すらできずに貫通する。

 

 破壊という現象そのもの。

 殺意を煮詰めた衝動の波。

 破壊という概念の塊。

 

 それらが全て、たった一体の天邪鬼に襲い掛かる。

 

 しかし正邪はその弾幕を避け続ける。自身の位置を相対軸でひっくり返して極々短距離ながら瞬間移動し、身体を水に覆わせて移動速度を上げ、最後の切り札として残していた従属神の召喚によるボムすら使ってその破壊と殺意の壁をすり抜け、乗り越え、回避し、突破していく。

 星熊勇儀と風見幽香から逃げおおせた水を使った転移も、これだけの弾幕の中では身体を通すことができる大きさまで水鏡を広げることはできないし、例え広げることができたとしてもすぐに弾幕の直撃を受けて消失してしまうことだろう。

 

 正邪の精神がガリガリと削られていく―――その中で、正邪の半身に異変が起き始めた。

 赤かった瞳の色が金色に塗り替わり、黒い瞳孔は白く、まるで盲人のようになる。

 黒を主体に銀色が僅かに混じっていた髪は、半分だけが白を主体に金の髪が混じる形に染まる。前に一房だけ存在していた赤い髪は依然としてそのまま残っているが、それはまるで最後の存在証明のように思えてしまう。

 

 正邪に弾幕を撃ち続けていた三人のうち一人は殺意に呑まれていてそれに気付くことができないが、残りの二人はそれに気付いて笑みを浮かべる。ようやく、ここまで来たかと、誰にも気付かれることのない笑みを浮かべた。

 そして、弾幕が止まる。スペルカードであるが故に、この弾幕は時間制限付き。三枚が同時に発動されたスペルは、発動された時と同じく三枚が同時に制限時間を終えた。

 

 それに気付いた正邪は、即座に退避する。既に二回重ね掛けしていた速度上昇の呪文を更に一度重ね、凄まじい速度で彼方へと消えていった。

 

「まっ!」

「だめだよ、こころ。スペルは終わったんだから、このまま追いかけても追いつけない」

「でも!」

「大丈夫だよ。だって、初めからそう言う話だったんだしさ」

 

 後ろからフランに抱きしめられたこころは、不満そうに面を変える。ただ、その直後に前からこいしが抱き着いたせいですぐに不満の面から驚きの面へと変わり、そして喜びと不満を行ったり来たりするようにころころと面を変えるようになった。

 

「さとりお姉様は、強いよ。お姉様自身は全然強くないって思ってるみたいだけど、実は誰よりも強いの。精神性だけで戦いができるなら、さとりお姉様に傷をつけられる存在なんてそうそういないんだから」

「……むぅ」

「はいはいそんな膨れないの。確かにあれは酷いと思うけど、私だってお仕置きしたし、お姉ちゃんにたくさん消毒してもらったんでしょ?」

「それに、お面だってちゃんと帰ってくるよ。さとりお姉様の得意なのは、物質に傷はつけないからね」

 

 よしよしと子供にするようにあやされ、こころは仕方なく不満を飲み込んだ。この面子の中では自分は真ん中の年の筈なのだが、なぜかこうして子供扱いされてしまうことが多い。少しだけ不満に思いながらも、しかしそれはそれで悪くないと思えてしまうのがまたこの状況の厄介なところだ。

 こころは一応自分をあやし続ける二人を振り払うように身体を揺らしながら、ちらりとある方向を見た。

 

 その方向は、地霊殿の方角。そして同時に、天邪鬼・鬼人正邪が逃げた方角でもあった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ……一戦目。火焔猫燐(バステト様)との戦いで、12点追加。

 ……二戦目。霊烏路空(グロス=ゴルカ)との戦いで、13点追加。

 ……三戦目。フランドール(炎の吸血鬼)との戦いで、7点追加。

 ……四戦目。秦こころ(インスマス)との戦いで、2点追加。

 ……五戦目。古明地こいし(ナイアの化身)との戦いでは追加はなく、減少が6点。

 ……六戦目。風見幽香と星熊勇儀との戦いで、4点追加。

 そして七戦目。彼女(ナイアの化身)たちとの戦いでは11点追加。かの神の知識は以前の分を合わせて、54点。そしてそこから減少分を合わせて、60点。

 

 やっと、表人格との差が無くなり、裏返った。しかし、ここで油断することはない。あと、39点分、表人格は余裕があるのだから。

 私が表に出ていくのは、表人格が消えてから。私は僅か5点から初めてこうなっているのだ。表人格が同じような方法でまた表に出てくるような可能性があるのならば、私はそれをできる限りつぶしてから行動しなければいけない。

 ……しかし、どうやら私が少し出てしまっているようだ。この状況でまた元に戻すこともできなくはないが、この状況では正位置が私だと判断されてしまう可能性も十分に考えられる。では、私はこれから表人格に見つからないように、ひっそりと隠れながらまた数字をつけさせてもらうとしよう。

 さてさて、次の戦いではいったいどれだけ私がかの神に近付くことができるのか……とてもとても楽しみにさせていただきますね。

 

 ―――礼拝の時間ですね。

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ くとぅるふ ふたぐん!

 

 いあ いあ――――――




 
 スペル解説


 狂遊『黒い神父の導き』
 千顔『月に吠える黒い人面獅子の無面』
 無貌『集合的無意識の破壊性』

 三枚一組に作り直されたスペカである。
 『黒い神父の導き』では自機狙いの直線弾が一秒に二発飛んできて、三秒間残る。時間経過で数と残り時間が増えていくが、フランからしか出てこないので楽といえば楽。最大秒間五発の残留四秒。触れると魂ごと塵になるまで壊されて死ぬ。
 『月に吠える黒い人面獅子の無面』では上端から衝撃波のような弾幕が波のように迫りくる。初めは綺麗な波だが、上端から離れるにつれて崩れてくるのでよけられないことはない。触れると魂も肉体も塵すら残さないほど壊されて死ぬ。
 『集合的無意識の破壊性』では渦を巻くように弾幕の流れがこいしに向けて起き、その後にその波が逆流していく。逆流前と逆流中では弾幕の渦の方向が変わる点に注意していれば意外とよけられないことはない。触れるとなんか死ぬ。

 なお、これに書かれているのはあくまで一つ一つの弾幕の難易度の話であり、三つ同時とかボム使い尽くす勢いでないと無理。数と挙動次第では使い尽くしても無理。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。