そら色ワルツ   作:高槻翡翠

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オリキャラ出ていたりする話と言うか関西弁は偽物だったり、
復活との設定クロスがありますが、余り表だっては出てこないはずで、
独自設定あります。


出会って、始まる
壊れた時計 前編


そら色ワルツ 第一話 壊れた時計 前編

 

白石蔵ノ介と彼女との出会いが起きたのは、彼が中学二年生から、三年生に進級する間の春休みのことだ。

昼頃に自転車を走らせて、まだ櫻が咲いていない櫻並木道を通っていると、少女が倒れていたのだ。

側にはスーツケースが一つと、それよりも小さな濃い茶色のトランクが一つ、落ちていた。

 

「しっかり!」

 

少女は外人だった。

外見は十代前半で真っ白いゴシックロリータの服を着ている。服は少し少女には大きい。

規則正しい呼吸をしているが、時折、苦しそうに呻く。

救急車を呼ぶべきかと白石が携帯電話を出そうとしたが、それよりも、友人の家がしている医院が近いことに気付く。

 

「Io sono duro……」

 

「どこの言葉やろ。英語やないみたいやけど」

 

英語は学校で習ったが、それとは何かが違う。

呟いた少女の言葉を気にしながらも、白石は自転車を置いて少女を背負い、荷物は自転車の側に置いた。スーツケースは運べないがトランク一つならば運べるだろうと白石はトランクも片手で運ぶ。

自転車に鍵をかけておくと、このまま医院まで担いでいく。自転車で少女を運ぶことは出来なかったからだ。

『忍足医院』の立て札が着いている建物まで彼女を運んだ。

 

「白石? この子、誰や?」

 

「謙也。お前のおとんに診てもらって欲しい。彼女、倒れとってん。俺は彼女の荷物と自転車また持って来るから」

 

「浪速のスピードスターに任せとき!」

 

買い出しに行こうとしていた忍足謙也と鉢合わせして、白石は彼女を謙也に託した。

謙也は彼女を白石から受け取ると、すぐに家の中に入っていく。白石は道を戻ると自転車とスーツケースを回収した。

スーツケースは真新しい。

『忍足医院』は一軒家を改築した医院であり、白石も何度か診察を受けたことがある。

診察室のベッドでは彼女が目を閉じたままだ。診察室に居る患者は彼女だけだ。今日は診察に来る人が少ないらしい。

 

「おとんが言うには、貧血らしいわ」

 

「貧血か。弱々しそうな子やよな」

 

「旅行者か……荷物、大きいやん」

 

ベッドの傍らにトランクとスーツケースを置いた。白石と謙也が話していると、少女が身じろぎした。

 

「……Dove e?」

 

「外国語話したぞ! 白石!!」

 

「この子、外人っぽいから」

 

「イタリア人だけど、ここは、何処なの?」

 

「日本語喋った。しかもぺらぺらや!!」

 

少女は最初はイタリア語を話していたが、謙也の言葉を聞いてすぐに日本語に切り替えた。日本語の発音は完璧である。標準語だ。身体を起こした少女は目眩が起きたのか、頭を抑えていた。

 

「キミ、櫻の並木道のところで気絶しとったんや」

 

白石が経緯を話すと彼女は瞬きをした。

 

「貴方が運んでくれたの? ありがとう」

 

口元に微笑を浮かべて少女が礼を言う。それから少女が大きく息を吐いていると謙也の母親であり看護士をしている

忍足万里子が来た。腕にはカルテを挟んだクリップボードを持っていて、ナース服を着ている。

 

「起きたみたいやね。貴方、名前言える?」

 

「私はルシエラ・ガートルード・ジンガレッティ。大阪には旅行で来ました」

 

流暢な日本語を話したことを万里子も驚いていた。

付け足すようにルシエラは自分のことを話し始める。

実家で勉強をしていたのだが、見聞を広めるために大阪に旅行に来たらしい。

身体の方が弱いため、学校には通っていなかったがこのところは丈夫になってきたとは言う。日本語も実家で習ったようだ。

 

「でも、倒れたやん」

 

「アクシデントがあって……」

 

謙也のツッコミにルシエラは力無く微笑む。

 

「この子は病人なんやから。体調が回復するまで入院して貰うことになるけど」

 

「パスポートとか必要なものはトランクの中にありますから、後で出します」

 

体調が悪そうにしながらもルシエラははっきりと話す。ルシエラはベッドから上半身を起こすだけでもきつく立ち上がることが出来そうにないというのは誰の目にも明らかだった。

 

「俺は忍足謙也、こっちは白石蔵ノ介。アンタ、名前が長いな」

 

「外国だと人によってはこれぐらいはあるわ……」

 

疲れが取れていないのかルシエラは一息つくと、事情を話し始めた。

イタリアに帰ろうとはしたのだが体調が悪くなり、回復するまで休みたいとルシエラは言ってきた。

万里子もそれが良いと言っていた。

先の予定はイタリアに帰る以外には決まっていないので、休めるだけ休むらしい。

 

「アンタ達。この子は眠らないといけないから」

 

「おかん、出とるから……白石、行こうや」

 

「ゆっくり養生しいや。ルシエラちゃん」

 

万里子の言葉に謙也が白石を促す。白石の言葉にルシエラは微笑と右手を軽く挙げることで返事とした。診療所を出て外に出る。

 

「外人さんもあんなに日本語上手く喋られるんやな」

 

「俺、サプリメント買わな……」

 

「お前、サプリメント好きやな。効くんか?」

 

「効くで。ほなな」

 

白石は謙也と別れ、自転車のペダルを漕いだ。

謙也が言っていたようにルシエラは日本語が非常に得意であった。

一人で大阪に旅行に来たと言うが、身なりからして金持ちである印象を受けたが、仮に、病弱だったり、重度の貧血持ちならば一人で旅行に来るべきではない。

サプリメントを薬局で買いながらも白石はルシエラのことを気にしていた。

 

 

 

春休みになっても部活は通常通りにある。

ルシエラが入院をしてから数日が経過した。彼女についての話は謙也から聞けた。謙也もテニス部である。

 

「翔太とよお話しとるわ。アイツ、日本語を話せると想たら、読むのも出来てな。新聞とか読んどったわ」

 

「起きあがれるようになったんか?」

 

「身体の方は回復してきたらしいわ。おとん曰く、疲労の貧血やとかで」

 

「先輩等、何の話をしてるんっすか」

 

今日の部活を終えて部室で白石は謙也からルシエラの容態について聞いていた。

彼女は日本語を話せるだけではなく、読みも出来るようだ。恐らくは書くことも出来るはずである。

二人が話していると、会話に割って入ってきたのは一年生の財前光だ。

 

「白石が倒れとった外人の女の子を助けてな。容態を聞かれとったんや」

 

「まあ、紳士ね。蔵リン!」

 

「オレも小春が倒れとったら助けるで!」

 

会話に加わったのは二年生の金色小春と一氏ユウジだ。仲良く肩を組んでいる。

 

「大阪は他と比べて治安悪いところっすけど、最近はホテルの爆破事件とかあるし、物騒っすわ」

 

「爆破事件……?」

 

「最近起きた事件ね。夜中にホテルが爆発したって言うわ」

 

財前が大阪で起きた事件について言う。

ホテルの爆破事件というのは、夜中に高級ホテルが入ったビルが半壊したという事件だ。

死傷者が十人を超えたらしい。外国のテログループの戦いだとか言われていたらしいが、情報が曖昧なところがあるようだ。

大阪は掻っ払いやスリなどが他県に比べて多いのもあるが、テロ事件があったと言われると物騒だと想う。

 

「このところの大阪はラブ&ピースが足らんよな」

 

「ラブは足りてるわ」

 

「そうよね」

 

「……先輩等、うざったい」

 

謙也が握り拳を作って力説し、ユウジが否定し小春がユウジの意見に賛同する。べたべたしている二人に財前が、鬱陶しそうに視線を送った。

全員が着替え終わって、部室から出るのを確認してからテニス部部長として部室の戸締まりをする。

 

「あの子の見舞い、行こうかな」

 

「行ってやると喜ぶと想うわ。アイツ、心細いやろうし」

 

白石はルシエラの見舞いへと行くことに決めた。

謙也と共に忍足医院まで自転車を走らせる。ルシエラは別の病室へと移動していた。

忍足医院の病室は個室が何部屋かあるだけだ。日当たりのいい部屋に彼女は居た。

ベッドの上で上半身を起こして新聞を読んでいる。

 

「白石さん」

 

ニュース覧を眺めていたルシエラは白石の気配に気がつき、微笑する。話ながら彼女は新聞を折りたたんでいた。

 

「体調、良くなったみたいやな」

 

「先生が、もう二、三日あれば、イタリアに帰られるぐらいの体力は戻るって。無事に帰りたいかな……倒れたのは、

予定外だし」

 

「倒れたりしたら大変やから、体調がちゃんと治ってからの方がエエで」

 

先生というのは謙也の父親のことだ。イタリアから日本までは飛行機を使うにしろ船を使うにしろ長旅だ。

 

「今日は午後から出かけるつもりなの。治療費とか準備しないといけないし」

 

「入院費とかかかりそうやしな……」

 

白石も話には聞いたことがあるが、海外の者が日本で治療を受けると大分高額になるらしかった。

保険のシステムなども国によって違う。ルシエラを病院に運んだのは白石ではあるが……複雑そうにする白石にルシエラは気遣いの微笑を浮かべる。

 

「手元にそんなにないだけで、お金はあるから。貴方が助けてくれたお陰で、休めたわ」

 

「銀行の位置とか解るんか」

 

「地図は謙也に持って来て貰って、さっき見たし、用事に付き合ってくれるって言っていたから」

 

サイドテーブルにはこの辺りの地図が置かれていた。新聞を読む前に地図も読んでしまっていたらしい。

地図を読んだとはいえ、土地勘は無いも同然なので案内人が居るのだろう。

二人が話していると、高速の足音が聞こえた。

 

「すまん。ルシエラ。お前を案内するつもりやったんやが、陸上部の助っ人に呼ばれてこれから行ってくるわ」

 

「陸上部……?」

 

「お前、助っ人に呼ばれることよくあるよな」

 

ルシエラを案内すると言っていた謙也だったが、陸上部の助っ人に今から行くらしく、案内が出来なくなったらしい。

謙也は足が非常に速く、”浪速のスピードスター”の異名を持っている。

テニス部に所属をしている謙也だがそのスピードで他の部活を助けることもあった。

 

「他校の奴が速いらしくてな、泣きつかれたんやて」

 

「頼られているなら、助けてきた方が良いわ。私は一人でも行けるし」

 

そう言うルシエラではあるが彼女は病み上がりである。

 

「ルシエラちゃんを俺が案内するわ」

 

「白石、頼むわ。ルシエラは病人で、治りかけやからな」

 

「ありがとうございます。白石さん……準備があるから、一時間後ぐらいで、良いですか?」

 

「俺も着替えてくる」

 

白石が言うと謙也が安心した様にルシエラが少し困ったように微笑んでいた。白石は学生服のままだったので、着替えるために一度自宅に戻った。

一時間後、準備をして戻るとルシエラが忍足医院の前で待っていた。始めて白石と会ったときに着ていた

白色のゴシックロリータに濃い茶色のトランク、白い日傘と地図を持っていた。

 

「案内、お願いします」

 

「その服なんか。目立つな」

 

「着慣れているものが良くて」

 

着慣れていると言うがサイズはやや大きめであり、レースやフリルがふんだんに使われている。

ルシエラが地図を見せる。行かなければいけない銀行は忍足医院から電車に乗って一駅分離れたところにあった。

春の日差しが今日は強い。

 

「旅行に来たんやろう。大阪、どんなところを見て回ったん?」

 

「……大阪城とか……通天閣とか」

 

「観光地やな」

 

話ながら白石とルシエラは電車に乗る。白石の真似をしてルシエラは切符を買っていた。

一駅分だけ電車に乗ると降りた。

着いたところは繁華街だ。

 

「日本は電車の方が早く着けるのね」

 

「イタリアやと違うんか」

 

「車の方が速くて。大都市の移動だと、電車の方が速いんだけど」

 

ルシエラはイタリア出身であるとは本人が話していた。イタリアというと白石のイメージとしては

長靴の形をしていて、パスタやトマトを食べていて、陽気で明るいと言った感じだ。

 

「大都市というとローマとか……フィレンツェとか、ナポリとか、シチリア?」

 

「そうね。イタリアは南北に長いから、都市の違いとか大きいの」

 

「後はトマトとパスタを食っとる感じがするな」

 

「……ナポリタンは食べないわよ?」

 

「それは知っとるわ」

 

若干ではあるがルシエラの声が低くなる。トマトとパスタが気に障ったらしい。

 

「イタリア人やからナポリタン食うやろで知らないとか答えたらイタリア人なのにとか言っていたし……翔太が間に入ってくれたけど、イタリア人だって色々居るのよ」

 

どうやら、謙也と話していたときにナポリタンの話題になったようだ。ナポリタンは日本発祥のパスタであり、イタリアにナポリタンは存在しない。ルシエラの機嫌が悪くなっていた。

 

「ルシエラちゃんはイタリアの……どの辺に住んどったんや」

 

「北の方よ。ベルガモって都市」

 

白石は話題を変えるとルシエラが答えてくれた。ベルガモといわれてもどんな都市なのか白石は知らない。

話ながら銀行へと行き、中に入る。ルシエラは器用にトランクを開けると中から銀行のカードを取り出していた。機械に入れて番号を押して暗証番号を入れてお金を降ろしていたが、

 

(……かなり分厚い諭吉さんやったような……あれ諭吉さんやよな)

 

日本円の最高紙幣、一万円をルシエラは三十枚以上は降ろしていた。金持ちだと聞いているが、

一気に落としすぎである気がした。

三十万もあれば一ヶ月は一家族が暮らせる。

 

「お金、降ろしたんだけど」

 

「量が多くないか?」

 

「入院費とか全額支払ったりするとこれぐらいはいるから」

 

ルシエラは降ろした資金の一部を取り出した財布に入れて、もういくらかを封筒に入れてトランクに入れていた。

それから携帯電話を取り出す。

 

「携帯、持っとるんやな」

 

「イタリアに連絡をするときにいるし」

 

携帯電話の画面をルシエラは眺めていた。ルシエラが持つ携帯電話は黒く、画面が大きめである。

無骨な形をしていた。

 

「身内は、心配しとらんかったか」

 

「してたみたい……用事は終わったのだけれど、必要なものを揃えないと」

 

「買い物は付き合うよ。服とか買わなあかんやろ」

 

「そうね。揃えなきゃ……本とか欲しいかな」

 

資金を下ろすと言う目的が終わってしまっていたが、買い物が残っていた。白石はルシエラの買い物に付き合うことにする。

彼が気になるのはルシエラの服だった。真っ白いゴシックロリータは注目を集めている。

ゴシックロリータを着ている者は珍しくはないのだが、外人のルシエラが着ていると目立っていた。

時間は午後二時を過ぎたところだ。

ルシエラが本が欲しいと言ったので白石は大きめの書展に案内した。一階建ての書店ではあるがフロアは学校の教室が二つ分ほどに広い。

 

「植物図鑑の良さそうなのが出とるわ」

 

「……好きなの?」

 

「毒草とか好きやな。日本三大毒草とか……」

 

「トリカブト、ドクウツギ、ドクゼリだったわね」

 

分厚い植物図鑑を白石は手に取る。

白石は幼い頃から植物図鑑を読んできた。美しいが毒を持っている毒草が好みである。

このことを言うと周囲は引く。

ルシエラはすぐに日本三大毒草を答えていた。

 

「詳しいな」

 

「病室で暇なときに本を色々と借りて読んでいたの」

 

本屋には一時間程居た。

ルシエラは様々な本を手にとっては、立ち読みをしていたり、手に取ったりしていた。

購入した本にブックカバーが付くのを彼女は珍しそうに眺めていた。イタリアでは本にはブックカバーは付かないらしい。

その後で服を買ったりしていた。ルシエラはゴシックロリータの服を欲しがっていたようだがこの辺りにはゴシックロリータの服を売っている店は無く、量販店で何着か彼女は服を購入していた。

 

「四時になったな」

 

「買い物、付き合ってくれてありがとう。白石さん、助かったわ」

 

「そろそろ帰ろうか。病院まで送っていくわ」

 

ルシエラはトランクの中に荷物を押し込んでいた。白石が携帯電話で時刻を確認した。用事が終わったなら、早めに帰っておくべきだ。夕方になってきたせいか、人も増えてきている。

 

「蔵リン!」

 

「白石」

 

「小春にユウジ」

 

帰ろうとした白石に小春とユウジが呼びかけてきた。二人は私服に着替えていて、買い物をしていたのだろう、紙袋やスーパーのビニール袋を手に持っている。お笑いライブが近いのでそのための買い出しらしい。

 

「今度のお笑いライブのネタのために買いだし来たんやけど」

 

「ユウ君は手先が器用だから小道具とか作るのが上手いのよね」

 

「お笑いライブ、期待しとるわ。でも、部活もしっかりやってや」

 

「解っとるで。お笑いもテニスも手は抜かん」

 

「ところで蔵リンは一人で買い物?」

 

「俺は――」

 

小春に聞かれ、白石は答えを返そうとして、戸惑う。

一人で買い物に来たと頷きそうになった。が、頷いてはいけない。何故ならば、自分が買い物に来たのは……。

慌てて周囲を見回すが、白石の側には小春とユウジしか居ない。

 

「……ルシエラちゃん、何処に行った?」

 

「ルシエラ……? 謙也の病院に入院しとるって言う」

 

「居らんかったか」

 

「……誰も居なかったけど……そもそも蔵リンは一人で……」

 

聞いてみるがユウジも小春も白石が一人で買い物に来たと思っている。おかしいと白石は感じた。

一言も言わずに彼女が白石を置き去りにして帰るなど考えられない。それに彼女は病み上がりなのだ。

 

「二人ともまた今度な。ルシエラちゃんを探すわ」

 

離れてまだそんなに時間は経っていない。近くにいるはずだと白石はルシエラを探しに小春とユウジを置いて街中を走っていった。

 

 

 

【続く】

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