そら色ワルツ   作:高槻翡翠

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試しに書いたのがこの話でそれが派生して長くなったというか、
短く書こうとすればこれぐらいにはなるはずなんだけどね。
……プロトタイプの通りこの話が最初に書いた話です


プロトタイプ 合法ドラッグ 四天宝寺入学後の話

【合法ドラッグ】

 

ルシエラ・ガートルード・ジンガレッティはパイプ椅子に座っていた。目の前にいる契約者に話しかける。

 

「蔵ノ介、執筆状況は?」

 

「ええほうや。新聞部の連載、今日中には書けるで」

 

保健室で白石蔵ノ介が原稿用紙に書いているのは新聞部の紙面に載せるための小説だ。

彼女と白石が通っている府立四天宝寺中学校には妙ないくつも掟があるのだが、そのうちの一つが

全員が文化部と運動部を掛け持ちするというものだった。白石はテニス部部長であり、新聞部の記者でもある。

ルシエラはテニス部のマネージャーをしていて、文化部だと映画部にも所属していた。

映画部とは言っても新旧の映画を見る部活であり、映画は作っていない。

白石はルシエラの前に座っている。ノリに乗っている白石ではあるが、彼の小説は微妙すぎた。小説と呼ぼうとすれば呼べるのだが、駄文とも取れた。

 

「もっと内容を入れるべきじゃないかしら」

 

「内容はあるやろ。毒草の豊富な知識がつくんやで」

 

「……着くの?」

 

あれで毒草の知識が付くと言うのならばルシエラにしてみれば携帯小説を読めば文章力が付くと言っているようなものだ。

断言が出来る。絶対に白石蔵ノ介の書いた小説では毒草の知識は付かない。

 

「例えば、アマゾンに遭難したときとか、うっかり毒殺されかけた時とか役立つわ」

 

「一般人なら、毒殺するなら青酸カリとかまだ手に入りやすいものにするわ」

 

アマゾンに関することも言っておこうとしたルシエラだが、『ピンポンパンポン』と言う放送の音が聞こえた。

 

『ルシエラ・ガート……お前、名前、長いわ!? ルシエラ・ジンガでええやろ。ガードレールとか名前につけんなや……お前、

放送室来い。放送委員会の仕事あるからな!』

 

「――謙也」

 

「行ってきた方がええわ。俺は原稿考えとる」

 

ルシエラは保健室から出ると階段を上り、放送室へと行く。保健室は一階にあるのだが、放送室は二階にあった。

 

(本名で言うならルシエラ・フラガラッハなのだけれど)

 

名乗っている名は表向きの名前だ。

イタリア貴族、ジンガレッティ家の唯一の生き残りと言う身分を証明するための名である。

貴族の名も、”仕事”で手に入れたものではあった。

白石はルシエラの本名を知っているが、謙也は知らない。教える機会がなかったので教えていないだけだ。『白い魔女』と呼ばれ、マフィア界で殺し屋として、暗殺者として生きてきた自分が今では中学校に通っている。

このことをかつての同僚が知ったら何というか――行方不明と言うことにはなっているし、同僚達は自分のことで、手一杯だったり、あるいは恨まれていたりするので、探されることはないだろうが、考えてしまう。

 

「遅いわ! 放送委員会のこと忘れとったんか」

 

「忘れていないわ……すみません。遅れて」

 

放送室の扉を開けると忍足謙也と他の放送委員会のメンバーが集まっていた。ルシエラは愛想良く笑う。

半分以上を放送機材や放送用のCDが置かれている部屋は狭い。

 

「これは明日の放送、メイド服を着て貰わないと」

 

「初音ミクとかの方が」

 

(妙な学校よね……やっぱり……)

 

殺し屋として生きてきたルシエラは学校に通ったことはない。

学校に通うことになった理由としては、ルシエラが陥ってしまった状況にある。

彼女は本来ならば十七歳で、見た目だって十七歳よりも大人びていたし、身長も百六十センチはあった。

三月に依頼を受けて大阪に来て、来日中だったマフィアのボスを暗殺に成功したのだが、向こうが雇っていた殺し屋との戦いでルシエラは自分の力の源を殆ど失ってしまった。十七歳だった身体は四歳ほど若返り、身長も十センチは縮み、発揮出来ていた殺しの力が使えなくなった。

幸いだったのは髪の色なども少しだけ変わったりしたことだろう。日本から離れて隠れようとしたルシエラだが逃亡途中に倒れてしまい、白石に助けられた。謙也の家が開業医をしていたのでそこに運ばれたのだ。

それからいくつかの事件があったが、白石はルシエラの過去を知りながらも関わってくれているし、

謙也の家、忍足家も秘密は隠しているがよくしてくれている。

力を取り戻すまでは隠れている必要があるため、謙也の家に居候をしながら、カモフラージュに学校にも通っていた。

今のルシエラは中学二年で、イタリアから来た留学生ということになっている。

 

「ネコミミつけるとかどうや」

 

「コスプレなら後でするから、議題を進めましょう」

 

以前にコスプレは嫌だと言ったら周囲に押し切られてすることになったので、ルシエラは提案を受け入れた。

――おかしい、『白い魔女』はこんなのではなかったはずなのに。

と、想ったものである。ルシエラは特殊能力として自身の身体で薬物を精製が出来たが、

力が落ちたせいもあってか、この場に居る生徒を全員、毒殺して切り抜けると言うことは出来なかった。

 

「議題はまず昼休みの放送についてやけど」

 

ルシエラが促したことにより放送部部長が議題を言う。

議題は音楽のリクエストについてや放送についてや、放送委員会の予定についてを話した。

 

「今度の放送当番はルシエラやからな」

 

「知っているわ。私が当番の時に光がかけて欲しいCDがあるって言っていたから貰わないと」

 

「財前がお前に?」

 

「貴方の時だと『スピード』のBGMしか流さないから」

 

財前光はルシエラのクラスメイトであり、テニス部に所属している。

放送委員会の放送ではリクエスト曲も受け付けているのだが、謙也の時は映画『スピード』のBGMしか流さない。

 

「それなら、昔のアーティストのスピードの音楽でも流せば……!」

 

「放送も慣れてきたから、頑張ってみます」

 

謙也を無視してルシエラは微笑でアピールしておく。能力を使って相手の感情を和らげることも忘れない。

薬物を精製出来るルシエラは力が落ちていても、相手を落ち着かせたりする香りを作り出したりすることが出来た。

 

「……お前昔のアーティストの『SPEED』知らんの?」

 

「知らないわ。音楽には疎い方なんだから」

 

ノリが悪いと謙也に暗に言われていたがルシエラは言うことは言っておいた。

 

 

 

放送委員会の話し合いを終えてからルシエラはテニス部に向かう前に白石の様子を見に行くことにした。

 

「ルシエラ。小説がもうちょいで仕上がりそうなんや!」

 

「まだ仕上がってなかったの」

 

「どの毒草出すかで悩んだんや。九割書けたから、終わったら部活に行ける。それまで待っとってよ」

 

白石に言われてルシエラは待つことにする。

待ち時間を潰すものを探していると、保健室に置かれていたデスクトップパソコンが目に入る。

電源をつけて少し待ち、マウスを操作して作りかけの保健だよりのアイコンをクリックしてファイルを広げた。

読めそうだったので広げただけである。

 

「薬物使用はダメ! 絶対……四天宝寺もこう言うのを作るのね」

 

「意外なんか」

 

「お笑いにしか力を入れていない気がしていたもの……コカインにヘロインに大麻に脱法ドラッグ」

 

「ドラッグは人生が滅茶苦茶になるしな。脱法ドラッグは合法とも呼ばれとるけど、どこが合同やねんって」

 

読み上げていく薬物はルシエラは実際に見たことがある薬物だ。使用はしたことがない。

父親が薬剤師である白石は毒草の知識もあるが薬物の知識もあるため、薬物の危険性は十二分に理解している。

 

「中高生は信じやすいって言うけど、人生が滅茶苦茶になるのに馬鹿みたい」

 

「合法とか言われると平気とか、少しぐらいならって、なるんやろう」

 

嘲笑っているルシエラに白石は意見を述べる。ルシエラは自身で薬物を精製出来る上に抗体能力も高い。薬の危険性を知っている。殺し屋であった頃は薬を標的に投与して標的を殺してきた。

 

「人間の身体は案外脆いのに」

 

「お前も人間やろ」

 

白石の声は怒っていた。自分が人間ではないとルシエラが暗に言っているように聞こえたからである。

ルシエラは怪我をすれば血が出るし、致命傷を受ければ死ぬ。力によって再生能力はあるが限度があるのだ。

 

「今は、簡単な薬しか作られない。『白い魔女』が堕ちたものよ」

 

自嘲を込めてルシエラは言う。

解剖をしても痕跡が発見されない毒物や内臓を溶かす毒物、傷口が治らない毒物、解毒剤や爆薬など、薬と名が付けばルシエラ・フラガラッハは何でも作り出すことが可能だった。ルシエラ・ガートルード・ジンガレッティとしては、相手の警戒心を緩ませる香りや簡単な毒しか精製出来ない。

 

「……今のルシエラなら『白い魔女』言うよりも『白い魔法少女』って感じやけど」

 

「『魔法少女』……って、杖に弾を叩き込んで発射したりするのよね。日本じゃ」

 

「ホワイトウイッチガールルシエラちゃんとか魔法少女リリカルルシエラとか」

 

「最初の異名はウイッチとガールで魔女と女で二つ言葉が被ってるし、どっちもださいから却下!」

 

「『四天宝寺の魔女っ子』でも……」

 

「ここってちゃんと意志を保ってないと常識が消える気がするから嫌な学校ね」

 

最初に居た組織で教育は受けさせられたので、殺し屋としての生活には困らなかったルシエラではあるが、学校で困ったのはむしろ、常識というか四天宝寺のノリである。

四天宝寺しか知らなかったルシエラは他の学校を見たりして何が可笑しくて何が正しいのか解らなくなってきたこともある。

 

「るーちゃーん、白石!!」

 

話していると窓硝子が強く叩かれる音がした。窓硝子の前には赤毛のショートカットにヒョウのランニングシャツを着た野生児と言っても差し支えない少年が居た。遠山金太郎、四天宝寺のスーパールーキーである。金太郎はルシエラのことをるーちゃんと呼んでいた。

 

「金ちゃん。保健室では静かに」

 

「あのなー財前が部活が終わった後のおやつは白玉がええ言うたんやけどワイ、タコ焼きがええんやー。喧嘩になって、そんなにいうならタコ焼き食べたい奴連れてこい言ったんや」

 

「タコ焼き食べたい……俺は別にどっちでも」

 

「私も」

 

「なら、タコ焼き派やなー」

 

ルシエラも白石もタコ焼きも食べられるし白玉ぜんざいも好きだ。食べられるならどちらでも構わない。

金太郎が笑顔を見せる。白石がシャープペンを机の上に転がした。

小説が完成したと言う合図だ。

 

「今回も原稿は完璧や。ルシエラ、先に金ちゃんと部活に行っとって」

 

「(完璧って……また新聞部の人が戸惑うような原稿書いたわよね)早めに来てね」

 

靴を変えてくると金太郎に言っておくと、ルシエラは保健室から出て玄関で靴を変えて部室の方へと歩く。

途中で金太郎と合流した。

 

「白石の書いとる小説、ワイ、意味が分からんのやけど」

 

「分からなくて良いわ。私も意味が不明すぎるから……あそこに千歳が」

 

「千歳ー!」

 

長袖のセーターにジーンズを履いた身長が百九十センチを超えた男、千歳千里をルシエラは発見し金太郎が声をかけた。

千歳は今年になってテニスの特待生で転入してきた。金太郎も千歳も私服だが、四天宝寺中は一応の制服は決まっていても着なくても良い。ルシエラも今日は制服を着ているがたまに私服を着てくる。

 

「真鶴と電話しとって。これから部活に行くところや」

 

「ワイ等もそうなんやー」

 

「渡邊監督が昨日、明日こそ、千歳が来んと……とか言っていたけど、来て良かった」

 

真鶴というのは千歳の従妹であるとルシエラは聞いたことがある。

渡邊オサムは男子テニス部の監督であり、関西弁にチューリップハットを被った個性的な四天宝寺テニス部を纏めている者だ。

ルシエラがマネージャー候補として白石に連れてこられたときも、オサムが採用と言ったのですぐに入れた。

 

「昨日は散歩しとったからね……知らんところに行っとったよ」

 

「まいどのことやな」

 

千歳が一人旅に行くと帰ってこない。授業もおよそ半分の確率でしか出ないというのはテニス部では有名だ。

 

「美味い白玉ぜんざいの店を見つけたんよ」

 

「イヤや! 今日はタコ焼き。白石とるーちゃんも味方なんやで!」

 

「光とおやつで争ってるみたい」

 

事情を知らない千歳にルシエラが話す。千歳が笑った。ルシエラも笑いたくなる。

ここで過ごす毎日はドラッグのように自分を侵蝕していく。人を殺しているときとは違う楽しさだ。

後で空っぽにならない。

――毒されても、悪くはないわね。

そう想った自分に気がついて、ルシエラは微苦笑した。

 

 

 

「どないな状況になったん?」

 

「私と蔵ノ介と金ちゃんと小春さんとユウジがタコ焼き派」

 

「光と銀と小石川と千歳と謙也が白玉ぜんざい派か」

 

数十分後、ルシエラと白石はタコ焼きVS白玉ぜんざいの争いに巻き込まれていた。

金色小春がタコ焼きを選び、小春が好きな一氏ユウジもタコ焼きを選んだ。それを聴いた財前光が師範と呼ばれている石田銀を引っ張り込み、副部長の小石川健二郎を勧誘し、千歳は白玉ぜんざい派だったので仲間になり、謙也は財前に挑発されて白玉ぜんざいを選んだ。

二人の前では言い争いが起きている。

 

「師範、どうしよう」

 

「ここは一つ、十一人目で選ぶしか」

 

「……それしかないわね」

 

「俺かルシエラが白玉ぜんざいに入ればおさまりそうやけど」

 

「それだと金ちゃんが悲しむわ……これ、何度目の争いかな」

 

現在、五対五になっているため十一人目を選んでどちらか選んで貰い、今日のおやつは選ばれた方を食べることにしておく。

ルシエラは白石を肘で促した。言え、と言うサインを白石は受け取る。

 

「聞けやーお前等、十一人目に選んで貰うわ!!」

 

「これもまた、平和であると言うこと」

 

「ええ」

 

ルシエラの呟きを銀が聞いていた。銀の言葉にルシエラは同意した。

 

 

【Fin】




ルシエラは携帯小説は余り好きではないというか、適当に読んだ恋愛系携帯小説がなんだこれになったタイプ。
プロトタイプなので些細なところが違います

想えばコレが始まりだった。
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