そら色ワルツ   作:高槻翡翠

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また外伝かよみたいな感じですがルドルフサイド。
ケラヴノス出来てないのにこっちが出来たというか
こっちは短い方です。


外伝 春休み中のルドルフ寮にて

「精が出るねぇ」

 

四月に入ろうとする頃、午前中、聖ルドルフ学院の男子寮にて、からかい気味の言葉を観月はじめは言われた。

観月はエプロンを着けて三角巾を巻き、雑巾を持っている。掃除中なのだ。

玄関口やロビーは特に丁寧に磨く。

実家には早めに帰り、帰ってきた観月は寮にいる間はほぼ毎日男子寮とたまに女子寮のロビーの掃除をしている。

掃除は重要だ。

 

「ホコリっぽいところは嫌いなんですよ。花粉も飛んでますし。貴方がやりませんから」

 

「朝にはきちんとしとるよ。観月君はきれい好きやし、花粉症やからね。そーじもしいやくれへんから助かってる。終わったらコーヒーか緑茶淹れるよ」

 

京都弁で言われ、観月は訳していく。

 

「紅茶でお願いします」

 

話しているのは銀髪のショートカットに糸目をした観月とおよそ二十センチほどの身長 差がある二十代の青年だった。

着物を着ている。今日は着物の気分だったらしい。着物の色は濃い青色で上から同系色の羽織を着ていた。

聖ルドルフ学院男子寮の管理人である。周囲からは管理人さんと呼ばれていた。

寮については殆ど観月の好き勝手にさせてくれる人物である。聖ルドルフ学院には寮があるが、スポーツに力を入れるために

遠方からの生徒も受け入れている。主に野球とテニスだ。観月はテニス部の特待生として転校してきている。分かっていて管理人は聞くので観月も分かっていて、返す。

 

「新入生もなん人か来はるからね。活気があってええな。最近は少子化とか言われてるし、子供が居らんらしいな」

 

「維持は大変でしょう。管理人さんは学校の方は……」

 

「早うに卒業したね」

男子寮も女子寮も人数は少しずつ増えていた。

かなりの好待遇で学院は生徒を集めている。その分だけ、結果を出さなくてはならない。

観月のデーターにも管理人とそして寮母の詳しいプロフィールは入っていない。二人の付き合いが長いことは知ってはいる。

 

「帰ったよ。お土産も持ってきた」

 

「こっちも持ってきただーね」

 

「木更津君、柳沢君、……土産は魚ですか」

 

玄関から入ってきたのは二人、四月に三年になる木更津淳と柳沢慎也だ。テニス部部員であり、観月は彼らにダブルスをやらせている。

男子テニス部の采配も観月にゆだねられていた。部長である赤澤吉郞はいるが、オーダー表などは観月任せだ。

木更津が持ってきたのは白い発泡スチロールの箱で持ち手の紐がついていた。柳沢の方は紙袋だ。

生臭いにおいがしていたので魚だと察する。

 

「六角さんやったね。魚とかとれたもんとか貰って悪いわ」

 

「食べきれないだけ作ってるから。おすそわけして減らしていくんだけど……」

 

「淳。渋ってるだーね」

 

木更津も柳沢も特待生で木更津は千葉県にある六角中出身であり、六角中は関東でもテニスの強い学校だ。観月がスカウトしてきたのだが、

スカウトの経緯は省く。

 

「渋っているんじゃなく、お裾分けの法則というのがありましてね。物々交換状態なんですがそれをしていくと処理が出来なくなっていったり……」

 

観月の言葉に木更津が頷いていた。

 

「観月くんのところも食材、送ってくれるから助かるわ」

 

寮の食事は平日だと、基本的に朝と夕方が出る。食事のメニューは栄養士が殆ど、管理したものが出される。金曜日だけはカレーの日と決まっていて、

カレーが出ていた。春休みや休日は別だ。希望者には食事が出されて、管理人や寮母が決めたメニューが出てくる。

 

管理人が木更津の土産を受け取る。

 

「寮は観月だけだーね?」

 

「テニス部やと、裕太クンがアイツの畑の手伝いしとる。野村君の帰りは明日」

 

管理人が予定を伝える。

あらかじめ言っておけば外泊も可能だし、この寮は規則がやや緩めになっている。緩めではあるのだが観月が想うに責任感の伴う自由であるから緩めになっているのだ。

油断がならない人物が管理人である。

 

「寮母さんも畑が趣味だーね。観月の掃除も趣味?」

 

「日課は薔薇の観察日記ですが掃除はしないと不快で不快で」

 

「ちょっとぐらい汚くてもいいのに」

 

「だーね」

 

「あなた方のちょっとは、ちょっとじゃないんですよ!! 大瀧さんと言い、だらしない!!」

 

観月は几帳面で細かい。他の面々は大ざっぱなところがある。観月が叫んだ。大瀧は女子テニス部の副部長である大瀧歌織のことだ。

 

「観月が細かすぎるんじゃないかな」

 

「でも、観月君が細かいからボクも楽ができるんやよね」

 

笑顔で……いつも糸目なので笑っているように見える……管理人が言う。

 

「仕事はしてくださいよ。管理人さん」

 

「するする。この仕事、住み込みやから食と住は困らんし、衣は好きなの着ればええし。そっちも問題起こさんといてね。まだこの寮は管理楽っぽいけど」

 

「管理が大変な寮とかあるだーね?」

 

「親が色々言ってくるとか、近所づきあいとか、ここはええ子ばかりやから」

 

楽っぽいと管理人が言うのは伝聞だからだろう。

管理人にしろ寮母にしろ、二十四時間体制で自分たちを見ているのだ。大変な仕事である。

 

(油断がならないヒトですけどね……)

 

観月は掃除を再開しようと考えつつ、魚を持って行った管理人を見送った。

 

 

 

不二裕太は寮母の家庭菜園の手伝いをしていた。女子寮の方にも小さな畑を持っている寮母は菜園作りを好んでいる。畑の方は借りているらしく、

かなり広い。天気は晴れていて、風も心地よい。春が来ようとしていた。収穫していたのは春キャベツだ。

女子寮と男子寮の間に空き地があり、そこが畑となっている。

 

「(男子寮の方は観月さんが薔薇を植えてたんだけど)ジャガイモは前に植えたし、他に育てたいのって」

 

「お茶とかも育ててみたいかな」

 

「……お茶ですか……?」

 

ホームセンターで買ってきたらしい台車が置かれていて、上には大きい農作業用のかごが置かれている。今日は春キャベツなどとれる野菜を収穫する。

お茶は木になるはずだ。茶の木は裕太もテレビで見たことがある。

 

「私が昔お世話になった人が現……茶の木を持ってきたんだけど上手く根付かなくて。国産紅茶があるなら、出来たんだろうけど」

 

「森村や観月さんが前に言ってましたね。百年以上前に出来て一回廃れたとか。何回か飲んだことはあるけど、俺はあっちの方が得意で」

 

「飲みやすいしね。……百年以上昔にもあったんだ」

 

「紅茶は日本人にそこまで受け居られなかったってのもありそうです」

 

裕太は聖ルドルフ学院の体操着を着て寮母は農作業に適したジャージ姿だった。黒の長髪を下に一本に束ねている。

寮母はキャベツを収穫しながら裕太と話していた。丸く育ったキャベツをもいでいく。 裕太の周囲は紅茶派ばかりだ。母親や姉も紅茶好きだし、

兄はコーヒーだったか、先輩である観月と同級生である森村撫子は紅茶派だ。

 

「そうだね。あの人も西洋かぶれみたいだったし、上司がお茶好きだった……」

 

「寮母さんは寮母をやる前は何の仕事をしていたんです?」

 

寮母と管理人について裕太が知っているのは長い付き合いであるということと家族ということだった。夫婦かと聞いてみたら管理人が困ったようにしていた。

事情が複雑らしい。

男子寮にしろ女子寮にしろ、暗黙のルールとしては聞くのは良いが向こうが答えをはぐらかしたらそれ以上はよっぽどではないと聞かないというものがある。

 

「……デスクワークに、体を鍛えて……見回りして……」

 

(警備員……? でもな……)

 

「良い職場だった。運び屋ともいうかもしれない」

 

(運び屋!?)

 

過去形ではあるが、前の職場を辞めていなければ女子寮の管理人なんてしていないだろう。警備員っぽい運び屋ってどんな職業なんだろうか。

 

「寮母さん!! ……貴方は不二、裕太君よね」

 

「千歳先輩」

 

春物のロングスカートに長袖を着た身長が裕太と同じ少女、千歳真鶴が来た。真鶴は裕太の一つ上であり、四月からは中学三年生だ。

一年だけルドルフに通うことになる。部活はテニス部だ。

自己紹介はされている。

 

「真鶴で良いわ。従兄も同級生で千歳だったから、私の方が名前で呼ばれていたし、寮母さん新入生の入寮者の追加の連絡が」

 

「ありがとう。寮はまだまだ余裕があるとは言え、ちゃんとケアが出来るかは不安だな」

 

「不安……」

 

「人間相手だもの。大変だわ」

 

寮母が不安を口にするが、寮は各地方から集まった面々が一つ屋根の下で暮らすのだ。それにテレビや漫画などが言うが中学生は思春期で不安定な時期でもある。

人間は人によってはいつでも不安定だろうが、親元から離れる以上、ケアは寮母や管理人の役目となるのだ。

 

「男子寮は管理人……観月さんが仕切ってるし、そこまで人数も居ないからな」

 

管理人じゃなくて観月と言ってしまうのはイメージが観月の方が強いからである。

寮は野球部の者も居る。主にスポーツ特待生が居る寮だがそれ以外の者も少なからず居て……管理人が昔に教えてくれたが寄付とかでその辺は押し切られるらしい……

立場は違えど上手くやっている。やらされているとか、やるしかないというのもあるかもしれない。

 

「千里も寮暮らしをするんだけど、不安だわ……ご飯とかちゃんと食べるのかしら。気がついたら三日ほど散策に出た後でご飯を食べに来るし」

 

「……猫ですか?」

 

千里が従兄の名前であるようだ。真鶴とは名字が同じと言うことは、千歳千里がフルネームで、同じ年のようだ。

 

「野菜、良かったら送る? 今年のは出来が良いよ」

 

「キャベツとか栄養あるって聞きますよ。千歳さんは……どこに」

 

裕太も想わずキャベツを手に持ち言う。

 

「大阪」

 

「森村の知り合いも大阪に居たな……真鶴先輩は出身は九州でしたよね」

 

「熊本よ」

 

熊本と聞くと浮かぶのが豚骨ラーメンと黒い熊とかだ。確認で裕太は聞く。九州から東京は遠い。

 

「野菜を取り終わったら分けるし。送ったら? 寮で食べ切れそうにないから」

 

「助かるわ。……千里ってば……」

 

従兄のことが非常に心配らしい。

 

「一緒の学校には行かなかったんですね」

 

「ここは寮もあるし、東京は激戦区で戦い甲斐がありそうだし、――何よりも大阪の空気があいそうになかったの」

真鶴の最後の理由に裕太は至極納得してしまった。

 

 

 

農作業に向かない服をしていた真鶴が見ている中で、一時的な収穫を終えた。他の収穫は午後回しにするらしい。時間帯が昼頃になった。

裕太が女子寮に収穫した野菜を持って行く手伝いをする。

 

「いつも悪いね。今日はカレーだし、向こうもカレーだよ」

 

(カレー好きすぎるな……)

 

テニス部部長の赤澤吉郞もカレーが好きで、彼は寮ではなく自宅から通っているがカレーの日となっている場合はカレーを食べに来る。

食費は払っていた。春休みは希望者には三食が出されていた。寮の維持費などから出しているらしい。

寮生の一部が実家に帰ったところで生活が出来ない料理下手だのものぐさだのが居るせいだが。

 

「寮母さん!! 歌織、起こしてくれないか? 歌織の部屋はさすがに入れない」

 

「裕太」

 

「赤澤部長、村神先輩」

 

目つきの悪い茶髪の少年、先輩である村神時人とテニス部部長である赤澤吉郞が女子寮の前で待っていた。

 

「携帯とかタイマーでは」

 

「……起きん。女子寮も誰も居ないようだったから……」

 

「歌織ね。起こしてくるわ」

 

ルールとして女子寮はロビーまでは入れるが、それ以上は入れない。寮生は歌織以外は皆、外に出ているようだったし、女子寮を管理している寮母は畑の方に行っていたのだ。

真鶴が寮の中に入っていく。

 

「用事ですか」

 

「綿が来るし、家で久しぶりに会おうって。それと色々」

 

色々、と赤澤が言う。

幼なじみで会うようだ。色々、という部分は裕太は深くは聞かないことにした。

 

(大瀧先輩は交通事故で家族を亡くしてるし、村神先輩も家が面倒らしいし……)

 

寮に来て当初、騒ぎを起こしたことがある。家族に関して自分が荒れて、その時に他の寮生の家族構成を聞いたのだ。

家族に対することと言うのは平和なところもあれば、荒れているところもあり、様々だ。大瀧歌織は両親と兄を数年前交通事故で亡くして

今は後見人の叔父に見守られつつ寮生活だし、村神は父子家庭で父親との仲はそう良くない。

裕太は兄である不二周助と比べられることが嫌で、家を飛び出したし学校も変えた。その選択を後悔はしていないが、

自分以上に大変そうな人達だっている。

大瀧歌織は両親と兄を数年前交通事故で亡くして

今は後見人の叔父に見守られつつ寮生活だし、村神は父子家庭で父親との仲はそう良くない。

裕太は兄である不二周助と比べられることが嫌で、家を飛び出したし学校も変えた。その選択を後悔はしていないが、

自分以上に大変そうな人達だっている。

 

「裕太は実家に帰っていたんだな。大丈夫だったか?」

 

「大丈夫です。……大歓迎されました。村神先輩は佐伯さんと……」

 

「買い物に行ってた……」

 

想い出したのか疲れたように村神が息を吐いた。村神は雰囲気が暗い方だし、対して佐伯こと千葉の六角中、佐伯虎次郎は爽やかだ。

村神の買い物に付き合ったら兄である不二周助と佐伯虎次郎と会い、自分は兄と共に実家に帰ることになったのだ。

お父さんも帰ってくるのみたいに母親も大歓迎してメニューが自分が好きなカボチャ入りカレーになったりしていた。

学校のことは色々と聞かれたが不満はないし楽しいとも答えている。

 

「お前、佐伯に好かれてるよな」

 

「……疲れるんだが」

 

「良い奴だぜ。佐伯、六角もいいところだしよ。飯もうめえし」

 

赤澤はまだ幼なじみだから許容が出来るというか付き合いが長いので耐性があるようだが、佐伯を村神は苦手としているようだ。

六角中テニス部はアットホームなところだったが、部室が海の家だったのは衝撃的だった。

数分待っていると

 

「怠……」

 

「大瀧先輩。夜中に曲作りとかしてたんですね」

 

「休みは練習がないと生活がぐだぐだになるわ」

 

髪の毛を縛ることもせず春物のコートを着ている大瀧歌織が現れた。裕太と寮母、台車を眺める。歌織の背中を赤澤は叩く。

歌織は生活が不規則な方であり、観月にもよく言われている。

 

「ほら、飯とかは家で食うぞ。荷物は……」

 

「大体は持った」

 

茶色いトートバッグを歌織は見せる。まだ眠そうだった。

 

「寮母さん、改めて言いますが一泊です」

 

「行ってらっしゃい」

 

「裕太もまたな」

 

「明日には帰るので」

 

寮母と裕太が見送り、歌織と赤澤と村神が寮から離れていく。

春休みの寮は静かな方だ。三学期中なんて寝ている皆を起こすために早朝から朝練のために学校近くに来ていた赤澤がハンドベル部から借りたハンドベルを

ぐちゃぐちゃに鳴らして観月に怒られたり、寮に置いてある加湿器を壊して観月が怒ったり、朝食の米がきれたからと管理人が適当な米を買ってきて炊いたら、

食べて苦言を出した観月に食えたらいいじゃないか発言をした柳沢や木更津が観月に怒られていたり、

 

(……観月さん、怒ってばっかなような……)

 

「四月には入寮者が来るし、歓迎会とかした方が良いかもしれない」

 

「入寮者ってバラバラですもんね。真鶴先輩みたく、早めに来る人も居るし」

 

四月に纏めて入ってくる入寮者というのはそんなに居ない。というのも寮が始まったのが最近だからもあるし、スカウトされれば時期が関係なく来る。

 

「歓迎会か。花見にでもするのかな。櫻の木の下でお弁当とお酒……」

 

「寮母さん、俺たち未成年なので。でも、弁当は良いと想います。家族で花見とかしてたので」

 

なるのかな、と言っているのは寮母も生徒主体で決めさせてくれる。顧問の許可を上手く取れれば櫻が咲いていれば、花見もすぐに出来る。

花見と言えば酒らしい。裕太の記憶に父母と兄と姉と花見をした記憶がある。兄が中学に上がる前の話だ。

 

「他と相談してから決定するけど、寮に来た以上は楽しんで貰わなきゃね」

 

寮母も管理人も放任しているところはあるが相談には乗ってくれるし、助けてもくれる。寮に来て良かった、と裕太は想う。

疎遠にしている家族に対してはもっと仲良くしろとも寮の面々は言わない。それが裕太にはありがたい。押しつけがましくないのだ。

 

「楽しいですよ。寮」

 

「それは良かった」

 

台所近くまで台車を運んで欲しいと寮母が言う。裕太はそれに従った。

 

 

 

聖ルドルフ学院のテニス部はテニス部に最初から所属していた生え抜き組とスクールに 通っている特待生に別れる。

観月達は特待生だ。

 

「入寮者やけど、今年で頑張って結果ださんとって感じかな」

 

「魅力はいるのでしょうが……」

 

掃除を終え、昼食の準備も終えた中、観月はロビーでソファーに座り、管理人が淹れた紅茶を飲んでいた。

紅茶は一人分や二人分が淹れやすいガラスポットで入っている。

ティーカップは観月のお気に入りのものだ。葉は国産紅茶である。

 

「キミは紅茶、好きやね」

 

「管理人さんはそう好きじゃないんですね」

 

「昔の上司がね。飲んどったけど、……見る? 女子寮含めた入寮者の今んとこのリスト」

 

A4サイズのコピー用紙の束を管理人は観月の前に置いた。

見せてくれると言うことは見てもよい書類なのだろう。観月がスカウトした者も居るし、野球部もいた。

 

「女子の方、何人か特待生じゃないけど入る人が居ますね」

 

「最近、ねじ込まれた感じやね。先立つものが振り込まれたから、上も丁重にって」

 

「貴方、隠さないで言いますよね。……玲愛ですか」

 

寄付金はありがたいのだろう。女子寮の入寮者リストを観月は見ていた。

 

「キミと歌織ちゃんとかで仕切ってもらわんとボク等が楽できんから」

 

「やることをしておいてくれればいいです」

 

仕事をしているところはしているのだ、この管理人。

 

「そうやね。昔の仕事みたいなことはしたくはないけど」

 

「何の仕事をしていたんです?」

 

「――」

観月のデーターにも管理人と寮母の以前の仕事のことはない。管理人が観月がかろうじて聞こえる程度の声で呟いた。

 

「……は?」

 

「冗談、冗談」

 

ひらひらと管理人は手を振る。

そこにただいま帰りましたと裕太の声が聞こえた。管理人が裕太を迎える。居るメンバーが揃ってから、昼食にしようと言っていたのだ。

 

「……冗談ですよね」

 

人を食っているような管理人だ。観月は言われた言葉を冗談として受け流すことにし た。

 

「――死神、だなんて」

 

 

【Fin】




寮母と管理人の事情はいつかというか、
寮母の方がオリキャラというかあの本編がぐだぐだになってきたので話が書けなくなってとかもあるというか。

四月にいつ突入するかは未定。
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