そら色ワルツ   作:高槻翡翠

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活動報告の方に置いた話の前編だけというか
これと後編と大阪編後編とがっと番外編で3.4作で
この話の三月が終わると良いなって。

一応、周囲はテニスしてるよ


スピンオフ:ケラヴノス2 前編

【ケラヴノス 2】

 

仁王雅治は夜、ベッドに横になっていた。左手には多機能情報端末が握られている。

昨日、殺されかかって、治療されて、今日は人外バトルに巻き込まれた。

人外をつけてしまうのは、異次元みたいな場所で雷と発射された武器と人間だったモノが戦っていたからである。

無事に生還した仁王は治療を受けて家に帰された。

巻き込まれた仁王は記憶消去をされるはずだったのだが、選択したことにより記憶を消されないでいた。

 

『”お疲れのようですね”』

 

多機能情報端末の画面に文字がいきなり現れた。

 

「あれで疲れんのがおかしい。殺されかかかって治されて、殺されかかって生還じゃぞ」

 

『”そうでした。まずはお疲れ様です。仁王雅治様、そしてディオニージ様、我々に協力してくれること、ありがたく思います”』

 

文字が変わる。仁王の言葉に受け答えをしていた。確認のために仁王は話す。

 

「人工知能、ミーミル……裏社会は人工知能も発展しとるんじゃのう」

 

『”裏社会は何でもありと認識していただければ分かりやすいです。発展しているとは言え、殆どの技術は一般普及までのレベルには届きません。

レールガンなどのディオニージ様用の装備はあの方頼りで使用しています”』

 

ミーミルは多機能情報端末で話しかけている人工知能だ。

裏社会は超能力系の人間が闊歩していて、表社会以上に技術が発展している場所であるようだ。

しかし、動力源などは能力で補っているところがあるらしく、例えば、仁王と一緒に行 動をしていたディオニージ・ドゥリンダナは

物質精製と電撃操作という能力を持っていて、能力で生み出した電力をリニアヴィーグルの動力に使っていた。

知ってしまった世界の別の部分、裏社会、もしくは境界に関わることを仁王は選んだ。

 

「アイツも現代社会だと、恩恵をかなり受けとる」

 

リニアヴィーグルに補助として入っていた”人工知能にして電子信号変換装置”のミーミルは多機能情報端末に入っているミーミルの分身であったらしい。

ディオが雇い主に言われて、予備に持っていた多機能情報端末に触れ、リニアヴィーグルにも触れていた。これでデーターなどを移動させて

ミーミル本体を予備の多機能情報端末に接続して仁王に貸した。リニアヴィーグルのミーミルの情報をミーミル本体が共有しているため、

今日起きた戦いについてもミーミルは知っている。

 

『”五番目の血と十一番目の血は現代社会では非常に恩恵を受けます”』

 

「その言い方だと分かりづらい。……ディオは四月から俺と同じで学校生活か」

 

『”雇い主様はそれが最善だと言いました”』

 

ディオは仕事が終わったら本拠地へ帰るはずだったのだが、雇い主の命令により日本に滞在をすることになり、四月から学校にも通うことになった。

このことは仁王にも伝えられている。

学校は仁王にあわせた立海大付属中で三年生のクラスに転入することになったが、ディオはおれは年齢にあわせたらなんだけどな、と呟いていた。

余り不満も言わずに承諾したのは雇い主の命令だったかららしい。

 

「最善か」

 

詳しい最善の意味を仁王は聞かないが、ディオがディオのままでいるには学校生活をするのが最善であるようだ。

 

「俺は何をすれば良い」

 

『”ディオニージ様の補佐をお願いします。あの方は学校には通ったことはなく、学校というのは戦闘に使うには丁度良い場所というイメージを持っているようですから”』

 

物を武器に変換させて電撃を載せて相手にたたき込んだり、武器を作って戦闘をしていたようだが狭い場所よりもディオは広い場所の方が戦いやすいのだろう。

 

「……そこからなおさんとな。こっちの要望はどれだけ聞いてもらえる」

 

『”まずは要望を言っていただければこちらで判断します”』

 

「狂気の血について詳しく知りたい」

 

話せばミーミルが反応を遅らせた。

 

『”レアがレジュメを作ると言っていますので。それを送ります”』

 

要約の資料を出してはくれるようだ。レアはミーミルの制作者である。どんな人物かは知らない。

仁王は深呼吸をした。

 

「助かる。……事件は終わったんじゃな」

 

『”今回の教祖が怪物化した事件に関しては、終わりました。事後処理は玖月機関に任せましたので、死んだり怪物化した者たちは行方不明扱いなどで処置するでしょう”』

 

何人犠牲になったのかについては仁王は数えないことにした。数えたら数えたで気持ちが沈む。

自分に告白をして振ってしまった彼女や変質してしまった怪物も元は人間だったのだ。 怪物化したら戻れないとディオは話していた。

仁王はこれからの行動方針を決め、携帯電話でメールを柳生比呂士に送る。副部長の真田に送るのが正しいかも知れないが真田は九時を過ぎたらさっさと寝るし、

柳生にクッションになって貰う。

 

「眠いんで寝る。明日はディオを立海に案内する」

 

『”おやすみなさいませ”』

 

目を閉じた。疲れは仁王の意識を一気に押し流し、彼は眠る。死にかけても、明日は続く。部活があるし、

体調不良を理由に休んでも良いが、仁王はディオを立海に案内したかったのだ。

 

 

 

本当ならば朝早くに出なければならないのだが、仁王は体調不良を病院に見て貰ったが余り無理は出来ないと朝練をカットした。

部活を完全に休むのではなく、午前中だけは出る。

 

「立海大は二連覇っていうことは、……四天宝寺に勝ってるんだ」

 

「四天宝寺、しっとるんか。見学し取った大阪の学校はそこか」

 

四天宝寺中は大阪にある中学校だ。

全国大会ベスト四で決勝戦で戦った牧ノ藤よりも立海を苦しめた学校でアル。

ディオは立海大付属中の制服を着ていた。ディオが仁王の制服を真似して物質精製で作ったらしい。

仁王の言葉にディオはそうだよ、と答えた。

 

「散策は好きなんだ。制服の出来は……良い方だな」

 

「制服とかすぐに作れるんなら何処でも侵入出来るな」

 

「偽物と判断されると困るから最初はコレを着て、ちゃんとしたのを受け取るよ。物質精製能力は無敵じゃない」

 

眠そうにディオは欠伸をしていた。

仁王はテニスバッグを背負い、彼と共に立海大付属中へと向かっている。体調が戻っては来ているが、部活での会話によっては

学校を案内すると言って今日の部活は参加しないことも選択の視野に入れていた。

無理はしない。

 

「質量保存の法則とか無視しとるくせに」

 

『”十一番目の血の謎の一つです”』

 

「狂気の血が全般的に謎でいいんじゃ」

 

「それでいいんだよ。……お前、レアとかは良いの?」

多機能情報端末から音がして、ミーミルが書いてくる。後半部分はミーミルに話しかけているのだろう。

 

『”ディオニージ様と仁王様を補佐しろというのが最優先事項です”』

 

「そっか」

 

「ミーミルの言葉が分かるんか」

 

「その多機能情報端末の電波を読み取ってる」

 

ミーミルは日本語で文字会話を仁王としているが、ディオは送られてくるときの電波を受信してミーミルの言葉を理解しているらしい。

 

「……アンテナ?」

 

「能力としては可能だよ。前の時は封じられていたから出来ないし、読み過ぎると頭痛がするから余りしないだけ」

 

「便利じゃのう。無人島に放り込まれても生き延びられそうな」

 

「島の開拓とかしろとかやらされるのは……あの五人組は好きだよ」

 

ディオは日本のあの番組を知っているようだ。

話していると立海大付属中へとたどり着く。テニスコートまではまだ歩かなければならない。

 

「転入手続きは」

 

「明日は学力を見る試験は一応受けるけど入学は確定してる。玖月が一晩で頑張ってくれた」

 

晴れやかにディオが言う。テニスコートへと続く道を歩いてくると後方から走ってくる 黒い髪が天然パーマのようにかかっている少年と会った。

テニス部のユニフォームを着ている。

 

「仁王先輩。おはようございます。体調、無事っすか。そうだ。顧問の先生が仁王先輩を見かけたら職員室に来てくれって」

 

「回復はした。呼びだし。体調不良のことか……? ディオ、すまんが先にテニスコートに行っとってくれ。道は、赤也に案内してもらってくれ。

赤也、コイツは俺の友人で今度立海に転入する予定でな。テニス部を見学させてやってくれ」

 

「わかりました」

 

「行ってらっしゃい」

 

体調不良で何日か調子が悪かったので、心配でもされているのだろうかと仁王は考える。仁王は後輩である赤也にディオを任せて校舎に向かう。

ディオと赤也が残された。

 

 

 

立海大付属中一年、切原赤也はでディオと呼ばれた青年を見上げた。身長は自分よりも若干高く、立海大付属中のブレザーをきっちり着ている。

 

「仁王の後輩? おれはディオニージ・ドゥリンダナ。デューで良いよ」

 

「外国人……」

 

「日本語は話せるから引かないで。テニス部、見てみたいな。案内してくれる?」

 

名前が横文字で外国人と判断した赤也は戸惑う。

赤也は日本語は会話レベルで出来るが英語は大の苦手だ。英語の成績が低すぎて先輩達に怒られている。

 

「案内します。日本語が話せて良かった。英語とかだったら、オレ、コミュニケーションが無理なんで」

 

「堂々と言うことかな」

 

日本語が上手い外国人である仁王の友人に赤也の警戒心はない。言葉が通じて嬉しい。 君もテニス部なのかい? と聞かれたので学年と名前を教えた。

 

「英語ってよく分からないし。英語が話せなくても生きていけるっすよね」

 

「生きてはいけるけど、話し方によっては逆に日本語の方が通じるって時もあるけどね……」

 

「赤也!! 先生との補習の話し合いは終わったのか」

 

「終わらせましたよ!!」

 

「ん? 誰だ?」

 

テニスコートにたどり着くと大声で言われた。赤也が苦手としている先輩が叫んでくる。赤也も彼に届くように話した。

キャップを被り、厳つい顔をした男がテニスコートを囲んでいる金網の前に来た。赤也とディオも彼の前に着く。

 

「初めまして。邪魔はしないよ」

 

「仁王先輩の友達らしいんです。立海に転入してくるらしいんですよ」

 

「部活には迷惑はかけないよ。テニス部の顧問の先生だよね。部活、見学しても良いですか?」

 

悪気無く、ディオは彼に言った。

ディオの声はテニスコート全体に届き、球拾いをしていた同級生や練習をしていた先輩達の動きを止めた。

 

「……駄目なの?」

 

「い、いや、そっちじゃなくて……えーっと」

 

赤也は言葉を選び始める。ここで失敗すると大惨事だ。

 

「顧問じゃなくて、コーチ?」

 

「そっちでもなくて、この人、副部長なんです!! うちのテニス部の副部長!!」

 

勘違いしても仕方が無い容姿をしている先輩と悪気無く言っているディオの間を取り持とうと赤也は大声で説明した。

彼は真田源一郎、立海大付属中の二年生で男子テニス部の副部長だ。

 

「……副武将……」

 

「ふ・く・ぶ・ちょ・う。です。この人、中学二年生で仁王先輩と同じ年っすよ」

 

赤也は再び大声を出す。ディオは真田の顔を眺めた。

沈黙する。

 

「マジ?」

 

「マジです」

 

再び沈黙し、余り表情がなかったディオが驚く。

 

「え? 義務教育真っ最中なの? 老け顔のおっさんじゃないの? おれのこと、からかってない? 嘘だよね。こんな老け顔の中学生が居たら怖いよ!!」

 

大声でディオが言う。困惑が声いっぱいにこもっていた。

ディオが困惑するのも赤也は分からないでもないが、副部長のこめかみが引きつっている。

このままだと怒りをぶちまけそうだ。

怒った副部長は怖いので、赤也はディオに信じさせるために言葉を続ける。

 

「おっさんに見えるけどおっさんじゃなくて、からかってもないし。怖くても老け顔の中学生で、皇帝です」

 

「……肯定って推されても……頷くことは出来ないってば。信じられないよ。否定してくれよ」

 

「真田副部長は皇帝なんですってば、そう呼ばれてるんです」

 

「そっちの肯定ではなくて皇帝。王の方だ」

 

「柳先輩!!」

 

会話が混乱しそうになる中で助け船が入る。茶色い髪を整ったショートカットにして目を閉じているテニス部の実力者の一人である柳蓮二が会話に加わった。

ディオが柳の方に視線を向ける。

 

「Imperatorの方か。異名?」

 

「異名だな。……イタリア語か」

 

「分かりやすく言うとおれはイタリア人だよ。……念のために聞くけど、そこの皇帝の異名を持っているらしいおっさんは、本当に中学二年生で、風邪引いたら小児科に通う年齢で、副部長?」

 

「疑問に答えよう。おっさんに見えるが弦一郎は中学二年生で、俺と同じ年で風邪引いたら小児科に通う赤也の一つ上の先輩で、立海大付属中男子テニス部の副部長だ」

 

ディオは三度沈黙した。

柳の方を眺め、赤也の方を眺め、副部長の方を眺め、

 

「日本はおかしな国だ……」

 

「そこまでいうか――!?」

 

「落ち着いてくださいよ。真田副部長!!」

 

心底そう思ったらしく、ディオが言い、真田の怒声がテニスコートいっぱいに響き渡り、練習が完全に中断した。

 

 

 

三十分後、仁王が部室前に来ると奇妙なこととなっていた。

オープンカフェの如く丸テーブルが二つ置かれ、テーブルを囲むように椅子が並べられていて、そのうちの一つにディオが座り、ティーカップの紅茶を飲んでいる。

皿の上には焼きたてのワッフルが置かれていて、ディオの側には真田や柳が居た。

見てみればテニス部の正レギュラー、全員が集合している。

 

「……どうなって……」

 

「おかえり。仁王。皇帝をおっさんって言ったら部活が止まっちゃってさ……ごめん」

 

「そこは謝らんでも、初見で真田が中学生と見抜くのは最近は無謀なこととなってきて……おっさんと勘違いしても無理はない」

 

うかつだったと仁王は思う。

 

「仁王!!」

 

「真田。落ち着けよ。甥っ子と一緒に居たらお父さんですか? ってお前は勘違いされたんだろい」

 

「……映画とか見に行くとき、必ず、学生証提示しないといけないからな……」

 

追加分の皿を並べていくのは赤髪のショートカットで仁王よりも背の低い赤髪の少年、丸井ブン太で、彼はお菓子作りが得意だ。

食べるのも得意だが。付け足すようにして言うのはブン太を手伝っているジャッカル桑原だ。褐色肌で頭を剃っている。

 

「遅れたお前のためにあらすじを話すと、部活にならなくなり、柳生が異文化コミュニケーションを提案してこうなったわけだ」

 

「こっちに来て数日だけど、皇帝が中学生ってのが一番驚いたよ……」

 

(おい。それって……)

 

柳が要約する。場が部活の空気にならないため、柳生が交流会のようなお茶会にしたのだろう。

メールで美味しい紅茶葉が手に入ったのですとか書いてあった。

最近起きたことと言えば仁王が死にかけた戦いだった。不可思議なことばかりが起きていたのにディオは驚いていない。

 

【ディオニージ様にとって狂気の血で起きる現象はどれも血で起きることと納得してしまいますから】

 

ポケットに入れっぱなしの多機能情報端末が軽い音を立て、ミーミルが文字で伝えてくる。仁王の思ったことを推測したようだ。

出来すぎる人工知能である。

ディオはティーカップを片手にワッフルをナプキンにくるんで食べていた。

 

「リエージュ風のワッフルは味が調整しやすいところが好きだね」

 

「おっ、分かる方? ブリュッセル風は嫌いなのか」

 

「日本で食べたのはちょっとくどかったな。これは良い塩梅」

 

皿に載っているワッフルは二つ、四角いワッフルで、各々にあわせているのか真田のワッフルにはホイップクリームがかかっていないが、赤也のにはかかっている。

仁王の前に出された皿のワッフルにもホイップクリームがかかっていた。

 

「……ぶりゅっせるとりえーじゅだとどう違うのだ」

 

「食感で言うとブリュッセルがさくさくしてる。リエージュは重いかな。ベルギーに行ったときに色々食べてた」

 

ベルギーワッフルと言われているワッフルは二種類あり、ブリュッセルは大きめの長方形のワッフルで歯ごたえがあり、リエージュワッフルの方は楕円形で中にパールシュガーが入っている。

 

「ディオさん、ベルギーとか行って……ベルギー語とか話せたり?」

 

「praat niet.Bien que pas exister」

 

「すげー!!」

 

赤也がはしゃぐ中、ディオがやや困ったように首を傾げた。

 

「ベルギーにベルギー語は存在しない。オランダ語とフランス語と、……英語とドイツ語もか」

 

「最初がオランダ。次はフランス。サーリ、詳しいね」

 

「どっちにしろお前、色々話せるっぽいな」

 

柳が察す。

ベルギーにはベルギー語という言語はない。主に話されているのはオランダ語とフランス語で、英語も地方によっては使われる。

言語問題が非常に厄介なのがベルギーだ。ジャッカル桑原が感心しているがお前もポルトガル語とか話せただろう。

 

「サーリって柳のことじゃろうが、どういう経緯でサーリに」

 

「イタリア語でサーリチェだからね。自己紹介とかは終わってる」

 

「ディオ君は四月からウチの生徒になるんですね」

 

「よろしく。三年生になるんだ。――この紅茶、美味しい。何の茶葉?」

 

「ルフナですね。ティーウィズミルクにしてもあうんですよ」

 

感覚的に呼び方を決めたらしい。

仁王のダブルスのパートナーである柳生は紅茶とスコーンに密かなこだわりを持っていた。

 

(……バレんじゃろう……)

 

ディオは学年を正確に合わせると高校三年生になるのだが、柳生や真田、柳、ジャッカルに囲まれていると年下に見える。

真田が一番貫禄があるからだろう。老け顔とも言うが。

 

「でも、一年だけの転入って寂しいっすね。高校とかは……」

 

「よく分からなくてね。進路っての」

 

「確かに決めないといけないとは言え、色々やってみると良いと想いますよ。例えば部活などはどんなものを」

 

「部活……野球部とか風紀委員会、とか」

 

切原が言いディオが曖昧に呟いた。本当に分からないのだ。学校なんて通ったことはないというのもあるだろうが、先のことなど未定である。

よく分からないとの解答を柳生は何処の学校に通うべきなのかというやや具体的な内容と取ったのだろう。

 

「風紀委員会は部活じゃないっすよ」

 

「違反者を殴ったりトンファー振り回したりするんだね」

 

「しないっすから」

 

「どこからそんな知識を仕入れてきたのだ。ディオよ」

 

部活の知識をディオは持ってはいるが間違っているところがあるようだ。ディオは困ったようにして言う。

 

「運動部は運動は得意じゃないから、やれないけど」

 

(得意じゃ……)

 

戦闘を思い浮かべてみるがあれで苦手と言っていたらディオの運動が得意なレベルはどれぐらいになるのか……仁王にだけ聞こえる程度に

調整された着信音が鳴る。

 

『”部活というのは公式大会などがあるでしょう。フェアではないとディオニージ様は判断したのでは。

玖月機関関係者でも、狂気の血に目覚め、やっていたスポーツを辞めたというのは聞く話です。筋力特化強化など、発動すれば小学生が車を持ち上げたなど、

珍しくはありません”』

 

ミーミルが返す。

ほぼそれなりというのは、覚醒した血によるのだろう。小学生が車を持ち上げる様子を想像してみるが異常にしか見えない。

立海大附属中学校の部活は文化部もあるがスポーツ部が基本強いし、仁王としてはディオが学校に通うならば部活も経験して欲しい。

すぐに手が浮かんだ。

 

「それなら、マネージャーはどうじゃ。幸村が居らん今、部員の仕切りは真田が安定させとるが、雑用はいるじゃろう」

 

「マネージャー?」

 

「真田は怖くて、後輩どもが何も言えんとかあるし。柳生とか俺とかに伝わるんじゃ。ディオは物怖じせんから真田と後輩のクッションにもなるじゃろう」

 

「副武将、怖い……か。剣術、長くやってるし、武士っぽいから……やれるならやっても良いよ」

 

ディオにとっては真田はそう怖い人間ではない。雑用やコート掃除などは一年生が持ち回りでしているが、仁王としては細かいことに気がつく者が欲しいし、

真田との壁も欲しかった。別にやろうがやらなかろうがどちらでも良いのだろう。ディオは了承する。

 

「ん? ディオ。俺が剣道をしているということは分かるのか?」

 

「手がそんな感じだし、居合いもしてるんだろう」

 

「日本文化に詳しいのか……」

 

「……格好いいじゃないか」

 

「ジャパニーズ文化って感じかい?」

 

――コイツ、気がついたことが驚かれるってこと、わからんかったんか。

手を見れば分かるなんてディオのような裏社会に居る者ぐらいなのだろう。きっと。仁王だって真田について話されなければ知らなかったことだ。

普通に応対しているようで、ややごまかしていた。丸井が聞いてきたので何度も頷いている。

不自然さに気がつかれることはなく、この場は、収まり、会話が続いた。

 

 

 

お茶会を終えてテーブルを片付けることをディオは手伝った。

仁王は大事を取って今日は部活を見学すると言っていた。ディオがテニス部のマネージャーになるという提案はレギュラー陣からは好意的に受け止められた。

 

「入学試験は明日、さっさと受ける。中学校の勉強はしてるんだ。前に誘拐したボス候補がとても馬鹿だったから教えるのに教科書見てた」

 

「……誘拐って犯罪じゃ」

 

「すごい、怒られたよ」

 

「警察につかまらんかったんか」

 

「捕まっていたらおれ、ここにはいない。……午後はユキムラって人に会いに行くんだね」

 

真田の大声によりディオと仁王の会話はかき消されている。自分たちに聞こえる程度の音量で喋っていた。

邪魔にならないようにテニス部周辺の草むらに座り、練習風景を眺めながら仁王と話す。

四天宝寺の練習は各々自由にやっていたように見えたが、立海は徹底的に基礎をしているようだ。

 

「うちの部長じゃ。入院しとる。顧問からは許可はもらえるにしても、幸村にも貰わんと」

 

幸村というのがテニス部部長の名前であるようだ。真田と幸村だとディオも知っている武将の名前になる。

 

「どんな武将だろう」

 

「……見た目は細いし、武将とは違う」

 

仁王が否定してくる。ディオは気になったことを聞いた。

 

「皇帝はこっちの人間じゃないよね。真っ直ぐというか、人を斬った気配はしてないけど」

 

「されても困る……お前、剣術とか剣道とかは。前の戦闘の時は二刀流じゃったが」

 

「我流だし、剣をちゃんとしている奴だったら、ケラヴノスたたき込むよ」

 

ディオは昨日の戦闘ではチェーンが着いたダガーを握って戦ったが、剣士や剣を専門としている者たちにはかなわない。

自分が一番本領が発揮できる方法で戦う。接近戦を挑まれそうになったら使うだけでディオが一番得意としているのは中距離戦だ。

 

「ちゃんとしている奴? 真田のことか」

 

「皇帝は上手く近距離でやっても勝てそうだけどさ。同胞で二人、剣術だとおれより強いのがいる。アンは外すけど」

 

「二人……」

 

「……一人は死んでるけど、もう一人は日本に居るよ。赤也並に普段は明るい。でも、アイツより馬鹿じゃないよ」

 

並盛町でマフィアの次期ボスを護衛する羽目になった暗殺者だ。自分よりも名が売れてしまっている。

アンことルシエラ・フラガラッハは武器が反則なので外す。ディオが思い浮かべる二人はその辺にある果物ナイフを使っても、

剣術での戦いならディオよりも強い。

 

「狂気の血とは恐ろしいもんじゃのう。その二人もひいとるんか。それで……」

 

「アイツとダインスは引いてない。引いてなくても強い人、裏社会には沢山居るよ」

 

「引いとらんでお前より強いんか」

 

「ダインスについては刃物以外で勝負すれば勝ち目はある」

 

そこは言い切っておく。

 

「刃物に関してはそのダインスってのは凄いようじゃな」

 

「アイツの腕は天才通り越して病だ」

 

かなり高い評価をディオはしてしまっているが、刃物の扱いが上手くても死ぬときは死ぬ。しかし、ディオ以上のブラック企業に放り込まれながら、

ダインスはよく生きているものだとそこは感心していた。

着信音が鳴る。

ディオは多機能情報端末を取り出すとメールを確認していた。メールが入っていた。

ユースとアドレスが登録されている。

”アンが行方不明なのですが情報を知りませんか? ヴァル兄さんが心配しています”

返すべきか迷う。

 

「誰からメールじゃ」

 

「返答を間違えたら狙撃される相手から」

 

「……ろくな知り合いおらんのう」

 

同胞の一人ではあり、ギブアンドテイクでやりとりがあるのだが、たまに返答を間違えると狙撃してくる。

狂気の血のお陰で怪我には強いとは言え、立て続けに狙撃されればしんどい。

 

(午後になったら電話、アンに……ユースとヴァルについては言わないでおくか)

 

メールを手早くチェックしながら、ディオは予定を組み立てる。

あの二人のことを出したら、心配しないでよみたいに言うだろう。組織が違うとは言え、ディオが同胞と呼ぶ者たちは”お菓子の家”の生き残りだ。

既に死んでしまったアイツが壊滅状態に追い込んで、組織の生き残りも自分たち剣王を除いてヴァルや自分やアンが殺したりしているので、

実質は剣王の八人しか生き延びていない。

 

「アンとダインスか」

 

「名前じゃなくて愛称だからね。会う機会は……アンはあるかも。ダインスはないかな」

 

テニス部のマネージャーをすることになったルシエラとは会うかも知れないがもう一人の方はない。年齢的には仁王の一つ下ではあるが、

これ以上、同胞について話すことは止めて、ディオは別の話題を探し出した。

 

 

【続く】

 




後編はプロットは出来てるのでどうにか。
時間軸は大阪のコンビニおにぎりと同じ
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