会話が伸びていったからというかそれです。
四月には後編書きたいなとは。
【ケラヴノス2 中編】
仁王は明日から、部活に参加することにした。
今日も見学で昨日は早退だったが、明日から無理せず部活をするはずだ。
「お前の顔色が悪い」
「飯食ってないからじゃねえの?」
「皆で何か食べてから幸村の見舞いに行くぞ」
という真田や丸井の言葉により、テニス部レギュラーと、ディオで幸村の見舞いだ。
昼時になり、ディオは電話をするためにテニス部から離れた。
レギュラーメンバーは部室で制服に着替えている。
仁王は外で待っていた。
「焼き肉でも食うんか……」
レギュラー陣が共通して好きなのは焼き肉だ。各自で食事となると、食べない者も居そうだから真田が心配したのだろう。
「みんな、まだ着替えてるの?」
ディオが帰ってきた。手ぶら状態だ。
「中で話しでもしとるんじゃろう。電話はおわったんか」
「終わった終わった。お見舞いについてとか聞いたんだけど、本をおすすめされた。花を持っていかないと駄目みたいだけど、そこはイタリアと違うね」
「駄目というわけではないですが、幸村君は花が好きなので、持って行くべきです」
それなら買おうか、とディオが柳生に向かって言う。
花と本はベタではあるが、見舞いの品としては丁度いいものである。
待っていると、部室のドアが開いて真田達が制服に着替えていた。それぞれ、テニスバッグを背負っている。
「イタリアだと本は持って行かないんっすか」
「本じゃない。花の方だよ。死人みたいだから。花は持っていかない。日本だとPaese che vai, usanza che troviってことで従うけど」
「……ディオさん、英語は分からないです」
「英語だと、when in Rome, do as the Romans do。短くして、When in RomaかDo as the Romans do」
最初の言葉はイタリア語だろう。ディオは言い方を変えてみるが、赤也は疑問符を浮かべるに浮かべている。
「卿に入っては郷に従えだな。英語の方を訳せばローマではローマ人のする通りにせよとなる」
「赤也、お前は英語をもっと勉強しろ!!」
「全教科、赤也は駄目じゃねえか。見舞いならケーキとかも買おうぜ!!」
柳が訳す。真田が怒り、丸井がチューインガムを膨らませながら言う。ディオは日本に居る限りは日本の慣習に従うようにはするようだ。
「それは持って行っても殆ど、お前が食うんじゃねえか……」
「ひとまずは出発しよう。病院の側の商店街で幸村の見舞いの品を買えば良いし、食事も取れば良い」
「遠い?」
「すぐだ」
ジャッカルが呆れたように呟いた。
幸村の入院している金井総合病院はここから近い。電車で少しのところだ。春休み中もあってか、私服の学生や同じ立海大付属中の生徒が電車に乗っていた。
すし詰め状態ではなく、座席はあるが全て埋まっていて、何人かが立っている状態だ。
「知ってる。行方不明事件の話。同級生とか、消えたらしいんだけど」
「先生がその子の家に行ったら、引っ越して父親ごと消えていたとか、噂によると家族ごと消えたっての他にもあるらしいんだけど」
女子中学生らしい二人の会話が聞こえてくる。電車内はというと仁王と赤也が座席に座り、他が立っていた。
空いている座席に座れたのが二人だけだったのだ。
「行方不明ってこの辺か」
「周囲に散らばっているらしい」
行方不明事件とは仁王には心当たりがある。
恐らくはディオが処理した事件のことで、後始末は玖月機関というところに任せた一件だ。任せたとは言っているが噂になっている。
多機能情報端末が音を立てる。仁王が画面を見るとそこには言葉が書いてあった。
『”玖月機関は狂気の血が関わってないように見せて行方不明を処理していくだけで、偽装するのはかなり手間。今回は範囲がちょっと大きかったから”』
ディオの言葉でディオはポケットに手を入れている。能力で仁王の端末に送ったのだろう。言葉はすぐに消えた。
「日本はヨーロッパほど物騒じゃなさそうだけど……」
「ヨーロッパか。行ったことないんっすよ。ディオさんは何処に行ってみたんです?」
「ベルギー、ドイツ、スペイン、フランス、アメリカ、オーストラリア……」
「すげー!!」
ディオが適当に話題を変えるために話す。赤也はディオに興味津々と言った様子だ。仁王は隣で黙りながら、喋らないようにするが、
「途中から別の大陸はいっとらんか」
「入れちゃったよ」
そこだけはつっこみを入れておく。
電車が目的地近くまで着いたので降りて、商店街にある食堂で取ったが、ディオは孤独のグルメを知っていた。
孤独のグルメは一人のサラリーマン風の男が店に入っては黙々と色々なものを食べる漫画、もしくはそれを題材にしたテレビドラマだ。
食べてから、何組かに別れて幸村の見舞いの品を調達する。話し合いとグーパーの末、ジャッカル、真田、柳、ブン太がケーキを
柳生と赤也が本を仁王とディオで花を調達することになった。
「……前に赤也に花を買わせたらラッピングされた植木鉢に咲いた花での」
「それは皇帝が怒りそうだね。根付く、って。花屋さんにお見舞いの品です。って言えば回避できたかも。植木鉢送りたいんですとか言ったら嫌がらせだし」
「アイツに悪気は無かったんじゃが」
「場合によっては無知の方が怖いけどね。幸村って何の病気なの」
病院近くの商店街はアーケード街だ。
まだシャッター商店街になっていない商店街で花屋もケーキ屋も本屋もある。植木鉢の 花は見舞いの品としては良くない。
縁起視点で見れば根付くということで、幸村が病院から出られないと言うことになってしまう。
「ギラン・バレー症候群に酷似しとる免疫性の難病でな。幸村は花好きで、花を持っていくと喜ぶ。コート内だと厳しい奴じゃが、それ以外ではそうでもない」
「おれの同胞もそういうやつばっかだよ。周囲は違うかな」
ディオは朗らかだ。
幸村らしい人間が何人も居ることを仁王は想像した。コート内では厳しいが他では穏やかなのが幸村だが、厳しい幸村は恐れられているところがある。
怖い。
幸村の病気はギラン・バレー症候群そのものではないのだが、症状が似ている。
運動神経の障害により、手足に急激に力が入らなくなるのがギラン・バレー症候群だ。
「花は……どんなのがええか」
「店員さんに任せよう。プロに任せる」
花屋に着く。
店内にもいくつもの花があるが、店の前にも黒い縦長の入れ物に水が入っていて、中にチューリップや百合など、仁王も知っている花や、他にも仁王が知らない花がささっていた。
花屋は高校生ぐらいに見えるバイトらしい黒いエプロンを着けた男にディオが見舞いへ持って行く花束が欲しい。
春用の花がいい。と内容や値段を伝えていた。花束が出来るまで、仁王とディオは外で待つ。
「同胞と周囲はどう違う」
話題もないので仁王はディオについて聞く。
「周囲は戦える奴はそんなにいない。道具任せでさ。おれが護衛とかしてたんだけど」
同胞の方は戦えて周囲は違う。
周囲はディオの雇い主やレアと呼んだ者のことだとは仁王は推測した。化学者とかは戦えないイメージが仁王にはある。
「……その同胞ってのはお前が言うとった狙撃してくる奴も入るんか?」
「そうだよ」
聞いた情報を仁王は整頓してみる。アンとダインスと死んでいる一人と狙撃してくる奴、生きているのは三人だ。
「友達か」
「同胞は同胞だよ」
首を傾げてディオは言う。
友達と表現しようとしてもおかしいと言った様子だった。
「お客様、お待たせしました」
花屋の店員がディオを呼ぶ。ディオは自分が花を取ってくると店内に入る。
「兄弟みたいなもんか……?」
『”それが一番近いかも知れません。レアもディオニージ様にとっては弟妹のようなものですが分類としては周囲に入るでしょう”』
ミーミルが文字を送ってきた。レアはディオよりは年下であるようだ。
「周囲が自分の周りに居る奴で、同胞はディオが最初に居た組織の連中で……同じ修行とかした奴ら?」
『”修行内容やコンセプトも違いますが、同じ”作品”です。ディオニージ様は自分のことを作品と昔、言っていました”』
(作品……)
不穏すぎる言葉だ。
ディオが半透明のビニール袋を右手に持っていた。中には紙で出来た丸い箱が入っている。
箱の色は桃色でピンクの太いリボンで縛られていた。
「見舞いの花はお前に任せておいたが」
「店員さんに詳しいことは聞いたけど、アンが教えてくれた以上に最近は厳しいみたい。果物とかも良くないって」
用件をすませてしまったのでディオがすぐに歩き出す。仁王も隣を歩いた。仁王が隣に来たのでディオは歩調を落とす。
商店街の人混みをかきわけながら進んだ。
「ミーミルが教えてくれたが、お前、最初の組織だと作品じゃったんか」
「作品だね。剣王が八、デュランダル。名字にしているドゥリンダナはデュランダルのイタリア語読みだよ」
否定せずに誇ることもせず、ただ、あった事実としてディオは話した。
「お前がデューでいい、ってのはディオだから……と違って、デュランダルだからか」
「そう。だけど、そう名乗ってもみんな、ディオって呼ぶんだ」
出会ったときの名乗りを仁王は想い出した。ディオは自己紹介の時は必ずといって言いほど同じフレーズを使っていた。
諦めたようにディオが言う。
「ディオの方が呼びやすいし、デューは連想しづらい」
「だよね。あえて言ってるだけ」
分かっているらしい。歩いていると赤也の特徴的な髪型が見えた。ディオが軽く、左手を挙げていた。
金井総合病院にディオ達が着いたのは三十分以上あとのことだ。
全員集合が少し時間がかかったのと商店街から徒歩で病院まで行ったからだ。そこそこの規模の病院で、午後の診察が始まろうとしていた。
自動ドアをくぐってから受付で真田が幸村のことを聞いていて、ディオは待機だ。
「病院って嫌いなんですよ」
「……好きな人は居るのかな……?」
「ディオさんは病院とか行く方で?」
「あんまり行かないかな」
怪我をしたりしたら自力で治せるし、それ以上の場合は結社の研究施設だ。風邪も余り引かないし引いたら自室で寝ている。
赤也が落ち着かない様子で居た。
車いすに乗った子供や、看護士につきそわれている老人が行き交う。
「幸村のもとに向かう。全員、階段だ」
「エレベーターを使いましょうよ」
「皇帝がエレベーターを使わないのってきっと全員乗ったら重いから……?」
「ディオ君、エレベーターはそこまで柔ではないですが真田君のことです。体を鍛えるためかと」
「普通にエレベーター使え。ディオを幸村に会わせるんじゃ。そっち優先で」
赤也が不満を漏らす。
全員乗ったところでエレベーターは無事に動くだろうが、柳生が真田の考えを伝えた。 仁王がディオを盾にエレベーターを使うことを主張する。
今回は仁王の主張が通り、全員でエレベーターに乗った。幸村の病室のある階までエレベーターが動き、止まる。
真田が先導した。
病室の前に来ると真田が軽くノックをする。
(扉を壊さないばかりのノックじゃないな……)
病院だから気を遣っているのかとディオが考えているとどうぞ、と柔らかな声が聞こえた。
「入るぞ。幸村」
真田が先に入り、後からジャッカルや仁王、柳生やブン太、柳に赤也が入る。ディオは最後に入った。
病室は個室で、テレビと台が置かれていて、パイプベッドがある。パイプベッドに上半身を起こした薄手のカーディガンを羽織った
パジャマ姿の少年が居た。雰囲気が、柔らかそうな少年だ。
(幸村ってイメージと違う……)
日本の幸村……それこそ真田幸村の猛々しいイメージとは違う、図書館で本でも読んでいそうな少年だ。彼が幸村精市であるらしい。
真田よりもテニスでは強いようだが、そうは見えない。
武力や戦闘力ならば見た感じで計れることには計れるがテニスについては働かない。
「皆、来てくれたんだ。――彼は……」
幸村は立海レギュラー陣が来たことにより表情を明るくするが、ディオに視線をやる。 柳が代表してディオの説明をした。
「紹介しよう。幸村、彼はディオニージ・ドゥリンダナといって……」
「初めまして。おれはディオニージ・ドゥリンダナ……ディオでもデューでもお好きに」
柔らかめにディオは言うと柔らかく幸村は返した。
「俺は幸村精市、よろしくね」
「これ、お見舞いの品」
花屋から持ってきた袋を幸村に手渡す。幸村が丸いラッピングされた紙箱を取り出した。幸村が丁寧に包装紙をはがして中身を取り出しているが、
紙箱の中にはプリザーブドフラワーが入っている。春を想わせるピンク色の薔薇が三つと薄い緑色の葉、アクセントに白いかすみ草が入っている。
「花束じゃないんだな」
「遠慮した方が良いとか言われた。最近は日本の病院、厳しいみたい」
花束を想像していたジャッカルにディオは花屋の店員が教えてくれたことを説明する。
最近では花粉アレルギーや花瓶の衛生面の問題、感染症の予防のために生花を禁止している病院ばかりだ。金井総合病院も近いうちに
生花の持ち込みを禁止すると病院玄関近くの看板に書いてあった。
他にも、花を選ぶ際には白や紫や青の花は縁起が悪いから辞めろとか、……ただ本人が好きならば別にいいんじゃないかという面もあるらしい……
赤い花は血を連想するから辞めろとか、菊は仏花に似ているし、椿は首が落ちるから不吉だし、百合は香りが強いから辞めるべき、シクラメンは名前に死と苦が入っているから止めろなど、縁起を担いでばかりだ。
一部のナポリ人並である。
何が良いかと言えばナチュラルテイストの花が言いそうだ。
そしてプリザーブドフラワーは特殊な溶液で花の水分を抜いたものであり、花粉などもでないため、見舞いにはもってこいとおすすめされた。
ちょっと高いが。
「これなら、いつでも飾れるし」
「ケーキもあるぜ。幸村君!!」
丸井が箱を取り出した。中には大量のケーキが入っているだろう。柳生が眼鏡越しに窓の外に視線をうつした。
晴れた青空が広がっている。
「何なら屋上で食べればどうでしょう。皿やフォークの準備はいりますが」
「そのまま食えばよくね? 買ってこなかったぞ」
「貴方は幸村君にそのまま食べさせるつもりで……」
「おれ、取ってくるよ。先に行ってて。天気がいいから、外に出ると楽しいんじゃないかな」
花粉症ではなかったら外はいいはずだ。柳生や丸井の話を聞きながらディオは皿やフォークなどを用意することにする。
「屋上なら行けるから……」
幸村が折りたたんだ包装紙やリボンとプリザーブドフラワーの入った箱をベッドサイドの棚においた。
ベッドから出る。
「買ってくるのか」
「そんな感じだね。先に行ってて」
立海レギュラー陣が幸村を気遣いつつ、病室を出て行く。ディオは病室を出ようとはせずに”いらないもの”を探した。
ティッシュボックスがあったのでティッシュを二枚ほど手に取る。
「百円ショップで見て、触れたとおりに……」
ティッシュ二枚に力を込めると淡く光る。出来たのはプラスティックで出来たケーキフォークだ。
ディオの物質精製の能力はあるものを別のものに変換する。プラスティックにしたのは捨てやすいからだ。人数分のケーキフォークと
紙皿のパック詰めを作り上げる。これも百円ショップで見て触れたものだ。触れたとはいっても中身ではなく上からだ。
『”ディオニージ様、下の売店で売っているのでは”』
「こっちの方が楽なのと、この程度、使ったところで血は騒がない」
ディオが持つ多機能情報端末から音が出てミーミルが話してくるが画面を眺めることはなく、ディオは電波として受信して、読み取る。花を入れていた袋にフォークや紙皿をつめるとディオは病室を出て、屋上の階段をゆっくり上り、扉を開ける。
この辺りの景色が一望できる場所で幸村はベンチに座っていた。居るのは立海レギュラー陣だけだ。
「買ってきたんか」
「飲み物もあるべきかな」
「なくてもいいぜ。ケーキがあれば!」
「ブン太は本当に甘いもの……食べ物が好きだね……」
ほほえましく眺めている幸村にディオは紙皿とケーキフォークを渡して、他のメンバーにも順次渡していく。
「最初に皆が選んでから、丸井が食べるべきだ。このままではケーキが残らない」
「それならまず、幸村から」
丸井の目の前にあるケーキ箱をディオは取ると幸村の前に出した。幸村が指さしたケーキをディオは取り、皿に載せておく。
順番としては次に真田で次に柳、そこから悩んで柳生、仁王、ジャッカル、赤也として、最後に自分が取って、丸井の前に箱を返した。
配り終えたが、人数以上のケーキが箱の中に入っているためコレは全て丸井が食べてしまうのだろう。
「朝にはワッフルを食べたが昼にはケーキか」
「お前が武将じゃったから」
「武将?」
「ディオ君が仕方が無いとは言え、真田君を顧問と勘違いしまして」
(柳生……? 仕方がないって……)
仁王が笑いながらチョコレートケーキを口にしていた。
フォローを入れずに直球で言ってきた気がする柳生。部活中に聞いたが異名は紳士らしいのだが、紳士っぽくない。
しかし、勘違いしたディオが言うのも何だが、真田は老け顔だ。大人びて居るではなく老け顔だ。
「柳生はたまに俺よりも黒いからのう」
「黒いとは何ですか黒いとは!! 私は紳士的な態度を崩さないだけです」
自信満々に柳生は言うが紳士って自分の本質を表に出さないようにするカバーみたいなところもないか。
丸井はケーキを手にとってそのまま食べているし、赤也はフォークで食べていた。
「ディオだが、マネージャーとして立海テニス部に迎えても良いだろうか」
「いいよ。部活については殆ど真田や柳に任せっぱなしだから、俺に許可を取らなくても……」
「幸村、お前は部長なのだ」
入院し続ける自分を卑下する幸村を真田は強い口調で叱るように言う。テニス部部長からディオがマネージャーになることの許可は下りた。
「……幸村って、皇帝よりもテニス強いの? 刃物や日本刀を振り回す様子はないんだけど」
「刃物……?」
幸村が聞いてきたので、ディオは出会った事例を出してみる。
「皇帝よりきっと強いんだろう? つまり日本刀をそれなりに扱えて、これ、あわせてみたのー、とか笑いながら日本刀を手に持って、
ざくざく切り始めて、妨害しても、切り倒して、日本刀って切れ味最高。グルカナイフは相手をたたきつぶすことが前提だけど、
日本刀の繊細だけどどんどん無骨になっていく斬り加減も捨てがたい、とか言わないの?」
ディオが棒読みで言うと、涼しい風が立海テニス部レギュラー陣の元を吹き抜ける。幸村は強い苦笑を浮かべた。
「俺は、幸村が名字だけど武将じゃないからね。日本刀とか使えないからね? テニスをするのに日本刀を使えるってのはいらないからね。真田は単に
昔から剣道とかをしていただけで」
「そうなんだ」
「ゆ、幸村、そこも言うべき何だが、ディオが言う事例ってどんなのだ。色々おかしいだろう」
「何かのマンガでしょうか……」
ジャッカルと柳生が後ずさりをしかけていて、丸井はケーキを喉に詰まらせて何度ものど元を叩いていた。
「コイツは日本のサブカルチャーが好きでのう。適当な漫画を読んだんじゃろう」
「読んだ。ネットの漫画かなんかで」
仁王が一瞬だけディオの方に視線を送る。誤魔化せ、と言っていたので誤魔化すことにする。
「ネットは魔窟らしいがそんなマンガもあるんだな……」
「マンガとか、日本の漫画とか読みます?」
「読むよ。最近、読んで面白かったのは……」
未だに引いた状態から解放されないジャッカルにマンガと聞いて目を輝かせている赤也、ディオも日本の漫画は読んでいるらしく、漫画の話題を出す。
「アイツは天然というか、天然じゃからのう」
「ある意味、弦一郎のようなものだな」
「天然……」
「なるほど。天然か」
天然という、ズレたところがあっても仕方が無いと言う風に片付けられる言葉を仁王は使っておきた。柳、真田、幸村は納得はしてくれた。
自分は場の空気を壊しやすいというか、日本は場の空気をよく読めと言われる場所ではあるが、ディオも空気を読むところは読むが、
外してしまうところは外してしまう。
「仁王君が説明をしていなかったかも知れませんが、幸村君、真田君、柳君の三人はビッグ3と言われています。立海大付属中テニス部の核ですね」
「ビッグ3か。御三家だね。一人増えたらポアロと対決できそう」
「私もポアロは好きなんですよ」
ディオは今度は柳生と会話を始める。本は暇なときに適当にある本を読み、エルキュール・ポアロの本もそうだった。
「四月から、新入生も入ってくるからね。真田、テニス部を頼むよ。ディオについても、色々と教えてやってほしい」
「テニス部についてとかは教わりたいな。日本刀の扱いについては教わりたくないよ。使う気はないから」
「教えるわけがないだろう!! 使う気がないとか、精神鍛錬や武道の訓練ならまだしも、お前はしないだろう。最近は異国人もしているようだが」
「したければするんじゃないかな。しなければいけないとかさ」
「ディオ。中学校のテニス部で、日本刀について教えることは普通は無い」
幸村が穏やかに真田に話す。
使う気がないのはメインの武器にすることは無いと言う意味ではある。二刀流のダガーにしているのは日本刀よりは扱いやすいからだ。
日本刀が使える者でディオがすぐに浮かぶのは並盛中に居る雨の守護者と同胞の刃物中毒者だろう。
グルカナイフと日本刀についても彼女が言っていた。義兄が煩い剣士だ。それと、剣王最強。
柳が嘆息している。
「分かった。……色々場を引っかき回しちゃったけど、Vorrei che noi diventiamo amici.だからね」
「英語、英語が来た……」
「赤也が青い顔してるぜ」
イタリア語で、友達になりたいと話してみた。
日本の漫画を読んだり、アニメを見ていたりしていたらこういうときはこう言うのだと想い、言ってみたら赤也が寒気がしている表情をしている。
丸井はケーキを一つずつ左右の手に持ち、頬張っていた。
「イタリア語だな」
「……イタリア語だよ。意味は……」
しっかりと柳が察してくれたのでディオは日本語で意味を告げておいた。
――意味は、友達になりたい、である。
周囲の反応を確かめておいた。
【続く】
後編はテニスさせたいな