東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

10 / 21
射命丸の仮説鋭すぎィ!ま、思考能力高いからね、多少はね?


あくまで幻想入りしたばかりの個人に注視しているんでスターウォーズ要素はまだ薄いです


第5話C Trivial Kindness.

 

 上空を彩る無数の建物・・・その配置のみならず、溢れ出る生活感がまた風景としての魅力を引き立てる。

 

 

 

 天狗の里―――山の主要拠点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは端なので、中心部へ行きましょうか」

 

 

 感傷に浸っていると案内人、射命丸文さんの声が伝わってきた。はい、と返事し、彼女に付いていく。

 

 

 歩きながら刻々と鮮明と化す里の全体像を目に映す。その中でも一番に目を惹いたのが渓谷に張り付く多種多様な建物であった。近代社会と聞いたが、その建築方式や外観は人里の物とそう変わりは無いように思える。

 

 

 そう思いつつ眺めていると、その認識には修正が必要であるという事実に突き当たる・・・あれは、

 

 

 彼の視線の先には長方形の大型ボックス・・・そして人がその内部に続々と入っていく。あれはターボリフトか? その予測通り、ターボリフトもどきは扉を閉め、上がっていく。その様子は直ぐに壁で遮られ詳しく見ることは出来ないが、リパルサーリフトに類似した技術があるというのか・・・いや、それならばなぜスピーダーに驚くのだ・・・

 

 

 やはり異なる技術を使用しているのだろうか・・・外の世界と同様の。いずれにせよ外観で判断するのは避けなければならないという事を改めて学習した。それに思い返せば、このような旧式に見えるデザインを成しているその裏で、最新若しくは現行技術を使用している様態は銀河系でも一般的である。

 

 

 次に目が向くのが先程から何度かすれ違う人々―――天狗たちである。全体的に白色の服装が目立つ。また、シャツのような形態のものだけでなく、人里でよく見られる和服?に近い服を着込む人も多数存在する。そして皆一様に目の前の女性が被るものと同一の帽子を被っている。伝統的な物なのだろうか、はたまた、機能美を追求したものか・・・。しかし、最も興味深かったのは・・・耳?である。

 

 

 視界に入る天狗たちの中には鈴仙さんやてゐさんのウサミミとはまた異なる耳が装着している者がいる。彼等も天狗なのか。疑問に思いつい射命丸さんに尋ねる。

 

 

「頭に耳?を着けているのも天狗なのですか?」

 

 

「そうですよ。あれは白狼天狗・・・狼が元となり、繁栄していった天狗種の一つです。他にも大天狗、鼻高天狗、山伏天狗なんかがいます」

 

 

 成程、鴉天狗の「鴉」の形容詞から推察していたが、天狗はやはり、複数種により構成されているらしい。

 

 

 

 

 そうしている間に、何やら箱が積まれた一画に到着する。看板が立てられているが・・・「荷物」の漢字と「き」の平仮名しか分からない。勉強の必要性を自覚する。

 

 

「ここにスピーダーを置いてもらって良いですか?」

 

 

「わかりました」

 

 

 ここは荷物の保管、駐機場所らしい。それにしては安全性の考慮が無いようにも見えるが・・・高水準の治安でそれをカバーしているのだろうか。

 

 

「あっ、一度スピーダーの写真を撮っても宜しいですか?」

 

 

「ええ、どうぞ」

 

 

 そう伝えると、彼女は首からぶら下げた機器を手に持ち、顔の前へ持ち上げる。そして、

 

 

 

 カシャッ ―

 

 

 

 ボタンを押す。

 

 

 あの機器はカメラだったのか。自分の知る物とは形状、大きさに幾分か差異がある為、予測がつかなかった。しかし、あの大きさでは結果的に写真は小さい物になるのではないか・・・まさかフォトグラムで映し出す訳でもあるまい・・・

 

 

 どのような写真になるのかと現像まで待ち続けるが・・・写真が出てこない・・・後で取り出すのか?

 

 

「現像はしないんですか?」

 

 

「え?勿論しますよ。どうしてですか?」

 

 

「いや、今しないのかと思ってしまって・・・」

 

 

「今・・・ですか?」

 

 

 射命丸さんの顔に疑問が浮かぶ。いや、疑問と言うよりは常識のない相手を見るかのような・・・

 

 

「あなたの世界では直ちに現像が出来るのですか?」

 

 

「はい・・・」

 

 

「何と・・・やはり凄いですね・・・益々興味が沸いてきます!」

 

 

 やり取りの内に理解した。この地の技術では何かしらの外部プロセスを経て現像を行うのだと。結果への経緯における相違に関心を持ちつつ、リパルサーリフトの電源を切り、車体が徐々に降下させる。里に入ってからも何人かに奇妙な目で見られていたが、誰も傍に居なければ怪しい浮遊物と見なされる可能性がある。危険物と錯誤されるのを回避する為、用心しなければならない。

 

 

「お待たせしました」

 

 

「いえいえ。この地区の中心部までもうすぐですよ」

 

 

「地区?」

 

 

「天狗の里は幾つかの地区に分かれているんです。ここは主に居住区や研究施設が存在する場所です」

 

 

 成程、特性毎に複数の区画へ分割している訳か。人里と同様の構造システムだ。あまり里だったり町だったりに馴染みがある訳ではないが、こう聞くとインペリアル・センター(大都市)の縮小版にも思える。そう考えると下層が貧困層で上層が富裕層なのだろうか・・・いやまさかな・・・

 

 

 

 

 

 

 

「中心部に到着です!永遠亭の兎さんも普段はこの広場で営業してますよ。最近始まったばかりなのでまだ存在を知らない妖怪も多いですが」

 

 

 歩くこと数分、巨大な岩を土台としたであろう中心部へ到着した。真ん中には神殿のような屋敷、そしてその周りを広大な広場が囲む。広場と言っても、商業店らしき施設等も数多く存在し、閑静と言うよりは喧騒な雰囲気を醸し出す。立地構成も外の世界を真似た可能性はあるが、十分銀河系にも存在するような外観である。それが要因となったか、どことなく元の地を思い出す。もっとも、このような場所に来訪する目的は、任務が大多数を占めていたが・・・

 

 

 

「さて、この辺りは食事処が多くあるんですが、お昼ご一緒しませんか?」

 

 

「よろしいのですか?」

 

 

「当然です!」

 

 

 昼食については何の指示も受諾していないし、意見を具申してもいない・・・取り敢えず鈴仙さんに一声入れておこう。

 

 

「少々お待ちください」

 

 

 ヘッドセットから外しておいたコムリンクを取り出す。そしてカーソルをずらしながら4の数字を選び、コールする。

 

 

 

《もしもし?》

 

 

 永琳さんに連絡した時と同じようにこちらも直ぐに返答が帰って来た。相手が鈴仙さんであることを確認し、声を発する。

 

 

「アルファードです。今良いですか?」

 

 

《アル君?大丈夫だけど・・・どうしたの?》

 

 

「昼食の誘いを受けているので、自分の分は作らなくてもよいとの事を伝えようと思って」

 

 

《昼食の誘い?誰から?》

 

 

「鴉天狗の射命m『こんにちは!月の兎さん』」

 

 

 誘い人の名前を伝えようとしたその瞬間、その当人が近づき、会話に割り込んできた。

 

 

《その声・・・天狗のブン屋!あんたが何でそこに居るの?》

 

 

「取材を申し込んだんですよ。それが終わって今は里の案内ついでに逢引中です」

 

 

「えっ?」

 

 

 逢引・・・恋愛関係に進みつつある二人が、連れだって外出し、一定の時間行動を共にすること・・・いやいや、あくまで冗談だ落ち着け・・・

 

 

《あ、逢引!?あんたらいつの間にそんな関係に・・・って言うか一日で?》

 

 

 しかし、「月の兎さん」はそれを確信に近い形で疑問に思っているらしい。それが彼女の真面目さを表す良い点であるが、同時に悪徳商法に騙されそうな不安な点でもある・・・それは流石に無いか。

 

 

「はい、取材を続ける中、私は確信しました・・・一目惚れなのだと!どうやら彼も同じ想いを抱いていたようで・・・運命は私たちを祝福してくれたようですね」

 

 

 恥ずかしい台詞を恥ずかしげ無くペラペラと語る射命丸さん。どこか演技がかかっており、これなら鈴仙さんも気づくだろうと思っていたが、

 

 

《ア、アル君も・・・嘘でしょ?アル君、本当なの!?》

 

 

 彼女は言われた事を真に受ける ― 良い意味で ― 人のようだ・・・

 

 

「あっ、いや『ああっと、そろそろ私たちの番ですね!では月の兎さん、彼をお借りしますね・・・夜まで』」

 

 

《夜!?ちょっとアルk》

 

 

 鈴仙さんが自分の名前を呼んだ瞬間、「逢引相手」がボタンを押し、通話を遮断してしまった。相手をより混乱させるであろう爆弾を捨て台詞に・・・

 

 

「やっぱり月の兎さんはからかいようがありますねぇ」

 

 

 笑いながらそう呟く射命丸さん。帰還したら真っ先に弁明をしなければ・・・

 

 

「さて、お昼ご飯何処で致しましょうか?」

 

 

 今さっきの出来事が無かったかのように一転したような態度を取られる。完璧な差異の付け方、彼女は諜報員向きなのかもしれない・・・それにしても何処でと言われてもこの場所へは今来たばかりであるし、和食にもまだ詳しいという訳でもない・・・素直に頼るのが無難だな。

 

 

「この辺りの事は分かりませんし、和食・・・も最近知ったばかりなので、射命丸さんにお任せします」

 

 

「確かにそうですね・・・では、私お勧めの定食屋さん行きましょう。ここから近いですし」

 

 

 そう言って自分たちから見て右側の高台にある店を指さす。彼女の言う通り非常に近いようだ。お勧めという事なので期待しながら付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、二名様でしょうか?」

 

 

「はい」

 

 

「こちらのお席へどうぞ」

 

 

 店員さんの誘導に従い席へ向かう。昨日寄った蕎麦屋よりこじんまりした店内だが、その分他の席との間隔が広い等、個人スペースの確保を中心とした内装を重視しているように見える。客も多い。

 

 

 席に移動してからも周りを観察していると、少々離れた場所に着席するあるカップルに注目が行く。仲睦まじそうに会話に花を咲かすその姿は微笑ましいが、その片割れ―――男性の方は大多数の客と異なり・・・人間に見える。鴉天狗のように人間にしか見えない種もいる為、人種的に違和感を感じることはないが、その服装は人里で多く使用されているそれに類似する。

 

 

 人間も妖怪の山に歓迎されつつあるとは聞いたが、それを直接視覚する事で当該事実を実感する。それにしても、あの二人は明らかに恋仲である。排他的性質が根本にある天狗でも人間に恋をする、と言う事か。銀河系では種族を超えた恋慕は常識の範疇だが、妖怪の山の体制 ー 帝国のそれと通づる ー を捉えるとどうしてもそう思ってしまう。

 

 

「メニューがありませんね・・・すいません、御品書きを下さい」

 

 

 自分の恰好は人里のそれとは異なるが、妖怪というのは外見に関わらず相手の種を見破ることが可能だと学習した。自分もある意味あのカップルのように認識されているのだろうか。

 

 

 そう考えていると先程の件を思い返し恥ずかしさが込み上げる。無論、冗談だと脳では理解しているが・・・女性と二人で食事をするなんてのは初の経験である。更に、逢引という言葉を思い出すことがそれをより後押ししてしまう。

 

 

「ん・・・ああ、人妖のカップルは最近になって見かけるようになりましたね。それにあの二人は以前、その事について取材させて貰ったので覚えています。『彼女の儚い思い出になればいい』らしいですよ。いやぁ、中々にロマンチックですよね」

 

 

 視線に気付かれたか、後ろを振り向きながらそう言う射命丸さん。すると、そのカップルの片割れ―――女性天狗が彼女に気付いたのか会釈をするのが見えた。男性の方もそれに倣い慌てて同様のことをする。会釈の相手はひらひらと手を振りながら満足そうな表情をしている。やはり、見知った顔が仲良くする姿は嬉しいものなのだろうか。

 

 

「あやややや、顔が赤いですよ・・・先程の事本気にしてくれましたか?」

 

 

 こちらに振り返ったと同時に自分の緊張が表情を通して彼女に伝達されてしまった。不味い、これは鈴仙さんのようにからかわれる・・・

 

 

「いえ、そう言う訳では無くて・・・」

 

 

「・・・そうですよね、こんな取材取材ばかり言う女、可愛げなどありませんよね・・・」

 

 

 自傷するかの如く小さな声で呟く射命丸さん。明らかに演技だと理解できるが、どうしても尻込みしてしまう。

 

 

「いえ、決してそんなことは!仕事に集中出来る人は男女問わず・・・いいと思いますよ。それに射命丸さんは十分通用?するお姿ですし・・・」

 

 

 頭が混乱し、何と述べようかが出てこない・・・唯々困惑していると、

 

 

「あはははは!ごめんなさいレッドフィールドさん。こんなに狼狽えるとは思わなくて」

 

 

 そう伝えらえれ、混乱が徐々に収束する。だが、先程とはまた異なる羞恥が湧き上がる。恥ずかしい・・・

 

 

「でも良かったです。『色々』あって元気がないようにも感じましたが・・・別の一面が見れて」

 

 

 それを聞いて恥ずかしさが・・・嬉しさへと移ろう。彼女は自分のことを案じていてくれたのか・・・

この地での優しさは・・・人格形成(変わりつつある性格)にも寄与している・・・彼は改めてそれを感じた。

 

 

「あっ、写真撮っておくべきでしたね。『宇宙の彼方からの外来人、記者からの誘惑に狼狽える!』いいネタになる所だったのに・・・」

 

 

 多少その感動を損なう発言を聞きつつも、彼女とは仲良くしていきたい、再度心の中で思う。

 

 

 

「さて、何を食べましょうか・・・と言ってもまだ文字も分からないんでしたよね?」

 

 

「はい、なのでそちらもお勧めがあれば」

 

 

「そうですね・・・この店は丼ものが主でして、特にカツ丼と親子丼が評判が良いです」

 

 

 カツどん、親子どん?分からないな・・・カツは豚カツのことだと思われるが。

 

 

「どのような料理なのですか?」

 

 

「カツ丼は、豚カツを煮て調味し、鶏卵でとじた具を丼飯の上に乗せた物です。親子丼は、、鶏肉を煮ながら卵汁でとじ、ご飯の上に乗せた料理です。親子丼の方は鴉天狗からすれば共食いのようなのでお勧めしませんが・・・」

 

「では親子丼で」

 

 

「即答ですか!?目の前にその鴉天狗が居るのに!中々Sな性格していますね?」

 

 

「冗談です。カツ丼にします」

 

 

「あやややや、すいません、それはこちらの台詞です。別に大丈夫ですよ。私親子丼好きですし」

 

 

 心の近づきか、出会って間もない女性にも自分を前面に・・・今までなら言葉にするどころか思いもしないような冗談を言う。いや・・・これも彼女の人となりが後押ししているのだろう。

 

 

「では、親子丼でお願いします」

 

 

「わかりました、すいませーん!」

 

 

 豚肉は既に食したが、鶏肉はない為、今日のところは後者を選択する。どうせまた来ることは出来るのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

 店員さんの声を尻目に店から退出する。親子丼・・・鶏の肉と卵を使う、つまり、鳥から主に構成されることからそう呼称されるとのこと。甘味を引き立てるソースと卵が絶妙の味を感じさせてくれた。是非また来店したいと思う。

 

 

「いかがでしたか?」

 

 

「また来たいと思います」

 

 

「それは良かったです。さて、どうします、このまま他の地域にご案内しましょうか?」

 

 

 そう尋ねられ思考する。販売拠点を確認した為、既にこの里へ滞在する戦略上のメリットは無いが・・・いや、人里同様販売の際は移動するだろうし・・・そう言えば、

 

 

「妖怪の山の科学技術は主に河童・・・が担っているのですよね、機械の販売などは行っていないんですか?」

 

 

「ああ、それなら河童のアジトへ行けばどうにかなると思いますよ。そちらへ案内しましょうか?丁度、里を一周する形になるので・・・その分、時間がかかりますが」

 

 

「すいません、お願いしても宜しいですか?」

 

 

「勿論です!私たちの仲じゃないですか」

 

 

「疑似恋愛の仲ですか?」

 

 

「そんな悲恋漂う風に言わなくても・・・いや待てよ・・・好きとは思っていなかった二人、しかし偽りの恋の中でそれは真実の愛へ・・・って置いてかないで下さいよ!」

 

 

 案内人の先を進む被案内人。人との接し方というものが分かってきた、と歩みを進めながら充足感を感じるアルファードであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、見えてきましたよ!あれが玄武の沢、河童のアジトがある場所です」

 

 

 天狗の里を全体的に巡り一時間と少し、妖怪の山の中心部からは少し外れた麓に近づく。遠目から無数の穴、いや、洞窟が存在するのを確認出来る。そして、その洞窟群の中でも一際巨大な、そして他とは一線を画く鉄製の扉が目を惹きつける。天狗の里にも鉄製の物々は見かけたが、こちらはその大きさでここが近代技術を持つという事実を後押しする。

 

 

 足場が悪い道を下りながらその扉へと向かう。やはり、あの扉の先が河童のアジトであるらしい。すると、視界に人間、いや、恐らくは河童・・・の姿が現れる。

 

 

 緑地の帽子、青いブラウスにスカート・・・水、否、河を思わせるような少女に視線が向かう。岩に座り、前をぼうっと見ているようにだ。休憩中か?

 

 

「こんにちは、にとり」

 

 

「おや、天狗様じゃないですか。今日はまた何用で?」

 

 

 にとりと呼ばれた少女は後ろを振り向きこちらを見る。てゐさん並に幼く見えるが、きっと彼女も人間を遥かに超える寿命を生きてきたのだろう。やはりにわかには信じられないな・・・

 

 

「この人があんたたちに会いたいって言うから連れてきたの」

 

 

 呼び捨て・・・フランクな口調で話す射命丸さん。成程、必ずしも敬語を常時使用する訳ではないようだ。同じ山に住む妖怪にならそうなるのはおかしくない。それに、案内の中で知ったが、天狗はこの山の現在の支配者でもあるらしい。事実、目の前の少女は天狗「様」と呼んでいた。恐らく、河童は天狗の下位にいる存在なのであろう。

 

 

「おお、ようこそ盟友・・・にしても見られない格好だね・・・外来人?」

 

 

 盟友―――河童は人間への有効度が非常に高いと学習した。その為、このように呼称したと推測する。

 

 

「その通りよ。でも、唯の外来人じゃないの・・・彼は宇宙から来たのよ」

 

 

「宇宙?月みたいな?」

 

 

「いいえ、月どころか土星よりも海王星よりも・・・太陽系よりも先の遥か彼方の銀河系からの来訪者よ!」

 

 

「は、遥か彼方の銀河系?」

 

 

 射命丸さんと自分を見比べながら驚いている様子を見せる河童さん。予想された反応である。

 

 

「ええ、私たちどころか外の世界、月よりも進んだ科学を誇る巨大な銀河から」

 

 

「月よりも!?それは凄い!よろしく外来人、私は河城にとり・・・機械好きの河童さ」

 

 

 握手を求めるように手を差し出す河城さん。それに従うように彼女の手を握る。月を超える技術と巡り合うのではないかと想像しているのか興奮している様子だ。

 

 

「アルファード・レッドフィールドです、よろしくお願いします」

 

 

「それで河童と会う目的は何なんですか?唯見てみたかったとか?」

 

 

 無論、その気持ちもあるがメインは異なる。河童は妖怪の山の科学技術を支えるエンジニア集団・・・もしかしたら、船の修理に役立つ物や機器を保有するのでないかと思いここまで来たのだ。

 

 

「取り敢えず私のラボに来なよ。飲み物ぐらい出すよ」

 

 

 そう言うと立ち上がり扉の方へ手招きする。射命丸さんに目線を向けると・・・頷かれた。それを確認し、河童のエンジニアに付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、どっちにしろここから出ていく訳ではないんだ」

 

 

「はい、ただ一応使用出来た方が何かと役に立つと思いまして」

 

 

 分厚い扉を抜けるとそこはまるでジャンクヤードのような乱雑に物が散らかる空間であった。河城さん曰く、ここら裏口でその奥に工事などが広がるとのこと。そして、彼女のラボは余り人が居住するとは思えないこの場所に存在する。

 

 

「こんにちは、天狗様」

 

 

「こんにちは」

 

 

 河城さんと全く同じ服装をした河童が射命丸さんに挨拶をしつつ小さな扉の先へ消える。意外にもここを住処にする者は多数いるらしい・・・

 

 

「それにしても宇宙船か・・・君の世界ではその船で星々を渡るんだろ?」

 

 

「はい、宇宙空間の航行が主ですが、大気圏内でも使用されています」

 

 

「はあ〜凄いね・・・君のはどれ位の大きさなんだい?」

 

 

「全長は約65m・・・少々お待ち下さい」

 

 

 そう言いながらポケットを弄り、ホロ・プロジェクターを取り出す。これがあればカタログスペックを表示するのみならずその形状も視覚出来る。インストール・データからローグ・ハサウェイ級の名を見つけ、投射する。

 

 

「おお、これは凄い・・・画像が浮き出てる・・・」

 

 

 まるで熱湯の入ったやかんに触れるかの如く、ゆっくりと慎重にホログラムに手を差し伸べる。ホログラムは無論、触れても何の害も無いが、妖怪の山の修理工と言えど、このような物を見るのは初めてらしい。

 

 

「どうなってるのかしら・・・不思議ですね」

 

 

 射命丸さんの方は驚きを見せながらも、その姿を写真に収める。さすがは新聞記者、驚きより興味が優越したか。

 

 

「これが・・・宇宙船・・・結構薄っぺらいんだね。真ん中の丸いのは操縦席かな?」

 

 

「その通りです。この船はローグ・ハサウェイ級特殊任務艦、バランスの取れた強力な軍用艦です」

 

 

「へえ、君は軍人なのか?」

 

 

 

「元ですが・・・」

 

 

 

 元軍人―――その言葉が頭の中を駆け巡る・・・何故だ?

 

 

 自分が人殺しであったからか・・・いや違う・・・それとは異なる・・・

 

 

 手を下してきたという事実は・・・受け止めているつもりだ・・・無論、それには後悔や罪悪感がまるで外傷の痛みのように身体中に拡散するが・・・

 

 

 

 違うのだ・・・

 

 

 

 解らない・・・だが、何かに包み込まれているような憤りを感じる・・・

 

 

 

 悪い「癖」が再発する前に彼は気を落ち着けようと無心に努める。しかし、ふと肩に何かが触れるのを感じた・・・人の手だ・・・視線を辿ると、

 

 

「大丈夫ですか、レッドフィールドさん?」

 

 

 鴉天狗の女性―――射命丸さんが心配するようにこちらを覗いていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 左からブラスター、振動ブレード、ライトセーバーです ―

 

 

 この世界の武器とはあまり変わらないんだね。特にこの振動ブレードなんかまんまナイフだ ―

 

 

 これは・・・ ―

 

 

 

 にとりの宇宙船への興味は彼の武器へ移ったらしい。彼自体にばかり注視していたので気付かなかったが、三種類もの武器を携帯していたとは・・・

 

 

 尽きることの無い関心を覚える傍ら、私は内心で他のこと・・・先程の彼の動揺について考えていた。

 

 

 

 彼はにとりの「軍人」という単語に反応しているように見えた。一体何故・・・何を理由に?

 

 

 

 仮説1, 自らが軍人であったという事実を後悔・嫌悪等何らかの否定的な要素として考えている。恐らくは最も真実に近い予想。取材中、私が知り得た情報は主に彼の世界―――遥か彼方の銀河系に関しての事・・・その為、幻想入りまでの経緯は簡略なものであった。そんな中分かったのは、彼は銀河系に存在するある国家の諜報員・・・軍人であり、属していたその国の政策に誤りを感じ脱走した・・・という事実である。その事から自分が軍人として奉公してきた過去が思い出したくないようなものであるとは予測出来る・・・

 

 

 仮説2, 仮説1でのものとは異なる・・・自らが既に軍人ではないという事実に改めて直面してしまった、という後悔を感じている。彼の年齢から見るに、長期間軍人として活動していたとは思えないが彼にもその職業に対する誇り又はそれに類似したような感情があるのかもしれない。人間だけでなく、社会というものを形成するする者達は総じてその役割にプライドを感じる・・・無論私も。誤りを感じながらもどこか否定出来ない部分の存在・・・強い信念を持っている者程強く感じるもの・・・

 

 

 仮説3, 語った経緯は全てもしくは一部が虚偽であり、彼自身は戦争で負けた国の敗残兵・・・そして、仮説2のようなことを思ってしまったのか・・・これは飛躍し過ぎね・・・

 

 

 

 その高い思考能力で考えを巡らせる。唯遠くの世界からやって来ただけではない・・・彼の経緯や情報は私の好奇心を引き立てる・・・

 

 

 だが直ぐに真実を知っては面白くない・・・散らばったピースを集め、構成し、パズルを作るように・・・手間を掛けてじっくりと調べ上げる・・・それが私のやり方。

 

 

 

 

「私たちのより遥かに進んだテクノロジーの保有するようですね、文様」

 

 

 益々興味が沸く・・・そのように思っていると突然そう振られる、

 

 

「やはりそう思う?あなた(河童)たちの技術もここまで上げてもらいたいものだわ」

 

 

「流石にそれは難しいですよぉ」

 

 

 だが思考状態にいたとは悟られないような・・・完璧な反応を示す。武器の説明を終えたところかしら?だけど話を聞いていなかったことに変わりはない。もう一度説明してくれないかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの川、水深深いから気を付けて」

 

 

「わかりました」

 

 

 行きに入った裏口ではなく、より里へと近い脇口から外へ出る。何時の間にこんな入口を作ったのかしら。

 

 

 そう思いつつ彼等の後を付いていく。結局、彼の依頼―――宇宙船の修理はどうやら河童から品物を購入するだけでは至らないらしい。まあ、当然の事と言えば当然なのであるが・・・私も便乗して船の下へ連れていってもらえる結果になったので好機ともなった。それよりも・・・

 

 

 彼の腰の辺りへ視線が向かう。シャツによって隠されているが、よくよく見ると小さな膨らみ・・・棒のような物が携帯されているのが分かる。ライトセーバー・・・彼はそう言っていた。詳しい原理はちんぷんかんぷんだったが、ボタンを押すことにより生成される長さ1メートルほどの尖形状の光刃はありとあらゆる、ほぼ全ての物質を溶断するという。白玉楼の庭師は「斬れぬものなど、あんまり無い! 」とか言ってたけど、こっちの方が断然斬れ味良さそうだわ・・・見た目だけなら。

 

 

「じゃあ、今度是非ドロイドや宇宙船を見せてくれ、お代ははずむからさ」

 

 

「わかりました。いつお伺いすれば?」

 

 

「いつでも良いよ、明日でも一週間後でも一年後・・・はきついかな、早く見たいから」

 

 

「ありがとうございm『おーい、にとり!』」

 

 

 彼の言葉を遮るような声が川奥から聞こえてきた。その声の方向へ顔を向けると、にとりと同じ河童の一人が川の反対側をこちらへ向かい歩いて来るのが見える。背中には・・・キュウリ、それも籠から零れ落ちそうな程大量な。

 

 

「わぁ、どうしたんだいそのキュウリ?」

 

 

「外から大量に仕入れたらしくて、人里の人間が負けてくれたんだよ、キャッ!!」

 

 

 すると苔で足を滑らせたか身体が横に倒れそのまま川へ・・・

 

 

「っいけない!」

 

 

 河童は本来は水中に生息する種族である。たとえ彼女がこのまま落ちたとしても水流に流されることはありえない。だがこの川には幾つか岩がその四辺を鋭くさせながら浮き出ている。河童はそこまで頑丈ではない・・・もし直撃などしたら!

 

 

 持ち前の速度と加速性を活かし、今まさに落ちていく彼女を救おうとする・・・が、

 

 

「!?」

 

 

 その必要は無くなったという現実を無意識的に感じ取る・・・

 

 

「・・・えっ、浮いてる!?」

 

 

 浮かぶ本人が驚きの声を上げる・・・それに彼女だけでない・・・籠から零れたキュウリまでも浮いている・・・妖術、にとり?いや、彼女も私と同じような反応をしている・・・ならば・・・

 

 

 まさかとは思いつつ最後の一人・・・この中ではそのようなものとは縁がないであろう人間に視線を向ける・・・

 

 

「・・・」

 

 

 無言で河童の少女を見ている・・・睨んでいると言っても良い程その眼に力が入っているよう見えるが・・・だがそれだけなら彼の仕業とは思えないだろう。ましてや人間なのだから。

 

 

 しかし、それだけではない、唯見つめているだけではないのだ・・・両腕・・・その身長に見合った長い腕を視線の先へ真っ直ぐと伸ばしている・・・まるで空中に浮く「何か」を支えるように・・・

 

 

「・・・」

 

 

 そして支える「何か」を降ろすようにその両腕を動かす・・・それと同時に未だ浮かぶ少女とキュウリがゆっくりと、まるで梱包された割れ物が壊れないように箱へ入れられるかの如く丁寧に地へと降ろされる・・・

 

 

 

 突発的なことであった為か、私は暫くの間呆然と唯突っ立っているだけであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんでした」

 

 

 にとりたちと別れ、里へ向かって足を進める中、彼が突然謝罪をしてきた。

 

 

「えっ、何がですか?」

 

 

 謝られる意味がわからない。私、何かされたかしら?

 

 

「フォースについて・・・取材中に説明しなかった件です」

 

 

「・・・」

 

 

 フォース―――彼が先程披露した・・・妖術に該当するであろう能力・・・

 

 

 超能力のようなもの・・・彼はそう説明した。詳しくはわからないが最低でも重力に従って落ちる河童と大量のキュウリを浮かすことが可能である・・・

 

 

 物を浮かばせる・・・博麗の巫女と似た能力なのかしら・・・あらゆる物を浮かばせる程度の能力・・・

 

 

 ここに来るまでに頭の中で考えた事を纏める。だがそれと同時に彼の謝罪理由を思い出す。取材中に説明しなかった、か・・・それの何が悪い―――謝罪に値する行為であるのか・・・

 

 

「そんなこと全く気にしませんよ。でも何か理由があるんですか・・・あっ、忘れてただけとか?」

 

 

「いえ・・・」

 

 

 益々萎縮してしまうレッドフィールドさん。まあ、失念していただけならここまでの反応は見せない筈よね。

 

 

「この力の存在が拡散すると、後々厄介ごとに巻き込まれる可能性があると思っていて・・・」

 

 

 厄介ごと・・・成程、確かに私がそれを記事にしたら血の気の多い連中が彼のもとへ腕試しに来る可能性は・・・低いが否定は出来ない。能力を持った人間は珍しいし、あの博麗の巫女のそれと類似した能力・・・注目は集めるだろう。

 

 

「そんなの当然ですよ。取材だからと言って全てを話さなけれんばならない訳ではないんですから」

 

 

 と言うよりも、その事を伝えてくれれば記事には載せないのだけれど。

 

 

「けれど・・・いずれにせよ露呈する事ではありますし、それならば射命丸さんに失礼かと思いまして・・・新聞の作成も大変なことであるだろうし・・・」

 

 

「・・・」

 

 

 私の事を・・・案じてくれたのね。

 

 

 新聞記者にとって相手から露骨に邪魔扱いされることなんて当然である。相手は取材させてくれているのだから。

 

 

 だけど彼は逆に私の心配をした・・・そんな義理なんて無いのに。別にこのことを書こうが書かまいが、結果に深く繋がる訳ではないが・・・何てことないその優しさに感心してしまう。

 

 

「あなたは優しいのね・・・」

 

 

「えっ?」

 

 

「・・・いずれにせよあなたの能力を記事にするつもりはありませんから安心してください」

 

 

 

 そのようなことをしなくても彼の善意が・・・それを明らかにするでしょうから。

 

 

 

 沈む夕陽に照らされながら天狗と人間は渓谷へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今帰還しました」

 

 

「あれ?早いねアル、今日は天狗と一夜を過ごすんじゃなかったの?」

 

 

「あ・・・」

 

 

『アル君が帰って来たの!?てゐ!私の所に連れてきて!』

 

 

 すっかり昼の事を忘れていた彼が、弁明に時間を掛けたのは言うまでもない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。