東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》 作:Exar Kun
東方と異なり、強さ議論で引き合いに出されることなんて滅多に無いですが、恐らくかなり通用すると思います
戦闘の推奨BGMはMGS4,Unmanned Army
この
其処は危険と言う概念が存在せず、歌って、踊って、遊んで暮らすだけのまさに理想郷―――平和な世界
そしてそのような
彼等は地上を生きてきた時期に、悟りや徳のある業績を成すことにより神霊化した人間たち及びその末裔
その天人や神の存在を知った時から予想はしていたが、彼等は私がそれまで想像していた存在ではない。私にとって―――銀河系の人々にとっての神霊的存在はその人々たちの歴史と繁栄により誕生した非科学的兼非実在的な宗教的信仰の対象・・・所詮は人が生活や人生の良を求める為崇拝する視覚出来ない偶像に過ぎない・・・
このような発言を銀河中の著名な宗教家に伝えれば、その発言者は散々罵られ、その翌日死体となって発見されるだろう。
だが、フォースを感じる者或いはそれを理解し信じる者はその発言の通りだと思うことだろう。何故ならフォースこそがまさに全てを成しているのだから・・・
しかし・・・この世界ではその認識と事実は大きく異なる
神は存在する・・・目に見える形で、或いは視覚出来ずとも概念でなく「存在」としてこの地にいるのだ・・・
宗教家たちは歓喜溢れるだろう。信ずべきものが実在しているのだから。だが熱が冷めるにつれ、悟られないように落胆するであろう。彼等の脳内に巣食う
神霊の基は人々の信仰、崇拝・・・実際に世界を、宇宙を創造した訳ではない
考えが複雑化してしまったが、何が言いたいのか―――それは、
いずれにせよ天の招きなど存在しない
「動くな・・・!」
後方からの声により糸を切られた操り人形のように動きを止める・・・それと同時に意識が目の前に存在するスカーフ ― より具体的に言えばその匂い ― から発声基へ移ろう・・・誰だ?
恐らくは女性、いや、少女だ。声質が高い―――成熟していないと言うべきか。だがその発言内容と勢いは余程少女が発っするものには思えない。言うなれば、今まさに
「それから手を放せ!」
再び彼女の声が木霊する・・・このスカーフが目当てなのか・・・盗賊・・・この少女が?自分が想像する盗賊―――筋骨隆々の荒男と声の持ち主の想像を比較して小さく笑う。まさかな・・・
状況の把握が不可能であるという事実を考慮する為、その指示に従い、スカーフを地面に置く・・・そっと、傷がつかないように。そして既に保持していない事を伝えるかのように両手を挙げ、後ろを振り向く。
振り向いた先には予想通り少女が立っていた。青緑色のベストとスカートを着衣。そして銀色の髪をボブカットにし黒いリボンを装着している。歳は霊夢さんと同程度、つまり年下・・・いや、幻想郷では時に年齢を判断することが困難な者と直面する事もあるが・・・外見に限定するならば自分の想定に合致する。
年下の少女に男性が両手を挙げ対峙している―――こう聞くと何だか滑稽に思えることだろう。だが実際にその光景を見たならば、必ずしもそうは言えない筈だ・・・
彼女の伸びる左手にはその身を太陽光で反射し輝く・・・刀・・・
そしてそれをこちらへ向け、獲物を狩る
ヘルメットに素顔を隠す
「どういう目に合うかは分かっているだろうな・・・盗人・・・」
「?」
彼女の自分を示す単語に耳を疑う。そちらが盗みに来たのではないのか、ついそう反論したい気持ちに駆られるが、そうではないらしい。自分を盗賊と錯誤している事は事実だが彼女が盗みに来た訳でないのもまた事実・・・彼女はこのスカーフを取り返す為にここにいる・・・内心からそのような意思を感じ取る。
「待て、君h『問答無用!』」
弁明しようとする自分の声を遮るように声を張り上げこちらへ向かって来る。不味い・・・!
彼女の持つ刀の刀先が光を反射しつつ「盗人」を切ろうと迫る。自分から見て右側 ― 対称である相手からすれば左側 ― 斜めから刀身が振り降ろされる。避けなければ・・・その斬撃の軌道を計算しつつ半身を切ることにより回避に努める。
ヒュン ―
風を斬るような・・・空振りの音、目の前に存在する刀身・・・その二つを確認することにより回避に成功したという事実を知る。
相手を視認しつつ、後方へ大きく飛ぶことにより後退行動へ。距離を取りつつ時間を得ることにより、状況判断及び敵情把握を目的に脳をOODA思考に切り替える。
此方に対し盗難に相応する刑罰の意図が推察可 目標物-大木右手付近に放置 推奨行動-目標物の回収及び撤退
だがその戦術構築の間、先程とは比べられないような速度で再び迫る相手の姿が―――この間僅か三秒!
「くっ!」
思考を中断する頃には既に目の前に!・・・瞬時に対処法を見つけようとする・・・先程と同じく右側より刀を振り降ろそうとしている―――右斜め方向に死角!その方向へ向かい自らの身を投げ出すようにして ― ローリングするようにして ― 紙一重で回避、そして大木へ向きを変え、全速力でスカーフの回収に努める・・・が、
「!?」
危険を感じる・・・後方から・・・!
速度を落とさず後方を垣間見る。そこには居合の如く両手で長刀を保持し、腰の辺りに鍔を位置させる相手の姿が存在した。
自分が保有する技術と類似した技であるのか、或いは既知である攻撃手段か・・・彼女の外観動作からそう判断する。だがその答えは自身の予想を上回り、想像の範疇を超えた形式であることを彼は理解する事となる。
彼女が見事な動作で抜き放つと共に斬撃―――斬撃の光が生成され一直線にこちらへ迫る!
「!」
命中する―――
グゥキィ ―
鋭い音が前方より耳に伝わる。伏した体制を維持したまま音の源泉―――大木へ視線が移る・・・あれは・・・線・・・微細な線が大木の表面に刻まれている。薄い板を刀で斬り込まれたかのような線が・・・あの光の仕業なのか・・・
回避成功の認識を感じるのも束の間、新たな事象に集中が奪われる。今の攻撃は何だ・・・視覚は可能、速度はブラスターに追随する程、そして・・・大木に斬り入るような威力・・・
妹紅さんの光弾と同様の性質か・・・だが
「ハァァァッッッ!」
案の定、彼女は飛び上がる様にして刀を振りかざす形を取っている。その姿を視認した瞬間、右手が反射的に腰に掛かる振動ブレードのグリップへと導かれる。そして、
キィィィィィン ―
刃身同士がぶつかり合う音が耳を貫く・・・どういう事だ・・・
その音が発生したという事実、そして目前で交差する長刀とナイフの光景に驚きを禁じ得ない。相手の長刀は唯の刀ではないのか・・・このナイフは
だが今は分析に気を取られている余裕はない。現在、相手は自分に乗りかかるように上から刃を押し付ける。対してこちらは背中を地に付け、刀を押し返す形を取っている。上からの圧力を下から押し返す、いわばバーベルである。上部を取った者は自然と落ちる腕に力を加えるだけでよい、しかし下部の者は外部からの圧力が無くとも刃を上部へ向かって突き出すのに力を込めなければならない。つまり、こちらは重力に従いより大きな力を発揮する上部の圧力と、それに追従して自らの腕を
耐久へ移行すれば不利な状態になるのは明らか。この状況を脱する為の行動は現状では二つ。一つは力で押し切るという対処法。相手が強大な圧力を加えてくるのなら、それを超える力をこちらが発揮すれば良い、至ってシンプルな方法。帝国軍
腰を多少浮かせるようにして微かに傾斜を掛ける・・・そして・・・
「うはっ!」
引き縮めた右脚で相手の腹部を吹き飛ばすように蹴り上げる。
二つ目は腕でなく、他の部位の利用に集中することによって―――例えば今のように蹴り上げるだったり、顔面に唾を吐き掛けるような副次的行為・・・そもそも前者は行動への移行可能な確率自体低いが彼女のように武器を所持し、互いの身体間に距離が存在する場合には高確率で成功する。
彼女の軽量な身体が軽く吹き飛ぶ。目先でそれを追いつつも、後方転回するかのように回転し、再び脚を地に付ける・・・振動ブレードを構え、腹を抱えながらもこちらを睨み付ける敵と対峙しながら。
「その短剣・・・唯の鈍刀ではなさそうね・・・楼観剣に耐えるとは」
今の発言から彼女の刀は唯の刀ではない事が推察出来る。未知の技術で作成された物か・・・或いはこの地では馴染みの深いであろう神霊的な謂れを持つ・・・
そう考察する間に再度目前に現れ、攻撃態勢に入る敵・・・その動きを予測しながら斬撃を受け流すことを前提に防御戦闘に突入する。
キィィン ―
キィン ―
キィィィィィン ―
攻撃動作を予測しながら回避、もしくはナイフで捌く・・・速い・・・走破能力のみならず刀の操作速度も非常に高速且つ的確・・・彼女がどれだけ長い生を享受してきたかは不明だが、類稀な才能と努力がその剣技から推測出来る。こちらは振動ブレードと言えナイフ・・・打ち合いでは不利だ・・・
キィィィィィン ―
「何故あの襟巻を持っていた?」
何度目になるか分からない鍔迫り合いの最中、彼女がそう質問する。あちらから話を振ってくるとは・・・好機か。
「あのスカーフは知り合い・・・依頼主の紛失物で、私はその捜索をしていただけだ。君は勘違いをしている」
「嘘を吐くな、あれは明らかに我が主の物・・・それを盗み、果ては匂いを嗅ぐなど・・・許されることではない・・・」
しかしその答えは自分の意図を否定するような言葉として返って来た・・・彼女の主の所有物を嗅いだ不審人物という錯誤を加えて・・・
だがその返答について思考しながらも疑問が生じる。何故彼女はあのスカーフを彼の主の物だと断定するのだろうか・・・外見が瓜二つならばその可能性も否定出来ないが、それではこの場所にいる理由は?まさか本当にあのスカーフは・・・いや、捜索範囲から考察すれば自分の目的物であるのは確実だ。偶然に外観上同様な物が、偶然同じ空間に存在する確率は、出鱈目な座標計算を構築しつつも、アウター・リムからコルサントへのジャンプが成功するのと同程度だ・・・
何より・・・あのスカーフには明子ちゃんの想いが込められている。親として自分の面倒を見る母親への恩返しの気持ち、プレゼントについてが露呈しないように少しづつ作成していった努力、そしてそのような想いを持つことが出来る彼女の優しさが・・・フォースを通して自分に伝わった。
疑問を抑圧しつつ自らを奮起させる。しかし、そう思ったも束の間、
カキィィィィン ―
手に保持した、否、していた振動ブレードが上空へ打ち上げられる・・・賭けの先行を決めるべく舞い上がるコインのように・・・
無論、その隙を突こうとする敵の意思はフォースに頼らずとも一般観念的に予測出来る。始めと同様に後方へ飛び、後退する。刃先から落ち、地面に突き刺ささろうとするナイフを見続けながら。
「・・・」
突き刺さるナイフを取りまじまじと観察する相対者・・・時間的猶予が発生。それを利用し、行動方針の再築を試みる。
現在、敵との距離は約15m・・・振動ブレードは鹵獲され、こちらの対抗手段はフォース、残存の兵装はSE-14Cブラスター・ピストルそして・・・
右手が半無意識的に腰の部位へ移動する。重要物があるかのように丁寧に棒状の物体に触れるのを感じる。金属特有の冷感、なぞることにより得られる僅かな凹凸が指先を通じ使い慣れた「あれ」であることを確信させる。
どちらの兵装を選択すべきだろうか。ブラスターで降伏勧告・・・恐らく彼女には効果が無い。それに人間・・・いや、人間でないにせよ殺傷攻撃を積極的に仕掛けるは避けなければ・・・ならば・・・
「あれ」を小さく撫でつつ考察する。あの刀を切れるのか、振動ブレードをも弾く刀だぞ・・・だがこれは振動ブレードを超越する特性、能力そして威力を兼ね備える・・・相手の武器を破壊すれば・・・こちらの勝率は著しく上昇する。
「あなたの武器はもうありません・・・観念しなさい」
最後通牒のつもりなのか、気取ったように刀を向けながらこちらに視線を移す。敵はこちらの可能行動を把握してはいないにも関わらず。戦闘・・・いや、戦場には慣れていないのか・・・
「・・・白旗を掲げるまでは・・・気を抜いてはならない」
自分が相手を優越するような ― 見下すような ― ニュアンスを付与しながら伝える。実際は白旗を掲げても気を抜いてはならない、だが・・・
その意図が見事伝わったのか、彼女の内心から微少ながらも侮蔑に類似した、プライドを逆撫でされたような感情が読み取れる。
確信した・・・戦場の風はこちらに傾きつつある。先のような感情の発生は相手の怒りに作用する。半無意識的に攻撃的な行動に移行しやすいとも言っても良いだろう。彼女のような近接主体の行動を取る傾向にある相手は、怒りに身を任せればより単純で力強い動作へと変更する。その攻撃が殺傷性を有するものかは未だに明らかではない。仮に通常の刀と同様の作用を成すならば、フォースによる身体強化が万全でなければ致命傷を負う可能性は増大する。だが、それと同時に単純化する動きは読みやすく避けやすい。
相手の単純能力がこちらに優越する状況下ではこのような不安定な事情からも優位を奪還する必要性が存在する。
さて、一連の行動が無駄となる前に・・・
キャシィィィィィィ ―
ケリを付ける
彼は人間だ。妖気や霊気は纏わない極普通の人間、しかし・・・唯の人間では無い・・・人間と言う種族の体系的カテゴリーには見られないような諸能力・・・こちらの手を誤謬無しに読むような―――元から知っているような行動。幽々子様の襟巻を拾い、あまつさえその匂いを嗅ぐとはどんな狼藉者かと思ったが・・・
「彼」の武器―――自分が打ち上げた短剣を抜き取りながら少女―――魂魄妖夢は相対者に対し、感想を抱く。そして、手に取ったその短剣に関心を移し、鍛冶屋手製の得物を査定するかの如く観察する。
一見、何の変哲もない、自分の愛刀と比べると長さにしても厚さにしても劣った短剣。外観は外の世界で用いられる武器―――戦闘用ナイフに見える・・・いや、私の知り得るナイフの中でもこれ程短い物は無かった。刀身に指を触れる。手入れは怠っていない様だ。だが何かを感じる・・・小さな、ほんの小さな、人間では感じられないような揺れ・・・この振動が秘訣?いずれにせよ、このような短剣で私の剣技に耐えるとは・・・彼の力が伺い知れる。
「あなたの武器はもうありません・・・観念しなさい」
「・・・白旗を掲げるまでは・・・気を抜いてはならない」
降伏の猶予をこちらから示したにもかかわらず、彼の返答は拒絶と取れるものであった。唯の拒絶ではない・・・こちらを小馬鹿にするような・・・自分の方が私より上―――闘いの経験を積んでいるかの如き意味合いを感じるその言葉が私のプライドを刺激する。気を抜くな?私はお前の倍は半分生きてきた・・・それに付随する経験も確実に深く厚い!
だが彼が腰から取り出した棒状の機器が視界に入ったことにより怒りに近い感情を抑える。
キャシィィィィィィ ―
鋭い音が森の中を反響する。それと同時に彼の手元―――棒状の機器から尖形状の真紅に染まる光が生成される・・・いや・・・光刃と言うべきかしら・・・
彼女が気を取られた瞬間、彼がこちらへ向かおうと足を進める。直ちに意識を彼の行動へ移し、その光刃を防ごうと楼観剣で防御の姿勢を取る。
ジィリィィィィィ ―
火花を散らすように刀身と刀身の交点部が淡く光る。それと共に何かを焼き付けるような音が耳を貫く。
ブゥウォォォォン ―
鍔迫り合いを中断した彼は、光刀を下げつつ再度後ろへ下がる。あの刀は一体・・・
ブゥゥゥゥゥゥン ―
自身の冷静を奪うどこか不気味な―――圧迫する様な独特の効果音が、相手の得物から発せられる。
「・・・」
黙りながらこちらを見る相手・・・彼の強さ―――存在はえも言われぬ不気味さを纏う・・・
しかし、だからと言って、尻込みする訳ではない・・・
― 幽鬼剣「妖童餓鬼の断食」―
刀を構えながら左方向へ駆ける敵・・・!?
目前の
ピシュン ―
ピシュン ―
ライトセーバーで反射し続けるも、次なる予知の通りに行動が為されるならば、
ジィリィィィィィ ―
左腕を立て右腕を
こちらも攻撃を―――ライトセーバーの出力を訓練レベルに下げようとするが・・・
ジィリィ ―
その暇さえ猶予は与えられない・・・いや、いずれにせよ、彼女の技術ならば自分程度の剣技を受け流すのは他愛もないだろう・・・
鍔迫り合いが続く中、彼女に随伴した物質不明の物体が途轍もないスピードで私の右肩に直撃する。
「なっ・・・!」
人間、いや・・・霊的存在を「これ」と形容した事に小さく後悔しつつも・・・事実への驚愕が自身の知識と認識に作用され内心においてそれを上回る。幽霊・・・幽霊なのか!?
― 人鬼「未来永劫斬」―
驚きに呑まれる時間は無論存在しない様だ・・・
「っ!」
予知が出来なかった―――
痛みを覚悟する暇無く―――打ち上げられる・・・
「えっ・・・」
下からの圧力を感じつつ、風を体感する・・・目の前には自分が先程まで捜索していた広大な森・・・
「!?」
浮いている―――自分は今空中で、いや・・・打ち上げられた!どういうことだ、斬られたのでは・・・いや
直上、直下、右80度一時方向、左60度七時方向、50度六時方向―――速い
ジィリィ ―
ジィリィ ―
ジィリィ ―
ジィリィ ―
ジィリィ ―
フォース=センシティブの最大の
高度約590フィート―――徐々に降下中
左側面、右20度五時方向、左40度十一時方向
ジィリィ ―
ジィリィ ―
ジィリィィン ―
攻撃が止むと同時に
「ハァァァッッッ!!」
ジィリィィィィィン ―
強烈な一斬が上空から振り降ろされる・・・予想に反して軽い、が、油断出来るものでもない・・・筋肉が軋むのを強く身に覚える。
ギィリィィン ―
木々が覆う部分に後退するも追撃を食らう。障害物として利用出来ると思ったが、彼女には無用であるようだ・・・
フォース=センシティブ同士の戦闘では各々のフォースの干渉により予知や察知、空間及び意思の把握等が、困難、低速、不鮮明、不確定且つ断片的なものとなりがちである。だがそれは相手のフォースとの繋がりがあるという前提条件の下での話だ。彼女は異なる。幽霊だろうが何だろうがその動きは完全に把握出来る・・・相手が自身の能力範囲内にいるならば・・・
彼女の技術、速度、精確性は随時私の範囲を超える。それだけではない・・・その高速に乗った攻撃は例え予知可能であろうとも、対応に自らの身体能力が追従出来ないのだ・・・更に能力の範囲のみならず、自分の知識の範囲をも超える彼女の行動は驚きと焦りを付加する。フォースと調和することによって、我々はライトセーバーを使う際に超人的な機敏性、反射神経を発揮する事が可能・・・だが彼女は、それを―――肉体の一部を成すかの如き本能に依るような剣技を披露するのだ・・・フォースと繋がりを持たぬ者にして・・・
ギィリィィン ―
あの刀はどれだけ斬れ味が良いと言うのだ・・・木々がああも容易く一直線に・・・一直線・・・
考察からある案が脳内にて作成される・・・不確定だが―――やるしかない・・・
案を浮かべつつ、大胆にも半身をきっていた身体を前面に構えるようにして攻撃を避け、待ち続ける・・・突きを・・・
―――勝機
グサッッ ―
彼女の刀が突き刺さった、いや・・・貫通した・・・注射針のように、木の表面を・・・
「くっ、木が・・・!」
彼女は突き刺さる自身の得物を引き抜こうとするが木の内部で拡散した木屑がそれを妨害する。即座にもう一方の得物、短刀を抜くべく鞘へと手を掛けるが・・・その間に隙が発生する―――傍から見れば小さな・・・彼女から見れば大きな・・・
「ぐっ・・・!」
一時とは言え無防備な彼女に前蹴りをお見舞いする。距離が空いた―――4m
左、右、左・・・右
右脚に力を加え、軽く飛び上がりつつ左へ回転し、
《フゥォォォォン》
《ドゥゴォォォォォォン》
ヒュュュュュュュン ―
風切り音が耳を通り抜ける中、その音の発生源 ― 一直線に貫こうとした敵と
油断してはならない・・・しかし、行動停止の始終を見ては警戒が下がるのは詮方ない。身体に力が入りつつも息が上がり思考に緩むが生まれるのをどことなく体感する。そのように思いながらも彼女に近づこうと足が進む。
「ううっ・・・」
痛い・・・鋭い痛みを感じる・・・
吹き飛ばされた・・・唯の蹴りの筈なのに・・・二重に吹き飛ばされるような感覚がする・・・
腹部を中心に小さいながらも機敏に全体を圧迫するような不快感が拡散しつつある・・・唯の痛み―――外からの痛みだけではない・・・それならばあのような蹴りだけではこうはならない筈だ・・・!
何か精神的な・・・霊的な干渉を受けたような・・・半分幽霊の私には耐え難い・・・苦痛・・・
「・・・気持ち悪い」
何処からか声が聞こえる・・・しかし、それが自分の発したものとも気付けないような―――憶えの無い苦しみを大木を背にしながら味わう。
ブゥゥゥゥゥゥン ―
周囲を締め付ける独特の―――今となっては聞き慣れた不気味な効果音が響き、それの付き人が・・・いや、逆か・・・とにかく近づいてくる・・・一歩一歩静かに・・・
押さえつけられるような苦しみを伴いつつも腰より短刀―――白楼剣を抜く。
腹部に溜まる痛みが脳に伝わり、瞼の筋肉が衰えるが何とか目標を視線に捉え、残る力を振り絞り斬撃を放つ。
ジィリィィン ブフゥゥゥゥゥ ―
当たった・・・辺りを覆う爆風の勢いを感じ、最後の悪足掻きが成功した、と・・・勘違いをした・・・
カツ カツ ―
"何か"がこちらへ向かって―――近づいて来る。おかしい・・・本来ならばそこに立つ人間などいない・・・普通の人間なら・・・
ブゥゥゥゥゥゥン ―
恐怖か・・・いや、違う・・・圧迫、それも異なる・・・威圧―――威圧感だ!この地の
痛みとそのオーラに呑まれようとしているのか、暫し呆然とする・・・が、
「・・・話、聞く気に・・・なったか・・・」
よー、大丈夫か~妖夢? ―
安心と言うか、軽く拍子抜けと言うか・・・そう感じていると、右手から声が聞こえる・・・三人・・・幽々子様!
敬愛する主の姿が現れると共に安堵感が広がる。だが同時にその期待に背く事となった結果にどのような反応を為されるか、という懸念が生じる。
「怪我は無いかしら、妖夢?・・・そこの人間n『アルファードさん?』」
幽々子様の声を博麗の巫女が遮る。アルファード―――この男の名前
えっ・・・霊夢の知り合い?
「はぁぁぁぁ、ふぅぅぅぅぅ・・・」
木にもたれ、腰を下ろす中、呼吸を整えようとする。安心感が生じた為か、蓄積されていた疲労が体感上、一気に伸し掛かり、アドレナリンが解けたのか、筋肉痛を始めとする痛みが身体中から湧き出るのを止められない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
何より息が上がって仕方がない。それに誘起されてか体温が上がり、未だ暑さを感じさせる気温が身体を締め付ける。発熱により上昇した体温を下げるべく至る箇所より汗が発生する。汗をかく、つまりは体内の水分量が減少するという事だ・・・夏季にそれを棚上げするのは脱水症状を求める
ゴク ゴク ゴク ―
元より少ない容量の水が瞬く間に―――滝口から流れる落ちる垂水のように自分の喉を通り抜ける。美味い・・・損なわれた
「本当に申し訳ありませんでした!!」
労力を浪費する必要は消えたようだ
私は本日、ある発見をした。適当な座標計算上の航路を用いたとしても、アウター・リムからコルサントへ辿り着く結果もあり得るという発見である。目の前で改めて謝罪をする彼女の主―――今まさにその後ろで見守る女性は今日、"桃色の襟巻"を当該地域にて紛失したらしい。それを捜索すべくその付き人は森に入ったが、同時にその森には自分の目標物も進入していた。
要は外見上特に変わりの無い二つのスカーフが偶然同じ場所に存在し、片方の捜索人がそれを誤解したと言う事だ。そして匂いを嗅いでいた
回収を図った目標は、既に所有者が二人の手助けと共に近隣で発見し、戦闘音を聞きつけ、やって来た・・・
「いえ、自分があのような行為をしていなければこのような結果に至ることは無かったのも事実ですから・・・こちらこそ申し訳ありません」
スカーフを手に取りながらそう思うが・・・スカーフ・・・
「不味い!」
「どっ、どうしたんですか?」
彼女との一悶着、その後の説明や調息に時間を掛け過ぎてしまった・・・現時刻は15:54、ここから里へは約10分程・・・多少の遅延は猶予があるだろうが、いずれにせよ届けに戻らなければ・・・
「人里の依頼人に届けなければならないんです・・・出来るだけ早く」
「あっ、おいおい待てよ」
立ち上がり、下ろうとする自分を甲高い少女の声が止める。金髪のセミロング、黒めの服装に白いエプロンと思われる装飾、そして一際目立つ三角帽子・・・霊夢さん、幽々子さん・・・だったか、二人に付随した最後の一人、何と呼ばれていたか・・・
「すまないが急いでるんだ」
「そんなの見りゃ分かるって、あんた空飛べないんだろ?私が連れていってやるよ」
「?」
何を言っているんだこの少女は・・・代替として届けるならまだしも、連れていく・・・スカーフを連れていくと言う慣用表現か?
「分からないって顔だな・・・あんたをこの箒で連れてくって事だよ」
箒―――彼女が飛行に使用していたこの・・・本来ならば掃除に使う器具。先程は集中が途切れていた為、何とも思いはしなかったが、改めて想起すると・・・どうなっているんだ?いや、事実を受け止めるにしろ、どの様にして自分を連れて行くと言うのだ・・・彼女は跨っているように見えたが、あの長さでは二人乗りは不可能だ・・・まさか、
「箒にぶら下がれとでも?」
「その通り」
予想は的中するが嬉しさなど全くもって存在しない。そのような方法で"連れて行かれる"なんて貨物扱いではないか・・・いや、それよりもそのような事が可能なのか?
「いいんじゃない、走るより速いし急いでんなら」
同意する博麗の巫女。対面は二回目に過ぎないが初対面時とは異なり自分にも敬語の使用を止めた。不快感など一塵も感じはしないが、咄嗟である為、つい驚く。即応力が高いのか、はたまた舐められている・・・いや、それは無いようだが・・・
っと、今はその様な分析に浸る暇は無い・・
「可能なのか?」
「連れてくのがか?この箒なら人一人なんて余裕、余裕」
期限の順守は言わずもがな、遅延により明子ちゃんが不安な状態となる可能性もある・・・不安は消えぬが、
「・・・よろしく頼めるか?」
「勿論、さっさと行こうぜ!」
従うしかない
ブゥォォォォォォォォ ―
風圧が顔面を撫でるのを感じつつ、状況を考察する。今、自分は飛んでいる・・・箒にぶら下がって・・・筋肉が再度消耗されるが、フォースに頼りながら到着を待つ。、
それにしても、この箒は一体なんだ・・・リパルサーでも搭載しているのか?ジェットパック使用上の安全基準には許容され得る程度の安定性を維持し、十分な速度を誇る。
「大丈夫か~?」
箒の持ち主がこちらを覗き込みながらそう伝える。身体が安定しているのか、落ちる気配など微塵も無い。
「問題無い」
「どうやって妖夢を倒したんだ?」
「・・・蹴り飛ばしただけだ」
フォースの使用は念を入れ伏せる。
「あんた宇宙の外から来たんだろ、宇宙人は皆強いのか?」
「いや、そう言う訳では無い」
「アルファードさん、あなた一体何者なの?妖術も何も無い人間が妖夢に勝つなんて、宇宙人でも難しいと思うんだけど?」
並行飛行をする霊夢さんが我々に近付き、尋ねる。秘匿は得策では無いか・・・何れは拡散する情報である可能性も否定出来ない。その詳細を述べさえしなければ唯の超能力として認識される可能性もある。射命丸さんにも素直に伝えるべきであったと後悔を隠せないが・・・
「フォース・・・超能力を使えるんだ」
「超能力?」
「面白そうだな、今度教えてくれよ・・・っと、寺子屋が見えてきたぜ」
上からの声を聞き、視線を左 ― 進行方向 ― 下へ向ける。すると彼女の言う通り、人里の姿が現れた。こちらに気付いたのか、数人が足を止め上空を望むが、然程興味が無い・・・いや、見慣れたものなのか直ぐにその歩みを再開する。
そう観察している間に、寺子屋の上空に到達した。ホバリングから徐々に高度を下がるのが見て取れる。そしてその入り口には明子ちゃんの姿が見受けられる・・・遅れたか。
「あっ、永遠亭のお兄さん?」
こちらに気付いた彼女が壁から背を離し、近付こうとする。降下可能高度に至るのを確認し、飛び降りる。
「遅れてすまない」
「い、今終わったばかりなので大丈夫です・・・あの、見つかりましたか?」
不安げな表情を浮かべる明子ちゃん。遅延が発生したという事実は、最後まで捜索をしたが発見出来なかった、と言う予想を思わせてしまう。だが、霊夢さんが彼女の求める物を提示したことによりその顔に安堵の表情が浮かぶ。
「あ、ありがとうございますお兄さん、皆さん!。私どんなお礼をすれば・・・」
「いや、そんな必要は無い」
「えっ?」
私は互恵的利他主義に基づき、一連の行動を為した訳では無い。あくまで純然かつ善意の行動と認識しても良い筈だ。彼女から対価を求めるなど言語道断である。
「でっ、でも・・・」
だが手を借りた者―――助けを得た者としては対価を納めようとする心理状態に傾くのが当然だ。実質、自分がその視点に立てば、同様の申し出をするだろう。そうしなければ、自分は利益となる行為をされたのにもかかわらず、相手の利益となる礼をしていない、と自身の気概を貶めるような作用に発展しかねない。
任務に成功しながらも、そのような結果になっては主目標を達成した事にはならない。
「それじゃあ・・・」
どうする・・・声に出しながらも次の一声が見つからない・・・いや、
良し・・・
「今度はお父さんの為にも何か贈り物をしなさい」
「えっ、お父さん?」
「お父さんだって・・・君の為に一生懸命働いているんだ。お母さんに贈り物をするならお父さんにもしてあげなければ」
彼女の父親が定職に就いてるのか・・・非道な人間であるかは不明だが・・・彼女の父親ならきっと人格的にも問題は無い筈だ・・・
「そっ、そうだよね・・・わかりました。今度はお父さんに贈り物をします」
「・・・さあ、もう行った方が良い。早速お母さんに見せるべきだ」
「はい!」
大きく頷くその姿を見ると、心が温まり、身体が癒えるように思えた・・・
本当に良かった
「そう、それは良かったわね」
「はい・・・痛っ」
「我慢しなさい、こうしないと痛みが抜けないわ」
帰還の事実が安心を後押ししたのか、疲労と痛みが最高潮へと達し、医務室へ行く事となった。薬品の香り漂う病室ではその認識からか、安心よりも治療に伴う副次的苦痛に耐えようと意識し、実質の痛みが倍増する。しかし、直ちに治癒を望むのは当然。何よりこの程度の痛み、実際にはかなり浅い筈だ。
「偶然とは言えいきなり攻撃するなんて・・・冥界の半霊は躾がなってないのね」
「・・・」
戦闘中の私の認識は"半分"合致していた。彼女―――魂魄妖夢さんは半分人間であり、半分幽霊であるらしい・・・
霊という存在に特別思いや経験がある訳では無いが、一般観念的にそのような存在への恐怖感や不信感は持つ。今更であるが、自分が半霊と闘いを繰り広げた事実を実感すると共に謂れの無い緊張を感じる・・・
「それにしても、フォースは霊に対して非常に効果があるようね・・・あなたは妖怪の天敵と言った所かしら」
「天敵・・・ですか」
それを幸と取るか不と取るか・・・今はまだ分からない。だが、少なくとも妖怪への即応力の高い対処が可能であるのは局地的には有利と言えよう。
「・・・いつか研究させてもらって良いかしら?」
「研究?」
「ええ・・・医療技術に繋がると思うから」
自分は回復系統の技術を保有していない。その為、医療への貢献が直接的に出来る訳ではないが、彼女なら―――月の頭脳ならば、発展の後、実質化するに時間は掛からないのかもしれない・・・
「さて、あと必要なのは十分な睡眠。今日はもう寝なさい」
「はい、ありがとうございました。失礼します」
実を言えば、疲労は既に回復しつつあるのだが、時にはサイクルを変更した睡眠を取るのも必要であろう。そう思いつつ立ち上がり退室しようと足を向けるが、
「アル君」
呼び止められる
「・・・今日は良くやったわ。その子もきっと喜んでいる筈よ」
「・・・はい!」
「彼に蹴られてその様な痛みを感じた・・・そうね?」
彼等を見送り、帰路に着こうとする途中、主が突然そう告げる。
「・・・はい」
「彼は人間・・・祓い人かしら?」
「そのようには見えませんでした。それにお祓いを受けると言うよりは・・・何か精神的な干渉が胸を貫くと言えば良いんでしょうか」
「・・・」
その返答に頭を捻る。半人半霊の妖夢がそれ程の影響を受けるなんて・・・
もし私であったなら・・・それともこの子の力不足?
「ねえ、貴女はどう思う、って・・・あれ?」
まるで誰かがそこに居るかのように言葉を伝えるが・・・該当するような人物は存在しない・・・
確かに居たと思ったのだけれど・・・何時の間に消えちゃったのかしら?
「幽々子様?」
まあ、いいわ。後で考えましょう・・・
「妖夢、お腹減っちゃったわ」
武道を経験してきたのでつい格闘に比重が載ってしまいました(笑)
妖夢はスターウォーズで言うならばグリーヴァスですね。フォースを超える身体能力や反射神経を持つ点が似ています。前者は能力的には強力ですがフォースに弱い、後者は前者に比べ弱いですがフォースにも耐久がある点が相違点でしょうか。