東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

16 / 21
EP7始まりましたね。私は未視聴なのですがネット上の反応と熱狂的スターウォーズファンである海兵隊の友人がぼろくそに評価していたのを鑑みると少し不安になってきます(笑)

まあ元々自分にとって正史はパラレルワールドみたいなものなので、素晴らしい映像と音楽を楽しみにしながら観に行きたいと思います。だってスターウォーズだもん、つまらない訳がない(確信)

彼我不明 敵味方の識別が不可能な状態若しくは客体
正対 身体を真正面に向ける事。上官に報告する際には必須


第8話B With no words, but we know.

 

 

 

 人間が心理的平衡感覚を損失していると感覚し易い状態は、自身の長らく適用のあった環境から離れた状況下に置かれた場合表出し得ると言われている。それは人が環境と聞いて真っ先に思考するであろう自然環境は無論人的環境も含まれる。つまりは精神、社会、自然といった外的な物事の総体の流動や影響等包括的な環境というモノに左右されてしまうのだ。

 

 その様な状況下における最善の解決策は環境に自らを適用させることだ。例えば差別は幼少時代に表出がしやすい。子供特有の興味や疑心といったものが顕著だからだ。だが成長を続けることにより差異の存在する現実に彼等は慣用していく。違いもまた文化のだと―――我々を構成する諸要素なのだと。愚かなことに成熟を経てもこれらの兆候が知的生命体より完全に除外されることはないのだが。

 

 

 だがつい先程まで理解し、執筆が可能で、何より利用していた言語がまるで通信線が突如途絶したように"分からなく"なってしまった場合にはどうすれば良いのであろうか?

 

 

 

 

 

 

「妖怪の仕業?」

 

 その言葉が耳に入るなり無意識的な虚偽心と妙な納得感が身体を突き抜ける。言葉や文字を奪う妖怪?そんな妖怪は聞いたことないしこの状態からその様な連想するなんてことはどこか的を外しているようにも感じるが、逆に妖怪ならばこの不可解な状況を作り出すことも可能であると考えられる。

 

「あなたが来たであろう年の三,四十年前くらいでしょうか?」

 

 私が地上に来る三十年程前―――外の世界の多くの国を巻き込んだ大戦争が勃発した頃・・・

 

「山の妖怪たちの中に突然喋れなくなってしまった者が現れたんですよ」

 

「山の妖怪が?」

 

「はい、人間で言う失語症や失声症の様な病気かと思われたのですが、数日したらまるでお祓いの効果が切れた様に元の正常な状態へと戻ったんです」

 

 失語症は脳出血などから引き起こされる言語機能の障害の一つ。聞く、話すといった音声に関わる機能、読む、書くといった文字に関わる機能に障害が発生する。一方失声症はストレス等の心因性を原因として発声器官に異常あらずとも喋れることが出来なくなってしまう心的病。今の彼の状態を見ればその様に取ることも決しておかしい事ではない。

 

  しかしあまりにも唐突すぎる。前兆というものは全く見られなかった。それに言語障害がきれいに揃って表れるなんて・・・失語症でも喋れなくなる事はあるけどこうも完全に発声しないとは―――無言の状態が彼の意思によるものとは思えないし。

 

「勿論、私は彼等に取材しに行ったんですが、誰も彼も理由が思いつかない始末。わざわざ人間の専門医にも診察を依頼した人もいましたがお手上げでした」

 

「精神疾患の方も?」

 

「全員そこまで強いストレスを感じることはなかったと確かおっしゃってました。皆そこまで気にしませんでした。直ぐに治りましたしね。外の戦争の影響だっていう噂も小さく流れてましたね」

 

 妖怪がその様な病にかかるというのも考えられ難いが、何れにせよ私の知識では試行錯誤するに留まってしまう。今のところ考え得るは医療分野特有の新状か・・・或いは―――

 

 

 

「ただ一人だけこう証言する人がいたんですよ―"私は妖怪にやられた"―って」

 

 

 

 

 

 

 先程ぶつかったどこか不気味な女性―――彼女は言った"おいしそう"と・・・自分の眼鏡にかなった獲物を狩ろうとあの様な戯言を吐いたと思ったが、その真意は私が習得した言葉―――言語が"おいしそう"だったに違いない。目の前で討論を行っている様に見える二人をその目で流しながら熟慮する。何らかの症状の可能性も否定出来ないが、確信に近いものを私は持っていた。

 

 だが本当に言語を奪うなんて事が可能なのか・・・いや、その様な思考はこの地にて蓄積された経験を邂逅すれば消滅する。では何故言語を奪おうとする?目的は一体・・・愉快犯に類似した思考体系でも有しているのだろうか・・・

 

「                   」

 

 再び思考の渦に突入しようとした最中、鈴仙さんが自分に正対(せいたい)しつつ言葉を発する。常人ならば反応しようとも、現状の自分では返すどころかその内容も理解に達することはない。だが直ぐに彼女は・・・招き猫だったか・・・以前目撃した猫の置物の様に手を動かし私に行動を促す―――こちらへおいでと言わんばかりに。

 

 これからの最優先行動―――対象及び自身の状態につき継続調査しつつ、対象を確保する。これが現状での最善であろう。常態ならばそれを目の前の彼女に伝えれば至急行動へ移行出来る―――常態なら・・・

 

 

 

 

「その妖怪、相手の姿も見たの」

 

「えーと、確か見たって言ってたような?」

 

「その妖怪は今もいるの?」

 

「いえ、もう既に亡くなって(消滅)います。永遠亭が表舞台に現れる少し前に」

 

 遅すぎた。恰好が分からなければ探しようがない―――"数日すれば元に戻った"ならば急ぐ必要もないのでは?自然に回復するのを待てば・・・

 

 彼の姿を視界に入れながら考える。彼には申し訳ないが今はより考える時間や人材が必要だ。第一、妖怪の可能性を完全には肯定出来ない。八十年も前に起こった出来事が今になって何故再来したのか・・・気まぐれで異変を起こす地上の妖怪達が脳内を過ぎるが確証の足掛かりには到底ならない。他にも被害者?が出たらその線も有力となるが・・・やはり今は様子を見るしかない。

 

「その時の取材資料とか残ってないの?」

 

「結構前の頃でしたからね・・・捨てちゃったかも」

 

「新聞記者なら取材内容ぐらい憶えておきなさいよ」

 

「ならあなたは診察にきた患者さん全員の言った症状を憶えているんですか?」

 

「・・・とにかく私は彼を永遠亭に一度連れ帰るわ。師匠にも診断してもらう」

 

「うーん、気になりますがそれが賢明ですかね。じゃあ私は過去の資料が残ってないか部屋を探してきます。まだ残ってるかもしれないし」

 

 これからについて意見を出し合い"大変なことになってしまった"と一息ついて彼の方へ身体を向ける。自身の状況について特に怯える様子もなく何か考えている様な素振りが感じられる。彼は強い・・・宇宙人だからか能力を持っているからか・・・博麗の巫女やうるさい魔法使いは人間ではなく妖怪としての認知の方が私の中では大きいが、共に過ごしているからか人間らしさや人間としての本質と言えば良いのか・・・その様なものが感じられる・・・物静かでちょっと怖そうな時もあるけど。私より幼く無力な筈だが私の心の中には恐らく小さくだが尊敬や憧れに近い念が存在する。だが同時に畏怖や疑問といった念も併在している。どこか不気味なのだ―――私の中の人間というカテゴリーに入ってると実感している筈なのに、彼の出自や態度は私を惑わす。

 

 彼が泣いてくれた時は"やっぱり人間ね"と思った―――肉体的だけでなく精神的にも脆い。無論全く悪いことではないけど。だけど彼の冷静な状態を見ると何故か違和感を感じるのだ。他の"強い"人間達を見ても特に思うところは無いのに・・・

 

「アル君、一度永遠亭へ戻りましょう」

 

 恐らく聞こえない、いや、聞いても理解できないだろうけれど、彼に対して失礼な思考をしたからかそれを隠すように声に出して意図を伝えてしまう。無論、そのままでも事態は進まないから私は彼を手招きする。そして永遠亭の方角へ指を指し、何とか"帰宅しよう"という意思を伝えようとする・・・が

 

「え?」

 

 彼は首を横に振り、拒否の念を表した。どこか覚悟を決めたような表情は彼に似つかわしいのか或いは逆か。たじろぐ私を尻目に視線を隣のブン屋へと移し先程と同じように何かを書くような動作―――ペンと紙を要求する。喋るだけでなく文字を書くことが出来ないというのに一体何を?同じく興味深そうに覗く天狗と共にその筆跡を追う。

 

「へぇ」

 

「成程」

 

 "書く"ことが不可能な状態で彼が編み出したのは"描く"という代替手段であった。例え言葉を奪われようと形象を平面に描き写せるならば意思の表明もまた可能だ。まるでプロの絵描きの様に素早く、それでいて丁寧、いや、丁寧と言うよりは現実感(リアル)溢れる形象を創り上げる。絵画の才能もあるのではないか、目で追いながらもふとその様なことを感じずにはいられなかった。

 

 刻々と描かれ、平面上で構築されるのは―――マントにフードで顔を隠した人物?輪郭を暈し、表情を伺い知れない得体知らずの不気味な人が描かれた。これまたリアルな脚部が無ければ人物であるという認識は為され得ないだろう。そしてその生体

部分の描写は性別を自然と思わせる。

 

「・・・思い出しました!聞いた通りです!マントで身体を隠し何処とも無く現れた―――女妖怪・・・」

 

 完成された絵を見て思案していた射命丸文が驚きの混じる声を挙げる。アル君のもたらした結果は年寄り天狗の追憶の成果を導いた・・・あれ、こいつ私より年上よね?

 

「兎さん、やはり彼はこの妖怪にやられたんですよ!」

 

 少々乱雑にアル君から紙を取り上げ、それを突き出しながら意見を述べるブン屋。こいつの記憶が正しく、彼のこの絵が"女妖怪にやられた"という事実の表明ならば

 

「可能性は高いわね・・・」

 

「どうします、この妖怪、探しますか?それとも自然に治るのを待ちます?」

 

 そうだった、自然に治る?という前例が存在するのだった。だが今回もそうとは限らない。或いは妖怪だからこそ回復出来たのかもしれない―――何れにせよこの女妖怪に会わなければ。

 

 

 それに思った・・・もし私とアル君が逆の状態だったら―――きっと彼ならそうする

 

 

 

 

 

 事態は好転していると推定出来る。射命丸さんは自分の唯一の伝達手段()を観察しながら、何かを思いついたような外観動作を提示した。絵の人物に思い当たりがあるのか、より肯定的に取れば自分が絵の人物によって現況に陥ったであろうという事実の伝達に成功したとも言えるだろう。

 

「             」

 

 射命丸さんが何かを呟きながら私に紙を渡してくる。先に自分が利用した物には描かれていない異なる指示絵が目の前に現れた。一次元に描かれた棒状の・・・人―――棒人間と呼ばれるものだ。その主体は何か遺失物を探す様に手をかざしたポーズを取っている。そしてその先には複数の同じ棒人間―――成程、先程の結果は後者であるらしい。視線を彼女に移し、頷く。画家たる天狗は"やった"と言わんばかりの成功を表情で伝え、それをどこか訝しげに見つめ、玉兎は何かを発する―――大方、絵の評価について具申したい意向があるように感じられる。

 

 指示絵を行い意思の伝達を図るというある意味古来へ回帰した方法以外にもう一つ、動向の伝達方法が存在する。

 

 二人の小競り合い?を見守るマグへ手信号(ハンドシグナル)を送達する―――《行動に移行せよ》

 

 それを確認したバトル・ドロイドは即座に了解を示す信号を送り、言い合いの最中で立つ二人へ私の意向を逓伝する。手信号を行う姿を横目に入れた射命丸さんは、即座に理解し、我々のやり取りを模倣したのか人差し指を上に上げ、空へと羽ばたいた。上空より探査を行うということだろう。辺りを切り裂く獰猛類を彷彿させるジェットパックの様な轟音を流すことなく、小さく綺麗な蝶々が風に乗る様に軽やかに飛び去るその姿は純粋に美しかった。

 

「           」

 

 見惚れる自分の目を覚ますかの様に耳奥で聞き慣れた声が反響する。内容が理解出来ずともその優しい声質を錯誤することはない

 

 

 

 

 

 

 

「         」

 

「                」

 

「           」

 

 見た所またも行方については無知のようだ。中年女性に礼をする鈴仙さんとマグを傍目に周囲を観察する。これで何件だったか。目立つ外観は人の目を惹く絶好の事象である筈だが・・・団子屋付近を中心に、徐々に捜索範囲を拡大しつつあるが、対象の目撃情報は未だ存在しない。時折、こちらへと接近する射命丸さんが示す信号も否定的なものばかり。

 

 このまま見つからなければどうなる?一生意思の伝達や、聴覚的交流が絶たれてしまうのだろうか・・・新たに言語を習得するのか、かつて利用した言語を・・・再び。停滞した状況が焦りを生み出し、悲観的思考へと導こうとする。

 

「              ?」

 

 不信の渦巻に誘われる中、見知った顔がこちらに気付いたのか声を上げながら近づいて来る。以前対峙し、敗北した相手―――藤原妹紅さん。ポケットに手を入れながら近づく彼女の姿は失礼かもしれないが何処となく男性的魅力を醸し出していた。ふと後方を垣間見るが、鈴仙さんたちはまだ会話を継続しているようだ。もう一体の相棒はバイナリ―による伝達手段のみ有している。バイナリ―のバの字も知らぬ彼女に対応する現況の代弁を負わせるのは酷である。

 

「 ?         ?」

 

 身振り手振り(ジェスチャー)で伝えるが、どうやらこちらの意図は伝達不能らしく、それどころか呆れを包容したような表情を浮かばせるという結果となった。認識の共有を図り、再度挑もうとするが

 

「           ?」

 

 鈴仙さん達は間を置くことなく理解したが、どうやら彼女には通じていないらしい。早々、人に対して使用すべきではない―――躊躇いを残留させつつも、彼女の内心をフォースを通じ感じようとする。やはり呆れの念が感情を支配し、あたかも不審人物を相手にしているかのような面倒さの心象が滲み出ている・・・

 

「       ?         」

 

「     、       ?」

 

「                」

 

 彼女から一方的に発生した喧騒に気付いたマグと鈴仙さんがすぐさま現れ、恐らくは説明を開始した。時節呆れた表情をこちらに向け妙に委縮してしまう。"何やられてんだお前は"そういった旨が表情と視線で物語る。無論、自身の過失である所は否定しないが、来訪したての異邦人がまさか近付く?という行為のみで言葉を失うなど夢にも思うまい。そもそもあの女性の仕業と仮定して、彼女は言語を奪い何を得ようとしたのだ?再度浮上する疑問に思考を移す。いや、寧ろ彼女は私から奪った言葉で何を為すのだ・・・

 

 熟考する中、脳内を過ぎるは自身が最後に聞いた―――永遠にそうなるかもしれない・・・彼女の発言

 

"とても知的で―――魅力的"

 

"おいしそう"

 

 聞き慣れぬ異邦の言語を"おいしい"と感じる者はどう行動に移る?―――聞き慣れぬ―新しい、新鮮な―――見、聞き慣れぬ新品の商品を見た消費者はどのような感情に支配される?―――希望と期待、ほんの小さな不安と共に商品を試用する・・・

 

 

 新たな言葉を会得した際、人が思うは、いや、私が感じたのは―――

 

「!」

 

 声に成らぬ驚きが発せられる。可能性は低い・・・が、現状では仮定をしらみつぶしにするのが言うなれば強制の義務・・・

 

 

 

 

「Ms.レイセン」

 

「どうしたの?」

 

「アレヲ見テ下サイ」

 

 顔見知りのおばさんに話を聞く最中、突然、隣のロボット―――ドロイドが私に声を掛ける。つられて彼が示す方向へ顔を向けると

 

 

 何だ、歯が痛くて喋れないのか?歯医者行けよ・・・ん、違う?・・・吐きそうなのか?そうは見えないが―――

 

 

 見知った顔が勘違いを起こしている光景が目に入った

 

 

 

 

 

 

「頭がイカれたか馬鹿にしてるかと思ったよ」

 

「喋らないだけでそう思うのは酷くない?」

 

 呆気の念を相手に示すような口調ででもどこか控え目に言葉を返す私。聞き込みの間、周囲を観測していたアル君達の下へやって来たのは、姫様の"大親友"―――藤原妹紅であった。私より少し身長が低いにも関わらず、私の知る彼女への印象とどこか滲み出る客観的な荒々しさが、恐らく彼女の意図には反しているだろうが感じられる。

 

「にしても言葉を奪う妖怪ねぇ、聞いたことも見たこともないなぁ。本当にその妖怪の仕業なのか?」

 

「過去に事例があるし、何よりアル君がこの絵を描いたのよ」

 

「上手いか下手か分からない絵だな」

 

「下手ではないでしょう。現実に忠実な―――リアルな絵だってだけで」

 

「にしてもこんな目立つ格好してるのに見つからないなんて・・・何か能力でも持ってるんじゃないか?」

 

 アル君はこの絵を描き、ブン屋の描いた捜索について示した絵も承知した。意思の共有は図れている筈だ。だがその捜索には不確定要素の多大が過剰である。事実、誰も絵の女を見たと言う人はいない―――彼女の言う様に、妖怪特有の能力で姿を消したという可能性も浮上する。しかし、ならばどうすればいいのだ・・・やはり、時間の経過と共に様子を見守るのが最善なのか・・・悲観的感情に抑圧されようとする中、妹紅の吐いた何気ない言葉が私の中に響いた。

 

「案外その辺で歌でも歌ってんじゃないの?」

 

「歌?」

 

「そいつが奪った言葉使えるか知らないけど、使えるんだったら歌とか歌うんじゃない?外の世界でも外国語を習うとその言葉の曲を聴きたがったり、歌ったりしたくなる傾向にあるって・・・天狗の新聞にかいてあったような・・・」

 

 馬鹿馬鹿しい―――確定要素のない考えには飽き飽きだ・・・だが、そう思うと同時にその様な考えを否定するのも確定要素は包括されていないと心の何処かで自覚する。進路が塞がれた今、考え得る事は躊躇せず行うべきだ!

 

 不安定ながらも半ば無理矢理に決意を入れ、手に自然と力が入る。熱が表面に集中するのを感じながらアル君へ意図を示す為のジェスチャーを行う。私の頭から生える日本の大きな兎耳。これに聞き耳を立て、何かを聴き取る様な素振りを見せつける。傍から見たら少し変わった素振りを彼は笑いもせずじっと見つめる。すると彼は理解したと言うよりは何か妙案を閃きを想像させるような表情を映し出し、マグへ再度手信号を行う。

 

「"同じだ"・・・イエ、"同様の事を考えた"ト言ッテオラレマス」

 

 ドロイドの返答を聞いて私は驚く。彼も同じ様な考えをしていた。直接私が考案したと言うよりはまさに今、隣で疑心の表情を浮かべ悩む彼女から間接的に得たものだが、自身のものであるという錯覚に近い感情に巻かれ彼と同一の意見の保持という事実に何故か嬉しさを感じる。それにしても私の素振りを瞬時に理解するとは流石元諜報員、異常なまでの柔軟な思考と先見性・・・どっかの藤原の生き残りとは大違いだ。

 

「はぁ、ふー・・・」

 

 大きな深呼吸を一度行い、気持ちを集中させ、耳の感度を上げる。壁を突き抜け、数多の声が反響する中、祈りながらかたむける―――どうか運が舞い降りますように・・・

 

 おお、もう調子は良くなったのか?―――

 

 こら幹太、まーたお掃除サボったのかい?―――

 

 いらっしゃい、いらっしゃい ―――

 

 ねえ、早く行こうよ!―――

 

 聞き耳立てた私の中を広がるのは人里の日常。他愛もない、毎日の生活が実感出来る心地良い聞き慣れた日本語。私は祈る、除け者がいることを。

 

 分かった、分かった・・・やればいいいんだろやれば―――

 

 はい、今日の人形劇はここでおしまい ―――

 

 もう、みんな何で驚いてくれないのよぉ ―――

 

 待ってくださいナズーリン、早いです!―――

 

 ラジャ、ラジャ ―――

 

「え?」

 

 つい反応して声が出てしまう。明らかに今、聞き慣れない―――人間とも妖怪とも取れない声質の・・・機械染みた言語が聴こえた。声の源へ身体を向け、再び聞き取ろうと構える。

 

 いいわね?―――

 

 ラジャ、ラジャ!―――

 

 方向が明確化し、そちらへ集中出来たからかより鮮明な会話が耳に入る。今度は機械の様な声だけでなく、女性の声も聴こえた。ああ、神様、姫様、お師匠様、奇跡は舞い降りた。どこか御三方を見下す様な下の感情を心の端に抱きつつも、そう思わずにはいられなかった。勉強というものを全くせずに一流教育機関の試験に合格する程凄いのではないだろうか・・・自身の運の良さに感謝と疑を持つ。

 

「こっちよ!」

 

「面白そうだから付いていこう」

 

 藤原妹紅も付いてくることになったが、まあいい。奴らが移動しないとは限らない。具体的な位置も流石に把握は出来なかった。ならば直ちに現場へと向かわなければ。走り出す私に多少驚きの念を見せながらも走り出す彼等を尻目に私は思う。だが待て、冷静に考えろ。あの声が私達の対象かどうかは分からない。他の人かもしれない。機械音声は?マグのものよりも少し高めの、R2に近い失礼だがどこか間抜けにも聴こえる人のものとは思えない声。河童が作ったドロイドとは異なるロボットから発せられたものかもしれない。確定要素と証明の欠如につい私は意思を停滞させてしまう。いや、さっきと同様だ―――躊躇せずに行うべき。二度ある事は三度ある!

 

 より加速を付ける玉兎を筆頭に三人と二体は常人ならば躊躇いを誘発させるであろう不気味な森へと突入した

 

 

 

 

 森に進入し数分が経過した。再び鈴仙さんはその特徴的且つ有便な聴覚器官を利用し、対象の位置を探る。新しい物を得た者はそれを使用したいという欲求が生じる。自分も無意識にマンダロアの格言等を言語習得の一環という名目を内心掲げつつ、繰り返し発言する様な機会が存在した。対象が言語をどうしたのか不明である。もしかしたら発言を直接化したように"食べてしまった"のかもしれない。だが、それらの言語を自身に記憶したか張り付けたのかいざ知らず、使用するという仮定も存在自体はする筈。類似した、若しくは完璧な同一に近い考えを発案した鈴仙さんはすぐさま自分の欲する行動へと移してくれた。彼女の高い理解能力と思考力に感嘆するに留まらず、同様の思案に達したという事実が何故か心に残り、妙な恥ずかしさと愉快を小さく発生させた。

 

 《部隊分散》

 

 そしてその彼女は我々が知り得るものとは微妙に異なりながらも十分具体的理解が可能なハンドシグナルを用いて指示を出す。種族が異なろうと行動や様式は高い類似性を持つという事実は銀河系にて当然の認識であったが、他の世界においても同様の事が言及出来るという事実に変わった理解と認識を持つ。首を振り、肯定の意思表示を行い、周囲を見渡す。人影はおろか音声も聴き取る事は出来ない。

 

 分散の結果、鈴仙さんとR2、そして自分の三人班、何故か付いてきた妹紅さんとマグの二人組に別れ、捜索地域の索敵接触作戦を展開した。

 

 

 

 

「      」

 

 隊路を警戒する中、鈴仙さんが何かを呟いた。こちらに正大しない所より推察するに独り言の様な支障がない発言と思われるが、気掛かりである。言語の理解不能、発言不可はやはり重大な欠落と化しているようだ。ゆっくりと後ろに付くR2に目を届かせながら、周囲を偵察する。再度、前進する彼女と同方向に視線をずらすと

 

「!」

 

 何かが反射した―――隊列一時方向。目を凝らし当該方角を凝視する・・・"何か"が小火器らしき武装にて照準中、対象は・・・先頭警戒兵(ポイント・マン)

 

「       」

 

 言葉にならぬ悲鳴の様な喚声を沸き上げ、標的たる彼女へ近付く。驚愕によりこちらへ振り向こうとする彼女へ客観的に見れば突進にも見える体勢にて疾走し、怪我と衝撃を与えぬよう抱きしめる様にして、彼女を無理矢理伏せさせる

 

 ピシュンッ!―――

 

 そして背中より地面へ着地した自分の視線の先を赤く輝いた線状が特徴的な効果音を伴いながら通過する。間違いない―――ブラスター光弾!妙な追憶が脳内を過ぎるが振り払うようにしてすぐさまR2へ指示を出す。

 

 《撤退せよ》

 

「           !」

 

 低身長のR2ならば狙撃される可能性も低い。密林に紛れれば直ぐに敵も見失う。相棒の安全を確信し、状況判断を開始する。

 

 Observation(監視)― 明瞭な視覚判断不可 偽装の可能性あり ブラスターと思しき小火器で武装 フォースによる察知、予知等無し

 

 Orientation(情勢判断)― 危険可能性高 彼我不明の物体一体がこちらを狙撃、その所以は不明 待ち伏せの可能性あり 当方を視界下に置いた可能性高 推奨行動―――逃走、一時的離脱若しくは防御

 

 Decision(意思決定)― 相手方先制攻撃につき客体を敵対と認識 包囲下の仮定を留保し、離脱

 

 Action(行動)― 開始・・・

 

 中腰の姿勢に移行し、鈴仙さんを保持しながら常人ではたとえスポーツ競技者でさえ不可能な跳躍(フォース・ジャンプ)を実行する。空中に舞う中、上空という地の利を得たことにより敵方を視認するに至った。詳細は未だ不明だが、少なくとも分隊規模の歩兵部隊が潜伏している。左手で彼女を保持しつつ、他方でブラスターを取り出し、命中の期待を除外した牽制射撃を開始する。敵より砲火を食らうが右手を突き出し、まるで我々と彼等との間に壁が存在するかの如く錯覚を招く、不可視の盾(フォース・バリア)を形成する。

 

 トスッ ―――

 

 約50m程の距離を作り出し、隠蔽に相応しい位置へ落下する。現況における最善は当位置からによる偵察と判断するに至った。緊張が解け、冷静さを回復すると共に、自分が未だ鈴仙さんを保持していた事実を実感する。所謂お姫様抱っこと称される両腕で抱え上げ、体の正面で抱えた保護状態を確立しており、胸板部、両腕、両手より彼女の体温が温かいスープの様に流れ込み、少し汗ばんだシャツが彼女の身体の存在をより強調する。華奢な脚部は白く、適度な柔軟性を右手に感じ、左手には柔らかい"何か"の存在が拡大しつつある。これが反射なのか"何か"に対する追及かは分からないが、無意識に力が込められ、ゆっくりとその手を握る。

 

 むにゅ ―――

 

 実際に効果音がある訳ではないがこの様な擬音が何処からか聞こえるように感じた。言葉で表すならばまさに神秘と称しても過言ではない―――柔らかさ。潰れてしまう程の弱さではなく、一定の硬質を付与する理想的な弾力性。触れるだけで何らかの心地良さが提供される"何か"を再びその手に染み付けたいと思った僕は再び手に力を込める。

 

 むにゅ むにゅ ―――

 

 反復継続のある反応は何度行っても倦怠を生ずることは無い。新たな分野の充足感をまさに今味わっていた。だがふと純粋で当然の疑問を持つ―――これはいったい何だ?その追及の前に、ふと現況について再思する。敵の襲撃を受け、跳躍して、ブラスターを撃ち、隠蔽を行い・・・

 

 自身の経過を思い返すと共に、一つの悲観的感情(罪悪感)が生まれる。規範的に禁止される行為を行うには自身の良心を振り払い自己の決定で行うか、自身の過失等により意思に反して行うかのどちらかに分離するが・・・いや、その様な定義の再認識は現在ではどうでもよい事だ。恐らく事実を覆い隠すように逃げ出したいという逃避の防衛機制が働いているのだろう。だが逃げてはいけない、逃亡すれば銃殺刑より厳しい事案(親交関係の崩壊)が待っている・・・

 

 意を決し、今なお抱く彼女の表情を伺う・・・ゆっくりと冷や汗というのを掻きながら。視線の先には怒りというよりは恥ずかしさを包容したような端正な少女の素顔。仄かに赤みを帯びた頬が前述の事実をより現実化する。常態では伺い知れない魅力を含んだその表情に自身恥ずべきの過失(胸部への接触)とは異なる羞恥心が内心感じられた。

 

「        」

 

 グスッ ―――

 

 何かを呟き、自分の頬へパンチをおみまいする鈴仙さん。だが痛みは無に等しく、頬の皮膚を伸ばすように力を少し怒ったような雰囲気と共に入れられた。

 

 

「           ?」

 

 呆然としていると上空より新たな声が発せられた。瞬時に思考を切り替え温かさが消えるのを感じながらも彼女を降ろす。視線の先には団子屋で遭遇した女性―――対象・・・我々の推測と共有意思は正当化された。まさか本当に索敵が上手く行くとは・・・成功への満足感が身体を通過する。

 

「           ?」

 

「               」

 

「               」

 

「         ?」

 

「          」

 

 鈴仙さんが対象を睨めつながら声を発する。対する対象は表情は伺い知れないが何処か落ち着いる・・・此方は二人、増援も近隣を警戒中、自己に余程の自信があるのだろうか―――そうだあった、彼女は単独犯ではない・・・

 

 

 

 

「周りをご覧なさい」

 

 相対する相手に視線を残しながらも、言伝に従い周りを索敵する。周辺には何時の間にか何か、いや、ロボット―――ドロイドがこちらを囲むように布陣していた。これが彼女の力"言葉を奪い具現化する程度の能力"の実例か・・・

 

 視界に入るのは既に見慣れるようになったマグよりも細く低い骨で構成されたような華奢なドロイド。その細く小さい手には小型のカービン・ライフル―――アル君の世界の兵士たち・・・

 

「あんたの目的は?」

 

「私はね、言語が・・・言葉が好物なの。言葉を食べる口語妖怪。慣れた日本語も勿論好きなのだけれど、久々に目を覚ましたなら美味しい外国語を食べたくなるのが普通でしょ?」

 

「彼にはいつ戻してくれるの?」

 

「一日二日で戻してあげようかとも思ったんだけれど・・・新聞屋さんの書いた通りね―――ここよりはるか彼方の異世界・・・全く知らない目新しい言語と単語で一杯だわ!こんなにおいしい言葉を直ぐに返すなんて勿体ない・・・」

 

「なら奪い返すわ」

 

「この状況で?」

 

 周りの従兵達を示すように両腕を広げる女妖怪。それが合図なのか、ドロイド達は一斉に銃を構える。不味い、どうすればいいの・・・"眼"を使うべき?ドロイドの波長にも効果はあるのか・・・何より四方を囲まれた状況では全体に対し行うことは出来ない。アル君に目を向ける。変わらず四周を警戒している。自分一人ならどうにかなりそうでもあるが、彼は・・・いや、彼は強い、フォースという不思議な力を用いる優秀な軍人・・・やられることなどない!

 

 肯定的に捉えるべきか否か分からない信頼を彼に預け、その目を見る。"乗り切ろう"そう胸に思い、アイコンタクトを行う。小さく首を振り、手を腰へ位置づける。私の意図はまたも伝わったようだ。頭のいい彼だ、タイミングもこちらへと合わせてくれる筈・・・それを含めた信頼だ。

 

 外環境的な汗と緊張による汗が混ざり合い額を流れる。目の前の妖怪を狂気に堕とし、周りの敵を撃ち倒す。単純で難しいが・・・いける!最終的な決意を新たにし、行動へ移そうとする・・・瞬間

 

 

「Ten-hut!」

 

 突然大きな機械染みた声が辺りに木霊する。周りの兵士達から発せられたものではない。女妖怪もどこか驚いたように発声源へ顔を向ける。そこに鎮座するは私を優に超す身長を持ち、細身ながらもどこか強大で、周りを威圧する風貌を持った永遠亭の一員、マグナガード―――周りへの配慮から常時着けていた私特製のエプロンは剥ぎ取られ、代替として全体を覆う大きなケープを身に纏っている。細体の規格を曖昧し翻るケープはボロボロで使い込まれた経歴が推測出来るが、それは同時にそれだけの戦火を潜って来たという証拠の提示でもある。

 

「ショ、将校ダ~」

 

「並ベ、並べ~!」

 

 すると私達を取り囲んでいた兵士達が一斉に喚きながら彼の目前へと集結し、気おつけの姿勢を取り始めた―――まるで指揮官の配下に入る列兵の様に。

 

「何をしているのあなた達!戻りなさい!」

 

「上官ノ命令ハ絶対、絶対」

 

「オ前ハモウ上官ジャナイ」

 

 それまでの指揮官もいきなり出来事に驚きを隠せない。再度、戻るように通達するが、全員無視を貫き、不動の姿勢を維持している。

 

「ど、どういうことなの・・・」

 

「そこの青いのはお前の部下の本当の上司らしいぜ・・・いや、元部下か」

 

 マグの後ろからやって来るのは彼と同伴した妹紅そしてR2。成程、彼等を誘導してくれたのか。後で撫で撫でしてあげなければ。

 

「あ、あとちなみに私ら以外にもお前に要件がある奴らがいてさ、連れてきてやった」

 

 彼女が道を空けるように身体をずらす。すると樹木の影から人がやってくる。人数は三名、中心に身長が高いのが一、両脇をそれより小柄なのが固めている。誰だという疑問が当然の如く生ずるが、徐々に外観を明確にするその姿は

 

「さあ、言葉食い妖怪、観念して退治されなさい」

 

「よおアル、お前も喋れなくなったんだって?良かったな早苗、仲間がいて」

 

「ンー、ンー!」

 

 意外にも見知った連中だった

 

 

 

 

「少しの間借りようとしただけなのに・・・」

 

「人間に危害を与える、それだけであんたはギルティよ」

 

 折檻される加害者の様態を見せつけられる被害者。親類を殺害された様な遺族ならば好感的表現ではないが心の平静が一時的に帰還するであろうが、それ程の悲観感情を伴なわず、何より無事被害の回復を受領した自分には特に思う事は無かった。R2の用意した水筒に口を付け消えた水分の補給を行う。

 

 対象の言語を奪いそれを具体化するという能力を持つ加害者であったが、部下として利用したB1バトル,ドロイドは将校クラスのマグの指揮下に入ってしまい、彼女自身は脅威的な戦闘能力は持ち合わせなかったからか、呆気なく鎮圧されるという結果に帰結した。見事な整列を成したB1、我々を困惑させたクローキング・デバイス双方共に、自分に言語を返した後、荒波に消される砂の城の如く崩れていった。

 

「ンー、ンー!」

 

「何だよ早苗、うるせーぞ。何興奮してんだよ?」

 

「ンー、ンンンンー、ン!」

 

「マグにえーと、あーるつーだっけ?がどうしたんだ?」

 

「忘れてた、早苗にも返しなさい」

 

「分かったからその棒で叩かないで!」

 

「ロボットよ、ロボット!!・・・あれ、言葉が戻った!えーとA.B.C.D.E.F.G〜よし、英語も完璧」

 

「おお、早苗、やっと戻ったか」

 

「あれ?魔理沙さん、そんな声でしたっけ?」

 

「お前、ちょっと聞こえなくなっただけでそれかよ」

 

 そう、今回の事案で被害を受けたのは私だけではなかった。マグとR2を見て興奮する少女・・・彼女も今件の被害者だ。霊夢さんの衣装との類似品を着こなす事からも想像は容易だが彼女も巫女であるらしい。具体的経緯は不明だが自分より先に被害を被ったととのこと。

 

「それよりも見てくださいよロボットですよロボット!!すごーい、初めて見た!ア○モなんか比べものにならないわ!そういえば喋れるんだったわよね?あの、こ、こんにちは」

 

「コンニチハ」

 

「どうしよう、私、ロボットとお話ししちゃった!」

 

「どう見ても挨拶しただけだろ・・・」

 

 詳細な背景は不明だが、どうやら彼女はドロイド、と言うよりも人型機械に興味と造詣が深いようだ。道理でB1が消滅した際も奇声を上げていた筈だ。次々発せられる質問に淡々と返答している様にも見えるマグだが内心は多少の混乱が発生しているであろう。隣のR2も彼女がバイナリ―を理解しないことをいいことに呆れた発言を繰り返している。

 

「あの人が銀河系の果てから・・・って白人、外人さん?ええと、最初は何て言えばいいんだっけ?」

 

 ダソミリアンから所有者たる自分について聞いたのかこちらへ挨拶?しようと近付いて来る。どこか緊張した面持ちを保ち、何かを見られたくないという様な不安な心境が外見から痛感する。

 

「ハ、ハーイ、マイネームイズサナエ・コチヤ、ナイストゥミートゥー. ゆ、ユアーロボッツアーベリーグッド」

 

 この惑星に来訪して数日、互いの文化、常識等の相互理解を達成する為、自分と永琳さんは共通点、特に言語について言及と推測を行った。彼等が使用する日本語、それがベーシックと変わらぬ発音、仕様である唯一言語と考えていたが、実際は地球上―――外の世界において使用される日本語以外の言語も含まれるという事実が顕在した。自分認知から説明するならば示された差異は所謂訛りに類似したものであり、決して他言語との介在という訳ではない。これは私の認識からも肯定出来る。そしてベーシックにおける訛りとして主に該当する地球言語が、外の世界で世界的に流用される国際語、英語であるという判断に帰した。恐らく彼女はその英語について既知であるのだろう。外より隔離した幻想郷に於いてどのようにして習得したか疑問に思うが、それよりも彼女の"特徴的な"英語についての関心が優越した。

 

「Nice to meet you too Ms. Kochiya. My name is Alphard Redfield, the new member of House of Eternity from The Galaxy outside of this one. They are my partners and men. And so, may I ask you a question why you can speak ah...English?」

 

「あ、アイキャンスピークイングリッシュアリトル」

 

 やはり彼女は英語を知っているに過ぎず、高度な会話術等は会得していないらしい。少し意地悪い振る舞いをしてしまったと自省の念に駆られる。

 

「申し訳ございません、日本語で発言すべきでした。私はアルファード・レッドフィールドと申します。遥か彼方の銀河系より参った永遠亭の新参です。彼等は私の相棒であり部下です。一つお聞きしたいのですが、何故あなたは英語を話すことが出来るのですか?」

 

「すっ、凄い綺麗な日本語ですね。私は元々外の世界の出身で、そこでの学校教育で勉強したんです・・・ほんの少しだけ・・・あの、私からも質問をよろしいでしょうか?」

 

 普通ならば何故自分が彼女等の言う所の日本語を会得しているのかと疑問に持つに違和感はないが、恐らく彼女の質問としては

 

「あのロボットは何なんですか?」

 

 自身の欲求に基づく趣旨が妥当であろう

 

 

 

 

 さようならー、今度詳しくお話し聞かせて下さいね~ ―――

 

 じゃあな~ ―――

 

 ミニ異変解決、ご苦労様 ―――

 

 三者三様な言伝を残しつつ、現地より帰投する。縄でぐるぐる巻きにされた例の妖怪は霊夢さんに引き連れられながら自分の隣に立つ射命丸さんより多量の撮影を無許可で為されている。新版の新聞には彼女の府抜けた写真が幻想郷中に逓伝するのだろうか。被害を被った身ながら一息の同情を隠せない。

 

「よし、一段落した所で飯にしよう、こいつの奢りでな」

 

「ちょ、何で私の奢りなんですか!?」

 

「お前いつもみたいに飛び回ってただけじゃん」

 

「あなただって途中から勝手に参加した挙句ただ付いて行っただけじゃないですか!」

 

 互いの功績を貶し合いながらもどこか往年の友人同士の様に語る協力者二人。彼女等に続きマグとR2も歩み出す。自分の為に精力を尽くしてくれた二人二体に感謝の念を内心にて構築する。そして―――

 

「良かったね、無事解決して」

 

 優しい兎さんにも

 

「今回は自分の失態にも関わらず本当にありがとうございました」

 

「いや、一度遭遇して訳も分からぬ内に盗られちゃったんだから、アル君の責任じゃないよ」

 

「それでも・・・ご迷惑をお掛けしました」

 

 正大し最大限の礼をする。過剰であることを示すように慌てる彼女を見ながら解決という結果に至った運命に感謝と安心を感じる。もし言葉が戻らなければ、自分は狂気に堕とす様な永遠に慣用出来ないであろう環境に封じ込められた可能性もある。それは人間の漫然たる恐怖と認定出来る。そして何よりこうして礼を伝えることもままならなかった・・・彼女とまた会話が出来て良かった・・・

 

「そんな、私だって危ないところを助けて―――」

 

 区切り良く途中で彼女の発言が岩に衝突したかの如く停滞する。まるで何か重要事項を回憶しているかの如き表情。それと同時に自身の犯した失態を再考してしまい、行為自体に対する羞恥と彼女に対する罪悪より生じる恐怖が内心を覆う。

 

「あ、あの時は本当に『アル君』」

 

 自身の弁解を遮る様に言葉を重ねる鈴仙さん。夕焼けを前にその後ろ姿に表情は隠れ、どこか低い声質に足が止まる。

 

「・・・何でしょう」

 

 

 最悪の場合、罵倒の可能性もある―――心して彼女の反応を待つが

 

 

「えっち・・・」

 

 

 どこか恥ずかしさを噛みしめる様な声と、赤く染めた頬が返ってくるに過ぎなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。