東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

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今更ですがEP7見ました。ライトセーバー、TIEファイター、スターデストロイヤー・・・正にスターウォーズでしか見られぬ光景に心震えました!やっぱり映像作品は良いですね!来週早速二回目の鑑賞に行く予定です

ただストーリーの方ですが・・・正直酷すぎると思いました。友人が激怒する理由もなんとなく理解出来ます。映像は素晴らしいですが内容はスピンオフに代えても個人的には文句はありません・・・

前置き長くなりました。それと今回から作中に登場するくっそ地味なスターウォーズネタについて先に記しておこうと思います―――くっそ地味ですが!
あと登場人物の項目を更新しました

[ターボレーザー]大出力のビームを発生させる大型火器。スターデストロイヤーとかに搭載されてるアレ
[インペリアル・センター]帝国時代のコルサントの呼称。コルサントよりかっこいい名前
["道の譲りあい"]帝国軍で流行っていた通路で相対する相手に対し道を譲るか譲らないかと言うゲーム。相手がダース・ベイダーなら何もせず譲るべき
[ポテト]ホイルス銀河でのジャガイモ。その見た目からケッセルとも呼ばれる、
[ケッセル]悪名高き鉱山惑星。帝国の刑務所が存在する。呼吸マスクを着けなきゃ死ぬ



第9話A Let sleeping dogs lie.

 ―――――たんだよ"誰がてめーら――――貧相な体視に来るんだ!"って。そしたらあいつら人権侵害だ――――やがって ―――

 

 耳元に触れるは淡く形成された言葉群。周辺に反響を発生させ聴覚器官を貫くターボレーザーの発射音波に象徴される誘発耳音響放射の渦の中に流れる一陣の風の如く耳に触れるも、自身に照準が不適かの様に唯後方へ向かうように消失へ移る。如何にして私は現況の結果へと誘われたのだろうか?目前に拡がるは暗黒の世界―――可聴に非ずして可視に非ず。反りて現状の自己意識は思考を強制に断絶する為か、まさに自身の意識を奪おうと躍起な状態を感取させる。

 

 当然の反応――?その様な事言われたら―――駆られる筈です ―――

 

 だからって人権侵害とか――――――。仕方ねえから"てめーのその身体に価値があると本当に―――――か"って啖呵切ってやったぜ ―――

 

 落ち行く意識を湖より落下物を拾うかの様に言葉、いや、会話が現実へと引き戻す。再度の現況への進入と新たに構築された音の発生が反動となったか闇に居るは変わらずともより明確な会話が耳を薄っすらと支配する。声帯の形状、速度等により変化を示す音高は何れも低位、同様のフォルマントから推察するに当事者は双方男性。反響する声の威力は強力とは称せず一般的な会話に於ける音程を紡いでいると思われるが、何処か強力な主張性も反して随伴する。果たして如何様な内容が交わされているのか―――純粋な対外的関心が内心にて発生するのを空ろげに自覚する。

 

 今こそ奴等に思い知らせて――――。誰がお前らを守ってんのかをなっ ―――

 

 直接は―――――いないのでは? ―――

 

 ――せぇうるせぇ!―――

 

 声が徐々に明瞭と化す―――まるで朝陽が目覚め、地表の高層階を照らし出すように。音源を視界に入れようと緩徐にその目を開く。微妙に開目するも光の"戦塵"が眼球神経に強力ではない刺激を送達するも、徐々に免疫力が向上すると共に"彼等"の輪郭が表出する。テーブルを中央に私の視界上左右に座る彼等の表情は光の反射という自然的要素とその頭部に載る略帽の鍔の斜線という人為的要素により伺い知ることは出来ない。だがそれらの妨害も自分にとっては有害無益―――何故か・・・それは

 

 

 なあアル少尉、お前もそう思うだろ? ―――

 

 

 

 

 

 

 

  チュンチュン、チュン ―――

 

 語りかける彼の偶像が消えると共に今や慣れ親しんだ木製の天井が私を迎える。さえずりを奏でる小鳥の存在は現在が早朝であることを証明し、一日が再び始動するという事実を意識に植え付ける。

 

「・・・夢か」

 

 睡眠中あたかも現実の経験であるかのように感じる、一連の観念や心像―――夢という概念を具体説明するのは困難であるが一般概念で文理解釈を行うならばこう定義されるのは至極適当と言えるだろう。ある程度の内容が想起出来る現状から推測するに、睡眠中につき骨格筋が弛緩して休息状態にあるが脳が覚醒状態を維持する所謂レム睡眠下で夢を見ていたのだろうと考えられる。レム睡眠起床後には夢で見た行為や行動の持続を継続する睡眠行動障害が発生する可能性もあるが自分はそれに該当せずに済んだ様だ。目覚めの直後であるからか意識能力の低下とどこか乖離した感覚を併在させるが、徐々に状況把握可能な程の脳神経の覚醒が付随する。先程の夢・・・場所はインペリアル・センター、諜報局施設の食堂。目前の彼等は自分の部下兼同僚―――大切な人達・・・

 

 過去の記憶が形成されるのは自身の深層心理が見る必要性を要求して、意識が影響をすると考えられている。何らかの事象からの逃避の結果であるのか、ストレスの精神的躍動か―――フォースが何かを示しているのか・・・

一方で原因の所在を考察しつつ、夢で見た彼等の事を想い帰しながら自身の日課をこなすべく立ち上がろうとするが

 

「?」

 

 左脚部側面に温みを感じる。軽くその部位を圧するように押し込むと反発を有した感触が返って来た。何らかの柔軟性を有す固体―――まるで人間の様な・・・意思決定を阻害する様な反射で薄い掛け布団を払い取る。

 

「うわっ!?」

 

 その対象を視覚下に置いた結果、驚愕から誘発された自身の驚きの悲鳴が室内に反響する。布団に存在する―――横たわるは永遠亭の一員で且つ迷いの竹林の主―――因幡てゐ。未だ睡眠下にある無防備な彼女の寝顔は、その年齢とは反比例と称せる程の幼い少女のものである。彼女の稀に見る外観表出に一種の感嘆を覚えながらも疑問の声が未だ覚めぬ脳を刺激するかの如く内心を循環する。疑心を払拭すべく辺りを見渡す。間違いなく自身が占有する永遠亭の一部屋の室内。永遠亭内では、いや、この世界では存在し得ない有機物が壁に掛かるホロ・ボードを発端としてその証明と成り得る。つまり自分は昨日、平常通りに睡眠へと落ちたという事になる。ならばこの妖怪兎は外部より私の部屋に侵入したという推測が合理的に導き出される。

 

 一体何故だ?その性格に基因するならば、彼女の特性とも称せる悪戯の結果なのか。又は何らかの行為を自分に為そうとするも疲労等により眠りに落ち、自然に布団を求めたのか。様子を窺うべく再度彼女の姿を視界に入れる。先程と変わらず睡眠を継続している様だが演技の可能性もある―――起きた自分を驚愕させようとする意図を有するとも考察出来る。しかし、それを考慮するも極自然な睡眠状態であり且つ仮にその意図があろうとも既に起きた自分に対し特定の行動に着手しないというのも違和感を感じざるを得ない。現時刻は彼女の推定起床時間よりも早い時間ではあるが原因追及を欲する自身の感情が"自分にとっては行動時間である"という恣意的な認識よりその効力を増していく。感情の流れに従い起こすべきか、或いは否かを思案する最中、外部より人の気配を感じ取る。自身の右手―――内廊下より生じるその気配は

 

「アル君大丈夫?何か大声が聞こえたんだけど」

 

 予想が現実化となった声が襖の先より進入すると同時に、今さっきまでの疑問や感情がサーマル・デトネーター(小型熱核融合爆弾)に吹き飛ばされたかの如く内心より分散する。それに付随するは心理的危機感。仮にこの状況が彼女の目に進入するならば、自分にとって詐害的な錯誤を生じさせる可能性がある。無論彼女は、自分とてゐさんがこの様な状況下に置かれている現況が私の意思によって発生した結果ではないという理解を想起させるだろう。自分のアイデンティティや性質は彼女との信頼関係と行動時間に比例して肯定的に伝わっていると推察可能だ。しかし、未だ確信的な理解を彼女に求められる程の関係にあらぬも事実。自身とてゐさんが"密接"な関係を交わしていた等の否定的視覚解釈を取る可能性も否定出来ない。彼女等の信頼獲得も指標にある自分としては、万が一にでも小児性愛(ペドフェリア)の嗜好を内包する人物とは認識されたくはない。

 

「大丈―『開けるよ』」

 

 今そこにある危機に対しての対象模索時間が長期化してしまった為か恐らく自分の安否を心配した鈴仙さんが扉を開けるとの旨を表示し、自分の返答はその通達と重なり打ち消された。瞬時に対応を計算した私は放置した掛け布団を眠る彼女の掛け、その隣に自身の身体を入れる。

 

「アル君大丈夫―――って、まだ寝てたの?さっき大声が聞こえたんだけど」

 

「すいません、腹痛をもようしてしまって、つい声が」

 

 腹痛より生じた音声反応が驚愕のそれと類似するというのは想像するに困難ではあるが、驚きを包括した反応であったことを彼女が不認識であると願い、少々無茶のある返答を紡ぐ。

 

「え?お腹痛いの?薬持ってこようか?」

 

「いえ、直ぐに収まると思うのでその必要はありません」

 

「でも大声出す程でしょう、念の為にも飲んでおいた方が良いんじゃない?」

 

 あくまで自分に対する心配より生じる彼女の心掛けに感謝と心嬉しさを感じるがそれと並列して言及し難い背景事情があるとはいえ、彼女を欺罔している事実に罪悪感が従属する。だが現況下ではそれらの感情の吐露よりも事態の収拾が優越する。

 

「分かりました、お願いします」

 

「少し待っててね」

 

 仮病を装う形となったが何とか彼女が現場より距離を置く事由を創出する事に成功した。危機の最中に到来した巨大な機会を利用し、対処をすべく新たに思考を形成するが

 

 

 暑い ―――

 

 

「え?」

 

 薬を取るべく部屋を後にしようとした鈴仙さんの背中より一声が紡がれる。多少こごもった何かに覆われた内部より発生したと思われる声。高いフォルマントからは幼き少女を連想させるが

 

 

 暑い ―――

 

 

「この声って・・・」

 

 

「暑~いーーーーー!!」

 

 

 自己を覆う掛け布団を邪魔者の如く認識に依ったかの様に引き剥がす。視覚に障害が無ければ一様に彼女の存在と個性を認識可能であろう・・・つまり

 

「てゐ!?」

 

 私の早朝からの努力は見事失敗した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「びっくりするわよね、朝起きたら隣にてゐが寝てるなんて」

 

 自分とは背を向けた状態にある鈴仙さんが食器を元ある場所へ戻しながらそう語りかけてくる。そしてその内容はついさっきの"騒乱"の存在を再び強調する。結果的に見れば、自分の努力が泡になったとは主観的には必ずしも認識し得るものではなかった。てゐさんが声を張り上げながらその姿を提示した際には無駄な努力の損失とこれから起こり得ると想定出来る事情への不安が混合し、未だ夢にいるのではないかという逃避の心情を生み出すまでの不安定下に置かれることとなったが、最適当な推定の一つに還る結果となり、つまり彼女は瞬時にその原因がてゐさんにあると認識し、自分に対して何ら否定的、嫌悪的感情を投射を行う結果には至らなかった。それは肯定的に取れば、普段の自分の行動より客観視し得る行動や性質がその様な理解をするに供したとも考えられるが、最大の直接的根源は、てゐさんが日頃不定期に誰かしらの部屋に進入してその布団に入るという恒常的性質を有し且つそれを鈴仙さんが十分に認容していたという点であろう。

 

「私達の部屋は鍵がないから簡単に入られちゃうのよね。冬だとまだいいんだけど、夏に来ると本当暑苦しくて・・・流石に男のアル君の部屋まで"狙う"とは思わなかったけど、予想は外れたみたい」

 

 ごめんねと―――配慮が足りなかった事につき謝罪の念が感じられる鈴仙さん。無論彼女に過失は存在し得ずたとえ進入されたとすれどもそれらの歴史的背景があるならば特に自身に問題は発生しないであろう・・・今後は。内容から窺うに、今回の案件に於いては夏季における進入との事で、彼女にとっては肯定的に捉える事象ではないらしい。薄い掛け布団を利用し、一部分を防寒する夏季に於いては確かに人間、否、妖怪の体温から生じる温もりの外表的接触は睡眠の安定を妨害する構成要件要素とも捉えられる。だが男性である自分からすれば外体温、身体的な問題は然程影響とはなり得ず、異性間による誤解を出発点とする連続性の錯誤の循環が最重視されるべきだと今回の経験より自覚するに至る。

 

「でもわざわざ嘘なんて吐かなくてもよかったのに」

 

「すいません、色々と誤解を与えてしまうと思いまして・・・」

 

 先に生じた罪悪の代替として羞恥がその役務の任に着くのを自覚する。異性が傍に位置するという客観的錯誤を創出し易い状況とはいえ、それを隠そうとした事に対するその認識の本質的な羞恥と、その必然性は無かったという事後事実的な理解の恥ずかしさが何とも称せぬ意識へと変化するのを感じながら。無論、てゐさんに対し、性的嗜好や劣情より構成される下心など抱いたとはレッドフィールド少尉の名に懸けて否定する。愛らしい外見を有するとはいえ未だ青年期にも突入していないだろう外観の相手に対してその様な嗜好を持つ事は正常且つ平常な人間男性には主観的にも客観的にも法的事情に於いても不適当である。また、自分の個性的に生活を共同する相手に対する信頼と想像出来ぬ様な歴史を生きた相手に対する尊攘がそれらの感情を仮に抱いたとしても排除するであろう。

 

 

 なあアル少尉、お前もそう思うだろ?あんなん見ても目の毒だよな ―――

 

 

 伍長等の記憶が夢に現れたのは現況を示唆しての注意喚起だったのだろうか。夢にまでも"お節介"な彼等に対して笑いの念が浮かぶ。ただ目の毒とは過大な評価であると彼には通達したい。まあしかし、自念に服するならば、"いやんH"と原因元に言われた際にはそれに匹敵する様な系統の言葉を伝えようとする意志が浮上した。

 

「まあ、てゐだからってのもあるけどね。これが師匠とかだったら流石に驚くわ」

 

 

 面白そうね、今度実践しようかしら ―――

 

 

 脳の中枢神経が想像することさえ禁止するであろう危険な仮想を鈴仙さんが口走ると共に前方よりそれに対する意見が表明される。皿を洗う手を止め、首を上げた先に居たのは仮想の主体である永琳さんであった。

 

「えっ、師匠?あ、いや、勿論冗談ですよ。師匠はそんな事しないって分かってますから!」

 

「何慌ててんのよウドンゲ?」

 

「あっ、すいません。何かご用ですか?」

 

「ええ、あなたとアル君に。人里の西さんの下へ胃腸薬を届けて欲しいの。昨日渡しそびれてしまって。どちらか行ってくれないかしら?」

 

「自分が承ります」 

 

 彼女が言い終わると瞬時に即答する。新任の身分で双務に課された依頼を辞退するのは社会常識上適当ではない。個人的便宜から述べるならば、更に細分的に人里の地理に慣用したいという魂胆と単に人里へ赴きたいという希望から形成された意思でもある。

 

「いいの、アル君?」

 

「問題ありません」

 

「決まりね。早速だけど今から頼める?」

 

「了解」

 

 寧ろ早朝より継続する気分を払拭出来る。喜んで任務に就かせて頂こう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは失礼します」

 

「おう、悪いな兄ちゃん、年寄りの無駄話に付き合わせてしまって」

 

「いえ、是非ともまたお聞かせ下さい」

 

 軽く手を上げる西さんに対し会釈を行い、玄関より去る。永琳さんより急かす旨の言付けであった為、不安と心配で訪問した所存だが、あくまで不定期的な胃腸炎に侵されているに過ぎず、症状自体も別段重症と認識する様態ではなかった。"これでも昔は妖怪退治を生業にしてたんだ"との言葉を証明するに最適な事例であろう。彼の若き日の武勇伝を聞きつつ、永遠亭の住人達とはまた異なる人との新鮮な会話を行う充足感を味わい、上々な気分に浸っていると自覚できる。

 

「あら、永遠亭の新しいお兄さん、おはよう。朝早くから仕事かい?」

 

「おはようございます。昨日薬を渡すのを怠ってしまいまして―――」

 

 西さん宅の向かいからやって来る女性より挨拶を受ける。一度しか目に受けてない筈であるにも関わらず、自身の存在を認識し得て頂いた事実に感嘆を覚えつつその足を進める。朝早いとはいえ、既に人里の人々はその多くが自らの事業、職務を遂行すべく邁進している。私自身この共同体内に於ける医療事業の末端には属しているが直接当地で生活を享受している訳ではない。しかしこの幻想郷という限定された閉鎖区域に於ける主要区画として自分と、特に営業における関連が強力である為かその活気は身に触れて不快などは無論起こらざる気質であり、反対に臨場感から成る現実味を実感するに起因している。それは未だ経験の浅い―――慣用を付帯する事のない現実。幅広い通りで自らの主張性を存分に発揮する商店、立ち寄る人々。狭隘な通用路を情報部員達が資料をその手に進み、窓一つない閉鎖性を体現する事務室へと当然の如く進入する現実とは多大な差異が存在する。一見では大胆不敵に歩みを進める上級将校も、それに怯えを見せる新兵も、古参兵に流行りの"道の譲りあい"も・・・そして敬礼をする自分自身も存在しない。多種多様な任務で類似した現実は体感を得た筈ではあるが現実に於ける純真の自由を基する光景は今なお新鮮さと新規性を損失することは無い。

 

「・・・」

 

 斬新な事象の流入と元来の価値観の自然的変化に作用したかこの世界に来てからの自分は所謂感情的になりがちなのかもしれない。しかし、それについて自己評価可能であるならば過去の価値観や感覚から乖離している訳ではない様だと内心にて思案しながら目前に広がる道を進み行く。生まれ育った港湾を離れ海原へと駆ける小魚の様に"泳ぐ"中、容姿を見知った―――視覚的記憶の存在する人物の後ろ姿が目に入る。青字のメイド服に白い前掛け、三つ編みを流す銀髪の頭部に強調されるカチューシャ。クリムゾン・コマンド(紅魔館)のメイド―――十六夜咲夜。この里の衣服文化には相容れない―――特色付いた個性を主張する洋装―――自分と同様の。かの人物との関連と経験を追憶し認識するにつれて周辺世界の実質的物理・自然法則に従属するという人間の本能を破壊されたかの様な衝撃と必然的に随伴する恐怖が内心を占領する。その影響下に下った脚部は無意識に歩みを止め、視線は前方へと貫かれる。対象たる客体はこちらを察する気配も見せずに食料品店にて大きなバスケットを保持しながら商品を物色している。

 

 最中比較衡量されるは次節行動の選択―――面識者として挨拶を交わすか、将又、未感知を装い通過するか。しかし、一度の面識で挨拶を申すというのも行動心理学的に考慮し得るに如何なる結果が帰属するのか。現状を視認するにも彼女は買物という自己の行動の最中にいる。自分の存在は煩わしさを創出する誘因に過ぎないのではないか。対象に対する防御的、生存的な本能的感情の故か、どうにも回避行動を選択しようとする志向が自身の深層心理にて形成されているらしい。だがやはり自分が行ったとところで・・・いや、本能的及び人間関係的な恐怖に屈してはならない。逆に思考せよ、無視を継続し通過するのは道義上肯定的に捉えられるものではない!

 

 決断が下された自身の脳からの指令からか、硬直―――そう称するに相違はない状態が解凍されていくかの如く柔軟性を再有し、身体は対象へと向かう。継続性の無い一時的なものかは不明だが強い意志から言葉を発しようとする。

 

「あの・・・」

 

「?・・・」

 

 自己に対する発言と解したか、発声源(私の方)へ顔を向ける。その視線と気質は数週間前と変わらぬ冷静の欠乏が見えない。表情を視認した事により緊張が増すが、自身の十八番(諜報上の演技)を流用し、真意を悟られぬよう言葉を紡ごうと口元に力を加える。

 

「あはようございます」

 

 結果的に主目標の達成は完遂した、しかし、戦術上の勝利(挨拶の交付)を獲得しようとも戦略上の安定(将来の人間関係)を安定させるに寄与したとは言えない。それを確定するには対象からの返答しだいである。緊張下に於ける時間感覚の破損の為か既に10秒以上は経過しているかの如き錯覚を催す。

 

「・・・おはようございます」

 

 だがその錯覚は返答を受けると共に、修理が為されたかの様に消失した。拘束を解かれた自身の内心は安心と安堵が同時発生する。さり気なく視線を移動するが、その瞳より推察出来るは驚きや疑問の色。作戦は未だ終了に非ず―――払拭を有効化するには元諜報員としての手腕が試される。

 

「その説はど―『悪いわね咲夜ちゃん、私の勘違いだったみたい』」

 

 作戦の継続の間に立ったのはこの店の承認―――営業主と思われる中年女性。文理解釈するに客に対する給付その他契約上の観点で錯誤が存在したと推定する。

 

「そうですか・・・やはり一度戻ってからまた来ますわ」

 

「ごめんねー、変な期待させちゃって・・・あら、いらっしゃいお客さん」

 

 彼女に対する伝達が終了すると共に、自分の存在に気付き営業上の挨拶をする店主。軽く会釈を返しながらもその伝達内容について思考する。"一度戻ってから"―――商店上考えられるは在庫の無い商品を一度帰宅してから再び訪問し、買い入れをする、若しくは現状の自分の能力では運搬不可能な部分を残し、再度来訪し回収する。一度戻ってからという文理上から前者の仮説は滅失し、商品の幾つかを纏めて通常の陳列場所より分離して保管する情景を見るに後者の期待可能性が上昇する。

 

「あの」

 

 推測に確信を抱いた為か、若しくは当初の目的を達成したためか、それこそ先程の様な事前の意思決定の思案を行うことなく

 

「お手伝いしましょうか?」

 

 

 自然に言葉が放たれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか申し訳ないわね」

 

「いえ、自分から言い出した事ですから」

 

 食料品で埋められたバスケットをスピーダーの後部へと固定しながら思う―――何故あの様な提案を具申したのか。肥大な恐怖心の緩和に比例した探求心に類似する人間関係の構築、とでも称すべきか。本質的には所謂思いやりという概念事実から成る行動であろう。物質的な自己の利益、不利益の比較衡量せず、純真な親切心より生ずる・・・或いはそれを相手に示すという心理的な利益を目的とする行為性質。道徳上は前者に依る方が評価に価するのが当然であるが、残念ながら自身のこの行動源は利己心を含む後者から成ると言わざるを得ない。しかし言うならば、それが人間社会に於ける当然であり且つ特別の否定性を有する感情でもない。重要なのは実質に相手方に対しての利益を発生させる点である。そして何より後者に於いても利己的性質より親切心がその中核を占めるのが通常だからだ。

 

「それに以前、お世話になりましたし、そのお返しとしても」

 

「当然の御もてなしをしたに過ぎないのだから気にする必要はないわ。まあ、実際手伝ってもらって損はないけど」

 

 今に至るまでの短時間で上書きされた情報として、彼女に対する自分の認識と予想には修正が必要がであると言っておこう。氷の如き印象は恐らくは従者としての礼儀と節度から形成され、それに自分の有した本質的感情が付与されることにより感取されたと推測した。彼女は冷静な性格を有してはいるが随伴して向社交的な部分を包括する。こう称してはは悪いが意外にも女性的且つ社交的である。以前行われた会話はどれも営業的なものであったが、今これまでの間に限定すれども、彼女の本質を見せる私的な性質がその随所に見られる。深い面識の不存在にも関わらず私に対して何ら否定的感情も見せなかった。そう、今、私が感じるのはその意外性と人間性であり、十六夜咲夜という人物に対する好意的な興味が沸きあがる旨の自覚をする。

 

「この乗り物の浮遊も魔力が使われている訳ではない―――外の技術よりも遥かに優れている様ね」

 

「外の技術に詳しいのですか?」

 

「特には。ただお嬢様がそういうのに詳しくて、後は香霖堂の主人の影響かしら」

 

「こうりんどう?」

 

「魔法の森の入り口から少し離れた場所に位置する道具屋。色々なガラクタがあるのだけれどその中に外の世界から流れ着いた物もいくつか存在するの。元々外で暮らしていたお嬢様には色々とご所望の物も多くてね、利用させて頂いてるわ」

 

 幻想郷は元来、人間文明の発達と人口の増加より存在と意義を喪失した妖怪達の退避場所として構築された彼等にとっての新たなる地。外の世界からの干渉を防ぐ為、妖怪の賢者(八雲紫)により張られた結界は幻となったものを自動的に呼び寄せる性質を持ち、多くの日本外―――外国からの勢力や種をも呼び込む結果へと帰結したとのことであった。恐らく彼女の主人もそれと類似した背景でやって来たと考えられる。外技術に聡明であるというのは彼女が比較的最近幻想入りしたという仮説を打ち出す。道理で人里では見られぬ代物が存在した筈だ。地位的には妖怪の山の文化に近接していると把握出来る。

 

 そして横を歩く彼女が示唆したこうりんどうなる道具物品専門店。人里にも外の品物を販売する店は多々存在するのは承知だが、里から比較的距離のある地域、しかも魔法の森の近隣で商売をするという事実に関心が惹かれた。いずれ訪れる事となるだろう。

 

「そうでしたか・・・今更ですが、何故これ程の量を購入したのですか?」

 

 会話という行為に於いては話の切口とタイミングが安定と継続へと繋がる。自分と彼女の未だ薄いと称せる関係に於いては相手への興味の意思を主張するのがその後に於いても好意的な関係に発展する始原となる可能性が高い。あまり褒められた行動様式ではないが無言の環境を構築するよりは有益である。そして自身がその主張に利用したのがこれまでの状況で曖昧化していた現行動の本来的な理由についてであった。無論、多量の商品を購入する事に異常性は見られないが普遍性を欠くのも事実である。仮説としては普段から当該勢力は食料品の一度の大量消費を為している、日常的に買い入れを行わずある一定期に総計して購入をする、若しくは何らかの式典等特定の行事に付き大量消費が予想されるか、等が挙げられる。通例的には第一説は不相応に思えるがその外見に反し彼女の主は・・・人間では無い。

 

「紅魔館には何人か従業員がいるのよ。貴方が以前来た時はお嬢様の命令で貴方の前には姿を見せるなって下されていたから想像つかないと思うけれど。それに加えてあまり定期的に買い物行かないもんだから時々その間隙を忘れてしまって貯蔵庫が空っぽになってしまっているの。だから昼間までに蓄えようと思って・・・」

 

 想定外の返答に衝撃が走ると共に思案の見落としという自身の欠陥に取り留めもないない悔しさが生じる。成程、あれだけの大型建築物に彼女と主、そして門番のみが居住しているとは寧ろ通常の認識では阻害されるべきである。館内にて目撃した人物がその三人に限定されたという状況であった為、視覚記憶が意識に強力な影響を与えたのだろう。自身の関心の芽を潰されたのは良いとして改定して疑問が生じる。自分の前に姿を見せるな―――彼女を除外して・・・これは一体何れの理由からなるものなのか。

 

「何故その様な命令を?」

 

 早速疑問の提示を行う。それを聞いた彼女は僅かに目を見開き、こちらを覗く。

 

「お嬢様曰く―――」

 

 

 そしてその瞳にはどこか愉悦を想起させる

 

 

「"手下無しでカリスマを見せたかった"とのことよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜さ~ん、お帰りなさいって、あなたはあの時の」

 

「おはようございます」

 

 クリムゾン―――もとい紅魔館の巨大な営門へ再度訪れる。霧が晴れ、見通しが良い環境的事実と、その下で魅惑と化した美しい風景の影響か、以前の様な外見的不気味さを感じず、寧ろ冷静に見れば芸術的なコントラストであると意識を形成してしまう程の気分を感じていた。だがそれは、今此方へ向かい手を振る門番の陽気明朗も深く滲んでいるとも考えられる。以前此方を去る際に一度面識のある、確か名前は―――

 

「今日は起きていたのね、美鈴。さっさと門を開けなさい」

 

「はいはいはい、ちょっとお待ちくださいね」

 

 彼女の名前を明確化した十六夜さんが催促をする。以前は睡眠下にいた彼女だが本日はその任を瑕疵無く遂行しているようだ。

 

「ああ、荷物を運ぶのを手伝ってくれたんですか、ありがとうございます」

 

「いえ、お気になさらず・・・」

 

「貴女を連れて行かなくて良かったわ美鈴。彼は荷物を運ぶ際に果物を潰したりしなかった」

 

「もう、あの時の事は忘れてくださいよ~」

 

 果物を潰す―――客体の種類と性質にも依るが、通常の人間で世間一般的意味に該当する果物を圧縮するには相応の握力が必要となる。この事実は暗に彼女が妖怪その他それに類似する生命体である事を示している・・・

 

 

「さて、取り敢えず・・・このジャガイモとトマトを持って行ってもらえるかしら?」

 

「分かりました」

 

 大量のポテトとトマトとが占め合う紙袋を下から支える様にして持つ。人間がこの世界にいる様にポテトもまたジャガイモと言う日本名で存在するのには驚いた。特に米に比べ、銀河系文化にて普遍である当植物は自分にとっても馴染み深い。ポテトを鉱山惑星ケッセルと称す者もいるが、成程、こう元外観を見れば類似している。その普遍性と悪名高さは反比例だが。その様な事を思いながら先へ進む。すると視線の先に小さな―――幼い外見をしたメイド―――前を行く彼女が述べた妖精メイドが接近してくる。十六夜さんとのやり取りを見るに特段低知能とは思えない。

 

「お嬢様が?」

 

「はい、さっきいきなりやって来て"咲夜は何処?"って」

 

「・・・」

 

 どうやら睡眠中であった彼女の主がその予想に反して起床したらしい。無言となる彼女の顔は先程とは異なる従者の顔つき―――冷徹さを感取させるものへと変化した。

 

「分かったわ、取り敢えず貴女はその本をパチュリー様の下へ届けて頂戴」

 

「は~い」

 

 どこか気の抜けた返事を返し飛び去る妖精メイド―――此方には何の反応も示さずに・・・

 

「申し訳ないのだけれど、その分だけ貯蔵庫に運んでもらえるかしら?私の分は自分でやります」

 

「よろしいのですか?」

 

「ここまでさせておいてこれ以上無礼は出来ないわ」

 

 "問題ありませんが"―――その旨を伝達しようとするが寸前で口を閉める。過剰に介入するのも差し出がましいだろう。無下に"冒険"すべきではないと判断する。

 

「分かりました、貯蔵庫までの経路は?」

 

「このまま直進すると絵画が飾られた突き当りがあるから、そこを右に上がって更に直進すると貯蔵庫の扉があるわ。鍵は掛かってないからそのまま入って、テーブルに置いといてもらえるかしら」

 

「了解しました」

 

「ごめんなさい、後日お礼させて頂くわ」

 

 そう自分に伝えると共に彼女は突然目前より消失した。その事実に驚愕が急加速し再度緊張を伴うも、直ちに彼女の能力を回帰しそれを軽減させる。時を止める能力―――目前での視覚がより心境を不安定へと誘うが、これまでの彼女自身の本質を追憶するこ事でそれもまた排除しようと努力する。単独となった為か、謂れのない乖離感を想起するが誰かに気を掛ける必要が無いという反対解釈を構築しつつ前へ進む。

 

 芸術的嗜好が豊富でなければ真に理解出来ないであろう風景がを通り越し、右折する。此方までの長距離と比較するならば他愛もない道の先には大型の扉―――貯蔵庫。任務完了の期待が湧き上がるのを感取しながら再び歩みを進める。その最中、半開きの状態を維持する一つの扉が目に入った。先を行く貯蔵庫を例外として扉や通用口の存在しない当該環境下に於いては異質性を感じざるを得ない。だが考えようには詰所等の可能性もある―――閉めようとする行動意識を中断し、再び前を向こうとするが

 

「おっとっ」

 

 袋口よりトマトが一つ落下し、不安定な回転に乗りながら此方より離れて行く。その進行先は―――適度に開いた扉。いずれにせよドアを閉める結果へと誘導される様だ・・・

 

 僅かに開いた側面より内部を覗く。そこは想像した詰所とは大きく異なる狭隘な螺旋階段。視線の先にはまるでこちらを嘲笑うかの如く転がり落ちるトマト―――面倒な事となりそうだ。紙袋を置き、先を急ぐトマトを追跡する。狭く、松明が照らす不気味な螺旋階段は未だに終点を見せない。対象が破損していない事を祈りつつ、脚を早めるが自身の希望が為された事実を知る事となった。

 

「ふう・・・」

 

 一息吐き、対象を拾う。途中破損するのではないかと思われたトマトは全くと言って良い程その外観に異常は無く、当該施設を暗示するかの如くその赤色を主張する。そして思う―――ここは地下室か?状況把握の為、周辺を見渡す。この区画へと誘った螺旋階段とは異なり、電球を使用しているが、その発光色は松明を燃やす炎を思わせ、全体的に暗い区画内は未だ階段が続いているかの様な錯覚を生み出す。嫌な予感がする―――すぐさま立ち去ろうと踵を返すが、瞬時、"何か"に抉られるかの如く貫通をその身に受け、再び振り返る。無論そこに存在するのは古びたインテリアと電球のみ。だが確実に今、自分は何かを受けた・・・この先には一体何がある?感取した危機感が後退ではなく進撃を要請する。本能に従属する様に左折を行い、進んで行く。突き当りを右折する寸前にてその先を把握すべく片眼を晒し、緩徐に光景を視覚化する。目前には同様の幅を持つ通路が続く。多数の脇道や構造を見るにここは所謂ダンジョンであると推定する。仮にそれが事実であり、字名通りの機能を備えるならば退却が最善・・・しかし

 

 

 コツ ―――

 

 

「!?」

 

 無音の下に支配される環境により普段ならば聴き取ることもないであろう小さな足音が聴覚を震わす。発声源は当位置の反対側―――自身の後背より・・・

 

 角へ進出し、壁を背に状況を窺う。徐ろに横目で確認を為すが先程と差異は見られず、人影は不存在。だが不気味な足音が止む事はない。恐怖を攪乱しようとする意思が内心にて誘発されその原因を解明、確定化しようと身体全体が加圧される・・・その恐怖が 有害である予測可能性を阻害して。

 

「・・・」

 

 最中、闇に奏でられた音が突如消失する。聴覚的、直感的に推定するに先と同位置。増幅する不安を払拭しようと勢いをつけ横目を晒すが

 

「・・・」

 

 そこは先と変わらぬ光景が広がるに過ぎない―――橙色の電灯に晒された洋風建築のダンジョン内部。何れの差異も見えず、客体の存在は認識し得ない。直接的憂惧の感が侵攻を止めると同時に得体の知れぬ何かに対する狼狽が身体を揺らす。この地下室は精神の均衡に悪影響を及ぼすと思われる。無心を意識し、我を誘う螺旋へと足を進むべく身体を乗り出そうとするが

 

 

「何してるの?」

 

 

 背後より生じる尋ねの声に脚部筋肉が引きずられる様に停止する。何故、如何にして―――提訴される疑問を押し留め、意識を保つ。胸が締め付けられると言う抽象表現は正にこの様な事態を予期しているのだろう。そしてそれに反射するように恐る恐る顔を振り返るが、その先にいる客体を視界に入れると共に

 

 

 グシャッ ―――

 

 

 右手に握られたトマトが落下し、無残な姿へと外観を変えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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