東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》 作:Exar Kun
EP7二回目見ました・・・スターデストロイヤーは創作史上最高の出来を誇る宇宙船だと改めて思いました
[振動ブレード]超音波振動によって切れ味を増大させた刃物。ルークの息子、ベンが、息子想いの母であるマラ・ジェイドより追跡ビーコン兼用として与えられたアレ
血液―――生命体の体内を循環する行動を為す生体内にて細胞生存を生じさせるに必要不可欠な媒質であり、血液循環系の機能を担う重要な生体液である。つまり身体の構造、行動に伴う重要な生体物質であるとも称せるのだ。肝要な働きを負うが故、体内血液の突発的減少はそれを原因とする直接的死因を嚮導するに留まらず、身体機能の顕著な低下を見せる。大量出血者に対する輸血は唯生命機能の促進と復活を及ぼす為の行為では無く、手術時における患者の耐久力を向上させる意義をも包括する。濃赤色を纏い、水溶液に比してその外観に帰結するかの如き濃密な感触は人間の生の観念的象徴であり、外傷的基因を附す死の客観的象徴として本能的な関心と流動的な不安を人々へ示唆する。
一方で生命維持に要する液体と感得され、他方で象徴と言う神秘的成分を伴い攫まれる血液。それは常態的に視覚不能の下での前者、往々に視覚可能の下での後者の感取に繋がるのではないだろうか。
動物機能の特徴たる生命の根源、血液。その血液を栄養源として吸血し、生を維持する怪物―――それが吸血鬼。銀河系に於いては著名であると評価するには遠いと受理される範囲の域を出ない創作だが、此方での存在はそれとは大幅に異なる。地球文化の中に於いて東欧地域を中心に浸透した伝承がその根源とされ、其々異なる各々の設定により大小の差異を包括して定義される架空の化物―――それがこの世界での吸血鬼。人々の文化基因の印象や伝承に大きく左右されるが、吸血の際は首筋には牙を突き立て行為に入る、洗練に尖る牙等の身体的特徴など一律的な同調的印象・定義も現実には為されているらしい。嫌悪感や衝撃を想起させる生命の象徴を栄養目的とする化物など、いや、吸血鬼に限定せずそれに類似する様な生命体を何故人間は存在し得ない恐怖として充実を得ようとするのか・・・個人的には同意の余地が掻暮れ存在し得ない。
だが冷静に思量すればそれは人間の創る人間では到達し得ない生命の進化への憧憬とも捉える事が出来る。社会を形成する人間は同じ人間と言うカテゴリー内に於いて他者との差別を嫌う同調的性質が顕在するに対して、他社との差別化を望む隔離的性質も根底に包括する。それらの形質が怪物という存在を空想文化の中で発展させるに至ったのかもしれない―――外の世界では
「何してるの?」
トマトが落下したのは突発的受動により反射で手が開いたのか、将又、緊張と不安から生成された手汗が滑らせたのか・・・心理的な極限常態にあるからこそか、取り留めも無い様な考えが浮上する。無論、その様な逃避志向を感受する時ではない。
「何してるの?」
運動の停止した自分を訝しんでか、再び少女が尋ねる。その言葉に全体の輪郭を見ていた視線がその少女―――いや幼女へと自然と固定される。赤と白を基調とした半袖とスカートは幼年期特有の活発性を示唆している様に感じられるが、彼女の容貌を凝視すると共に関心の対象から外れた。ふっくらと頭部に載るナイトキャップ、冷淡な性質を垣間見させる真紅の瞳、一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような翼らしき器官或いは装備。相似している―――当館の主たる吸血鬼と・・・
「・・・道に迷ってしまいまして」
具体的背景を伝達せず、簡潔な理解を図るべく軽度の欺罔を行う。彼女は考えられるにレミリア・スカーレットと血縁関係にあると思われる。それは外見上の特徴から成る判断に限定されず、給仕服等の不着用より、当館に於ける何れかの重要、被接遇を受ける者であるとの推測からも構成される。それはつまり彼女が吸血鬼である可能性をも包括しているという事だ。
「そうなの・・・ところであなたは誰?新しい人間のお手伝い?」
彼女より発せられる語群の抑揚が自身の仮定を援護する。"人間"―――それは単に新規の従業員を示すというよりは自分とは異なる種に対する認識が伺い知れた。やはり彼女は吸血鬼・・・少なくとも人間種でない可能性は増大した。
「最近、幻想郷に参った者です。この度は十六夜さんのお手伝いとして行動していたのですが、広いお屋敷であるので、つい目的地までの道のりが分からなくなってしまいました」
「咲夜のお手伝い・・・」
そう返した自分の伝達に反応を示す少女。だがその表情はそれまでの疑問の提示からどこか 悲哀に満ちた、いや、煢然たる気持ちの表示へと変化していた。微細に口を開き、真下を見つめる様に頭部を下げる。
「遊びに来てくれた訳じゃないのね・・・」
哀感伴う言葉が衝撃を付随物として聴覚を貫く。同時に、それまでの推定が仮定が抑圧され、彼女に対する印象が変化していくのを自覚する。彼女の態度や雰囲気より感取出来るは幼年に見られる保護者、上位者に対する甘え等の被保護的、受動的感情―――生まれて間もない赤子が親を求める様な、反抗期に突入した幼児が他者からの羨望を集結させようと行動する心理の如く。重要人物、吸血鬼である可能性は脳内の重視対象から除外され、感情的に彼女に対する親身な行動の必要性と彼女が子供であるという錯誤の可能性が包括する認識が想起する。
「魔理沙も最近遊んでくれないし、霊夢も来てくれない」
自身の知る名前が発せられた事により意識の軽度の変換が生じる。彼女等二人は目前の少女とは面識があり且つ親的接触行動を行った可能性があるというのか。だが発言からは、その頻度は高いとは言えない事実を示す。初来訪時同行したダソミリアンのみならず、霊夢さんもその様な関係にあるのか。
「君の名前は?」
現状の打破と会話の継続の為、話し掛ける。年上である可能性の低下と幼年に対する意識と心理が半無意識的に敬語の使用を停止する。
「フラン―――フランドール・スカーレット」
差し当たり、私の推測は事実と化した。やはり彼女はレミリア・スカーレットと血縁関係にある。血縁でなく、戸籍、扶養関係での姉妹の可能性も存在するが、その外見がそれを阻害する。そう仮定するならば、彼女はスカーレットさんと同じく吸血鬼。この世界に於ける吸血鬼という種の第一印象が、少女の容姿でありながらも独特の威圧感とカリスマを併せ持つという彼女の姉妹に対し強烈に残留した為、現状、目の前の少女が同種であるという意識は姉妹関係を考慮したといえど低下している。
「初めましてフラン――ちゃん。私はアルファード・レッドフィールド、新しい永遠亭の一員なんだ。改めてよろしく」
彼女が一人称とした"フラン"という呼称―――フランドールの名を短縮した事は自明の理である。初対面の相手に対し略称を用いるのは本来礼儀に則った作用とは定義出来ないが、やはり自身の彼女の認識は年下であり、年長者としてあやす様な感覚と使命が発生したと思われる。
「永遠亭―――永琳がいる所?」
「知ってるかい?」
「前に薬を届けに来たわ。その時色々とお話を聞いたの」
永遠亭の存在の認知に対して多少の驚愕を抱きつつ、出自が明瞭と化した事により、自身の身元に関して信頼の向上が期待出来るのを自覚する。加えて、永琳さんと直接的接触と認識が既存である事実は論拠を除外するものではあるが、心理的な安定と安心を内心にて想起させる。
「そうだったのか、帰ったら永琳さんに君の事を伝えておくよ」
盾に首を振り、肯定の意を示すフランドール。しかし、自分に対する小さな興味の表出は消失し、再び哀調を奏でる様な空気が彼女の周囲を支配する。"遊んでくれない"―――彼女はそう言っていた。精神年齢が幼いのか形式現実的にも同様であるかは分からない。何れにせよ、人の本能に属する子供を愛し慈しむ習性は彼女を放置して戻るのは、宇宙空間を漂流する船に残置させられた要救助者を見捨てる様な感覚を沸立て、それを無視する事は私には出来なかった。
「・・・フランちゃん、もしよかったら・・・私と遊ばないかい?」
「・・・え?」
冷めた真紅の瞳に驚きの念が表れる。下方に集中していた視線は自分の目に移動し、此方からはその表情が精密に伺える。
「遊んでくれるの・・・私と?」
「君が良ければ」
「本当?」
「勿論」
複数回瞬きをした後、その瞳には期待を写し、子供特有の欲求が叶った際に見られるに類似した笑顔を満遍なく自分に照らす。
「うん!遊びましょう!えーと・・・」
「アルファード、長ければアルでも構わない」
「アルファード―――アル!」
自分の名前と略称を嬉し気に呼ぶフランちゃん。その雰囲気のついさっきとは絶対的な差異を見せる。明るい声と付随する眩しい表情に此方も自然と笑顔が形成される。
「ねえねえ、何して遊ぶ?アルは何が好き?」
客観的に把握可能な好意は無論、自分に対する関心が向上した可能性をその質問より感じ取る。相手より選行動を譲歩されたならば恒常、二つの選択肢が人の内心にて浮上する。一つはその譲歩を差し出した相手方の自身に対する信頼と親情を拝受し、その尊敬と感謝を示す為、提案通り自身で選択を取る方法。方や一つは譲歩に感謝しつつも、自身を劣位に置き、相手方の客観的地位の絶対的尊敬を示す為、提案を断り相手に一任する方法。今件については、実際、双方の内のどちらを選択しようと大きな転換に通ずる可能性は低い。だが、彼女の様な幼児精神年齢を考慮するならば、例え好意により選択肢を与えられようと、それを本人の一存とする方が幼年齢特有の自尊心の向上が期待できると考えられる。
「君がやりたいことに付き合うよ」
「何でもいいの?」
「ああ、君が望む事をしよう」
腕を組み、頭を悩ませる様子を見せる少女。幼児体型である彼女が腕を組む姿は、子供が大人の行う仕草を真似ようとした末の行動に思え、どこか安らかな感情を生じさせる。
「じゃあさ―――」
だがこの時の私は状況判断に過失を招いていた
「―――弾幕ごっこしよ」
彼女を唯の子供と認識したという過失を
「うん、おいしいわ。ありがとう咲夜」
「ありがとうございます、お嬢様」
既に達人レベルに到達したと自尊してしまう程の紅茶。恥ずかしくもその様に自覚するのは、これまでそれを行った経験に依存しているのだろう。もう何度同様の行為を行ってきたかという回想をしながら私は片付けの準備に入る。買物をしている間は起きないだろうとした私の考えは見事外れ、朝一の紅茶を求める我が主は眠気の覚めぬ中、わざわざ私を探そうとしたらしい。それ程までまで私の役割を欲して下さるという事実に誇りを感じる一方、実行中の行為の邪魔となるとも心の端で考えていたことを否定はしない。それに今回はいつもとは状況が異なる。私一人の行為ではなく付随者がいるのだ。彼に対する心残りが形成されしまうならばあの様な依頼をすべきではなかったと遅い後悔をする。
「彼はもう帰ってしまったかしら?」
「はい、荷物を置くよう指示したに過ぎませんから」
「そう、色々聞きたいこともあったのだけれど・・・仕方ないわね」
少し悲嘆した様に呟くお嬢様。折角紅魔館に来たのだから合わせるべきであっただろうか・・・いや、今回は彼の善意でやって来たに過ぎない。無理に引き留めるのはいい迷惑となる可能性がある。そして何より・・・
「ご苦労様、下がっていいわよ」
「失礼します、お嬢様」
ドアを閉め、一息吐く。慣れた行為であり且つ慣れた相手だと言うのに、お嬢様の前ではある種の緊張を感じずにはいられない。最初の方はパチュリー様の方が緊張を伴う事が多かったが今となっては何の支障も無い。しかし、本来お仕えすべき、そしてそうしてきたお嬢様に対してこの様な為体であるのは良と判断すべきか悪とすべきか。改めて主に対する自身の状態を考察しながらも、やり残した仕事を再開すべく十六夜咲夜は足を進める。最中、仕事を完遂したであろう彼が危機と相対しているとはいざ知らず
「・・・えっ?」
彼女が望んだ遊びの内容、弾幕ごっこ―――人間が妖怪を退治するという関係を擬態する事で妖怪、引いては幻想郷の維持を図る模擬決闘、そう自分は教わったのを思い返す。ここで議題の中に挙がる妖怪が広義の意味で定義されているのはか、或いは狭義の意であるのか、情報、経験不足を理由に自分では判断しかねる。仮に前者であるならば吸血鬼であろう彼女が当該行為に聡明であり且つ実行行為に着手する事は異論を挟む余地は無い。しかし後者と仮定するならば、必ずしもその行為についての実行を自ら為す必要性は低いと推定出来る。
「いくよぉー!」
彼女の元気な叫びに思考は中断され、状況判断を図ろうと冷静を構築する、が彼女の周囲に浮かぶ光―――光弾を確認すると共に危険的状況に突入した可能性が頭を過ぎた。
「待て!」
制止の声を挙げるも時は遅し、海原を想起させる青い光弾が此方を目標に飛来する。彼女に対する印象等の急激な再変化諸々は消え、回避行動へと身体が自動的に作用する。
ドゥゴン ドゥゴン! ―――
不確定な恐怖に対し警戒をしていた時の様に、再び壁を背にしたまま光弾が反対に接触し爆発する光景を近距離で視認する。豪華感を催す壁は無残にも黒焦げ、爆風に巻き込まれたのかシャンデリア型の電灯が重力に従い落下し、ガラス片と化す。彼女の"攻撃"の予測は客観的認識に限られず
「待て!これは遊びじゃない!」
正対せずに声を制止の声を挙げる。しかし、反応は無い。現況から推定するに、彼女は聴覚器官を通じ、認識しているが無視をしているのか、単に"楽しくて"実質的には聴取していないのかもしれない。上階へ知らせなければ―――螺旋階段へと脚を速めるが、最中、飛行能力の可能性とそれより生ずる自身の不利を悟り、経路変更を行い、直進する。片目で視界を確保しつつ、右腰より吊り下がるホルスターからSE-14Cを取り出し、銃口を真上に保つ形で構える。脳内の冷却時間を得た事により状況判断が構築される。つい先ほどまでの子供らしい反応からの一転に驚愕と不確定的恐怖を感じずにはいられない。私は過失を犯した―――彼女は人間の子供ではない。子供が荒狂う常態へ移行したとしても大人との身体機能の強弱の上に立てば、後者にとって脅威では無い。しかし、飲酒等で暴走する成人に対しては対抗する者も同等である。いや、背景に依れば、痛覚や接触器官の麻痺した前者の方がより強大な力を発揮するに優越する可能性も否定出来ない。現状はそれと類似関係にある―――彼女は成人であり、自分は子供であるのだ。
「動くな!そこで停止するんだ!」
対象が視界内に進入したと同時に銃を向け、勧告を申し入れる、子供に対し銃を向けるという非道義的な行為の自覚を啓発する一方、彼女は唯の人間では無いという現状の認識により自身の罪悪感を中和しようと図る。
「それがアルの武器?それで弾幕を撃つのかしら?」
対する彼女はブラスターに何の怯えも見せず、その反応はあくまで好意的な関心の表出であった―――視認の経験が無い、新たな物に対する探求心の如く。
「フランちゃん止めろ!君の行動は危険だ!」
「どうして?」
「・・・君の光弾―――弾幕は私を殺しかねない。君は遊びで殺人を犯すのか?」
呆けた様に疑問を提示する吸血鬼。その真紅の瞳は冷淡でも明瞭でもなく・・・狂気を映し出している様にも自分には見える。
「大丈夫だよ、だって魔理沙も大丈夫だったもん。人間は私達より弱いって聞いたけどそんな事なかった」
経験の低さと自我の未発達が根源である子供故の狂気、客観視の能力に欠如した彼等は時に常人の倫理観や常識を覆す行為に移る事がある。特に彼女は魔法使いたるダソミリアンと弾幕ごっこを行った経験を有するが故に、通常の人間に対する客観的認識と配慮が著しく欠如していると考察する。彼女が他方との類似した経験を有さないならばその一度の経験は現状の全てとして絶対的な価値観を幼い内心に形成する。精神年齢は幼いと定義する一方、長年を生きた吸血鬼である事実を自己に認識させ確定化する。何故、主と血縁にいるだろう彼女がこの場所に一人で存在したのか―――何らかの発達障害若しくは精神障害を理由に幽閉されていたのではないか・・・詳細を知らぬ自分からすれば絶対性を有する推測ではないが、それを否定する必然性も絶対性をも存在しないのも確か。
「動くと撃つ!」
「いいよ、どんな弾幕か見せて!」
誕生日プレゼントの包みを取る払うよう親に強請る子供の様に彼女は自ら非射撃対象となることを望む。安全への近道は彼女に対し、直接射撃する方法だが無論、その様な行為を安易に判断するものではない。
ビシュン ―――
その為、彼女の爪先一メートル先を対象に威嚇射撃を行う。ブラスター・ボルトの直撃を被った床は火炎の残る小さな漆黒の焼け跡をその身に残置することとなった。
「へえ、凄い速い弾幕ね!でもあんまり綺麗じゃないかな。弾幕ごっこはね、その美しさを競うものでもあるの。唯速いだけじゃ良いとは言えないわ」
一方、その床を普段使用するであろう威嚇対象は、自身が警告射撃を受けたという事実を認識しないかの如く攻撃の感想を興味深げに述べる。目を輝かせるその姿は、威嚇対象が通例どの様な状態へと陥るか既知である自分を困惑させ恐怖を生じさせる。しかし困惑の時間も強制的に禁止するかの様に彼女が再び手を此方へと伸ばす。危機を予測し、足を前方―――地下区域の奥行へと進める。後方を確認しつつ駆けるが、予想した攻撃は発生しない。だがその代替として低空を浮かぶ彼女の姿が視線の先に現れ、笑いながら光弾を発射する。廊下の合間に存在する脇道の最寄りへは間に合わない、確信した私の意識は対抗手段を制す為、腰部へと手を伸ばさせる。
キャシィィィィィィ ―――
光弾が目前に切迫する寸前、右手より生成された相対者の瞳を連想させる真紅の光刃が自己の周囲を照らすのを視認しつつ、疾走の勢いを消失させずに後方へ方向転換を行い、迫りくる弾幕を反射する。運動エネルギーを外力より変化させられた光弾は自身に衝撃が浸透しない寸前にて爆発した。
「それは何?光の剣?しかも魔法じゃなくて道具の」
自身の攻撃に対抗した原因たるライトセーバーに視線を集中させた彼女が独りでにそう呟く。銀河系でライトセーバーを起動したならば、無知なる人々の驚愕と、既知たる人々の畏怖を創発する結果へと繋がるが、相対者が表するは相変わらずの純真から成る興味である。
「・・・遊びを止めるなら詳しく教えよう」
「ふーん、ならいいや」
しかし、その純情な関心も現在の催しと比較すると低評価を受ける対象であるらしい。一筋の解決への糸口が破綻したのを同時に自覚しながらライトセーバーを構える。無手たる左手の人差し指と中指を立てて前に突き出し、ライトセーバーを保持する右手は大きく後ろに引くという、弓を引き絞ったような独特な構え―――フォームⅢソレス、ジェダイ騎士団では立ち直りの型と称された又の名をマイノック戦法。ブラスターの普及により浸透した対集団、対銃器近接戦闘体型。先制攻撃により戦術及び戦闘上の優位を確保する銃器攻撃に対して、先読みと反射神経を生かしてそのレーザーを偏向し、身を守ると同時に反撃する―――弾幕と言う広範囲大規模光弾攻撃を主戦力として使用するこの地の住人に対しては、優位に立つとは確定出来ずとも相性的観点から述べるならば肯定的な判断が期待可能である。
「やる気出したみたいね・・・次行くわよ」
― 禁弾「カタディオプトリック」―
突如低下した声質に背筋が凍る感覚を想起するも即座に次なる対象の行動を予測し、対応策を考察する。彼女の背後に浮かぶ
ピシュンッ ―――
しかし、自身の留意とは裏腹に、彼女は左手より背後に背負うそれと類似した図形を浮き彫りにさせ、周囲の壁と同様に反射を形成した。重傷を負わせる結果は発生しなかったという安堵によって精神の均衡を図りつつ、抜け道へと走り、距離を取る。
「はぁ・・・」
一息吐き、先の光弾の残留状態を確認しようと後方に顔を向ける。だが廊下を埋め尽くした光弾は跡形も無く消失しており、周囲を再度、不気味な静寂が支配する。
― 禁忌「フォーオブアカインド」―
「凄いよアル―――」
その静寂を破る元凶は後方より生じた。何時の間に移動を―――その速度と俊敏性に困惑を生じさせながらも身体を転換させたその先には
「魔理沙みたいに強いんだね」
彼女が二人存在した
約半分に残った食料を貯蔵庫へ運ぶ為、再び大廊下へと足を進める。放置した食料を食べる様な真似はホフゴブリンならばしないだろうが妖精メイドならばその可能性も大いにある為、出来るだけ急ぎ足に。裏口付近へと続く道を進みながら目標の食料を視界に納め、外観的には何ら問題が無いようである事を確認し、自身の努力が無駄ではなかったことに安心する。早速運ぼうと袋を持ち上げようとするが、横切る視線の中に彼が使用した浮遊するバイクが未だ現存するのを認識する。おかしい―――既にこの時間ならば運搬など終了してる筈・・・
湧き上がる疑問に内心を支配されながらも歩き続けると共に、その疑問に対する解決を目指す。もしかすると道に迷ったのかもしれない・・・妖精でも迷うことないこの大廊下を?功労者である彼の個性から貯蔵庫内の整理を行っている・・・例えそうだとしても時間が掛かる程乱雑な状態であったわけではない。鍵が開いていなかった―――今も扉の前で待機している?メイドとしてのプライドからは想定し難い推測だがその可能性も否定は出来ない。先程よりもより速くその歩調を上げる。いつ見ても美しい風景画を右に曲がり貯蔵庫を視界に入れるが、人の姿は確認出来ない。扉のドアノブに手を掛け、思いっ切り開放するも内部には人影は勿論、先に運ばれた筈の食料の残りも存在し得ない。テーブルに自身の荷物を置きつつ思考する。やはり道に迷った・・・
貯蔵庫より抜け出し、直進する。しかし、大廊下の一部であるこの区域に迷う要素が存在するなど考えられない。一体彼は何処に、誰かの手伝いをしている?しかし、この周辺で働く妖精メイドは存在しない・・・まさか、
廊下の壁に小さく設置された扉。彼が私の説明を正確に理解していなければ―――別の扉へと向かう可能性もある
ガチャ ―――
その推測が正解であると証明するように扉の中には先に届けられた筈の食料の残りが無造作に放置されていた
幻想郷は―――この世界は異質である。自身の銀河の範囲を超えた存在であり、自己の常識という概念を破壊する要素が多数包括されている。生活を開始して数週間、超過常識的な存在の認容と認識について慣用が増大するのを自らも感取してはいるが
「さあ、本物はどれでしょう?」
直接的な視認に対する完全の慣用は永遠に訪れることは無いだろう
目の前に完全同一の容姿を持つ人物が複数名姿を現したら恒常、人間は如何に理解するであろうか。双子、整形、クローン、ある程度の考案は脳内にて形成されるも、確定的にそれらとは異なる、まるで分身の如き存在が瞳に映る場合にはどう感覚として対象化するのか。何れにせよ、現況、その様な思考を形成している暇は存在しない。事実として認識しうるは、目前に二人、そして後方に二人の同一の少女が佇んでいるという事だ。"本物はどれでしょう"―――彼女は自分が本体の認識が不可能と推測しているのであろうが、その背に背負う図形の有無によって判断は可能ではないのかと自問自答を為す。本体と推測される一体は、自身の正面に位置している。仮に分身体?が固有の存在として生成され、本体の撃破、被害等により影響を受理する性質を保有せざるならば、彼女自身の撃破に集中する事は利益性に欠ける―――ならば直接的危険性を導く対象より処理するのが妥当。後方二体への対処の非利害性をフォースを通じて感じ取り、目前の二体へと突貫を開始する。狭い当区域に於ける当該戦法の選択に過失が含まれる―――分身を有効活用するならば、障害物の少ない開いた場所にて使用すべきであるからだ。この狭小な廊下では同士討ちの可能性が向上する。偏向された迫り来る光弾群が爆発し、爆風と爆煙が周囲の景色を一時的に塗り替える。後方からの射撃が無い事を確認しつつ、煙の奥に潜む片方に肉薄し、斬り掛かる。彼女の損害と自身の死の可能性を比較衡量した結果、前者を抑圧し加減なくその手を振り降ろす。爆煙ごと斬られた対象は外観から分身と判断。一息の安堵を生じる一方、片方―――本体へと接近を試みる。
ピシュン ブシュン ―――
アーク波と光弾の接触により奏でられる効果音を背景に徐々に隣接する。最中、残る分身体二体による背後からの援護を予測した私は"遊び"の終焉に到達するべく一気に肉薄し、斬り裂く。
「あああああああああ!?熱い、熱いぃぃぃぃ!!」
分身体の消滅を確認した次に映し出された光景は、年端もない少女が完全に焼け焦げた腹部に苦しむ姿であった。僕は一体何をしているんだ・・・幼い少女に対して、一生を左右する障害を与えてしまった・・・
罪悪感と結果を誘発した自身の行動に対する否定的感情が噴火する。その意識の残留を維持しつつ、彼女へと接近するが
「だけど私を焦がすには熱さが足りないようね」
突如、何の支障も存在しないかの如く、再度浮遊を開始する少女。
「私が本当の熱さを教えてあげる」
― 禁忌「レーヴァテイン」―
彼女の右手に炎を纏う棒状の何か、いや、剣が現れる。しかし、現状の私はそれに対する意識を抑圧し、彼女の突然の変化に向く困惑に支配されていた。焼灼した腹部は確かにその結果が生じた事を証明するかの様に炭化している。しかしそれは彼女の腹部自体ではなく、その上辺を飾っていた服装の一部分に限定されていた。あの喪失感溢れる悲鳴から肉体に対する直接的斬撃は発生したと考えられる。つまり、彼女は一瞬にして焼灼を治癒した・・・そう、彼女は吸血鬼―――唯の人間では無い。繰り出される火炎纏う斬撃を受けながら考える。そして気付く―――彼女は剣技に於ける経験値と実力が欠如していると。加圧的な振りより生じる余勢を好機とし、炎の剣を跳ね下げる中、相手の後方へ位置すべく前転を行う。彼女が振り返る寸前に、翳した右手に集中を高める。
《ドゥゴォォォォォォン》
解放されたフォースの衝撃が相手を直線上の壁へ掻き消す。身の自由を強制された客体の頭部が、天井連なるシャンデリアに衝突する事で破壊され、周囲が暗化する。客観的に対象の状況を確認する事は困難ではあるが、私の直感は彼女の健在を認識した。
「面白い、面白いわアル!"また"閉じ込められてイライラしてたけど、全部吹っ飛んじゃった!」
「・・・それじゃあ、はぁ・・・終わりにしないか?」
息を切らしながら彼女の感想に返答する。交渉解決による誘導の可能性が思案されたが、その性格と個性を考慮するに無益に帰結する確率を算出する。
「嫌よ、こんなに楽しい事止めるなんて勿体ない」
絶望を付与する返事に落胆する中、彼女が次に為す行動の詳細を感じ取る。それは非常に
だが付随すべき結果の発生は感じられない。いや、これが死後の世界と称される状態なのか。感覚的には未だその場に直立している様にしか感じられない。目を開けば恐らく解決へと導かれる―――恐々な心理を形成しながらも一筋の勇気で開眼する。
「!?」
その瞳に映るは鋭利な形状へと変化した爪で此方の喉元を抉り取ろうと超高速で肉薄した少女。下顎より知覚する鋭い爪先に戦慄を覚えると共に違和感を感取する。身体的行動が強制停止下に存在するかの如くその動作の兆候を表出させない。彼女自ら停止しているのか・・・しかし、その瞳に映る狂気は自らの欲求を中断する意思は見られない。外力的な行動、言うならば時を止められたかの如く
「間に合ったわね・・・」
その声に意識の集中が再起する。途端、知覚するは背中に触れられた手の感触と記憶に存する声であるとの認識。
「十六夜さん!・・・」
私に運搬を依頼した本人であるメイド長が九死に一生を得たかの如き表情を浮かばせながら此方を覗く。
「ごめんなさい、考慮に入れるべきであったわ―――地下室に通じる扉の存在を。怪我は無いかしら?」
「・・・問題ありません・・・この状況は時を?」
「そう、止めているわ。取り敢えず妹様の後ろを来て・・・永遠に止められる訳ではないの」
指示通りの行動を取り、対象の後方へと位置を変更する・・・停止する吸血鬼の少女が姉妹関係にあり且つ妹であるという情報の入手を付随させながら。彼女が時を止めるという非常識要素を満杯した能力を保有するのは既知である一方、その具体的効力、範囲については無知である。停止した時の内部で行動出来るのは使用者本人に限定されるものではないのか、疑問が脈絡に湧き立つが現状、その思考を継続するのは肯定とは取れない。
ドゥゴゴゴォォォォォン!―――
瞬間、録画テープの一時停止を解除したかの様に、目前の光景が再び生き返る。加圧された勢いを殺すことの出来ぬ対象は壁へと直進し、至大な爆音が鳴り響く。だが先と同様、事態の終焉を予想し得る事は無い―――彼女は再度自分を・・・いや、我々を襲撃するだろう。
「このままでは・・・」
「大丈夫よ」
冷静を維持する声で私に返答するメイド長。それは経験的な判断であるのか、将又、直感的なものであるのか。しかし結果は双方にも該当することは無い他の―――計画的な要素より成るものである事を示した。
― 水符「ベリーインレイク」―
硝煙晴れた先に浮かぶのは対象。しかし、それまでとは異なりその身体は全体的に泡の様な"何か"に囲繞されている。そしてその表情から伺えるは、突然の環境変化への驚愕と恐怖―――暴走していた子供が親に威圧され、行為を中断するかの如く。
動かない方があなたの為よ、フラン ―――
角の先―――階段付近より声が生じる。足音を揺らす声の主と思われる者が接近しつつあるのを感じながら、状況判断へと移行する。幼いが威圧的な声、そしてその声と言う不可視的な音波より感取するカリスマ―――角より視界に映るは当館の主兼対象の姉妹、レミリア・スカーレット。そしてそれに随伴する紫髪の少女。
「パチュリー、お姉さま・・・何で邪魔し『言ったわよね、貴女が妖精メイドに怪我を負わせた時―――』」
「―――今度暴れたらもう・・・地下室から出さないって」
その言葉を受け、俯く対象―――フランちゃん。それはあたかも彼女との初対峙時の印象を想起させる。
「どうして、どうして遊ぶのがダメなの!?何で私にばっか厳しいの!?」
「貴女が私の言い付けを守らないからよ、フラン。きちんと守れないなら厳しくなるのは当然でしょ?」
「お姉様は何時もそう、私の事なんか全然気に欠けてくれない!地下で私が独りぼっちでいるのに、それを忘れた様に上で自分だけ楽しく過ごしてる・・・」
声高らかに叫びが聴覚を貫通するのを実感する。。哀感漂う雰囲気を纏いながら声を上げる姿は目を逸らしてしまおうかという意思の形成に繋がりそうだ。
「魔理沙が来てくれて、やっと地下室から出れた・・・これからは皆と暮らせると思った、長い長い生活が終わると思った・・・だけど直ぐまた地下に再送り!ねぇ、お姉様、どうして私ばかりこんな目に合わなきゃいけないの・・・お姉様も私と同じ吸血鬼なのに!!」
蓄積した不満と思いが流雨の様に一気に流出する。直面する姉はその表情を崩すことなく厳格な態度を維持するが、その目にはある種の悲しみの念が確実に読み取れた。先に予想した様に精神的障害若しくはそれに準ずる原因に於いて留置されていたか、その事実は現状不明である。しかし聞く所、ダソミリアンの影響によって解放に価する発達が生じたと考えられる。根源は一度解決されたと推定出来るだろう。恐らく彼女が今件とそれに類似する前件を発生させた原因は根本の原因に由来するものに非ず、長期間の幽閉による環境的、主観的価値観の欠如に大きく該当すると考察する。それは正に彼女に対する印象―――無垢な子供の様な、純真で加減の知らない感情と付随する行動。
「スカーレットさん」
「何かしら?今取り込み中なのだけれど」
此方を睨む視線に恐々な感情が発生するがそれを打ち消す様に主張を開始する。
「今回の件は指示通りに行動を取らなかった自分にも過失があります。それに遊ぼうと提案をしたのは自分に他なりません」
「・・・」
唯此方を見続ける吸血鬼。それを無視する様に泡に包まれるフランちゃんへと近付く。
「フランちゃん・・・フランちゃん」
何度かその名を呼び掛けるが自身の殻に閉じこもる様に反応を返さない。
「フラン、こっちを見るんだ」
より親身を思わせる態度での呼び掛けに、頭を上げこちらの指示通りに視線が上がり、相互の視線が交差する。
「フラン、君は一体何だ?人間か?」
「・・・いえ、私は吸血鬼・・・吸血鬼フランドール・スカーレット」
「・・・そうだ、君は吸血鬼だ。とても強く、気高い―――人間とは違う。その吸血鬼が人間と戦ったらどちらが勝つと思う?」
「・・・吸血鬼」
「普通に考えればそうだね。そしてそれは戦いに限った事じゃない・・・君の行動は人間を殺してしまう可能性があるんだ」
「でも魔理沙は勝った。あなただって強かった」
「それは私や彼女が普通の人間では無いからだ。いいかいフラン、君は吸血鬼として―――人間の上をいく存在であることを自覚しなければならない。君にとっては遊びかもしれない、しかし相対する人間からすればそれは死ぬ可能性のある恐怖でもあるんだ」
今回に関しても自分であったが故に生存した可能性は限りなく高い。一般の人間であれば、開始早々、殺害されていたかもしれないのだ。
「吸血鬼として・・・の自覚?」
「・・・そう。面倒かもしれないけど、強い者が弱い者と遊んだりするには強い方がそれに合わせなきゃいけないんだ。そうしないと社会は強い者だけが有利な状態になってしまう」
相手を殲滅する目的に立つならば、弱小の敵に対してそれに合わせる様な戦術を施行するのは単なる傲慢から成る酔狂である。だが、社会形成に於いては譲歩や加減が社会全体の幸福と発展に起因する。
「私が楽しいだけじゃダメなの?」
「勿論、人と人との間には思いやりが必要なんだ。例えば君がやられて嫌な事を想像してくれ、きっとそれをされたら君は傷つき、嫌な思いをする事になる。君はそれでもそれを受け入れるかい?」
「・・・嫌だ」
「・・・そうだね、それが当然だ。それだったら相手が嫌がるような危ない事は自分もしてはいけないと思う―――いや、いけない」
自分を殺そうと行動した吸血鬼に対する恐怖とその不条理への鬱憤を抑え込み、唯彼女にとって有益である事を願い諭す。それは彼女を思っての意思と、これ以上の被害の発生を防止する意思から構成される。再び下を向く彼女。しかしこの度はそれを維持する事なく、再度私の目を覗き込む。見つめ合う視線の先には、確かな意思の形成を見た。
「分かった・・・ごめんなさいアル」
明確に此方を見て謝るフラン。その内心からは私の説教に対する意欲の向上と謝罪の念が深く伝わる。危険に直面したからこそなのか彼女の意思の継続と発展を願いたい。終始干渉すること無かったスカーレットさんに視線を移す―――自分の意思の主張を込めて。
「・・・パチェ、もういいわ。放してあげて」
「分かった」
周囲を囲む泡はその形状を純粋な液体へと変え、包んでいた少女に降りかからないよう落下し、床を浸す。地面に着地した妹は現状を誘導した姉を一重に見つめる。しかし、姉は視線を外し転換をする。再び落胆へと陥りる寸前の妹に
「行くわよ―――フラン」
期待のこもる声が掛けられたのは幸いか
湖の上を通る架橋の終着点、当初の予想を遥かに上回る時間滞在した為、周囲は暗みを帯び始める中、本日の出来事に関して回想する。心理的関係の構築を留意した手伝いに始まり、純真と狂気から成る恐怖に圧倒され且つ生命の危機に瀕し、吸血鬼姉妹の関係再構築等の配慮と"健全な遊び"への取り組み。特に前二つには精神的、身体的な消耗と後悔を想起させたが、後者に於いてはそれらを除外する様な精神を保持する事が出来た。つまりは自分に蔓延る否定的感情がある少女の意思の目覚めによって変化させられたと言える。それ故、これらの背景にも関わらず、気分は決して悪いものではない。
「今日は朝から色々と迷惑を掛けたわ、本当にごめんなさい」
深々と頭を下げる十六夜さん。従者長として彼女に過失があるのは社会通念上当然とも取れるが、根本を辿れば自ら危機へと突入した自分にこそ帰責事由は存在し、明らかな重過失を包括する。
「いいえ、お気になさらず。最終的には穏便な結果になったことですし」
「謙虚なのね、貴方」
一足私の前に出で、後背に感想を述べる姿はどこかいじらしさとでも称すべき感情を沸立てる・・・しかし
キィィィン! ―――
目前で交差する二つのナイフがその誘発を断絶した。
「素晴らしい反応速度ね―――まるで何をされるのか予め認識していたみたい」
振動ブレードの刃先より通じる圧力が、彼女が事実として私に斬り掛かろうと努めたという証拠と化す。その口元より漏れ出す言葉は、感嘆を表しながらもそれとは対義を為す緊張の走る冷たさを感取させる。
「・・・何のつもりだ?」
「そんな顔も出来るのね。それともそれが本当の貴方?妹様と"遊んだ"時もその様な表情だったのかしら?」
冷淡な反応に初期の・・・いや、其実、現在に於いても完全に変化する事は無かった印象はより悲観性を向上させる結果となった。隙を奪取した私は戦闘にも家事にも合いそうな相手のナイフを流し、数㎝のよろめきを発生させ、半強制的に背後を奪い、右腕で首部を拘束する形を作る後、刃先を首元へと近接させる。
「・・・初対面時、貴方は私の能力を見破った。たったあれだけの、有効性の無い手掛かりを基に―――貴方の特殊な能力とそれを用いて結果を導いた洞察力と知力。永遠亭の新参というだけでも怪しいのに・・・お嬢様方への危険を有するかもしれないでしょ」
「・・・」
「一つ教えてあげる。貴方が初めてなのよ―――私の能力を見破ったのは」
冷徹な雰囲気の中に一種の妖気が混合しているのではないかという感覚が此方を向こうとする横顔より形成される。彼女の真意は衝撃的な自分の能力に対する主等への危険性の考慮と―――彼女自身の純粋な興味か成るものであろう。だからと言って、この様な方法を取る事に賛同は出来ないが。
「先の攻撃だってそう・・・常人なら―――普通の人間ならば対応など出来ぬ筈・・・貴方は一体―――何者?」
「・・・自分は貴女にも貴女の主達にも、脅威となる者ではありません」
一時の沈黙が我々の環境を支配する。時間間隔に支障が発生するのを自覚する中、右手に握るナイフをレッグホルスターへ収納する光景を視認し、ゆっくりと振動ブレードの距離を取り、拘束を解く。私の心が彼女に通じたと捉えて良いのだろうか、将又、それは過剰な自尊であるか。
「信じるわ・・・ごめんなさい、今日の私はどこか変みたいね。失礼ばかり掛けているわ」
「・・・お気になさらず・・・主への忠誠の表れを誇るべきとも・・・思います」
「・・・貴方、本当に謙虚な方ね。色々と疑っていた自分が馬鹿みたい」
小さく笑う彼女の内心からはしがらみから解放された様な安心感と罪悪感が感じ取れた。その影響を受けるようにして自身の心理的均衡も平常へと回帰する。改めて本日の蓄積された消耗に精神的な疲れを得るが
「このお礼は必ず致します。その際には最高の御もてなしをご期待下さい」
やはり気分は悪くない―――そう感じる自分がいた