東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

4 / 21
第3話A Have a bad feeling about this.

 

 

 

 

 

 チュンチュン、チュン ―――

 

 

 小鳥のさえずりが耳を通り抜ける中、目を覚ます。

 

 目の前には見たことのないような絵画、周りを見渡すと自分の記憶にはない部屋・・・

 

「・・・」

 

 そうだ・・・僕は―――

 

 人生で最も長く感じる日となった昨日のことを思い出した。驚愕の蔓延した記憶が流水の如く流れ込む。

 

 ここは惑星地球、幻想郷。

 

 元の銀河系の外側に位置すると思われる不思議な惑星の不思議な地・・・

 

 

 僕にとっての新たなる世界・・・

 

 

 

 

 

 

 これはデュベットか・・・誰かが掛けてくれたのだろう。疲労から寝具や部屋について聞くことなく寝てしまった。左側には赤茶色をした情報部の略帽、デュベットの下には代わりとして使った同じ色の上着。略帽が落ちているということは寝顔を晒してしまったのか。他人に寝顔を見せるなんてことも恐らく初めてだ。急激に恥ずかしさが込み上げる。

 

 現時刻は―――この惑星は一日24時間周期と聞いたが。時計らしきものは部屋には存在しない。

 

 上着をハンガーに掛け、Yシャツとズボンは着たまま外へ出る。太陽の光が眩しい、だが同時に身体の全面を照らす温かみが清々しい気分を味あわせる。自然の中での起床もまた良いものだ。

 

 ドロイドたちを確認するため小屋へ向かい扉を開ける。覗いてみると電源を切られたマグとR2が鎮座していた。おはようと心の中で言いつつ二体が居たことに安堵する。

 

 

 小屋をそっと退室しながら自分たちの新たな住居―――永遠亭を見上げる。

 

 改めて自分が異世界―――幻想郷に来たということを理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、どうすれば良いのだろうか・・・まずは朝の挨拶をしなければ。

 

 そう思い部屋を出る。だが、そうは言っても何処へ挨拶に伺えば良いのだろうか。居間か、それとも各部屋に参るべきなのか。その場合は姫様の部屋から行くべきか。

 

「・・・」

 

 鈴仙さんの部屋はここから二つ隔てた所にある。何かあったら伝えてくれ、と言っていた・・・取り敢えず彼女の部屋に行くとしよう。そう思いつつ鈴仙さんの部屋へ向かう。

 

 瞬く間に緊張をその身に感じる―――初対面より経過して一日、なお且つ、女性の部屋に・・・プライベートで立ち寄るのは初だ。元の世界においても行ったことのない行動をこの場所で初めて行うとは・・・この"新天地"は新たな道を切り開くという意味以外にも様々な意味を包括しそうだ。

 

 喉をごくりと鳴らし、意を決したように軽く襖を叩く。

 

 返事が無い―――まだ寝ているのか?この世界では今の時刻はまだ就寝しているような時間なのか。

 

 いや、この部屋に人はいない・・・そう感じつつ、どうするかと再び疑問に還る。 屋敷内を回ってみよう、誰かしらいるかもしれない。

 

 

 

 

 トントントントン ―――

 

 

 少し歩くと包丁で何かを切る音がする。台所だろうか。角を曲がり音の源泉へ近づく。 中をそっと覗いて見る。するとそこには、先程訪ねた部屋の主・・・鈴仙さんが料理を作っていた。 手慣れた手つきで料理を作っていく。既に美味しそうな香りが漂ってくる。そう感じていると調理器具を取ろうと後ろを振り向いた彼女と目が合った。

 

「あれ、アル君?もう起きたの?」

 

 多少驚きつつもそう声を掛けてくれる。

 

「はい、すいません驚かしてしまって・・・おはようございます」

 

 挨拶をすると彼女もおはようと返してくれる。

 

「疲れていたのにこんなに朝早くから起きていて大丈夫?もっと寝てても良いんだよ?」

 

 気を遣うように心配してくれる鈴仙さん。

 

「申し訳ありません、眠気が完全に覚めてしまったので。起床後の行動が分からず、鈴仙さんの部屋に一度参ったのですがいらっしゃらなかったので、屋敷内を回ろうとしたら音が聞こえたのでつい・・・」

 

「そうだったの、ごめんなさい。私調理担当だから毎日この時間帯は台所に居るの。気を遣うべきだったわ」

 

「いえ・・・」

 

 申し訳なさそうにする鈴仙さんにそう伝える。

 

「あの、自分はまずどうすれば良いのでしょう。皆さんに挨拶に伺うべきでしょうか?」

 

「わざわざそんなことしなくても大丈夫よ。姫様は多分まだ寝てるし、てゐもまだ森の中の住処に居るだろうし・・・師匠は起きてるかもしれないけど、どうせ居間で集まるからその時で良いと思うよ。私もいつもそこでみんなと会うし」

 

 やはりまだ朝早い時間だったか。昨日は疲労困憊だったが少し早めに就寝したこともあり、いつも通りの時間帯に起床してしまった。

 

 居間に集まるまで会わないということは今のところ自分はそれまで特に自由に過ごしても良いということだろうか。いやしかし、鈴仙さんが食事の支度をしてる中、新参者の自分が何もしないというのは忍びない。時間があるなら仕事を見つけろ、帝国アカデミーの下士官課程でもそう言われ続けてきた。あそこは掃除等を早く終わらせれば終わらせるほどしばかれるという理不尽な世界だ。暇な時間があってはいけないのだ。14で入校したため他の同期よりも甘い扱いだったがそれでも教官の怒りの顔が忘れられない。

 

「何かお手伝いすることはありますか?」

 

 過去の回想を止め鈴仙さんに聞く。

 

「良いの?まだ部屋で休んだりしてても良いんだよ」

 

「問題ありません。存分にご利用下さい」

 

「じゃあ・・・少し手伝ってもらおうかな。料理とかって出来たりする?」

 

 仕方ないという表情をしつつ鈴仙さんがそう尋ねてくる。一応できるが自分の技術がこの異世界の料理に役立つであろうか?いや、それでも昨日の料理を見る限りはなんとかなりそうとも思うのだが。調理器具の方は―――包丁等使い慣れた物もあるが見かけないものもある。見た目が違うだけかもしれない・・・どうせこれから自分も出来るようにならなければならないのだ。今のうちから慣れておくのは得策だ。

 

「一応元の―――銀河での一般的な調理は自足ですることもありました。お役に立てるかは分かりませんが」

 

 少し不安げに伝える。

 

「自分で料理してたんだ、男の子なのに凄いね。じゃあ早速こっちに来てくれる?」

 

 そう言われ鈴仙さんの方へ近づく・・・まずい、こんなに女性と接近するのは久しぶりだ。ましてや素の自分だと・・・

 

 緊張が高まってくる。落ち着けこれからは共に生活するんだ。変に緊張ばかりしていたら相手にも失礼だ。問題ない。同じ帝国の参謀本部から機密書類をコピーした任務の方が緊張した・・・

 

 自らの過去の高難易任務を思い出す。あの時は大変だった。自分では変装しても意味がないため直接忍び込んだ。厳重な警備に加えフォース=センシティブと思われる兵士も存在し、単調には進まなかった。何度気づかれそうになったことか。

 

 客観的に見れば今の現状より明らかに緊張を要するであろう状況であるが、彼にとって現状はそれに匹敵する程の緊張を有する状況らしい。

 

 

 

 

 

 鈴仙さんが調理器具の名称と使用法を簡単にだが説明してくれた。以外にも自分の使い慣れていた器具とほとんど変わらないものが多く、覚えるのに苦労はしなかった。マイクロウェイブ・オーブンも存在した。やはり、料理の方法や器具は同じ人間(彼女は玉兎だが)が行うということもあり、この世界でも特に変わらないようだ。

 

「醤油と生姜をかき混ぜてからこの油揚げにかけておいて」

 

「分かりました」

 

 今日の所は彼女の気遣いもあってか、調理というよりは、調味料を完成した料理にかけたり、見た目を揃えるといったような簡単な仕事を任してくれた。彼女の料理はやはり非常に美味しそうだ。調理に対する一所懸命さがひしひしと伝わり、それが余計見た目の美味しさに拍車を掛ける。

 

 自分が手伝ってから数分後、大体の料理が完成した。すると鈴仙さんがこんなことを聞いてきた。

 

「アル君は和食と洋食どっちが好き?」

 

 ワショクとヨウショク?"ショク"は"食"か?料理の様式だろうか。

「ごめんね、いきなり言われても分からないよね。何て言えばいいのかな・・・料理の風味の違い、かな?洋食は箸じゃなくてフォークやスプーンを使うから―――昨日もその二つは使いこなしてたし、洋食の方が好みに合うのかなぁと思って・・・」

 

 黙り込んだ自分を見て鈴仙さんが慌てて説明する。成る程、自分の推察通り様式の違いに近い―――風味の違いか。

 

「洋食料理を知らないので返答しかねますが、昨日頂いた料理にも自分の知るものと似た様なものが幾つかありましたし、全体的に独特の風味がしてとても美味しかったです。ですから自自分の意見などは・・・」

 

「そっか、良かったわ・・・和食はこの幻想郷の位置する―――外の世界では日本と呼ばれる国で主に発展した料理なんだけど、幻想郷の人々も元は日本の人だからから必然的に和食で使う原料や食材が多いの。洋食用の食材とかも売っているんだけど、まず扱っている店が少ないし、その食材自体の数もあまり多くなくてどうしても和食主体になっちゃうの。偶になら洋食も作ったりするんだけど・・・」

 

 洋食というのも気になるが実際和食も先述したようにとても気に入った。調理も見たところ特に難易度が高いというわけでもなさそうだった。つまり調理側としても飲食側としても問題はない。

 

 重大な問題を失念していた。自分はイーティング・スティック、いや、箸の使い方が分からない。昨日は結局フォークとスプーンを使わせて頂いたが、ずっとそれを使い続けるわけにはいかないし、箸を用いた方が食べやすそうな料理も存在した。それに鈴仙さんは調理においても平均より少し長めの箸を用いていた。つまり調理側としても飲食側としても問題がある。昨日も慣れなければと思っていたのだが・・・

 

「鈴仙さん、お時間がある時で良いので箸の使い方を教えてくれませんか?」

 

 そう伝えると彼女は台所脇に掛けてある時計を見上げた。ちなみに現時刻は七時を回った辺りである。

 

「善は急げね・・・まだみんなが集まるまで時間があるから今教えてもいい?」

 

 早く慣れるにも使い方が分からなければ始まらない。今のうちに覚えれば今日の朝食から慣れる訓練を行うことが可能だ。朝から好機を得たようだ。

 

「勿論です、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

「まず箸の片方を親指の根元に挟んで・・・そう。次に薬指を軽く曲げて、第一関節を上にして親指と薬指で支えてみて・・・」

 

 耳で説明を聞きながら目で彼女の手の動きを見る。イーティング・スティックを知った時も思ったが、なぜわざわざ使いにくい物を用いるのだろうか。用いた方が食べやすそうな料理も存在するにはするが殆どはフォークやスプーンで事足りると思ったのだが・・・

 

 見た目の良さというのもあるのだろうか。確かに箸を用いて食すさまは上品に見える。特に姫様なんかには箸が似合い、逆にフォークを用いる場面が想像しにくい。文化的背景もありそうだ。

 

「そう、それが箸の持ち方よ。覚えた?」

 

「はい」

 

 鈴仙さんの分かりやすい説明のおかげで持ち方については理解した。見た目よりもかなり簡単であり覚えやすかった。

 

「じゃあ、次は箸の動かし方―――この生姜を挟んでお皿から上げてみましょう。今上と下の箸は離れた状態でしょ、そこから人差し指と中指を曲げるようにして上の箸を動かしてみて。この時親指の付け根と薬指のへらに下の箸を固定するのを忘れないで」

 

 鈴仙さんの言う通り動かしてみる。上の箸はぎこちないながらも動かすことが出来たが、下の箸がうまく固定できない。力を入れすぎると今度は上の箸が思いっきり下がってしまう。なかなか目標を挟むことが出来ない。

 

「・・・ちょっとごめんね」

 

 そう言って鈴仙さんが突然私の後方へ移動した。調理中に多少慣れたはずだが、やはり緊張する・・・何をするのだろうか。

 

「薬指はこのくらいで・・・人差し指と中指は・・・」

 

 彼女は私の後ろから箸を持つ右手に自分の右手を添えて、動かし方と力の入れ方を直接教えてくれる。その瞬間、まるで凍ったように身体が固まった・・・

 

「そこで軽く力を入れて・・・」

 

 彼女の手が私の手に触れるだけでなく背中に―――彼女の胸部を感じる・・・まずい、心臓が爆発しそうだ・・・

 

「だ、大丈夫?」

 

 つい手が止まってしまった。何をやっているんだ私は。彼女は一所懸命教えてくれてるというのに・・・こんな下心のような・・・彼女は善意で教えてくれているのだ。自分も気にせず、目の前の試練に集中しろ・・・

 

そうだ彼女をドロイドだと思うのだ―――今私は調理ドロイドに箸の使い方を教わっている。背中に感じるのはドロイドのパワー・ジェネレーターなのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

「うん、上手上手。これならもう大丈夫。食事を続けていけば自然に慣れていくわ」

 

 鈴仙さんの身を挺した教えによりなんとか目標の生姜をつかむことが出来た。直ぐには慣れそうにないが彼女の言う通り、回数を重ねれば自然に慣れるだろう。

 

「ありがとうございます、助かりました」

 

「気にしないで」

 

 優しく声を掛けてくれる鈴仙さん。下心?を感じてしまった自分に喝をいれる。この戯け者が!修業が足りん。罪悪感と恥ずかしさが再び湧き出てくる。

 

「そろそろ師匠やてゐが来る頃だから料理を持って行くの手伝ってくれる?」

 

「分かりました」

 

 だがそれは顔に出さずあくまで何もなかったように振る舞う。諜報員としての技術や経験がこのように生かされるとは・・・

 

 素面としての自身の感性をも女性に慣れていかなければという趣旨の決心を小さく内心にて構築する

 

 

 

 

 

 料理を載せたおぼんを持って居間へ向かう途中、奥の角から永琳さんが見えたので挨拶をする。

 

「おはようございます」

 

「あら、おはよう。随分と早いのね、身体の方は大丈夫なの?」

 

 永琳さんが気を遣ってそう尋ねてきた。

 

「はい、目が覚めてしまって・・・身体の疲れもとれたので問題ありません」

 

 もう少し休んでていいのにと言いながら居間の襖を開けてくれる。居間の中には既にてゐさんが来ており、うさぎたちにニンジンを与えていた。

 

「お師匠様、アル、おはよう~」

 

「おはよう、てゐ」

 

「おはようございます、てゐさん」

 

 永琳さんに続き挨拶をする。うさぎたちは随分てゐさんに懐いているように見える。てゐさんは永遠亭に集まるうさぎたちのリーダー格であるというのを言われたことを思い出した。

 

「はーいニンジン・・・あーげない!」

 

「てゐ、可哀そうでしょ」

 

 悪戯好きであるから注意しろと言われたのも思い出した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

 

 鈴仙さんが残りの料理を運んできた。永琳さんとてゐさんもおはようと返事の挨拶をする。

 

「おはよ~う・・・あらアル?随分早いじゃない。折角時間を気にせず眠りなさいと言ったのに」

 

 未だ眠そうな様子で姫様が居間に現れる。鈴仙さんからは姫様はいつも皆より遅く食事をすると聞いていたのだが。

 

「おはようございます。つい目が覚めてしまって、朝食を作る手伝いをしておりました」

 

「アルは料理が出来るの?」

 

「ある程度の自炊ですが」

 

「そうなの、良かったわねイナバ、料理出来る人が増えて」

 

 はいと鈴仙さんが答えてくれる。てゐさんが料理をするのはあまり想像できないが二人も料理はしないのだろうか?長く生きてきたのだから作ること自体は出来ると思うのだが・・・

 

「姫、今日はいつもよりお早い目覚めですね」

 

 やはり姫様は普段はもう少し起床するのが遅いのだろうか。

 

「昨日は布団に入ったら直ぐに寝てしまって。私も少し疲れてしまったみたい」

 

 やはり自分が原因であろうか。それは当然だろう。いきなり身の知らぬ人間がやって着て更には居すわることとなったのだから。 姫様たちには本当に感謝しなければ。

 

「心配しないでアル、あなた達が来てくれて嬉しかったの、いろんな話も聞けたし。嬉し疲れよ」

 

 昨日に引き続いて、私の内面を読み取るかのように姫様が言う。やはり不思議だ、何故分かるのだ。もしかしたら無意識にフォースでも使っているのか。

 

 いや、それは無いな彼女がフォース=センシティブだとは感じられない。年の功というやつだろうか。

 

 

 

 

「ウドンゲ、あなた昨日部屋の説明を忘れたでしょう。彼、椅子に座って寝ていたわよ」

 

 頂きますの挨拶をしてから直ぐに、永琳さんが少し強めに鈴仙さんへ伝える。昨日のデュベットは彼女が掛けてくれたのだろうか。椅子に座って寝ていたということは寝具が存在するということであろうか。すると鈴仙さんが忘れてたとでも言うような表情を作り私に謝罪してきた。

 

「ごめんなさい!つい説明するのを忘れてしまって・・・」

 

「いえ、特に問題はありませんでした」

 

「食事が終わったら直ぐに説明しに行きなさい」

 

 永琳さんにそう言われ、はいと言いながら落ち込む永琳さん。ウサミミがそれに合わせるように萎んだ。あの耳?は心理的状態により変化するのだろうか?

 

「あら?・・・アル、もう箸が使えるようになったの」

 

 箸を用いてライスを食べていたら姫様が変化に気付いた。

 

「はい。朝、鈴仙さんに教えて頂きました」

 

「そうなの・・・今日習ったばかりにしては上手じゃない。その様子だと直ぐに慣れそうね」

 

「努力します」

 

 ぎこちなく豆を掴みながらそう返答する。この豆がまた難しい。なんとか挟んでもつるっと滑って落ちてしまうのだ。ライスがE級任務なら豆はA級任務だ。任務遂行には多大な犠牲(時間)経験(慣れ)が必要である。

 

「ねえねえ、ニンジンの漬物頂戴」

 

「どうぞ」

 

「わーい、ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「永琳さん」

 

 

 鈴仙さんから部屋の説明を受け終わってから、永琳さんを呼び止める。

 

「どうしたのかしら?」

 

「昨日は自分にデュベット―――掛け布団を掛けて頂いたみたいで・・・ありがとうございます」

 

「いいのよ、布団に移動させようかとも考えたのだけれど、起こすのも悪いと思ってそんなことぐらいしかできなかったのだから。ごめんなさいね、ウドンゲが説明を忘れてしまって。疲れてるのに椅子で寝るなんて・・・」

 

 やはり掛け布団を掛けてくれたのは永琳さんであった。同時に寝顔を見せてしまったであろう事を思い出し、

少し照れを感じてしまった。

 

「これから永遠亭でお世話になりますが、自分はどのような仕事をすれば良いでしょうか?」

 

 ただのんびりと生活させてもらう、なんてことは言語道断だ。自分の力を活かすと決めたのだ。まずは、自分の恩人であり仲間?・・・と言うべきなのか・・・とにかく、永遠亭の人々のために尽くさなければと思い永琳さんに聞くに至る。

 

「・・・そうね、ここで暮らしてもらうからには、永遠亭のために働いてもらいます。ですがそれらは明日詳しく説明しましょう。今日はまずあなたにこの永遠亭のことを知ってもらいます。まだ全ての部屋を回ったわけではないでしょう?それに、あなたの部屋の内装やドロイドたちのための設備を用意しなくてはならないのではなくて?宇宙船の方も気掛かりでしょうし」

 

 そうだ、あの小屋を二体の整備兼駐留部屋にしたいと言わなければ。それに船はどうするか・・・迷いの竹林内に存在するため近づく人はいないだろうが・・・八雲さんのように船を見つける人もいるかもしれない。クローキング装置に異常は無かったし常時作動させておくか。修理の方はどうするか。これから宇宙船を利用する機会があるかは分からないが、何もしないよりマシだ。ドロイド二体には頑張ってもらおう。

 

「庭の隅にある小屋を利用して良いとのことだったので、昨日はそこにドロイドを置いたのですが、彼らの整備などもしたいので少々改装をしてもよろしいでしょうか?」

 

「もちろんよ。自由に使いなさい。部屋も既にあなたのものだから内装も自由にしていいわ。壁を壊したりするのは遠慮願いたいけどね。まずはあなたの身の回りの整理を終わらせてから部屋の説明をすることにしましょうか。人手が必要だったらウドンゲか私を呼んで頂戴」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 いいえと言って永琳さんが歩みを再開する。まずは船に戻ろう。船自体は予定通り二体に任せるとして、自分は必要な物をスピーダーで運ぶとするか。早速行動に移ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ドロイドたちを泊めた小屋に入り二体の電源を入れる。

 

「・・・オハヨウゴザイマス、マスター」 「― ― ― ―」

 

 二体が同時に声を上げる。おはようと返事しつつ今日の予定について軽く説明する。

 

「ワタシハ昨日ニ引キ続キ、R2ノ護衛ト手伝イデスカ?」

 

 迷いの竹林の説明を聞いた限りでは危険な生物はいないと推定できるがどうするか・・・永遠亭に残り自分の手伝いを頼んだ方が効率的だろうか。

 

「R2、一人で修理することになっても大丈夫かい?」

 

「― ― ―――」

 

 問題は無さそうだ。マグには僕を手伝ってもらうことにしよう。

 

「マグ、君はここに残り僕の手伝いをしてもらう。それまでは・・・うさぎたちの相手でもしていてくれ」

 

「Yes, Sir.」

 

 

 

 

 

 

 ギュウィィィィィィィィィン ―――

 

 

 昨日に引き続きスピーダーバイクで森を駆け抜ける。フォースに加えて船へのビーコン、方向感覚の慣れが力となり着陸地点への道のりは万全である。

 風が気持ちいい。スカウトの気持ちが今になって理解できる。・・・新たなる希望によって重圧から解放されたのだろうかそんなことを思った。

 

「― ―― ― ~!」

 

 だがあまりスピードを出すと後ろの相棒が怒るため適度なスピードを保たなければ。

 

 

 

 

 船の元へ到着した。昨日の強行着陸に至るまでの努力が思い出される。

 

「・・・」

 

 クワット・ドライブ・ヤード社製 ローグ・ハサウェイ級特殊任務艦。 思えばこの船とも長い付き合いだ。銀河の各地を巡り、共に任務を遂行してきた。 この場所へ連れてきてくれてありがとう、そう言うように船体に触れる。

 

 

 さて何を持っていくかな。取り敢えずはドロイド用の修理キットと充電装置、簡易清掃装置に検査キット・・・小屋にはこれだけあればいいだろう。カーゴ三つに分けてギリギリ入る量だ。このバイクはカーゴ三つまでなら最高重量でも牽引可能だ。ということはこれで一度戻らなくては。

 

「R2、一度戻る。修理の方を頼む」

 

 R2が了解と返事をする。R2でもあれだけの損害を修理するのは一苦労だ。そもそも替えの利かない部品もあるかもしれない。幻想郷、最悪外の世界で代替出来る物はあるだろうか。 そう考えつつ彼はスピーダーに乗り元の道を行く。

 

 

 

 

 

 

「さて、何を持っていくかな」

 

 再び船の元に戻り、持っていく物を取捨選択する。流石に全てを運ぶ訳にはいかない。 部屋 ― 畳部屋と言うらしい ― は、床に直接座る方式だ。船のシートの高さに合わせたホロ・デスクは持ち込まない方がいいな。物が入る小型コモードは持っていこう。ホロ・ボードも紐か何かで壁に固定できるだろうし持ち込もう。大型の物はそれくらいで、コムリンクと携帯用ホロ・プロジェクター・・・幻想郷には通信設備が存在しないらしい。そのため人や動物を介した手紙でのやり取りが一般的である、そう説明を受けた。永遠亭の人たちの分だけでもあったほうが役に立つだろう。ホロ・プロジェクターの方も幻想郷内での使用なら、コムリンクと接続すれば送受信装置が働く。薄めのフラット・プロジェクターも持って行こう。バイノキュラーや生活用品は昨日既に運んである・・・これくらいでいいか。

 

「R2、修理状況はは?」

 

 現状を報告させる。リパルサーリフトの修理には時間が必要だが一応問題は無し。問題は―――着陸装置か。代替部品を探すしかないのか。

 

「― ―― ―― -!」

 

 

「ああ、もちろんゆっくりで構わない」

 

 先の二つ以外にも修理が必要な部分は存在するが今日のところはいいだろう。R2をずっと置いたままにするわけにもいかない。嫌がるR2をカーゴに入れ戻る。

 

 

 

 

 

 屋敷へ帰投するとマグが小屋に機器を設置している最中だった。R2にそれを手伝うよう指示をし、自分は部屋にカーゴを運ぶ。

 

 取り敢えず、大き目の物は直ぐに出して設置することにする。コモードは部屋の隅に置き、ホロ・ボードは―――紐はあるが釘を忘れていた。後で鈴仙さんに聞いてみるか。そう思い床に置いておく。フラット・プロジェクターは机の中心部に。服は元々設置してあったハンガーに掛けるとして・・・他の小物類はカーゴに入れたままでいいかな。カーゴのリパルサーリフトをOFFにして隅に置く。 結局あまり内装は変わらなかったが元々借り物のようなものだしいいだろう。 マグたちには早速機器を使って休むよう指示をして、自分はスピーダーを屋敷の敷地へ戻そうとしたその時、

 

 

 ドーン! ―――

 

 

 何処かから小さいながら爆発音らしきものが耳に突き刺さった。

 

 現状把握、地形分析

 

 11時方向、何かが光った・・・竹林の奥深く・・・

 

 

 ドーン! ―――

 

 

 再び爆発音が聞こえる。何かあったのか・・・自然と足がそちらの方向へ向かう。

 

 

 嫌な予感がする

 

 

 

 

 

 

 

 爆発音及び発砲炎の元へ向かう。竹が幾つか投げ倒されている。遠目ながら倒れた人影を確認。見たところ一人。周囲には黒煙が立ち込める

 

 黒煙が風で流されるとそこには―――

 

 首から上が焼け焦げた姫様"らしき"人が倒れていた。

 

 状況判断-服装、体型から推察するに、蓬莱山輝夜と思われる少女が倒れている。頭部は炎に包まれたの如く全体的に火傷。顔面による識別不可。恐らく呼吸器官にも支障発生。重症・・・死亡・・・

 

 姫様は不老不死である。それは永遠をただ生きるという能力という訳ではない。彼女によれば、例え四肢がもがれようとも、身体を巨大な岩石で潰されようとも、しい首を切断されようとも、彼女の魂―――生命力がある限りそれを起点に永久に復活するらしい。つまり、仮に彼女が姫様であるならば死亡しても"復活"する・・・

 

 咄嗟のことながら不老不死についての情報を思い出し、認識が出来たことに感謝する。さもなければ狼狽していたであろう。いや、それでいてもこんなにも冷静に状況判断が出来るのは自分のこれまでの - 彼女たちから見ればはるかに浅い - 経験に依る所が過大なのかもしれない。それに冷静でいるつもりだが内心驚きを抑圧している状態でもある。

 

 一体なぜ姫様がこのような状態に―――事故か他殺か・・・小惑星帯を宇宙船で潜り抜ける確率と同じくらい低いが、彼女が姫様でない可能性もある。

 

 だがそれらの答えは直ちに解決することとなった。

 

 

「・・・どうした輝夜、もう終わりか?」

 

 

 黒煙の中から人が現れる。女性だ・・・白髪、いや、銀髪のロングヘアー。袴のような衣類をサスペンダーで留め、頭部には大き目のリボン・・・

 

 今の発言から倒れた少女が姫様であることを確認。そして、その発言者が現状の原因の一人であると推察する。そして彼女が姫様のことを知る人物であることが伺える

 

「ん?お前誰だ・・・?」- 銀髪の少女が彼に気づき尋ねる

 

「・・・それはこちらの質問だ。貴様は何者だ。姫様に何をした」

 

 威圧的に答える。経緯は不明だが恩人がこのような状態となっているのだ。口調も強くなるのは当然だ。

 

「・・・あんた輝夜の言ってた外来人でしょ?・・・今ちょっとお宅の姫様と「遊んでる」の、邪魔しないでくれる」

 

 詳しい経緯は未だ不明だが、遊びだと・・・姫様が不死であるのをいいことに一方的にこのようなことを?いや、姫様なら一方的なんてことは無さそうだが・・・不死といえども痛みや苦しみは存在すると言っていた。喜んでこのようなことをするとは思えない。

 

 

 

 いずれにせよ、今の自分は永遠亭所属

 

 

 

 姫様をお守りしなければ

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。