東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

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第3話B Get some, Destroyer.

 

 

 

 

 

 迷いの竹林。緩やかな傾斜により方向感覚も狂いやすく、一度入ればかなり強運が無ければ脱出できないと呼ばれるほど広大な森。

 

 

 

 今まさにその一画で、とある男女が対峙していた

 

 

 

 

 

 

 

 姫様の傍で片膝を着きながら相手を睨み付ける。相手は妖怪か・・・姫様にこれだけの損傷を負わせるとは・・・とにかく

 

「ほら、怪我しないうちにどっか行きn」

《ドゥゴォォォォォォン》

 

そう言おうとした瞬間彼女は視覚出来ない「何か」に吹き飛ばされた

 

 

 

 

 何だ?一体何に吹き飛ばされたんだ私は。風か?あの鴉天狗のブン屋と同じ能力か・・・いや、違う。ブン屋の起こす風のパワーはこんなちゃっちいもんじゃない。だけど・・・速度はこちらの方が上。何より背中だけじゃなく身体の前面にもかなりの痛みを感じる・・・風圧とも異なるけど・・・何かで圧縮されたような・・・

 

 倒れながらも少女、藤原妹紅は考える。輝夜は宇宙の彼方からの外来人と言っていた―――唯の人間ではなさそうだ。

 

 朝からあいつと会ってイライラしてたが面白い。代わりにちょっとばかし「遊び」相手になってもらうか・・・

 

 

 

 

 少女をフォースで軽く吹き飛ばす。姫様の方はどうか―――相変わらず顔を拝めないような状態だ。傷も直ぐに回復すると言っていたが心配だ・・・"遊び"という言葉も気になる。とにかく、あの少女を追い払わなければ。

 

 相手の正体も状況も不明なこともある。あまり攻撃的な行動は避けなければならない。そう彼が思い少女の方を向くと―――いない・・・何処だ? 

 

 すると突然、右側から攻撃の気配を感じ取った。慌てて振り向く。少女が何らかの―――光弾らしきものを放ってきた!

 

 光弾を避けながら考える。なんだこれは?ブラスター・ボルトよりは遅い・・・が、その分威力がありそうに見える。やはり彼女は妖怪か?これが能力なのか・・・

 

 

 

 

「やっぱり唯の人間じゃないらしいわね・・・」

 

 普通の人間の反射神経や動体視力を超えている。地上での弾幕をあれだけ余力を残しながら避けるとは

 

「ではこれはどうかしら!」

 

 

 

 

 少女の周りに先程受けた光弾が現れる―――どんな原理だ・・・それについて思考する間もなく再び光弾が迫る、が今度のは数が少し多い・・・だが

 

 再び回避する。ただ流れてくるといった感じだ。軌道を読む必要もない。ブラスター相手には慣れている。

 

 

 

 

「へぇ・・・」

 

 中々やる。流石に殺し合いをするつもりは無いが、力を出しても問題無いような相手だ。ちょっとばかし気合を入れるか。

 

 

 

 

 接近して気絶させるか、それともフォースで・・・仮に彼女が妖怪なら精神攻撃に対してはかなりのダメージを受けるはず。総じて妖怪は肉体的には強大だが精神的には一定の虚弱性が見られるという。フォースはそれ自体が精神的側面を持つ。有効打になるだろう。だが如何せん、効果が不明だ。

 

 それに前提として、彼女が妖怪であるという確証が無い。確証の無い物事に確証の無い行為を行うのは避けなければならない。戦術の基本だ。 既知である事実は、彼女はプッシュを受けても、即座に移動するだけの体力があるということだ。 少女が再び光弾を撃とうとする。弾数に制限はないのかと思う。ライトセーバーとブラスターはこの地でも常に携帯しなければ・・・

 

彼は再び回避行動に移ろうとするが、

 

「!?」

 

 先程までのそれとは桁違いの光弾が放たれる。なんて数だ・・・さっきまでのは小手調べか。奇しくもガトリングガンで撃たれているみたいだ。同時に資料で見たデストロイヤー・ドロイドを思い出す。 余りの多さに驚愕の念が思考を支配する。だが・・・フォースの前に数量など意味を成さない!

 

 光弾の雨が降り注ぐ中避け続ける。光弾の美しさに相まってまるで舞を披露している様にも見える―――当事者にとっては全く不本意なことだが。 雨の様に迫り来る光弾をこれまた見事に回避する・・・しかし・・・

 

 パーン!―――

 

 流石に無理が現れたか、彼の右の二の腕を掠る。

 

「!」

 

 被弾部位-右二の腕 損害-痺れ・火傷のような痛み しかし、皮膚はおろか衣服にすら損傷無し

 

 不味い、逃げ場が・・・後方の竹林へ一時後進しなければ・・・

 

 先程までの場所は彼女と姫様が戦ったのか竹が幾つか折れ、消滅していた。これまでの光弾による攻撃でそれがさらに更地と化していた。 回避行動を維持しつつ斜めに後退する。竹は細く自分の身を完全に隠せる程の太さは無いが、代わりに隙間が狭いため、どちらかと言えば面の攻撃に対して効果がある。光弾数が減れば回避への余力に繋がる。 光弾が当たるごとに折れる物もあるが、光弾は貫通せず軽く爆発し消滅する。そのため姫様を視界に収めつつ下がって行く。そして回避しながら敵行動、攻撃について分析をする。

 

 飛行能力の有無-不明

 

 攻撃-無誘導光弾による広範囲面攻撃

 

 光弾-無誘導 被弾による外傷無し、痺れ及び痛みのみ ブラスター・ボルトより低速度 光弾同士の隙間及び地面との間約1メートルに死角あり

 

 見た目に反してあの光弾の威力は高くない。外傷はおろかシャツの掠った部分も全く破れたりはしてない。竹に当たると爆発もするのに・・・不思議である・・・被弾覚悟で突破するか・・・いや、威力が低いとは言え一気にそして連続であれを食らうのはきつい。途中で転倒する可能性もある。

 

 フォース・スピードやダッシュを使って回り込む―――射撃中、彼女は方向を変えることはおろか動くことも可能に見える。近づく際にも竹が障害になる可能性もある・・・変に姫様から離れるのも得策ではない・・・

 

 地面との死角を匍匐で潜り抜ける―――ゆっくりと前進→下方修正される→終了。

 

 分析中攻撃が止んだ。今のうちにフォースで再び吹き飛ばすか。そう熟考していると突然、

 

「!」

 

 彼の頭の中に次に彼女が放つ光弾が誘導弾である、と理解できるフォースによる光景が浮かび上がる。その光景の中での自分はなんとか避け続けるがいずれ・・・

 

 数秒にわたるであろう光景を実際は見るのではなく・・・たった一瞬で"感じ取る"

 

 彼がその一瞬の後に思いついた対処法は妹紅の想像を打ち砕くものであることを彼女は知り得ない。

 

 

 

 

 

 ただ避け続けるだけでなく、状況を見て壁となる竹林に下がる。戦いに慣れている奴だと妹紅は思った。 最初に私を吹き飛ばしたあの技?は使わないのか?先程から私しか攻撃をしていない。空を飛ぼうか、いや、相手も飛んでいるならいざ知らず、足をつけたままなら一方的なアドバンテージがあるとは言えない。相手から自分は丸見えだし、攻撃の軌道は読みやすくなり、なお且つ距離も空く・・・誘導弾を撃つか、そう思い光弾を発射したその時、彼女は相手の行動を見て驚いた。

 

「えっ・・・」

 

 彼は発射した光弾へ向かい走ってくる、身体で受け止めるつもりか・・・威力を下げているとは言え、数発でも食らえば人間なら気絶するぞ。しかもさっきまでとは違い誘導弾だ。かなりの弾が当たることになる。余程防御力に自信があるのか。

 

 直面の光弾以外も軌道を彼に合わせ、集まった光弾が彼に直撃する―――その瞬間

 

「なっ!」

 

 信じられないことに彼は直撃の直前、自らの身体を横に倒れるよう投げ出し・・・そして水平になった瞬間、 片方の手で側面 - 自分が走ってきた方向 - にフォースを放つ

 

《ドゥゴォォォォォォン》

 

 フォースを放つことによって自らの身体を光弾の来る方向 - 相手の方向 - へ思いっ切り吹き飛ばす! 追尾する光弾が速度に追いつかず、次々と彼に当たる寸前で地面に激突し小さな爆発を起こしていく。

 

 そしてもう片方の手の掌を少女、妹紅に向け

 

《ドゥゴォォォォォォン》

 

「っ!」

 

 彼女を再び吹き飛ばす。

 

 

 

 

 成功した。光弾の反応・機動速度を超えることが出来た。何より彼女の攻撃がフォースを当てた後止まったのが幸いだった・・・あの少女はっ?

直ぐに立ち上がり相手を確認する。不味い、もう立ち上がりポケットから札か何かを取り出しこちらへ投げてきた!

 

 驚いたことに、少女の投げた札らしきものがこちらに向かって来る中、炎で出来た網に変化し襲い掛かってくる。

 

 脚に力を入れ、それに向かって走り出し飛び上がる・・・良し、飛び越えた。しかし彼は少女が投げた札が一つだけ地面に落ちたことに気付かず・・・

 

「・・・!」

 

 フォースにより感知するが、自分の反応速度が間に合わない・・・その札の上に片脚を着地させる。

 

「くっ!」

 

 脚に力が入らず動かない。再びフォースで、と思い相手を見た時にはすでに炎の弾が目の前に・・・やられる。つい反射的に目を瞑ってしまう。しかし何も感じない。アドレナリンで痛みを感じないだけか?目を開けてみると―――

 

 

「妹紅、悪いのだけど、今日の「遊び」はここまでよ」

 

 

 彼の新しい主が庇うように目の前に立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいアル、ついあなたがどうやってこいつに対処するか見てみたくて・・・」

 

 姫様が私に謝罪する。彼女の怪我、と言って良いのだろうか、は私と少女が戦っている間に回復したらしい。まだ痛みもあったので暫く観戦することにしたらしい。

 

「いやぁ、悪かった。朝からこいつに会っちまったからイライラしててさ、お前強そうだったし、つい・・・」

 

 先程まで対峙していた少女、藤原妹紅も私に謝罪してきた。

 

「いえ・・・先に手を出したのは自分ですし・・・「遊び」について知らなかった自分にも非があります・・・」

 

 多少の不満を残しつつもそう返答する。

 

 

 

 

 

 

 詳しくは説明されなかったため、経緯は不明だが藤原さんは姫様や永琳さんと同じく蓬莱の薬を飲んだ蓬莱人なのだそうだ。姫様と因縁があったらしく長い間憎んでいたらしい。幻想郷で再会してからは、同じ境遇に共感したらしく、それからは互いに憎み合いつつも、殺し合うほど仲がいい関係に落ち着いたとのことだ。そのため、今でも今日のように殺し合いの遊びをしているらしい・・・

 

 殺し合いの遊び―――永遠を生き、魂が消されるまで死ぬことのない彼女たちの心境など理解できない、出来る筈がない。しかし、どうにか今とはまた違った形で共感し、関係を築いてもらいたいと思った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アル、あなたは祖国から逃亡した時、どうすれば良いか分からなかった、と言ったわね」

 

 帰り道、姫様が突如そのようなことを聞いてきた。はいとその質問に答える。

 

「実を言うとね、私もよく分からないの・・・一体自分が何をして生きていきたいのか・・・この永遠を・・・あいつも一緒、元々のちょっとした因縁が根底にはあるけど、ああいうことをするのが存在意義と言えば良いのか。ごめんなさいねアル。自分のことなのに来たばかりのあなたを心配させてしまって。私は悪い主人ね・・・」

 

 少しばかり儚い、悲しげな表情を浮かべながら姫様が言う―――再び私の心を見透かすように。その姿を見ていられなくて、何とか取り繕うとする。

 

「拾って頂いた感謝は一生忘れません。まだ新参者で、姫様の―――不老不死の事情を始め・・・全てにおいて自分には分からないことばかりで・・・姫様の人生に口なんか出せはしません。それに・・・周りに迷惑を掛けなければ、さっきの遊びだって・・・」

 

 考えていたことがこんがらがって口に出る。それを聞いて姫様は少しばかり驚いた表情をしたが、すぐにまた、

いつものように笑みを浮かべた。

 

「あなたの優しい気持ちを受け取ったわ。ありがとうアル。あなたを拾って本当に良かった・・・」

 

 優しい表情を向ける姫様。それを見て照れてしまったのか顔が熱くなるのを感じる。

 

「あら、今ので顔を赤くしてしまったの?アルも男の子ねぇ~ 全く、私は罪な女よ」

 

 ほほほと笑いながら姫様が笑う。別に惚れたわけではないんだが・・・

 

「そこは、『その台詞を聞いて、心が激しく燃える・・・これが恋か・・・』って思わなきゃダメでしょ、もう」

 

 だから何故心が読めるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄かったわよ、初めて見た弾幕を無駄な動きをせずに何発も避けて・・・そうしながらも私から目を離さないで、妹紅のことも出来るだけ傷つけようとはしなかったし・・・特に最後のが一番だったわね。限られた能力や条件の中で如何にして行動するかってのがひしひしと伝わってきたわ」

 

 少し遅れた昼食の後、姫様が先程の一件を - 多少盛りながら - 伝える。

 

 帰投してからすぐに姫様に説教をしていた永琳さんも今は黙って話を聞いている。

 

 鈴仙さんはへぇと言いながらも興味ありげに聞いている。てゐさんは、やるじゃんと言いつつ生のニンジンを渡してくる。後で漬物にしてもらおうか。

 

「妹紅やあなた自身を吹き飛ばしたのはきっとフォース、よね・・・そうでしょう?」

 

 姫様が先程使用したアビリティ - フォース・プッシュ - について尋ねてきた。はいと答える。

 

「あれは・・・風を操ったのかしら?」

 

「いえ、風を操った訳ではありません。斥力を有するフォース・エネルギーを相手に放つことによりあのように相手を吹き飛ばす・・・弾き飛ばすと言った方が良いでしょうか。先程のように相手を自己から遠ざけるような目的で主に使用します。威力や範囲、対象に対する調節が容易い為扱いやすく、消耗した状態でもある程度使用できる臨機応変な技です」

 

 使用者のパワーに依れば、このアビリティは何にでも応用できる。目標となる生物をよろめかせるような弱めのものから、岩石を素粒子状にまで粉々に吹き飛ばすような強力なものまで存在する。使用者の才能が高ければ高い程、伴う圧力の力も増大する。

 

 強大な使用者ならばプッシュそれ自体の力で相手を殺傷出来ると言われている。自分にはそのような芸当は不可能であったが、今はそれに安堵する・・・フォースは強力になれば強力になる程、暴力性を伴えば伴う程・・・

 

 

 堕ち易くなるのだから

 

 

「ねえ、他になんか出来ないの?色々みたいんだけど、今出来るやつとか」

 

 フォースの危険性について回想していたらてゐさんがそう尋ねてきた。そういえば他の三人にはフォースの簡単な説明をした時、物を浮かせて実践してみせたが、彼女には何もしていない。聴覚での関心は知覚の関心により移りやすいものだ。

 

「そうですね」

 

 そう答えるとおおっと言った感じに期待の表情が浮かぶ。

 

 さて何を浮かせようか・・・

 

 居間の周りを見渡す。机―――お茶があるし、鈴仙さんが腕を乗せている。座布団―――皆が座っている。

時計―――固定具を破壊することになる・・・

 

 自分の物ではない為どうしても躊躇してしまうし、見せるのなら出来るだけ興味を惹くような・・・そうだ、

 

 考えを思いついてゐさんを見る。ん?とと言いつつ彼女もこちらを見つめる。

 

 そして、

 

《グゥォォォォォォォォォ》

 

「おおー!浮いてる、浮いてる!」

 

 手をかざし、てゐさんを浮かせる。これまた見た目通りの反応をする。屋内の為、周りに接触しないよう気を付けなければ。

 

「自分で浮くのとはまた違った感じがするなー。どこにも力を出さずにいられるし、このまま昼寝ができそうだ」

 

 この幻想郷では妖怪はおろか人間だとしても、霊力や妖術?を用いることによってある程度の飛行を行うことが出来るそうだ。人間は極一部らしいが、妖怪はその殆どが可能とのことだ。てゐさんは兎妖怪―――つまり飛行は可能だ。

 

 フォースを用いても飛行は可能だ。しかし、力の入れ方が困難且つ身体の消耗が激しい為人を選ぶ技であると学習した。少なくとも自分には到底不可能である。

 

 

 幻想郷におけるスピーダーやジェットパックのようなものか・・・どのように飛行するのか個人的に興味が湧いた。そう思いつつてゐさんをゆっくりと下ろす。ご満悦頂けたようだ。

 

「鈴仙も浮きたい?浮きたいんでしょ?」

 

「私は別に・・・」

 

 てゐさんが鈴仙さんに自慢をする。鈴仙さんの方もああは言いつつ、内心、浮いてみたいという意思が感じられる。しかし、屋敷内で浮かぶには身体が大きすぎるというか、スカートが危ないというか・・・

 

「そういえば、部屋の方はどうなったのかしら。もう荷物は運び入れた?」

 

 どうしようかと思っていると、永琳さんがそう聞いてきた。

 

「ドロイド部屋も自分の部屋も・・・あっ」

 

 そういえばコムリンクと携帯用ホロ・プロジェクターを紹介しようか。カーゴに入れたままの通信機器を思い出す。

 

「どうしたの、まだ終わらせてないかしら?」

 

「いえ、そちらの方は完了しました。実は、皆さんに紹介したい機器があるのですが、良いでしょうか?」

 

「へぇ、どんな物かしら?」

 

 姫様が興味ありげに聞いてくる。

 

「居間にお持ちします、少々お時間を下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カーゴの中から、[コムリンク・携帯ホロ]と表示された箱を取り出す。今一度機能するか確認しとこう。

 

「テスト」

《テスト》

 

 片方 ― 送信役に言葉を発するとほぼ同時に、もう片方 ― 受信役から正に今発した言葉が聞こえてくる。問題無し。

 

 自分、マグ、鈴仙さん、永琳さん、姫様、てゐさん・・・R2は内蔵型だから良いとして6個分。互いのデータ入力は既に済んでいる・・・番号表記に変更するか。後はホロ・プロジェクターとの接続をしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 紹介したい機器がある、そう伝えてから数分後、彼は再び私たちのいる居間へ戻ってきた。机にケースを置く。その中には円筒状の黒と白の・・・彼の世界における注射器だろうか、それと、以前紹介してくれた、確か・・・ホログラム・プロジェクター。

 

「一体それは何?」

 

 輝夜が早速尋ねる。興味があることに対して、すぐ知りたがる癖は昔から変わらないわね。

 

「コムリンクと携帯用ホロ・プロジェクター―――通信機器です。幻想郷には電子的通信手段が無いので、皆さんの役に立つかと思いまして・・・もし宜しければお使いください」

 

 成程、通信機器だったのね。円筒状の―コムリンクは携帯用の電話というところかしら。ホロ・プロジェクターの方も通信機器として利用できるのかしら?

 

「セットで使いますので上下並んだ物を取ってください」

 

 ケースの中から一番右側にある一組を取る・・・軽いわね・・・でも頑丈に見える。

 

「この白い機器がコムリンク、携帯無線機です。70㎞の範囲内でしたら即座に相手と通信が可能です」

 

 この大きさで70㎞・・・やはり単純な科学技術では月を超えている。

 

「どうやって使うの?」

 

「てゐさんのは・・・6番ですね」

 

 Pi- Pi- Pi- Pi- ―

 

 てゐのコムリンクが受信音を鳴らす。

「上のスイッチを押してください」

 

「これ?」― てゐがスイッチを押す

 

「聞こえますか」

《聞こえますか》

 

「おおー、アルの声が聞こえた!」

 

 てゐが驚きの声を上げる。昔、電気をみせた時も驚ていたわね、そういえば。

 

「下のボタンで登録された周波数を変更します・・・1番が自分、2番がマグ、3番がR2、4番が・・・鈴仙さん、5番が姫様、てゐさんが6番で、永琳さんが7番になります。通話したい相手の番号を選んだ後に上のスイッチを押すと、相手にコールします。先程のように受信音が鳴りますので、発信と同じく上のボタンを押せば繋がります」

 

 使用法は月の物とそう変わりはしないようね。てゐは早速気にいったようで、ウドンゲとコムリンク上で会話している。輝夜は懐かしいものを見ているような感じね・・・月での生活が思い出されるわ。どちらかと言えば、このプロジェクターの方が気になる。

 

「こちらのホロ・プロジェクターは、コムリンクと併用することによって同じく通信することが可能です」

 

 やはりこちらも可能だったか。三次元像と相手とリアルタイムで会話可能―――月でのホログラムは精々文字が浮かぶ本程度。月の技術は発展を目的とはしてないとはいえ・・・軍事関連はどうなのだろうか?月にも瞬時に大量の爆弾をばらまく事のできる銃や、着弾したら大きな爆発を起こす小型銃なんかはかなりの物だと思うのだけど・・・

 そう思いながらも彼の説明を聞こうと思考を止める。

 

「てゐさん、プロジェクターを胸より少し下の位置で保持したままにしてください。先程のように受信音が鳴ったら、左真横のボタンを押してください」

 

 てゐが"わかったー"と言って返事をする。さて、実際どのようなものなのか見せて頂こう。

 

 Pi-Pi Pi-Pi Pi-Pi ―

 

 コムリンクのとは多少異なる受信音が鳴る。

 

「見えますね」

《見えますね》

 

「うわっ!小さいアルが出てきた、何これ・・・妖術?」

《うわっ!小さいアルが出てきた、何これ・・・妖術?》

 

 アル君のプロジェクターからも寸分違わずに、てゐの声が聞こえてくる。リアルタイム通信だというのに誤差は無く、音のズレも無さそうだ。これにはウドンゲも驚いている。輝夜の方は―――面白い物を見つけた顔ね、あれは・・・

 

 それにしてもどの様にして自分の像を映し出しているのかしら?

 

「像を映し出す原理を教えて欲しいのだけれど?」

 

「プロジェクターのこの黒い部分がホロ・カメラになっていまして、対象の三次元イメージを読み取り、通信相手のプロジェクターに映し出しています。ただ通信機器としてこれを使うには最低でも10m範囲内にコムリンクの存在が必要です。右のボタンでコムリンクに接続された周波数を選ぶことが出来ます」

 

 説明を聞きながら、この機器の優位性を考える。まずコムリンクは普通に通信ができる。以前は一度何処かへ行ってしまったら伝達はほぼ不可能だった。以前から通信機器があればと思うこともあった。ある意味好機である。

そしてホログラム・プロジェクター。もし、ウドンゲ単独で人里の見回りをする場合に、不測の事態が発生したとしても、プロジェクターで患者の様子を見れば私が行くべきか、ウドンゲに指示をすることによって応急処置の手助けをすることができる。

 

 この二つの機器は業務の効率性を向上させる。永琳はそう判断した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが薬の貯蔵庫。常備薬を中心に保管されています。この部屋は許可が無い時は出来るだけ入らないで頂戴・・・部屋はこれで全部ね、何か質問はある?」

 

 夕食後、永琳さんに各部屋についての説明と案内をして頂く。最後は薬の貯蔵庫に案内されたが、予想よりも大きい部屋だ。左右の棚に、読めない文字で書かれたラベルの付いた薬が並んでいる。そういえば文字はどうしようか。言葉が通じることは幸いだが、ここで暮らす以上、習得しなければならない。丁度いい、質問してみよう。

 

「あの、これとは関係ないのですが、文字n」 ターターター,タータター,タータター~♪ ―

 

 質問の途中で突然、コムリンクからインペリアル・マーチが鳴り響く。そういえば自分の着信音はこれだった・・・

 

 送信者は・・・てゐさんだ。一体何の用だ?受信ボタンを押す。

 

《本部、こちらてゐ、姫様の部屋に侵入成功。指示を求む、どうぞ》

 

 C1コムリンクの本来の用途に則って使用するてゐさん。気に入ってくれたのは何よりだが、姫様の部屋に勝手に入っていいのだろうか・・・取り敢えず返信しなければ。

 

「・・・こちらHQ 、貴官の行動は軍規違反である。至急帰投せよ, Over.」

 

《こちらてゐ、そんなの知るか。これよりお菓子を盗む―――頂戴する、どうぞ》

 

 今確実に盗むと聞こえた。すると永琳さんが貸して、と言うので渡した。

 

「てゐ、新薬の実験体になるのと、一週間ニンジン没収になるのどちらが好み?」

 

 

《お、お師匠様!?何でお師匠様が・・・『てゐ~何を盗むですって?」』うわー!姫s》

 

問題は解決したようだ・・・

 

「それで文字が何かしら?」

 

 そうであった、危うく忘れるところだった。

 

「文字についてはどうすれば良いでしょうか?」

 

 少し考え事をするような表情を浮かべる永琳さん。

 

「そうね・・・今日の内に少しでも慣れさせておきましょうか。これからお風呂に入ってくるから、私の部屋に・・・一時間後に来てくれるかしら?」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

 いいのよと言って永琳さんが浴室へ向かう。取り敢えず、何か手伝うことがないか鈴仙さんに聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴仙さんの手伝いとして洗濯物を畳み、各部屋へ届ける任務を終えて部屋へ戻る。マグたちの整備も終了し、部屋で待機していると、あっという間に一時間が経過した。そろそろ行くか。

 

「・・・」

 

 緊張する・・・今朝の鈴仙さんの部屋の時も同様に緊張したが、あの時は実際は入室しなかった。だが今は・・・部屋の中からは明らかに気配がする。いや、問題無い。永琳さんとは部屋の説明で回った時ずっと一緒だったではないか・・・大丈夫だ・・・

そういえば、どのような部屋なのだろうか・・・やはり医療器具だらけなのか、それとも意外にぬいぐるみで一杯かも・・・不味い、また緊張が・・・落ち着け。アイサード長官(娘)の私的オフィスを思い出すんだ・・・あの女性らしさ皆無の無機質な部屋を・・・

 

 覚悟?を決める。よし。・・・そう言えば、襖はノックはせずに声を掛けるのが正式だ、と鈴仙さんが教えてくれた。危うくノックするところだった。

 

 喉に力を入れる。

 

「永琳さん、アルファードです。入室してもよろしいでしょうか?」

 

「どうぞ」

 

 凛とした声が襖の奥から聞こえる。失礼しますと言って襖を開ける。

 

「いらっしゃい、待ってたわ」

 

 

 襖を開けると、目の前に風呂上りだと思われる永琳さんの姿が視界に映る。

 

 

 水滴がまだ少し残った、いつもとは異なる下した髪、寝間着と思われる衣服から零れる白い肌が艶やかさというか色気というか・・・を醸し出していた・・・

 

「・・・」

 

 つい言葉を失う・・・

 

「あらっ、ごめんなさいね。女所帯が続いていたから気が回らなくて・・・」

 

 永琳さんがほんの少し恥ずかしげに寝間着の胸元をきつく締める。

 

「すっ、すいません。いきなりで驚いてしまったというか、見惚れてしまったというか何というか・・・」

 

 突然の反応に反射で狼狽し、意図に反する―――本来ならば伝達する事などない称賛を口走る。音を出す事により、彼女の羞恥と失態を緩和する趣意で直情的に発言したが、突発的且つ異性間要因である為か発言内容の構築に支障が生じたらしく、常態の僕なら口走る事のない―――任務での使用を限定する意向である様な論賛を為してしまった。

 

「あら・・・見惚れてくださったの?嬉しいわ・・・」

 

 永琳さんが妖艶な笑みを浮かべる―――僕を誘うように・・・微細に流した視線は自らの望み展望への期待を想起させ、頬に装飾された微妙な赤みが反比例な新鮮さを浮かばせる。女性特有の魅力に対する免疫は諜報員故に強力であり、寧ろ現況より情報取得の口説き言葉を連なる所だが、永遠亭の一員として彼女の様な容姿端麗な人のあの様な姿を目に含んでしまえば当然の結果へと帰結したにすぎないのではという思考が脳内に浮上する。

 

「うふふ、ごめんなさい。ついからかっちゃったわ」

 

 笑いながら言う永琳さん。数秒間、僕は思考の整頓に努める為、衛兵の如く無言で立ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれは?発音してみて」

 

「え・い・え・ん・て・い」

 

「正解よ。あなたは物覚えが早いわね。この表をあげるからあとは独学で覚えて頂戴」

 

「分かりました」

 

 ベーシックの文字にこの平仮名を合わせるだけなので意外と容易に習得できた。あとは漢字だ。これがまた独特で習得するには時間がかかりそうだ。日々精進しなければ。

 

「・・・そろそろ良い時間ね。今日はもう休みなさい。藤原妹紅との疲れもあるでしょうし」

 

「分かりました、失礼します。お休みなさい」

 

「ええ、お休み」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、見惚れてしまいました、か・・・」

 

 男性にそのようなことを言われたのは本当に久しぶりだ。年甲斐もなく少し照れを感じてしまう。

それにしても、寝顔を見た時も思ったけど、狼狽する姿も可愛らしいわね。いつもの生真面目さが嘘みたい。

 

 ふふふと笑みを浮かべる永琳。彼と私たちの出会いは吉となりそうね。そんなことを思いながら彼女は寝床に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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