東方流星記 ~ Imperial Fugitive.《帝国の逃亡者》   作:Exar Kun

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重心 – 軍事行動の自由、物的戦力、抗戦意思等の源泉となる諸特性、能力又は重要拠点・地域


第4話A Beautiful World.

 

 

 

 

 

 

 

 ここは何処だ?・・・屋内部屋?・・・視界が不鮮明だ・・・

 

 

 気付くと見知らぬ部屋の椅子に座っていた。コンピューターや軍事資料と思われるパッドが目の前の机に乱雑している。

 

 

 無意識に足が部屋の外へ向かうと長い廊下に出た・・・右手に人の姿が見える・・・行ってみよう。

 

 

 長い廊下を一歩一歩踏みしめながら進む。左右には自分が居たオフィスのものと同一の扉が並んでいる。

 

 

 

 ターターター,タータター,タータター~♪ ―

 

 

 

 前方からインペリアル・マーチが鳴り響くのが聞き取れる。ここは何処なんだ・・・

 

 

 人々はガラス越しに宇宙を見ている・・・ここは船の中か・・・

 

 

 そう考えながら更に近づき、他の人々と同じように宇宙を見るとそこには、

 

 

 

 

 ゴゥォォォォォォォォォ ―

 

 

 

 

 ヴェネター級スター・デストロイヤーを中心とした複数の艦艇が編隊を組みゆっくりと目の前を通過するのが確認出来た。

 

 

 そうだ・・・これは惑星トーカスでの観艦式だ。そしてここは軌道上にある商業用民間宇宙ステーション・・・観客を見てみると何人か軍人の姿も見えるが、その大半は民間人だ。皆、間近で見るのは初めての経験のようで、興奮しながら観閲している。

 

 

 一番近いフリゲートを見ると、乗組員たちが整列しながらこちらに向かい敬礼を行っていた。直立不動を維持するその姿はとても誇らしげに見える。

 

 

 

 クゥォォォォォォォォン ―

 

 

 

 フリゲートの奥からTIEファイターの編隊がこちらへ向かい、ステーションに沿いながら展示飛行をする。独特のエンジン音がステーション内部にも多少だが届く。観客は大盛り上がりだ。地上からではあまり頻繁にその姿を目撃することの無い戦闘機だが、間近で見ることにより得られるその迫力は、数々の戦線を潜り抜けた歴戦の機体であることを我々に実感させる。

 

 

 

 

 

 

 おお、すげぇ ―

 

 

 あんなに巨大だったのか ―

 

 

 すごーい ―

 

 

 

 TIEがフリゲートに帰還するまでの一部始終を見ていると、突然観客たちの歓声が膨れ上がった。つられて視線を向けると、

 

 

 

 

 

 

 ゴゥォォォォォォォォォ ―

 

 

 

 

 

 

 観艦式における艦艇の中では最大級の大きさを誇るインペリアル級スター・デストロイヤーが視界に現れた。

 

 

 

 観客たちは何よりその大きさに圧倒されている。全長1600mを誇るこの宇宙戦艦は、星の破壊者の称号を受け継いだ艦船の最新型だ。はるか彼方の敵艦をも索敵するレーダーシステム、内部工作をしなければ破壊不可能と言われる強力なシールド・ジェネレーター、護衛の戦闘機、多数の地上兵器、そして何より多数の兵装による圧倒的火力。帝国市民にとってはガーディアンであり、敵対勢力にとってはデストロイヤーであるこの艦は、敵味方に多大な影響を与えている。

 

 

 

 タタンタータ,タタタン,タターンタータ,タン,タータタン,~♪ ―

 

 

 

 多数のランプを点滅させながら通過する帝国宇宙軍の象徴は、インペリアル・マーチと相まって、よりその勇壮さや巨大さに拍車を掛ける。この艦だけで二万隻を保有する帝国軍に敵う相手など、この銀河にはいないだろう。

 

 

《帝国宇宙軍トーカス駐留艦隊旗艦〈フランカー〉, 艦長フェルダス大佐》

 

 

 艦船情報を聞きながら流しながら思考する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は何をしているんだ・・・これは過去の映像だ・・・僕は、銀河の外・・・幻想郷に・・・

 

 

 

 僕は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タターン,タータタン,タータタン~♪ ―

 

 

 

 インペリアル・マーチが頭上で鳴り響く中、彼は朦朧としながらもその眠りから覚める。

 

 

 夢・・・か

 

 

 自分が永遠亭の部屋で寝ていることに安堵する。それにしても何故あんなものを見たのだ・・・

 

 

 意識が回復するにつれて彼はその答えを知る。成程、ホロ・プロジェクターの受信音か・・・

 

 

 すぐに集中し、ボタンを押す。

 

 

《アル遅いって・・・うわっ顔だけ!生首?》

 

 

 迷いの竹林の所有者を自称する妖怪兎のホログラムが目の前に現れる。ホログラムが身体全体のみを投影すると思っていたのか、頭部のみスキャンされた自分の姿を見て驚いているのであろう。

 

 

「寝転がったまま起動したので・・・頭部しかホロ・カメラがスキャン出来なかったと思われます」

 

 

 身体を起こし、自動再スキャンを待つ。これでてゐさんの方には座った自分が現れる筈だ。

 

 

《あっ、座った姿になった》

 

 

 事は予想通りに進んだらしい。

 

 

「それで、一体どうしたんでしょうか、何かありましたか?」

 

 

 何があったのか少し不安を感じる。あまり緊急事態には見えないが・・・

 

 

 

《いやー、暇だったから安眠妨害をしようと思って~》

 

 

 

「・・・」

 

 

 妖怪兎はホログラムの「効率的」な使い方をマスターしたようだ。

 

 

《でもさ、そろそろ起きた方が良い時間帯じゃない?鈴仙の手伝いするんでしょ?》

 

 

 そう言われ時計 ― 幻想郷の時刻に合わせた ― を見る。起床予定六時の数分前。少し早いが、確かに彼女の言う通りだろう。

 

 

《まだ慣れないアルを思って、このてゐさんが起こしてあげようと思ったのさ!》

 

 

 ついさっき安眠妨害が目的と言っていなかったか・・・

 

 

「・・・タシカニソウデスネ、アリガトウゴザイマス」

 

 

 感謝の念が感じられないような棒読みで返す。

 

 

《うわー何その、要らぬ手助けご苦労様、みたいな言い方。いいよーだ、朝ご飯の時姫様に言いつけてやる!》

 

 

 プシュン ― とてゐさんのホログラムが消える。風は舞い去った。

 

 

 さて、六時半には台所へと言われたが、鈴仙さんのために下準備でもした方が良いだろうか。いや、下手なことはしない方がいいな・・・そうだ、昨日料理を運ぶのにマグを使えないかと提案したのだった・・・二体の脚部は完璧に汚れを落とし、磨き上げられている。さらにマグにはスリッパを用意して頂いた。その為、ある程度邸宅へ上がる事が可能となった。一応マグ自身に聞いてみよう。

 

 

 そう思い彼は小屋 ― ドロイド部屋へ足を向ける。

 

 

 

 

 

 

 小屋の扉を開けると目の前には電源OFFのR2。そして左奥には、

 

 

「・・・・・・」

 

 

 同じくOFFのマグが直立不動の姿勢で鎮座している。電源が入っていなくてもその威圧感が消えることは無い。外見による威圧や恐怖感は敵側の士気低下を誘発する心理戦略の一つである。見慣れた相棒の姿に改めて畏怖してしまう。

 

 

「・・・オハヨウゴザイマス、マスター」

 

 

 電源をつけるとマグが挨拶をする。おはようと返し、昨日の提案を早速伝える。

 

 

 

 

 

 

「モチロンデス。オ手伝イサセテ頂キマス」

 

 

「ありがとうマグ」

 

 

 了承は得た。マグは私の言う事には逆らいはしないと知っての提案なので、狡さを感じてしまうが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 台所へマグと共に向かうと、丁度鈴仙さんがエプロンを着けているところだった。調理担当であるということを脳が認識しているからか、とても似合うように見える。

 

 

「おはようございます、鈴仙さん」

 

 

「オハヨウゴザイマス、Ms.鈴仙」

 

 

 自分に続いてマグも挨拶をする。

 

 

「おはよう二人共。マグも来てくれたのね、助かるわ」

 

 

 マントを外したのもあるかもしれないが、この二日でマグに対する恐怖感が払拭できたようだ。もっとも、そうでなければこの提案に賛成などしないか。

 

 

 安堵しつつ準備を始めようとすると、テーブルの上にある物が目に入る。これは、

 

 

 

「アル君たちが正式に料理の手伝いをしてくれることが決まったから、昨晩作っておいたの。ぜひ使って」

 

 

 

 私とマグの名前が刺繍されたエプロンだった。

 

 

 

「ありがとうございます・・・」

 

 

 なんだろう・・・とても嬉しい・・・マグもどことなく喜んでいるように見える。

 

 

「とっても・・・お上手ですね」

 

 

「これでも裁縫は月の中でも上手い方だったのよ」

 

 

 誇らしげに言う鈴仙さん。だがそんなことよりも・・・目が・・・

 

 

「あっ、あれ、どうしたの?気に入らなかった?」

 

 

 自然と涙が出てきた。何故だ。こう言っては何だが、エプロンを貰ったに過ぎない。なのに・・・何故?

 

 

 称号、名誉、報酬・・・帝国に居た時もさまざまな物を受領した。これは所詮エプロンだ。ただ仕事用に彼女が作ってくれた・・・それなのに・・・

 

 

 

 

 

 

 涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。お見苦しいものを見せてしまって」

 

 

「そんな、見苦しいなんて・・・むしろ嬉しかったわ、作った甲斐がありそうで」

 

 

 突然涙を流し鈴仙さんとマグを困惑させてしまった・・・何故涙を流したのか、落ち着いた今でも分からない・・・フォースが関わっているのか、それともただ単純に感動したのか。死の恐怖を間近に感じた時も、味方が戦死した時も・・・ここで新たな人生を歩むことが出来ると理解した時でも涙は出なかったのに・・・

 

 

 彼自身もこの涙に困惑しながら調理を手伝う・・・今は目の前の事に集中だ・・・任務中に過去を振り返る事は命取りになることもあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 今日は焼き魚がメインだ。地球の魚はどちらかと言えば食事用には小さく見えるが、色や鮮度はよさそうだ。銀河系では生魚はあまり流通していない。一部レストランのメニューに存在するぐらいだ。そして、そのどれもが明らかに何かしらの加工がされているのが目に見えて分かるものであった。これは加工などされていない。生魚が地球、いや幻想郷での主食の一つであることが推察出来る。

 

 

「そろそろね・・・取り出してくれる?」

 

 

「はい」

 

 

 鈴仙さんの指示通り焼き魚を取り出し、マグの用意してくれた皿に載せる。焼き焦げた匂いが鼻を刺激する。匂いについても銀河系のそれを圧倒する。

 

 

「あとはお味噌汁だけだから、先に出来たやつを運んでくれる?」

 

 

「わかりました、マグ、行こう」

 

 

「Aye, Aye.」

 

 

 既に出来た料理をマグと共に運ぶ。五人分の料理を運ぶのは意外と手間がかかる。マグを連れてきたのは正解だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁ」

 

 

 二人が台所を出るのを見送るとつい溜息を吐いてしまった。いきなり彼が涙を流したのには驚いた。なにか不味い物でも刺繍してしまったのかと心の中で大慌てだった。

 

 

「・・・」

 

 

 嬉しくて、と言っていた。それが事実なら・・・彼は今まで人から何かを貰った経験が無く、涙を流すほどに喜んだ、ということだろうか・・・

 

 

 

 あながち間違ってはいないのかもしれない。

 

 

 

 彼は孤児であり、情報部に引き取られた後、物心ついた頃には軍務についていたと言っていた・・・。幼い子供に軍事訓練を受けさせるような・・・彼が逃げ出してしまうような国、組織が温情を持って接したとは考えられない・・・。それとも、母親や父親がまだいた頃にプレゼントを貰った記憶があって、つい思い出してしまったのかしら・・・

 

 

 

 アルのことを考える鈴仙。彼は私と同じ元軍人。でも彼はその一本道しかなくて・・・それでも国家の為に・・・

 

 

 

 地上の民からの攻撃に恐怖して逃げ出した私とは大違い・・・

 

 

 涙の理由を推察しているはずが、自分との比較になってしまった鈴仙。その表情には同情や憐れみだけでなく羨望も見える。彼女が自己嫌悪していると、

 

 

 

「鈴仙さん、味噌汁の方はどうでしょうか?」

 

 

 

 彼の突然の声に驚く。なにをやっているのだ私は。師匠もいつも言ってるじゃない、生産的な考えをしろって・・・

 

 

「今入れるからもう少し待ってて」

 

 

 出来る限りの笑顔を浮かべる鈴仙であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って感じで、折角起こしてあげたのに全然誠意が感じられないんですよ~、やはり古参である私がこの新参者を教育しなきゃ駄目ね!」

 

 

 朝食中、てゐさんは本当に姫様へ朝の出来事を報告した。ブラフでは無かったか・・・。アルは寝起きが悪いのかしら、と言われてしまった。弁解をしなければ。ただでさえ新参者であるのに不作法な人間であると思われるわけにはいかない。これはてゐさんとの情報戦だ。

 

 

「てゐ!あんた私以外にもそんな事したの?」

 

 

 思わぬ増援部隊が目の前からやって来た。鈴仙さんも同じような「攻撃」を受けたのか。流石にてゐさんでも上司?である永琳さんと姫様にそのような事は不可能か・・・だが、鈴仙さんも一応上司ではなかったか?

 

 

「どういうことイナバ?」

 

 

「今朝、いきなりてゐがプロジェクターに連絡してきて、『安眠妨害だー』って言って無理矢理起こしてきたんです!」

 

 

 ビクッと驚いたてゐさんが今度は逆に弁明を始める。予期せぬ救援により反攻作戦は成功した。するとその弁明を聞いていた永琳さんがてゐさんにこう言った。

 

 

「てゐ、朝四時に強制的に目覚めてしまう薬があるのだけれど・・・飲んでみる?」

 

 

「ひぃぃぃぃぃごめんなさいぃぃぃぃ!」

 

 

 意外と弱いてゐさん。過大評価しすぎたか。これで次なる攻撃を受けることは無いだろう。

 

 

 

「でも、朝それで誰かを起こすのは面白そうね・・・」

 

 

 

 第三勢力(姫様)による攻撃が予期されるが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここでのあなたの具体的な生活方針について説明します」

 

 

 朝食の片付けを後、ドロイドたちに自分たちの部屋の清掃を指示した終えた今、私は永琳さんから今後の方針についての説明を受けていた。家事雑用が主な仕事になると思われるが、医療業務の支援や関わりも含まれるだろう。緊急救命や野戦治療程度の知識と経験しかない為、使い物になるか不明だが・・・

 

 

 自分のやれることをするまでだ。

 

 

「家事を主としてそれに加え薬等の売買、つまりウドンゲの手伝いを行ってもらいたいと思います。家事としては炊事以外にも洗濯、掃除、買物が該当します。元の世界とは多少異なると思うけど、炊事を見れば分かる通り、外の世界の機器を使用していたりするから直ぐに慣れると思うわ・・・詳しいことはウドンゲから説明を聞いてください」

 

 

 宿舎での生活や現地捜査における経験から家事ついては一通り可能だ。永琳さんの仰った通り、機器が炊事のように対応出来る物ならば特に問題は無い。気になるのは医療業務の方である・・・

 

 

「永遠亭では基本、置き薬の販売・宅配が主な業務となります。医療業務であなたにやっていただきたいのはこの仕事です。また、重病人が出た場合は私が現地へ向かいますがその時は手伝ってもらうと思います。急患や永遠亭の医療機器が必要な場合は私が主に対応します・・・後は、永遠亭に来た人たちへの事務対応といったところね」

 

 

 成程、永遠亭の立地から推定するに、わざわざここまで薬を買いに来るのは得策ではない。迷いの竹林はその名の通り非常に迷いやすい。薬を買いに行って行方不明なんてのは本末転倒である。その為、こちらから行動するということか・・・宅配を行っているならば届け先についても記憶しなければ。とにかく、永遠亭や竹林以外の地についても赴く必要があるな。

 

 

「今までは主に里の人間向けに販売をしていたのだけれど、最近は妖怪からも売ってほしいという嘆願があるの。主に組織だって行動する天狗や河童からの依頼が多いから危険では無いと思うのだけれど・・・あなたの能力や強さを見込んでのお願いでもあります・・・まあ、危険といっても今はスペルカードルールがあるし、人を襲う妖怪自体かなり減っているからそこまでのことではないのだけれど」

 

 

 

 スペルカードルール・・・幻想郷を幻想郷として維持するのに不可欠とされる「妖怪が人間を襲い、人間は妖怪を退治する」という関係を疑似的にした決闘・・・だったか。詳しくは説明されなかったが記憶に残る話だった。だが総合的に推察する限りでは、アウターリムの惑星よりも治安はよさそうだ。取り敢えずは友好関係を結べるよう精進しよう。

 

 

 

「医療業を務中心に活動しているけれど、出来る限り人妖問わずに様々な依頼があったらそれに答えて欲しいの。幻想郷の一員として活動するならば出来るだけ多くのコネクションや信頼関係を結んでおきたいというのが姫の・・・永遠亭の基本方針の一つでもあるから。無論、出来る限りで結構よ」

 

 

 自分の力が活かせられるのなら大賛成だ。意外にも幅広い方針ながらも自分には好機であると彼は考えた。

 

 

「とは言っても、基本はあなたの自由よ。業務もそこまで大変ではないし・・・里で店を開いたりしても良いし、妖怪退治になるも良し、幻想郷を探検するも然り」

 

 

 自分に商才など無いことは過去の経験から身に染みている。妖怪退治が居るのか。やはりまだ妖怪の脅威は存在するという事だろうか?探検・・・興味深い。美しい光景を探し、見てみたい。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 自由に、か・・・個人の行動方針としては恩返し中心で良いのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は人間の里を案内するわ」

 

 

 説明を鈴仙さんに交代してもらい、具体的な内容について聞いていたら彼女が突然そう言い出した。薬の販売等は少なくとも週2~3日程度とのことだ。最近は日数が多くなりつつあると言うが、空き時間があることには変わりない。その時間に案内をしてくれるとのことらしい。

 

 

「できるだけ多くの場所を案内したいけど、さすがに一日では無理だから少しづつ行きましょう」

 

 

「お願いします。申し訳ありません、船が使用できたなら空からでも可能だったのですが」

 

 

「いいのよ、それに私あまり飛ぶの好きじゃないし・・・」

 

 

 飛行は好まないというのは本当らしい。少し安堵する。人間の里・・・永遠亭の主な収入源であり活動場所。すぐにでも慣れる必要がある。何より竹林に慣れなければ・・・そうだ、

 

 

「マグやR2も今後のために連れていってもよろしいでしょうか?」

 

 

 二体とも十分役に立つはずだ。それにマグは自分の護衛をしたい筈だ。彼の職務を疑似的にさせるのも主の役割だ。

 

 

「もちろん良いわよ。早めに慣れた方がいいし、里の人たちも妖怪に見慣れてるから怖がったりはしないと思うわ・・・たぶん」

 

 

 マグとの初対面を思い出したのか語尾が弱くなる鈴仙さん。二体については良し・・・スピーダーはどうだろうか

 

 

「あと、スピーダーバイクは業務の際に利用してもよろしいでしょうか」

 

 

「大丈夫だけど竹林が・・・そういえば着陸地点も竹林の中だったわね。危なくないならそこは自由だけど」

 

 

 鈴仙さんは飛べるが自分には不可能だ。緊急事態下にスピードが無ければ人の命を左右するかもしれないのだ。スピーダーを使いたいとは説明を受けていた時から思っていた。

 

 

「では早速行きましょうか。準備が出来たら玄関前に来て」

 

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 やはり威圧感がすぎるな・・・

 

 

 マグとR2が準備するのを見ながら彼は思った。特にあのマントと頭部が・・・

 

 

 どうするかと悩んでいると彼の視界に今朝頂いたエプロンが入って来た・・・これだ・・・

 

 

「マグちょっといいかな」

 

 

「ハイ、ナンデショウマスター?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、エプロンを使うとは考えたわね。これならあまり怖いとは思わないわ」

 

 

「・・・ソレナラバ良カッタデス・・・」

 

 

 ナイスアイデアとでも言わんばかりの鈴仙さんとは対照的にマグの方は落ち込みが見える。私がマグの外見を「市民的」にするため思いついたのがエプロンを着けさせるということだ。マントを腰に畳み、エプロンのみが強調されることにより威圧感の低下を達成できた・・・一番の原因である頭部については剥き出しだが・・・

 

 

「― ― ― ― ~」

 

 

「黙レチビ助、アストロメク・ドロイドニハ理解デキヌ領域ノ問題ダ!」

 

 

 からかうR2に怒るマグ、ドロイドである前に戦士である彼にはあまり良い結果とは言えないだろうが・・・すまないマグ、腰にマントを持たせただけでも良いと思ってくれ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 里へ向かって三十分は経過しただろうか。里までは約一時間とのことだ。残り半分。

 

 

 薬の入った箱をマグが背負い進んで行く。彼からすれば軽い物であろう。先程から竹以外の物が見えない。成程、迷う筈だ。竹林の単調な風景と地面の僅かな傾斜で斜めに成長している竹によって方向感覚が狂いやすい。竹の成長も早く目印になるような物が見つけられない。

 

 

 だが道を覚えるのが不可能という訳ではない。地面の微妙な変化や石等僅かな目印がある。そして何より・・・この方位磁石が竹林通過における「重心」として活躍する。方向感覚が狂いやすいといえど方位には敵わない。さらに微量だがフォースを通じて人の気配を感じる・・・

 

 

「方位磁石があって良かったわね。私も昔から持ってればなぁ」

 

 

鈴仙さんは何も無しで、経験のみで覚えてのだろうか?玉兎恐るべし。

 

 

「単調ですが、竹が美しいですね」

 

 

迷い人にとっては悪夢だろうが・・・

 

 

「最初は私もそう思ってたけど、もう慣れちゃったからね。屋敷も竹で囲まれてるし」

 

 

「でも竹が攻撃してこない分安全ですね」

 

 

「アル君たちの世界では、竹が襲ってくるの?」

 

 

「竹ではないんですが・・・フェルーシアという惑星が存在するのですが、惑星全体を覆う植物の防衛機制が激しく人を食べたりするんです。おまけに見た目も不気味で単調ですし・・・」

 

 

それは危険ね、と言う鈴仙さん。帝国の行政府への資料の輸送の筈が諸事情からイカれた現地人との戦いに発展し、危うく帝国軍人ながら指名手配になるところだった。

 

 

「そういえば、そちらの銀河系は国単位ではなくて惑星単位なんだよね。海外旅行ならぬ惑星旅行なのかしら」

 

 

「そうですね。海外旅行と言う言葉は聞いたことがありません」

 

 

銀河系では国内旅行・惑星旅行の二つに分類される。特に惑星旅行は各惑星の重要な観光資源である為、どの惑星も力を入れている。それに比例して旅行会社における競争も激化している。

 

 

そういえばあの旅行会社・・・スターツアーズはどうなっただろうか。惑星旅行を超える星間旅行を売りにしている会社だが、同盟軍との繋がりを疑われISBに常時監視されていた筈だが・・・

 

 

「その言葉だけでどれだけ広大な世界か思い浮かぶわ。惑星毎に美しい光景が存在して、それを見て人々が生活を営んでいるのね・・・なんだか素敵」

 

 

 遠い銀河系の景色と人々を思い浮かべているであろう彼女の顔は優しさを伴っていた。鈴仙さんはやはり・・・何と表せば良いのか・・・そう、素敵な人・・・とても素敵な人だ。

 

 

 彼女の台詞は少年の心に突き刺さった。より彼女を知ることが出来たという喜びの意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会話をしながら(マグを慰めながら)移動すること数分、既に竹以外の木々や植物が目立つようになった。すると前方に大きく開けた少し傾斜のある崖の上のような空間が目に入る。鈴仙さんの後に付きその場所へ向かう。

 

 

「着いた。あれが人間の里よ」

 

 

 先に着いた鈴仙さんの声は聞こえるが、太陽光が眩しい為よく見えない。彼女の傍に近づく。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 そこには広大なそして美しい景色が広がっていた。竹林の美しさとは異なる自然世界の美しさとも言うべきか・・・四方を山が取り囲み、中心部には河川が流れ、いくつかの森や耕地が分散している。そして今回の目的地人間の里を丁度中心の位置で捉えることが出来た。里の名称だが十分いや、かなり広く見える。

 

 

 

「ここまで来ればもう迷うことは絶対に無いわ。私もこの場所を目印にしているの」

 

 

 

 鈴仙さんの説明が耳に入ってこない。只々目の前の景色に心を奪われていた・・・ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、幻想郷・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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