東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第12話 助っ人

「はぁ……はぁ……」

 鞘を地面に突き刺して何とか倒れないようにしている俺。

「もう疲れたのか?」

 あれから5分。まだまだ妹紅は大丈夫なようだ。

「色々あるんだよ」

 PSPの画面を見るとこの曲は後1分半。この曲は音質が良いのを選んでいると長い動画しかなかったのだ。

「ん? あの半霊はどこ行った?」

 妹紅が俺の近くに白い幽霊がいない事に気付く。

「ああ、少しお使いを頼んでる」

 俺の疲労はその半霊のせいでもある。コントロールが難しく精神的に参っているのだ。

「倒れるなよ」

「わかってるって!」

 半分叫んで返事をすると、とうとう曲が終わった。

 

 

 

 ~フラワリングナイト~

 

 

 

 服が輝き、メイド服になる。

(ミスティアに会う前になった服だな)

 だが、あの時は戦っておらず、どういう能力があるかわからない。

(武器は……ナイフ?)

 スカートの中からたくさんナイフが出てきた。どこに入っていたのかと思うぐらいに。

「来たぞ!」

「え?」

 妹紅の言う通り、妖怪が一斉に襲い掛かって来た。

「くそっ!」

 脅かすためにナイフを投擲する。すると百発百中で妖怪の額に刺さった。

「へ?」

「無闇に殺すなって……更に強くなるだろ」

「わざとじゃねーよ!」

 体が勝手に動いたと言っても過言ではない。

「……に、しても本当に強くなったな」

 俺の言葉を無視して妹紅が言う。

「ああ。正直言ってきつい」

 見ていると妹紅の炎でも一発じゃ倒れなくなっていた。それにさっき殺した妖怪たちも復活している。

(このままじゃ……)

 妖怪たちは強くなり、俺たちは疲労で動けなくなる。バッドエンドだ。

「どうするよ?」

 悩んだ末、妹紅に相談する。

「どうするもこうするもないだろ」

 妹紅もどうすればいいかわからないようだ。

「とにかく耐えるしかないな」

「ああ、耐えるしかない」

 お互いの意見が合った所で妖怪たちがまた襲い掛かって来た。

(ああ……何かイライラする)

 そのせいだろう。

「「死にさらせやああああ!!!」」

 俺と妹紅は叫んでいた。いつまでも終わらない戦いにまいっているのだ。妹紅も同じらしく今までで一番でかい炎を出している。対する俺はありったけのナイフを投げて妖怪たちを串刺しにしていた。

「「あ……」」

 気付いた時には妖怪たちが復活し、更に強くなっていた。

「ああ! また強くなった! どうすんだよ!?」

「お前だってたくさん殺したじゃないか!!!」

 戦闘中にも関わらず妹紅と睨み合う。

「「――ッ!」」

 その隙を突かれた。突然、妖怪が足元の地面から飛び出したのだ。

 不意を突かれた俺は腹にタックルをもらう。

「ぐふっ……」

 ガードも出来ずに吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。一瞬、意識を手放しかけるが何とか持ちこたえる。

(も、妹紅は……)

 痛む体に鞭を打って何とか立ち上がった。

「っ!?」

 俺は信じられない光景を目の当たりにした。そのせいで体が硬直する。

「だ、大丈夫か!? 響!」

 心配そうに声をかけてくる妹紅。

「い、いや……お前の方こそ……」

「え? 私は大丈夫だ。くっ……さすがに大丈夫じゃないわ」

「バカ野郎!? 致命傷じゃねーか!!!」

 俺が大声を上げるのも仕方ない。

 

 

 

 妹紅の腰半分が食い千切られていたのだから。

 

 

 

「これぐらい日常茶飯事だって……」

 口ではこうだが顔は青ざめ、表情は苦しそうだ。

「早く止血しないと!」

 見渡すが傷口を押さえられるような物はなかった。このままでは死んでしまう。

「落ち着けって……ほら、始まった」

(始まった?)

 妹紅に手招きされて近づいてみると傷口が塞がっていく。

(これってあの時と……)

 俺も妹紅のコスプレをしている時に傷口が塞がった。

「ど、どうなって……」

「後で説明してやるよっと!」

 妹紅が迫ってきた妖怪を炎で吹き飛ばす。驚きすぎて気付きもしなかった。

「さて……そろそろか」

 完全に傷が塞がった妹紅は立ち上がりつつ、呟いた。

「そろそろって?」

「来た!」

 

 

 

「妹紅!!! 大丈夫か!!!」

 

 

 

 空の上から大声が聞こえた。そちらの方を見ると見覚えのあるシルエットが浮いていた。

「け、慧音!?」

 予想外の人物の登場に驚愕する。その瞬間に曲が終わり、次が再生。

 

 

 

 ~おてんば恋娘~

 

 

 

 服は青いスカートで頭には緑のリボンが飾られている。それに背中には結晶の羽があった。

「ど、どうしてここに!?」

 体の変化より慧音の方が優先。上空にいる彼女に向かって叫んだ。

「む?」

 どうやら、向こうも俺に気付いたらしい。目を細めてゆっくり降下して来る。

 妖怪たちは慧音の登場に戸惑い、攻撃して来る気配がない。

「すごいだろ?」

 慧音が降りてくる間に妹紅が笑いかけて来た。

「そうだ! どうやって慧音を?」

「あの時の火柱だよ。あれが緊急時のサインなんだ」

「な、なるほど……」

 種明かしも終わった所で慧音が着陸した。

「……チルノじゃない? でも、恰好は同じだな」

 その途端に顎に手を当てながら俺の姿を凝視する。

「え、えっと……慧音? もしかして俺の事、わかってない?」

「え? 会った事があったか? すまない。覚えていないようだ」

 能力のおかげで服装が変わっているから俺だと気付いてないらしい。

「……音無 響だよ」

 仕方なく名乗る。

「……何を言っているんだ? 響は今、私の家にいるはずだし、そんな恰好していない」

「だから――」

「来るぞ!!」

 妹紅の声で妖怪の方を見ると2匹、突っ込んで来ている。

「慧音、避けろ! 凍符『パーフェクトフリーズ』!」

 即座にスペルカードを取り出し、宣言した。慧音は目を見開いて離れて行く。その間に体から大量の弾幕をばら撒き、妖怪たちに突進する。

 だが、直線的な弾幕なので妖怪たちは軽々と躱した。

「くっ……」

 悔しくて奥歯を噛んだその時、動いていた弾が全て止まった。

「――ッ!?」

 走っていた妖怪たちは急ブレーキをかけたが自ら弾に衝突し、凍ってしまった。

「おお! 上手いぞ、響! これで復活出来ない!」

 妹紅に褒められたがそれどころではなかった。

「何がどうなって……」

「お前が発動したスペルだろ? どうしてそんなに驚いているんだ?」

「い、いや……この姿になるのは初めてだったからどんな技かわからないんだよ」

 俺の発言を聞いた妹紅は呆れた目を俺に向けた。

「ん? 妹紅。今、『響』と言わなかったか?」

「そうだけど? なぁ、響?」

「あ、ああ……」

「じゃ、じゃあ……本当に響なのか?」

「そうだってば……」

 慧音が信じられない物を見たような顔をしている。

「そんな事より――」

 その後は言葉ではなく指を指して示した。せっかく凍らせた妖怪を他の妖怪が氷を噛み砕いている。復活するのも時間の問題だ。

「まぁ、そうだな。あれから処理しよう」

「……後で説明してもらう」

「了解!」

 

 

 

 ~人形裁判 ~ 人の形弄びし少女~

 

 

 

 曲が変わり、アリスの姿になる。

「行け!」

 すぐさま人形を操り、噛み砕いている妖怪を追い払う。

「妹紅! 妖怪について教えてくれ!」

「おう! 響、頼んだ!」

「頼まれた!」

 アリスのスペルは広範囲に広がる弾幕が多かったはずだ。ここで使ってしまったら人里の方にも流れ弾が飛んで行くかもしれない。

(ならば――)

 人形をスカートの中から召喚し、妖怪たちを襲う。

「きっつ……」

 アリスとの戦闘では2体しか操っていなかったが今は100を超える人形だ。集中しなければいけない。

 だからだろう――。

 

 

 

「バウッ!?」

 

 

 

 後ろから近づく妖怪に気付けなかった。

「しまっ――」

 妹紅たちも気付き、こちらに向かっているが間に合わない。人形も同様だ。

(くそっ!?)

 口の中で悪態をついた。妖怪が口を大きく開ける。背筋にゾクリと悪寒が走った。

 

 

 

「霊符『夢想封印』」

 

 

 

 真上で聞いた事のある声が響き、8つの弾が妖怪を吹き飛ばした。

「全く、どんな呼び出し方してるのよ。吃驚したじゃない」

 思わず、ニヤケてしまった。

「仕方ないだろ? あれしか方法はなかったんだからよ」

 上に目を向けずに会話する。

「……まぁ、いいわ。妖怪退治は博麗の巫女の仕事だもの」

 俺の隣に降り立った助っ人――霊夢が数枚のお札を構えながら呟いた。

 


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