東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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やっと評価のバーが赤になりました。
評価して下さった5名の皆様本当にありがとうございます。
これからも感想、評価などなどお待ちしていますの気軽にやっちゃってください。


なお、今回のお話は疾走感のあるBGMを聞きながら読むと更に熱くなれるかもしれません。


追記

2015年11月12日12時半頃、日間ランキングを確認したところ、49位にランクインしていました。
ありがとうございます。何とかこちらの小説もランキングに載ることができました。
これからも東方楽曲伝をよろしくお願いします。


第171話 刀4本

 霊奈はまず、二人の様子を窺った。

 ルーミアの表情は険しいが、目立った外傷はない。響の拳を全て両手の直刀で受け止めているからだ。

 それに対して、響の足元には血が溜まっている。それほど出血しているらしい。

 そこで霊奈は目を細めた。

(傷が治ってない?)

 初めて幻想郷に――霊夢に会った時に響の体について教えて貰っていた。魂のことはもちろん、『超高速再生能力』も教えて貰っていた。

(そうか、今は妖力しかないから霊力を使って傷を治せないんだ……)

 よく見れば響の腹部に深々と切り傷が付けられている。ルーミアが攻撃と攻撃の合間に生まれた隙を突いて付けたものだろう。

「響っ……」

 思わず、助けに行こうとしたがグッとこらえる。ここで突っ込んでも返り討ちにされるだけだ。

(……よし!)

 一つ、頷いて霊奈は左手に持っていた刀を思い切り、投げた。刀は真っ直ぐ響の方に突進する。

「っ!?」

 それに気付いた響が人間では到底、出せそうにないスピードで刀を右手で掴んだ。運よく刃ではなく柄の方を持つことができた。

「――ッ」

 一瞬、体を硬直させた響だったが、すぐにルーミアに攻撃を仕掛ける。右手に持った刀で。

「くっ……」

 ルーミアは顔をしかめて直刀2本で響の刀を下から受けた。1本では受け止め切れないほど響の斬撃は重たいのだ。

 数秒、響の刀とルーミアの直刀は制止するがすぐに動きがあった。しかし、動いたのは2人ではなく霊奈だ。

「はああああッ!」

 ルーミアの背後に回った霊奈が横薙ぎに刀を振るう。それをルーミアは体から黒い液体を出してガード。黒い液体が真っ黒な壁のようなものに変化したのだ。

「硬いっ!?」

 力いっぱい刀を振るったので右手にビリビリと衝撃が返って来た。だが、そのおかげでルーミアの意識が霊奈に向いた。それを見逃す響ではない。

「ガァッ!!」

 刀を持っていない左手からルーミアに向かって光線を放つ。もちろん、ルーミアの後ろにいる霊奈も巻き込まれるだろう。

「ちっ!」

 ルーミアは慌てて黒い液体を前方に展開し、光線を防ぐ。それを見て霊奈は刀をルーミアの背中を狙って振り降ろす。

「あ、ぐ……」

 さすがに躱し切れなかったが、霊奈の刀が背中を捉える前に体を捻って直撃を避けたルーミア。そして、響の刀を抑えていた直刀が上下にずれる。

「しまっ――」

「ッ!」

 響が刀を出鱈目に振るうといとも簡単にルーミアの直刀は弾かれてしまった。ルーミアに大きな隙ができる。

(まずいッ!)

 ルーミアが心の中で焦るがどうすることもできない。襲って来るであろう激痛に耐えるために奥歯を噛み締める。

 響が真っ直ぐ刀を突き出す。

「っ……」

 しかし、響の刀はルーミアではなく霊奈の方に向かっていた。ここに来て標的を変えたのだ。

「響! しっかりして!」

 霊奈はこうなるだろうと予知していたので焦りはしなかった。そのかわり、響の一撃が予想以上に重かったことに驚愕した。

(……大丈夫。私なら響の攻撃を受け流せる!)

 そう確信しながら響の刀を受ける。

(響の刀の威力はすごい……けど、使い方は私の方が上手い!!)

 響の刀が霊奈の刀に触れたが、それだけだった。そのまま、鍔迫り合いになる。

「響! 私だよ! 霊奈だよ!!」

「……」

 霊奈が響に呼びかけるが睨むばかりで響は何も言わない。

「私を忘れるなあああ!」

 霊奈から見て左からルーミアが直刀を振りかざして来た。左の直刀は霊奈を。右の直刀は響を狙っている。

 霊奈と響はそれを見て鍔迫り合いをやめ、ルーミアの直刀をそれぞれの刀で受け止めた。

「邪魔するなっ!」

 霊奈がそう叫ぶと右足のつま先からナイフの刃ほどの結界が飛び出す。まるで、仕込みナイフのようだった。右足を振り上げ、ルーミアに突き刺そうとするがルーミアはひらりと回避。

「ッ!」

 それを待っていたかのように響が左手から拳ほどの赤黒い球体を撃ち出す。それをいくつも――。

 ルーミアもわかっていたようで黒い液体でできた壁で全弾防ぐ。その隙に霊奈と響はルーミアから距離を取る。

「逃げるな!」

 しかし、すぐにルーミアに追いつかれてしまった。どうやら、狙いは霊奈らしい。確かに響よりも霊奈の方が倒しやすいだろう。今までだったら――。

「――」

 迫り来るルーミアに向かって3枚の博麗のお札を投擲し、術式を組み上げる。お札から結界が展開され、“守りの結界”になった。

「何っ!?」

 まさか、防御して来るとは思わなかったようでルーミアがそのまま、結界に突っ込む。さすがに即席で作った結界ではルーミアの突進を止めることはできなかったようで、結界は音を立てて砕けてしまった。

 でも、霊奈の狙いは別にあった。今、ルーミアの周りには無数の結界の破片が散らばっている。すぐにその破片を操作し、ルーミアに向かって射出した。

「あああああっ!?」

 いくつかは両手の直刀で弾き飛ばせたが、結界の破片がルーミアの体を抉る。また、黒い液体が噴き出した。

「ガㇽッ!」

 さらに響が痛みで悲鳴を上げたルーミアの右肩に刀を突き立てようとする。

(こ、れだけは防がないと!)

 痛みで視界がチカチカするが、黒い液体を操作し、包むようにして響の刀を空中で受け止めた。

「せいっ!」

 その次の瞬間には霊奈の刀をルーミアに向かって振るわれる。

(何で、こいつらこんなにコンビネーションがッ!?)

 響は今、狂気状態だ。連携はおろか先ほどのように霊奈を狙うことだってあるはず。しかし、それを感じさせないほど二人のコンビネーションはバッチリだった。

「くそったれがっ!」

 黒い液体でのカードは間に合わないと思ったルーミアは地面に向かって弾幕を放つ。地面が爆発。その爆発は霊奈や響だけでなくルーミアも襲った。

「ッ――」

 衝撃でルーミアの体が風船のようにぶっ飛んだ。霊奈は博麗の勘のおかげで爆発する前に回避できたが、響は防御という概念はなくルーミア同様、爆発に巻き込まれた。

「響!」

 霊奈が思わず、叫んでしまったが、今の響の体は妖怪である。そのため、これぐらいの爆発なら耐えられた。その証拠にすぐに立ち上がってルーミアと霊奈を交互に睨んでいる。

 だが、ルーミアは違った。3人の中で最も爆発点の近くにいたのもそうだが、傷のせいで上手く受け身が取れなかったのだ。

「はぁ……はぁ……」

 息を荒くしてルーミアも立ち上がる。まだ、諦めていないようで直刀を構えた。

「があああああああッ!」

 それを見て響が雄叫びを上げ、ルーミアに突っ込む。霊奈も響に続き、そのすぐ後ろを走り始めた。

(どうして……そんなに連携が取れる?)

 この疑問が常にルーミアの頭で響いていた。

 どうして、響は霊奈を襲わないのか? どうして、霊奈があそこまで強くなったのか? どうして、霊奈は響を信じられるのか?

 突進して来る二人を見ながらルーミアは頭を抱えた。ガリガリといくつもの疑問がルーミアの集中力を削る。

「――ッ!」

 その時、響の刀がルーミアの右肩に向かって振り降ろされた。すかさず、右の直刀でガード。

「はあああああっ!」

 響の体を潜るようにして霊奈は切り上げを放つ。今度は左手の直刀で弾いた。そのせいで霊奈のバランスが崩れる。

「ッ」

 ルーミアに霊奈を追撃させる暇を与えることなく響が左手から光線を撃つ。それは黒い液体の壁で防御。

「――――」

 バランスが崩れたまま、霊奈がお札を2枚、投擲。すぐに術式を組み、薄い結界をルーミアに向かって飛ばす。この結界は“攻めの結界”だ。面ではなく辺での攻撃。つまり、薄い結界でルーミアを切り刻むのが目的だ。もし、その結界はルーミアの体を捉えたら、簡単にその身を貫いて体を半分にしてしまうだろう。

 ルーミアは体の周りから黒い球体をいくつも作りだし、結界に向かって飛ばす。薄い結界は簡単に砕けた。

「ッ……」

 砕けた破片の向こうに響の拳が見える。どうやら、右手に持っていた刀を捨てたらしい。

(当たる……)

 今のルーミアは隙だらけだった。

 右手は響の刀を受け止めていたのですぐには動かせない。左手も同じ。

 黒い壁はまだ、光線を防いでいる。

 黒い球体を作り出すには時間が足りない。

(くそ……くそっ! くそっ!!)

 奥歯を噛んでルーミアが頭の中でそう叫ぶ。

 そして、響の右ストレートがルーミアの顔を捉えた。

 


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