東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第187話 ダブルバトル

「……」

 俺は夢でも見ているのだろうか?

「よっしゃー! 覚悟はいいか? 二人とも!」

「私たちは大丈夫よ」

「今度は負けないからね!」

 目の前で繰り広げられている会話はすでに俺という存在を忘れ去っている。

「響! 始めるぞ!」

「いや、待てよ」

 隣で浮遊している魔理沙を止めた。

「何だよ? トイレか?」

「違う。この状況を説明しろって言ってんだよ!」

 ここは紅魔館の図書館。パチュリーに相談したいことがあったので寄ったのだが、気付いた頃には変な戦いに巻き込まれていたのだ。

「見ればわかるだろ? パチュリー&フランチーム対私&響チームの弾幕ごっこだよ」

「だから、何でそうなってんの!?」

 入り口のドアを開けた瞬間、魔理沙に手を引かれここまでやって来た。それだけでわかるわけがない。

「とにかく、やるんだ! これは今後の私にも影響があるんだから!」

「影響?」

「実はね? 本を盗みに来た魔理沙をパチュリーが捕まえたんだけど色々話してる内に弾幕ごっこで決めようってなって」

「勝った方の意見を尊重するってことになったのよ」

 フランとパチュリーが説明してくれる。しかし、俺は納得できなかった。

「だからって何で俺なんだ? レミリアとか咲夜でいいじゃん」

「こっち側に紅魔館に住んでる奴を入れたら裏切るかもしれないだろ? だから、第三者が来るのを待ってたんだ」

 そこに俺がのこのことやって来た、と。

「そう言えば、響は何でここに?」

「あいつのせいだよ……」

 図書館の椅子でくつろいでこちらを見ている青娥を指さす。

「そう言えば、最近……憑かれてるんだってな」

「本当に迷惑だ」

 下を睨んでいると俺の視線に気付いたのか青娥が手を振って来た。当然、無視。

「でも、あいつと図書館、どんな関係が?」

「なんか、図書館に寄りたいって言うこと聞かなくて……まぁ、俺もパチュリーに話があって来たんだけど」

「お前はあいつの親か」

 今、思えば少しの間だけ青娥は俺の傍からいなくなっていた。その時に図書館に来てこの状況を見たのだろう。そして、図書館に俺を連れて来たらこうなると思った。

(本当に……迷惑な奴だ)

 まぁ、『どうしてそんなことをしたんだ』って聞いたら『面白そうだったから』と答えるに違いない。

「二人とも! 喋ってないで始めるよ!!」

 フランが痺れを切らしたのか俺たちに向かって叫んだ。

「はいはい……」

「じゃあ、行くよ!」

 そう言ってフランは波状弾幕を放って来た。

「魔法『探知魔眼』!」

 『魔眼』を発動させ、波状弾幕の穴を見つける。すぐさま、そこを通り抜けた。

「水符『プリンセスウンディネ』!」

 その時、横からパチュリーの水魔法が俺を襲う。

「雷刃『ライトニングナイフ』!」

 咄嗟に雷でできたナイフを何本も投げ、水を蒸発させる。

「禁弾『スターボウブレイク』!」

 いつの間にか背後に回っていたフランが七色の矢を飛ばして来た。

「魔符『ミルキーウェイ』!」

 それを魔理沙が星弾で弾く。

「まずは小手調べってところかな?」

「小手調べで一人狙いされる俺の身にもなれ」

 俺と魔理沙は喋りながらお互いにお互いの背中を守るような立ち位置で相手の出方を見る。フランは魔理沙の前に、パチュリーは俺の前に移動した。

「禁忌『レーヴァテイン』!」「火符『アグニシャイン上級』!」

 すると、パチュリーとフランは同時にスペルを宣言。

「入れ替わるぞ!」

 パチュリーはともかく、フランの剣は魔理沙よりも俺の方が対処しやすい。それを考慮した上での提案だ。

「了解!」

 魔理沙も同じ考えだったようでスムーズに立ち位置を入れ替えることに成功した。

「結尾『スコーピオンテール』!」

 スペルを唱えながら博麗のお札をポニーテールに貼り付ける。すると、俺のポニーテールから白い刃が伸びた。

「何それ!?」

 驚愕しながらもフランはレバ剣を真上から振り下ろして来る。それを『結尾』で受け止めた。

「拳術『ショットガンフォース』!」

「きゃあっ!?」

 拳に妖力を纏わせ、フランのお腹に向かって突き出す。フランは両手で剣を握っていたため、ガードもできずに吹き飛ばされた。そのまま、いくつかの本棚を薙ぎ倒していく。そのせいで煙が生じてしまい、フランの姿が見えなくなってしまった。

「響、手伝ってくれ! 今日のパチュリー、調子が良すぎる!」

 音で俺とフランとの戦いがひと段落したのに気付いた魔理沙が叫ぶ。

「霊盾『五芒星結界』!」

 五枚の博麗のお札で結界を作り、魔理沙の前に設置。その間も俺はフランの方を見ていた。

「さんきゅ!」

「ああ」

「禁弾『カタディオプトリック』!」

 フランの声が聞こえたと思った矢先、煙の中から大小さまざまな弾が飛んで来る。

「神鎌『雷神白鎌創』! 神剣『雷神白剣創』!」

 右手にいつもの鎌を、左手に神力で創った直刀を持つ。

「はあああああっ!」

 迫り来る弾を右手の鎌で弾き、左手の直刀でぶった切り、ポニーテールで叩き落していく。

「木符『グリーンストーム』!」

 パチュリーがスペルを使った途端、左右から木の葉が現れた。魔理沙はもちろん、俺も攻撃範囲内だ。

「くそっ……神箱『ゴッドキューブ』!」

 俺と魔理沙を囲むように神力の箱が出現する。

「あ、危なかったな……」

「どうする?」

 木の葉と弾が『神箱』にぶつかるのを眺めつつ、聞く。

「そうだなぁ。とりあえず、合体技でもいっとくか?」

「よし、そうしよう」

 魔理沙が取り出したスペルを見て俺もスペルを取り出す。

「5秒後に箱を消してくれ」

「了解した」

 心の中で5秒、数えて『神箱』を消した。それと同時に魔理沙の真上に移動する。

「恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

 スペルを宣言した魔理沙の周りから何本ものレーザーが射出された。

「電流『サンダーライン』!」

 そのレーザーに向かって雷撃を飛ばす。すると、雷撃がレーザーとレーザーを繋ぎ、蜘蛛の巣のようになった。すかさず、魔理沙がレーザーを回転させ始める。

 レーザーが大部分の木の葉と弾を消し、仕留め損なった奴は雷の糸で絡め取って行く。

「禁忌『恋の迷路』!」

 それに対抗するかのようにフランが弾幕を放った。そして、蜘蛛の巣と迷路が衝突する。上から見たらベーゴマとベーゴマがぶつかっているように見えた。

「日符『ロイヤルフレア』!」

 真上で紅い炎が上がる。見るとパチュリーが真下にいる俺たちに向かって巨大な火球を飛ばして来た。

「ちょ!? そんなのありかよ!」

 フランの相手をしている魔理沙が悲鳴を上げる。火球をどうにかできるのは俺だけだ。

(これはやるしかないか……まぁ、試してみたかったし)

 不思議と冷静だった俺はスキホを取り出す。素早く5桁の数字を入力すると目の前に1枚のスペルカードが出現した。左手で掴み取り、スペル名を叫んだ。

「闇開『ダークフォール』!」

 すると、博麗のリボンがスキホに取り込まれ、ポニーテールが解かれる。その直後、俺の体が黒いオーラに飲み込まれた。

「きょ、響!?」

 背後から魔理沙の驚いた声が聞こえるが、無視。黒いオーラが晴れた時には俺は子供の姿になっていた。

「吸収『ドレインホーリー』!」

 そのまま、スペルを使用。両手を上に伸ばし、飛んで来た火球に触れる。

「……え?」

 振り返ると魔理沙は呆けていた。いや、それだけではない。フランもパチュリーでさせ硬直していた。まぁ、あれだけ大きな火球を俺が一瞬にして体の中に取り込んだのを見ればそうなるだろう。

「変換『チェンジオブフォース』!」

 体の中で暴れている炎を闇の力に変換させる。再び、黒いオーラが俺を包み、元の体まで成長できた。俺が子供になるのは闇の力が少ない。つまり、闇の力を多くしてやれば俺の体も成長するのだ。

「後9分」

 スキホの画面を見て残り時間を確認。闇の力を使い過ぎないためのタイムリミットだ。スペルを宣言してからの10分間でケリを付けなければならない。

「魔理沙!」

「な、何だ?」

 困惑しながらも魔理沙は俺の傍にやって来た。

「この図書館を宇宙にするぞ! 星を頼む、出鱈目にばら撒いてくれ!」

「よくわかんないけど……やってやるぜ!」

 頷いてくれた魔理沙はスペルカードを手に取る。それに合わせて俺もスペルを用意した。

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 俺と魔理沙の周りに星たちが輝き始める。だが、星たちは真っ直ぐにしか飛んでいない。これでは宇宙とは言えない。

(だから、星たちの軌道を俺が作る!)

「重力『グラビティボール』!」

 スペルを発動させ、俺は黒い弾を両手に作り出した。

 




次回、闇の力の本領発揮です。

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