東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

201 / 543
昨日の日間ランキングにて10位にランクインしました!
これからもよろしくお願いします!


第195話 突入、開始

「ここだよ」

「……やけに古いな」

 森の奥に古ぼけた屋敷があった。だが、かなりでかい。さすがに紅魔館ほどではないが、外の世界なら相当、でかい部類に属するだろう。

「この地下にフランがいる」

「地下?」

「うん。ここからじゃわからないけど、このお屋敷は地下があるんだよ。地上部分は4階。地下は2階。計6階で構成されてる」

「望ちゃん、敵の数とかわかる?」

「ちょっと待ってくださいね」

 望がジッとお屋敷を見る。

「……すごい数。地下1階に集中してる。でも、ちゃんとお屋敷の中も巡回してるよ」

「地下はどんな感じだ?」

「かなり広い空間みたい。もしかしたら、この日のためにずっと前からこのお屋敷を改造してたのかも」

「霊奈、鎧を着ろ。相手は魔法とかじゃなくて銃とか現代の武器も使って来るはずだ」

「うん」

 霊奈の鎧は数発なら銃弾を防いでくれる。霊力や魔力などは銃のような現代の武器と相性が悪いのだ。俺の『五芒星』でも10発、耐えられるかどうかわからない。

「望はここで休息。霙はその護衛」

「え!? わ、私も行く!」

「お前は駄目だ。体の方も限界だろうし、それにお前じゃ太刀打ちできない」

「……うぅ」

 望の目が光ったが、反論できないとわかったようで言い返して来なかった。

「霙、敵が現れたらすぐに教えろ。後、擬人モードになっておけ。そっちの方が望を守りながら戦いやすいはずだ」

「了解であります」

 狼モードの時の霙はでかい。それでは敵の的になるだけだ。なら擬人モードの方がいくらか戦いやすいだろう。

「それと霊奈、刀を2本。結界を5枚、展開」

「わかった」

 鎧を展開中だった霊奈が頷くのを見て俺は上着を脱ぎ捨てた。

「お、お兄ちゃん! 脱ぐ前には一言、言ってよ!」

「あ、悪い。時間がないんだ」

 望の文句を軽く流し、すぐに博麗のお札を体に貼り付ける。

「結鎧『博麗アーマー』」

 スペルを宣言し、俺も鎧を作り出した。

「霊盾『五芒星結界』」

 すかさず、結界を作る。その数、3枚。今の霊力ではこれが限界だ。後は回復用である。

「じゃあ、改めて作戦を言う。俺と霊奈はフランの救出。望と霙はここで待機。いいな?」

「「「了解!!」」」

「それじゃ……行くぞ!」

 そう言って俺は屋敷に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

「……よし、オッケーだ」

 屋敷の中はかなり薄暗い。周りの森のせいで光があまり差し込まないのだ。

「響、そこを右」

「おう」

 ここに来て霊奈の勘が働き始めた。これはありがたい。

 敵とはあまり戦闘したくないので慎重に進んでいるが巡回している数が多すぎるので上手く進めていなかった。

「……行くぞ」

「うん」

 銃を持った人が通り過ぎたのを見て部屋から飛び出し、廊下を突き進む。

「前に敵、3人」

「隠れる」

「了解」

 急いで近くの部屋に逃げ込もうとしたが、鍵がかかっていて開かなかった。

「しまっ――」

「誰だ!?」

 もたついている間に敵に見つかってしまう。逆によくここまで見つからなかったと言えるだろう。

「仕方ない! 霊奈、突破するぞ!」

 右手から雷撃を飛ばしながら指示を出す。

「わかった!」

「相手は異能力者だ! 応援を呼べ!」

「くっ……」

 1人が踵を返して廊下を引き返した。このままでは敵の数が増えてしまう。

「させるかっ!」

 急いで鎌を出現させ、その敵に向かって投擲。

「くそっ!」

 だが、残っていた敵が腰から警棒を抜いて鎌を撃ち落とすべく振り降ろした。

 ――ガキーンッ!

 警棒がグシャリと曲がるが、鎌は屋敷の壁に突き刺さった。その間に応援を呼びに行った敵が見えなくなってしまう。

「作戦変更! この場を離脱。5秒後に後ろに向かって走れ!」

 俺が叫び終えると同時に目の前の敵たちが銃を構えた。どうやら、アサルトライフルらしい。

(乱射は厳しいって!)

「震脚『パワードフット』!」

 いつもの慣れで技名を言いながら右足に妖力を集め、床を垂直に蹴りつけた。

「うおっ……」「な、何だ!?」

 すると、床が激しく振動し、敵の銃口が震える。『震脚』は局地的な地震を起こす技なのだ。

 敵が慌てふためいているのを見ながら俺と霊奈はその場から離れるために来た道を戻り始めた。

「撃てっ!」

 銃口が揺れながらも二人が引き金を引く。凄まじい量の銃弾が俺たちを襲う。しかし、多くは俺たちを取られる事無く、壁に突き刺さったり通り過ぎたりした。更に俺たちに当たりそうな銃弾は『五芒星』が防いでくれる。

(でも、これじゃいつまで持つか……)

「いたぞ!」

 すると、前からも敵が現れる。その数2人。

「こっちだ!」

 霊奈の手を引いて左に曲がった。後ろをチラリと見ると敵が合流している。これで敵の数は4人。

(まずい……霊奈の攻撃手段は刀による近接技のみ。俺もさっきの魔眼のせいで魔力が上手く制御できてない。神力は形を作るために必要だし、妖力も近接系だ。どうする?)

 そこまで考えていると1枚目の『五芒星』が割れた。残り2枚。

「響! こっちの結界も後ろに回す!?」

「いや、お前の結界は前からの奇襲に対処させたい!」

 今、俺たちの前には霊奈の結界が5枚、ある。それを後ろに持って行けばもっと時間を稼ぐことができるだろうが、前から敵が来た場合、銃弾の雨が俺たちを貫くだろう。

(どうする!?)

 霊力を使えば『五芒星』への霊力供給が疎かになり、すぐに割れてしまう。

(式神はどうだ……いや、霙は望の護衛中だし、雅は現在、行方不明。奏楽じゃ数秒しか持たない)

 廊下を右に曲がる。後ろから銃弾によって壁が破壊される音が聞こえた。

「……あ」

 すっかり、忘れていた。まだ、“アイツ”がいるではないか。

「霊奈! 3秒、稼げ!」

「了解!」

 立ち止まり、振り返る。すかさず、スペルカードを取り出し、宣言した。

「仮契約『リーマ』!!」

 スペルを床に叩き付けると煙が発生。もうちょっとだ。

 しかし、その間でも敵の攻撃は止まない。4人一斉に乱射して来た。

「はあああああっ!」

 霊奈が結界を操作し、『五芒星』の前に移動させる。銃弾と結界が衝突し、甲高い音が轟く。しかし、それも2秒しか持たなかった。

(それだけでも十分だ!!)

 ――パキッ……

 ニヤリと笑った俺の耳にそのような奇妙な音が届く。その音の発生源は敵の足元。その時、敵の立っていた床から大量のツルが飛び出した。

「な、何だ!?」

 叫ぶ敵だったが、すぐにツルに飲み込まれ、その声は聞こえなくなる。

「何が……」

 それを見ていた霊奈が呟く。

「全く……貴女って忘れっぽいのかしら?」

 いつの間に目の前に両手を床に付けているリーマがいた。その姿は大人モードだった。

「だってお前、呼び出したら怒りそうじゃん」

「さすがに自分で契約しておいてそれはしないわよ。まぁ、状況によるけど」

「え、えっと……どちら様?」

 リーマを見てそう質問する霊奈。

「あら、初めまして。リーマっていうの。そういう貴女は?」

「れ、霊奈……博麗 霊奈です」

「博麗? もしかして、霊夢と何か関係が?」

「自己紹介はそれまでだ。急いで移動するぞ。リーマにはその途中で状況を説明する」

「それは助かるわ。外の世界だってのはわかるけど、さすがにどうしてこんなことになってるのかまではわからないからね」

 頷いたリーマを見て俺は走り出した。それに続いて二人も付いて来る。

 

 

 

 

 

 

 

「行方不明だった悪魔の妹、こっちに来てたのね」

 あれから何度か敵と遭遇したが、リーマのおかげで切り抜けた。

そして、廊下を移動しながらリーマに説明しているとそんなことを呟いた。

「行方不明?」

「ええ。どこかの邪仙様が無理矢理、大博麗結界を通り抜けて来て結界に歪みが生じたの。その影響でこっちの物がそっちに移動しちゃったのよ。まぁ、大抵は木とか岩とか何だけど運悪く悪魔の妹も巻き込まれちゃったのね」

「他はどうだ?」

「うーん、他の行方不明は……文屋、氷精、玉兎ぐらいかしら?」

「結構、こっちに来てるんだな」

「それをあのスキマ妖怪が回収してるってわけ。きっと、貴女に構ってる暇がないのよ」

(もしくはフランを後回しにするためにわざと俺たちの前に現れないとかだな……)

「響! ここだよ!」

 前を走っていた霊奈が下へと続く階段を見つけた。

「いいか? この先には敵が山ほどいる。気を引き締めろよ?」

「「……」」

 しかし、俺の忠告を無視して霊奈とリーマはお互いの顔を見ながら頷き合っていた。

「おい、聞いてるのか?」

「聞いてるわよ」「聞いてるよ」

「……じゃあ、行くか」

 そう言いながら暗い階段を駆け下りる。降り切った先には一つの扉があり、俺はゆっくりとその扉を開けた。

「……こりゃ、すごいな」

「何人いそう?」

「そうね、ざっと20人かしら?」

 リーマの言う通り、俺たちの前には敵が20人ほど立っていた。その手には様々な近代武器が握られている。

(これは……指輪を開放しないと突破できないぞ?)

 だが、きっとフランを守る奴らもいるはずだ。それまでにガス欠を起こしてしまっては元のこうもない。

「さてと……そろそろ、ヒーロー様にはヒロインのところに行ってもらわないと駄目なのよね?」

「リーマ?」

 突然、変なことを呟くリーマ。

「そうね。きっと、フランも響に助けて欲しいだろうし」

「霊奈?」

「「それじゃ、頑張って。“ヒーロー”」」

「は?」

 意味が分からず、呆けていると霊奈が俺の立っていた場所を刀で斬り取った。

「ッ!?」

 当然、床が抜ければ俺の体は自由落下を始める。そう、こいつらは俺だけを地下2階に向かわせたのだ。

「お前らあああああああ!!」

 俺の悲鳴は空しく虚空に消え、地下2階の床に叩き付けられた。

「いつつ……」

 上を見るとリーマが成長させたツルが穴を塞いだ。

「……ったく」

 こうなってしまっては仕方ない。周りの状況を確認しようとするが、真っ暗で何も見えなかった。手に魔力を集め、光球を作る。どうやら、ここは倉庫のようだ。

「待ってろ、フラン。必ず、助けてやる」

 そう言った後、俺は倉庫を後にした。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。