東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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3分遅かったっ……。
とりあえず、正午にもう一本投稿します。


第210話 宴会

「さてと。皆、準備はいいか?」

「「「「「はーい!!」」」」」

 雅が式神になってから早2週間が経った。テストも終わり、皆の予定が良い感じに空いていたので今日、幻想郷で宴会が開かれる事になった。もちろん、内容は歪異変(博麗大結界に歪みが生じた異変。フランがこちらに来た原因の異変だ)の解決祝いと俺が幻想郷に初めて行った日から丁度、1年経った祝いだ。

「それじゃ、行くか」

 皆(望、雅、霙、奏楽、霊奈の5人)は自分の靴を持って俺の部屋に集合していた。俺はスキホに入れてあるので何も持っていない。

「移動『ネクロファンタジア』!」

 スペルを発動させると紫の衣装に身を包んでいた。すぐにスキマを開けて博麗神社に向かう。

「あら、早かったわね」

 境内に出ると霊夢が掃除をしていた。靴を履いていないので浮遊したまま、スキマを潜り抜ける。

「まぁ、手伝えることがあったら手伝おうと思ってな」

「そう。今日はたくさん、来たわね」

 俺の後から出て来た5人を見て少しだけ苦笑する霊夢。

「今回の異変は外の世界も巻き込んだからな。皆も活躍したし」

 望、雅、霙、霊奈はそうだが、奏楽も俺たちを手伝おうとしていた悟を引き留めていてくれたのだ。悟も連れて来たかったが、さすがに無理だった。あいつはこちらのことは知らない方がいいだろう。

(幻想郷があるとわかったら喜びそうだけどな……)

「霊夢さん、お久しぶりです」

「いらっしゃい、望。それに響の式神と……霊奈も」

「う、うん」

 やはり、霊夢と霊奈はまだギクシャクしている。

「さて、霊夢。何か手伝うことはある?」

「そうね……じゃあ、響は冷めても食べられる物を作ってて頂戴。他の子は私について来て。会場の準備を手伝ってもらうわ」

 霊夢の指示を聞いて皆、行動を開始した。俺も台所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ! だいたい、揃ったからそろそろ始めるぞ!」

 魔理沙が立ち上がって大声で言う。その声を聞いて俺も台所から居間に移動した。

「お? 今回の主役も来た事だし挨拶して貰おうか!」

「俺がするのか?」

「当たり前だぜ! 歪異変がなければこの宴会はお前が主役だったんだし!」

 魔理沙は笑顔で言いながら座る。自然と居間にいる皆の視線が俺に集まった。

「……じゃあ、一言だけ。これからもよろしく」

「響、それだけなの?」

 いつの間にか俺の隣に来ていたリーマ(大人モード)が俺の肩に手を置く。そちらを見ると顔が真っ赤になっていた。すでに出来上がっている。

「もっと、ないの? 『1年前の俺とは違うぜ! 今から誰か戦ってくれ!』とか」

「いや、それはさすがに――」

「何!? 戦うのか?! 弾幕ごっこか! 私、やりたいぜ!!」

 リーマの言葉を否定しようとするが魔理沙の声に掻き消されてしまった。

「魔理沙さん! 待ってください! 私も響さんと戦いたいです!」

 今度は妖夢が立ち上がって魔理沙に抗議する。

「二人とも、抜け駆けはいけません。私も響ちゃんと遊びたいです!」

 早苗も続く。遊びではないのでそこは訂正して貰いたい。

「咲夜、響と戦って来なさい」

「かしこまりました」

 レミリアの指示で咲夜も立ち上がる。

「さすがに4対1は無理だな」

「そこで私たちの出番だね」

 雅がそう言って俺の隣に来た。その後に霙と奏楽も続く。

「え? 奏楽も戦うの?」

「うん! おにーちゃんと遊びたい!」

 だから、遊びではないのだが。

「でも、奏楽は地力が少ないからなぁ」

「そんな時にこれを使えば大丈夫!」

 目の前に現れたにとり(万屋の依頼で何度も会話しているのでそれなりに親しい仲だ)が2つの腕輪を取り出した。

「にとり、これは何だ?」

「こっちの腕輪を響に付けて。こっちをその子に付けてっと……」

 カチャカチャと音を立てながら俺と奏楽の手首に腕輪をハメる。

「これで、その子が力を使うとその子の地力の代わりに響の地力が減るよ」

 つまり、奏楽の地力を消費せずに奏楽の力が使える。しかし、その代わりに俺の地力を消費しなければならないようだ。

(まだ、狂気は部屋から出て来ていないし……うーん……)

「仕方ない……軽くなら」

 こうして、4対4の変則弾幕ごっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約『音無 雅』。契約『霙』。契約『奏楽』」

 雅は黒い翼を生やして、霙は狼モードで、奏楽は大人モードで召喚される。

 それを見て博麗神社の方から感嘆の声が聞こえた。きっと、奏楽を見て驚いたのだろう。

「作戦は簡単。俺と霙で攻める。雅は防御。奏楽は援護でどうぞ」

「「了解(なのです)!」」「バゥッ!」

 三人が頷く。それを見て俺は霙の背中に乗った。

「へぇ! 奏楽がそんな姿になるとは思わなかったぜ……でも、相手にとって不足はない!」

「響さんに修行の成果を見せる時が来ました! 絶対に負けません!」

「響ちゃんと遊ぶのは久しぶりです! 頑張りますよ!」

「まぁ、お嬢様の指示なので……手加減はなしで行きます。弟様、覚悟はよろしいですか?」

「ルールは一撃でも有効打を貰ったら戦闘不能。その場から離脱してください。それじゃ、始めっ!」

 審判役の霊奈が合図を出すと魔理沙がいきなり、八卦炉を取り出した。

「まずは小手調べだぜ! 恋符『マスタースパーク』!!」

「いきなりかっ!?」

「魂壁『魂の壁』」

 俺たち全員、極太レーザーの射線に入っている。全員を守るために俺が『神箱』を取り出した時、奏楽が前に躍り出た。

「―――――――――」

 俺には理解できない単語を呟くと半透明の障壁が目の前に出現し、マスパを受け止める。

「うおっ……」

 その途端、俺の中の地力がごっそりと減った。

(こんなに使うのか!? あの障壁!?)

 しかし、そのおかげで障壁はマスパを受け切った。

「そ、そんな!? あんな薄っぺらい壁1枚に!?」

「人符『現世斬』!」

 今度は妖夢が剣を構えて、一気に接近して来る。

「おっと、これは私が止めるね」

 雅が黒い翼を地面に突き立てた。そして、妖夢の足元から炭素でできたツルが何本も飛び出す。

「くっ!?」

 足に絡まって来るツルに妖夢は顔を歪める。

「メイド秘技『殺人ドール』

 しかし次の瞬間、ツルは何本ものナイフによってバラバラにされてしまった。

「妖夢さん、そのまま突っ込んでください! 援護します!」

「はい!」

 妖夢の後ろに早苗という構図で俺たちの方へ走って来る。

「じゃあ、俺たちも動くか。霙、頼むぞ」

「バゥ!」

「それじゃ、私たちは援護ね」

「うん、わかった。お兄さん、気を付けてね」

 そう言って雅と奏楽は妖夢たちに向かって突進する。

「雷刃『ライトニングナイフ』! 神鎌『雷神白鎌創』! 神剣『雷神白剣創』! 結尾『スコーピオンテール』! 魔眼『青い瞳』!」

 雷で出来たナイフを妖夢に投げた後、3本の剣を出現させた。その時には霙も走り出している。目を青くして全体の様子を窺う。

「まずは、妖夢から! あいつはインパクトの修行をしてるから一番、危険だ!」

「炭符『カーボンナックル』!」「魂道『魂の誘い』」

 雅が右手に炭素を集めている間に奏楽が妖夢を引っ張る。

「な、何ですか!? これ!?」

 妖夢が驚愕していると雅が妖夢の鳩尾に拳を叩き込もうと腕を引いた。

「させません!」

 風を巻き起こしながら早苗が雅の前に飛び出す。そして、雅の拳と早苗のお祓い棒が激突した。

「ガㇽッ!」

 早苗と雅を軽々と飛び越えて霙は妖夢へ突進する。

「魔符『ミルキーウェイ』!」

 だが、俺たちの道を塞ぐように星弾が通り過ぎた。

「霙、右だ!」

 そう言いつつ、俺は左に向かって鎌と剣を突き出す。

「彗星『ブレイジングスター』!」「幻世『ザ・ワールド』!」

 霙の前には何本ものナイフが、俺の前から魔理沙が彗星のように突っ込んで来る。

「魂唱『震え立たせる歌声』」

 それと同時に奏楽の歌声が聞こえ始めた。すると、いきなり体が軽くなる。

(身体能力アップかッ!)

「三本芝居『剣舞舞宴華』!」

 霙の背中から飛んで彗星に向かって剣を振るう。

「なっ!?」

 箒に乗ったまま、魔理沙が驚愕する。その刹那、箒がバラバラになった。

 このスペルは右手の鎌で斬撃を飛ばし、相手の攻撃に隙間を作り、その間に剣を突き刺して、神力を爆発させ、隙間を大きくする。そして、ポニーテールで隙だらけの相手に攻撃する技だ。彗星に穴を開けるのは一苦労だったが、何とか上手く行った。

「うおっ!?」

 魔理沙はそのまま、どうすることもできずに境内に叩き付けられる。

「魔理沙、脱落。霙、脱落」

 紫(有効打を受けたか判断することになっていた)の声を聞いて霙の方を見るとナイフが境内に刺さっていた。そして、その中でプルプルと震えている霙(擬人モード)の姿があった。どうやら、狼モードだとナイフが刺さってしまうと思ったのかモードチェンジしたが、その隙に咲夜に攻められて動けなくなってしまったらしい。

「これで3対3ね」

 咲夜が微笑みながら言って来る。戦闘中は敬語ではないようだ。むしろ、ずっとタメ口でもいいのだが。

「……いや、2対3だ」

「え?」

「妖夢、脱落」

 それを聞いて妖夢の方を見ると仰向けに倒れていた。その辺りの地面は氷漬けになっている。霙が地面を凍らせてそこに奏楽が妖夢を運んだ。スペルを発動したままだったのでそのまま、誰もいないところでスペルを空振りしそのまま、氷で滑って後頭部から倒れてしまったのだ。

「……はぁ、あの半人半霊。何がしたかったのかしら?」

「さぁ?」

 だが、まだ戦闘は終わっていない。俺と咲夜は同時に剣とナイフを振るった

 


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