東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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お詫びのもう1話です。


第211話 式神たちとの戦い

 何度も、ナイフと剣がぶつかり合う。

「奇術『ミスディレクション』」

 咲夜がスペルを宣言した途端、目の前から消えた。時間を止めて移動し、その間にナイフを俺に向かって何本も投擲している。

「神箱『ゴッドキューブ』!」

 神力の箱で防御。

「雅! 早苗が奏楽を狙ってるぞ!」

 奏楽の視界に早苗が映ったのを見て叫んだ。

「炭弾『カーボンショット』!」

「くっ! 秘術『グレイソーマタージ』!」

 雅の弾幕と早苗の弾幕がぶつかり合う中、奏楽がこちらに歩いて来る。

「魂剣『ソウルソード』」

 スペルを唱え、半透明の剣を手に取り、横に一薙ぎした。その刹那、凄まじい斬撃が咲夜を襲う。

「時符『パーフェクトスクウェア』!」

 咲夜がスペルを使い、避難する。だが、その先には俺がいた。『魔眼』による力の探知で先読みしたのだ。

「神撃『ゴッドハンズ』!」

 巨大な手が咲夜に届く――しかし、すかさず、早苗がそれを止めにかかる。

「奇跡『ミラクルフルーツ』!!」

 俺の拳は弾幕とぶつかり合い、前に進まなくなってしまう。

「奇術『エターナルミーク』」

 俺が動けないのを見て、咲夜がスペルを発動し攻撃して来る。

「炭壁『カーボンウォール』!」

 弾幕が俺に届く前に雅の作り出した炭素の壁に遮られた。

「―――――――――」

 また、奏楽が何かを呟き、半透明の剣を振るう。それを見て早苗と咲夜が飛翔して逃げる。

(妖力が使えないから『拳術』は使えない……なら!)

「雷雨『ライトニングシャワー』!」

 空に向かって大量の雷弾をばら撒く。これで二人の動きを制限できたはずだ。

「炭装『カーボンヴェール』!」

 雅が二人の後を追って空を飛ぶ。その途中で炭素の粒を体の周りに漂わせ、俺の雷弾を蹴散らしながら突き進む。

「秘法『九字刺し』!」「幻在『クロックコープス』!」

 雷弾の隙間を移動し、雅から逃げながら早苗と咲夜は同時にスペルを宣言。すると、格子状の弾幕の間にナイフがセットされたまま、奏楽の方へ飛んで行く。

『……ごめん、お兄さん』

 それを見て逃げられないとわかったのか奏楽が俺に謝った。手に持っている剣はもう、消えかかっている。時間制限が迫っているのだ。

(お前は良くやってくれたよ。お疲れ様)

 そう言って、自らスペルを解除させた。格子状の弾幕が当たる前に奏楽はその場から消え、博麗神社にいる望の元へ帰って行った。

「奏楽、脱落」

 紫がそっと呟く。

「ふぅ……これで2対2。お前たち、どこかで共闘でもしたことがあるのか?」

「あったじゃない。狂気異変」

「……ああ」

 そう言えば、もっと大人数で一人の敵と戦っていた。それと比べて二人の方が息を合わせるなど造作もないことだ。それに咲夜は従者。主の気持ちを考えて命令される前に用事を済ませている。彼女なら早苗に合わせることだって難しくないだろう。

「さてと……響、どうしよっか?」

 無闇に突っ込めば返り討ちにされると思ったのか雅が俺の隣に着地して問いかけて来た。

「そうだなぁ……まぁ、一気に決めた方がいいかもな」

 それにコンビネーションなら俺たちの方が上だ。

「オッケー。作戦は?」

「臨機応変」

「了解」

 そう言って俺と雅は同時に飛んで二人に突進する。

「開海『海が割れる日』!」

 早苗が唱えたスペルはこちらの動きを制限するような弾幕と自機狙いの直線弾幕。俺と雅はお互いに距離を取って弾幕をばらけさせる。

「幻象『ルナクロック』!」

 それを見越していた咲夜が雅に向かってナイフを連投。更に時間を止めて雅を追い詰めるようにナイフを設置して飛ばして来た。『開海』のせいでただでさえ、動きづらいのにナイフまで飛んで来たら――。

「くっ……」

 雅が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてこちらを見た。

(こっち見なくてもわかってるっての)

「再召喚『式神をこき使う主』!」

 スペルを唱えると雅が俺の横に瞬間移動する。本来、このスペルは俺に危険が迫った時に式神を盾にするスペルだ。まぁ、逆に言ってしまえば、式神に危険が迫っていたらこっちに移動させればいいのでこう言った使い方も出来る。

「雅ッ! あれ、頼むぞ!」

「まかせて!」

 頷いた雅は黒い翼を半分ほど黒い粒子に変えて早苗の周りに漂わせた。

「え? え?」

 何が起きているのかわからないようで早苗がその黒い粒子を不安げに眺めている。

「魔法『火の粉』」

 その隙に俺は米粒のようは火種をその黒い粒子に放り込む。火炎魔法は俺の苦手分野で、出せてもこれぐらいなのだ。でも――。

 ――ババババッ!

 雅の炭素は他の炭素よりも燃えやすい。いや、燃えやすいと言うより火が付いたら『爆発する』のだ。

 つまり、小さな火でも炭素の粒子に着火されれば連鎖的に全ての炭素が大爆発を起こす。それを証明するように早苗は大爆発に巻き込まれ、見えなくなっている。

「雅、右から来る」

 そう言いながら右を見ると早苗を抱えた咲夜がナイフを3本、投げたのが見える。咲夜は時間を止められるのでこちらの意図に気付いた瞬間に早苗を救出していた。まぁ、こちらには魔眼があるので二人の反応が移動したのを見ればそれぐらいすぐに察せられた。

「きょ、響ちゃん! 殺す気ですか!?」

 咲夜に抱えられながら早苗が叫ぶ。

「お前たちなら避けるってわかってたし! 憑依『音無 雅』!」

 そして、二人が一か所に集まるのを待っていた。雅が黒い粒子になり、俺を包む。すぐに俺は雅を体に憑依させて二人に突っ込む。

「「なっ!?」」

『響! チャンス!!』

(わかってる!)

 俺の変身を見て早苗と咲夜は目を見開き、体を硬直させる。

「チェックメイト」

 そんな二人の目の前で黒い粒子を飛ばし、動けない二人の額に軽くぶつけた。

「はい、二人とも脱落。響チームの勝ち」

 紫の発言と共に『憑依』を解除して俺たちはハイタッチする。

 

 

 

 

 

 

 

「響! 最後の何だったんだ?!」

 宴会会場に戻って座った途端、魔理沙が詰め寄って来た。

「何って憑依だよ。雅の力を一時的に俺の体に埋め込むんだ」

「いや、そんなことしても大丈夫なのかってことなんだけど!」

 確かに人間がクォーターだったとしても妖怪と合体するのだ。体への負担などが心配される。

「でも、俺たちは大丈夫だよ。な? 雅」

「まぁ、ね。私が響の式神になってからそろそろ1年が経つから」

「へ? 期間が長いと大丈夫なるのか?」

 意外そうに質問して来る魔理沙。

「それだけ、雅の力に俺の体が慣れてるってことだよ。逆も然り。俺たちはお互いに力を供給し合ってたから」

 最近はしていないが、俺の地力がまだ、少なかった時、弾幕ごっこをやった後などは雅から力を貸して貰っていた。1回だけでも俺は動けなくなるほど地力を消費していたから。

「じゃあ、霙たちとは出来ないってこと?」

 魔理沙の隣で飲んでいたレミリアが問いかけて来る。

「ああ、あいつらからは力を借りてないし。それに式神になってから期間も短い。いつか、出来るようになると思うけど今は無理だな」

「ご主人様! 早く、私の力を受け取ってください! そして、憑依させてください!!」

 先ほどまで遠い所で奏楽と話していた霙がいつの間にか俺の後ろにいた。どうやら、繋がりを利用して今までの話を聞いていたようだ。

「いや、急いでも無理な物は無理だし」

「そ、それでも!」

「おにーちゃん! 私もひょーいしたい!」

 これまたいつの間にか俺の膝の上に座っていた奏楽が叫ぶ。

「お前はいいの」

「えー! どうして!?」

「お前は戦う必要がないから」

「嫌だ! さっきみたいに一緒に戦いたい!」

 そうは言われてもこの腕輪を通してわかったが、奏楽の力は本当に燃費が悪い。いや、車で例えるならガソリンを給油しながらではないと走れないほど地力を消費するのだ。戦っていて何度、膝を付きそうになったことか。

「無理な物は無理!」

「いーやーだ!」

「無理!」

「嫌だあああああああああああああ!!」

 奏楽が絶叫すると奏楽の体が白い粒子になって俺の周りを旋回し始めた。

「ま、マジか!?」

 奏楽は『魂を繋ぐ程度の能力』を使って無理矢理、俺と憑依するつもりらしい。驚きで動けずに俺は白い粒子に包まれてしまった。

 


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