東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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正月初めの更新が遅れると言う失態をおかしました。
あ、皆さん、明けましておめでとうございます。

遅れたお詫び&正月ということでどどんと1時間ごとに更新しちゃいます。
0時、1時分をパパッと投稿した後、2時、3時、4時とどんどん投稿しますのでお気を付け下さい。



追記

予約投稿していたら正直言って爆撃機並みの投稿量だとわかり、これは逆に迷惑だと思い、やっぱり4話ほどに止めておきます。



第226話 終幕

「きょ、響さん!?」

 電撃に飲み込まれた響さんを見て思わず、叫んでしまった。

「弥生! 急いでこっちに!」

 そんな私に向かって手を伸ばして来る雅。

「で、でも! 響さんが!」

「あれは攻撃じゃないの! 本気の響の攻撃を防げるのは私しかいないから早くこっちに!」

 周りを見てみれば全員、雅に向かって飛んで来ている。

(ど、どんな攻撃をするつもりなの!?)

 チラリと響さんの方を見ると電撃がなくなり、赤髪姿の彼を見ることが出来た。

「か、髪が……」

「弥生! 巻き込まれるよ!?」

 ぐいっと私の腕を引っ張って雅が絶叫する。すでに皆、雅の周りに来ていた。

「神災『降り注ぐ神剣』」

 ボソッと呟きながら響さんが手を真上に振り上げ、ゆっくりと振り降ろす。

「望! 全員、いる!?」

「大丈夫!」

「じゃあ、暗闇になるけど全員、動かないでね!!」

 後ろを見ると雅の翼が大きくなり、ここにいる全員を包み込もうとしていた。そして、そのまま、空を見る。

「ッ!?」

 そこには真っ白で巨大な剣が何本も浮いており、一斉に落ちて来た。いや、全ての物を貫こうと降って来たと言った方がいいだろう。悲鳴を上げそうになったが、その前に雅の翼が私たちを包み込んだ。

 それから暗闇の中、何度も雅の翼に剣がぶつかった時に生じた金属音が響いていた。

 

 

 

 天から降り注ぐ何本もの神剣。妖怪たちはその数になす術もなく、引き裂かれ、貫かれ、斬り刻まれ、落ちて行く。

「……」

 それを見ながら俺は黒い球体――雅たちがいる方を気にしていた。球体にも例外なく、神剣が降り注いでいる。今のところ、弾いているがいずれ限界が来るだろう。

(くっ……)

 ガドラとの戦いから魂が不安定になっていて、去年に出来たトールとの魂同調も上手く制御出来ない。今にも魂に引きずり込まれそうだ。

「う、うおおおおおおおおおおおおお!!」

 気合を入れるために雄叫びを上げ、残った残党に向かって右手の剣を振りかざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった?」

 金属音が聞こえなくなり、そっと周りの人に聞いた。

「多分。でも、妖怪の残党がいるかもしれないからもう少し、待機で」

 私の質問に雅ちゃんが答えてくれる。1枚目の時に瞳力を使い過ぎてあまり、能力を使いたくないのだ。

「な、何が起きたの?」

 暗闇の中、弥生ちゃんの問いかけが聞こえた。

「お兄ちゃんが魂の中にいるトールさんと同調したの」

「同、調?」

「うん。まぁ、シンクロ状態に入ったって言った方がわかりやすいかな? その魂同調をすると一時的にトールさんの力を使えるようになるんだ。雅ちゃんとの憑依みたいなものだよ」

「そんなことして、大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫じゃないって聞かれると……大丈夫じゃないね」

 今度は雅ちゃんが答えた。

「え!? 大丈夫じゃないの!?」

「憑依ならいいんだけど……魂同調すると4時間、動けなくなっちゃうの。その分、憑依よりも強い力を発揮できる」

「4時間!?」

「しかも、その間は本当に無防備になっちゃうから切り札なんだよね」

 最後に私がそう締める。

「よし、もう大丈夫だよ」

 式神通信を使ってお兄ちゃんと会話したのか雅ちゃんがそう言いながら翼を操作した。

 開けた視界の中で紅い髪になったお兄ちゃんが周囲を警戒している。

「お兄ちゃん! 大丈夫!?」

「おう、今は大丈夫だ。それより、お前も周囲を見てくれ」

「わかった!」

 能力を発動して、リーマさんに手伝って貰いながら周りを見る。でも、生命反応はなかった。

「何もいないよ!」

「こっちもいない!」

 私に続けて弥生ちゃんもそう報告する。彼女も魔眼持ちだった。

「……よし、終わりだ」

 お兄ちゃんは弱々しい微笑みを浮かべ、グラリと揺れる。紅かった髪が黒に戻り、墜落し始めた。

「響さん!」

 それを見て弥生ちゃんが叫ぶ。だが、その次の瞬間には霙ちゃんがお兄ちゃんを背中で受け止めていた。

「お、おっと。雅、私も限界みたい。望をお願いするわ」

 リーマさんの声で振り返すとリーマさんの体が半透明になっている。きっと、お兄ちゃんから力の供給が途切れてこっちに居続けられなくなったのだろう。

「雅ちゃん! 奏楽ちゃんも飛べなくなるから!」

「わかってるって!」

 リーマさんのツルから雅ちゃんの炭素に移る。その間に大人モードだった奏楽ちゃんが子供の姿に戻ってしまうもすぐに雅ちゃんが受け止めた。

「……雅。いつもこうなの?」

 下を見ていた弥生ちゃんが雅ちゃんに問いかける。お兄ちゃんが自分の身を犠牲にすることを言っているのだろう。

「え? うーん、こんなに大人数で戦った事はないけどだいたい、こんな感じかな?」

「ち、違う……あれ」

 下を指さした弥生ちゃん。そっちを見て私も雅ちゃんも息を呑んだ。

「う、海が……」

 眼下に広がる海に巨大な剣が何十本も突き刺さっていた。大きさもそうだが、何より数がおかしい。3桁は超えている。いや、もしかしたら4桁、行っているかもしれない。

「お兄ちゃん……」

 霙ちゃんの背中でぐったりしている我が兄を見ながら私は思う。

(本当に……無茶し過ぎだよ)

 心配するこっちの身にもなって欲しいものだ。

 こうして、私たちは妖怪たちを全て倒し、進撃を防いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 目を開けると森の中にいた。でも、夜なのかよく見えない。木が生い茂っていて薄暗いのだ。

「マスター、ここはどこでしょうか?」

 僕の頭の上にしがみ付いていた桔梗が問いかけて来る。

「うーん、わからないけど多分、幻想郷だとは思う」

「こんな時、私にレーダーのような物があれば周りに敵がいないかわかるんですけど……」

「いや、さすがにレーダーになるような素材はここにはないと思うよ?」

 なるとしたら、魚群探知機とかだろうか?

「あ、そうだ。飛べばいいんじゃない?」

「そうですね! 空から周りの状況を確認してみましょう!」

 僕の頭から背中に移動した桔梗は翼に変形した。

「それじゃ――」

「きゃああああああああああああああっ!!」

「「っ!?」」

 空を飛ぼうとした刹那、近くで女の子の悲鳴が聞こえる。

「桔梗! どっち!」

「あっちからだと思います!」

 翼から人形に戻った桔梗が右側を指さした。

「よし! 行こう!」

「はい!!」

 すぐに翼を装備して悲鳴がした方に飛んだ。

 

 

 

 

「いた!」

 森を抜け、ちょっとした広場に出た。そこには僕ぐらいの小さな女の子とその子よりもうちょっと幼い女の子が抱き合いながら泣いている。そして、その前には僕よりちょっと大きな女の子が立っていた。その子は黄色いシャツに緑のスカート。黒い帽子を被っている。

「マスター! 妖怪です!」

 そっちに気を取られていて気付かなかったが、黒い帽子の子の前に犬のような生物が4体、いた。どうやら、妖怪に襲われているようだ。そうこうしている内に4匹の妖怪が女の子たちに飛びかかる。

「桔梗!」

「はい!」

 翼を最大出力で振動させ、一気に妖怪との距離を詰めた。

「盾!」

 妖怪の前に躍り出た僕の前に巨大な盾が出現する。

「振動!」

 そう指示すると妖怪と盾がぶつかった瞬間、ドン、という音が盾の向こうから聞こえた。桔梗が振動して、4匹の妖怪を思い切り、弾き飛ばしたのだ。

「翼!」

 桔梗が盾から翼に変形して僕の背中に装備された。すぐに翼を振動させ、混乱している妖怪の1匹に接近。

「はあっ!!」

 背中の鎌を手に持ち、妖怪の首をはねた。妖怪の体が地面に倒れ伏す。

「拳! 右に!」

 翼から鋼の拳に変形した桔梗が拳の小さな穴からジェット噴射し、僕の体が右回転した。そこには僕に向かって突進して来ていた妖怪がいる。すぐに鎌を構えて、下から上に切り上げた。妖怪の腹部に突き刺さり、背中から鎌の刃が飛び出す。

「うりゃっ!」

 息絶えた妖怪を別の妖怪にぶつけて牽制する。

「マスター! 後ろ!」

「え!?」

 だが、背後から近づいて来ていた妖怪に気付くことが出来なかったようで、振り返るとすでに目の鼻の先まで来ていた。このままでは――。

「危ないッ!」

 その時、横から何かが飛んで来て妖怪を吹き飛ばした。

「盾!」

「は、はい!」

 一瞬、フリーズしたが今は気にしている時ではない。すぐに右腕に盾を装備して妖怪をぶつけて怯ませた奴の攻撃を弾く。そのまま、鎌を振り降ろして妖怪の脳天を潰した。

「拳!」

 また、鋼の拳に変形させてその場で回転。こちらに向かって来ていた妖怪に裏拳が決まり、さっきの黒い帽子を被った女の子の方に飛ばした。

「トドメッ!!」

 グッと右腕を引いた女の子が妖怪に右ストレートをブチ込む。妖怪の体は吹き飛ばず、その体に深々と女の子の腕がめり込んでいた。

「うわ……」

 血がドバドバ流れていてかなり、グロテスクな感じになっている。ちょっと、引いてしまった。

「……ふぅ」

 妖怪の体から腕を引き抜いた女の子はため息を吐いて僕の方を見る。

 

 

 

 

 これが彼女との出会いだった。

 


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