東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第3話 初めての戦闘

「そう……なら死んで♪」

「――ッ!」

 その言葉を聞いた瞬間、背中にゾクリと何かが走った。そして紫の横を走り抜ける。

「無駄よ」

 扇子で口元を隠しながら紫。その途端に廊下に大きな弾が大量に出現する。しかも全て俺を狙っているようだ。

「うおっ!」

 前に転がり込んで回避。弾は俺の上を通り過ぎ、壁にぶつかる。更に大爆発を起こした。

(何なんだよ……これは!?)

「ほら、次行くわよ!」

 今度はレーザーも撃ってきた。ここは廊下。逃げるには狭すぎる。

(どうする?)

 俺はただの人間。このレーザーを食らえば死んでしまうだろう。手持ちはPSPのみ。

(PSP?)

 そうだ。元はと言えばこのPSPのせいではないか。なんとなくだが俺がコスプレするのはこいつのせいだと思う。藍の口ぶりから考えて間違いない。

「上手くいけよ!?」

 イヤホンを耳に突っ込み、音楽を再生する。もう画面なんて見てられない。

 

 

 

 ~少女綺想曲 ~ Dream Battle ~

 

 

 

 急に曲名が頭の中に浮かぶ。その途端に服が光り、巫女服になった。だが、腋が開いている。それに頭に大きなリボンが付けられていて邪魔だ。

「あら? コスプレ?」

「うるせー!」

 紫の発言に叫ぶがその間にレーザーと大玉が迫っていた。

(……で、これからどうすんだよ!)

 コスプレしたからと言って強くなったわけじゃない。コスプレになにか細工はないか調べる。もうそこまで弾が迫っていた。

(またか?)

 調べていると懐にまたもやお札を発見した。今回は何枚も。あの時、これに書いてある事を読んだら藍が召喚された。

(一か八かだ!?)

「頼むぞ! 夢符『二重結界』!」

 祈りながら宣言すると目の前に2枚の壁が現れた。レーザーと大玉は勢いよくその壁にぶつかり消える。

「!!!」

 紫はそれを見て驚いていた。当たり前だ。さっきまで逃げるだけだったのに受け止めたのだから。

「やっぱり、能力持ちだったのね」

「はぁ? 何言ってんだ?」

 紫の言っている意味がわからなくて聞き返した。

「尚更、働かせたいわね!」

 そう言うと先ほどとは比べ物にならないほどの弾が飛んできた。

「くそっ!」

 廊下を逃げ惑う。弾をかわし、レーザーを潜り抜ける。

(―――こっち!)

 勘で右に曲がった。

「お?」

 出た先は庭だった。縁側からジャンプし庭に立つ。

「霊符『夢想封印』!」

 懐からお札を取り出して宣言。俺の周りからいくつかの白い球が現れ、大玉に突っ込み、相殺した。

(よし! これで……)

「まだまだね」

「!」

 安心した束の間、後ろから声が聞こえた。その瞬間、羽交い絞めにされ身動きが取れなくなる。

「くそっ!」

 ジタバタと暴れるが動けない。

「鬼ぐらいの力がなくちゃ無理よ」

 声からして紫だ。後ろを見ると空間が裂け、その隙間から上半身のみ乗り出していた。

「離せよ!」

「能力だけじゃなくスペルまで……やっぱり貴方を私の会社に入れるわ。藍! 来なさい!」

 最初はぶつぶつと何かを呟いていた紫だが何故か藍を呼んだ。

「紫様、こちらにいたのですか……って! 何してるんですか!?」

 縁側から顔を覗かせた藍が目を丸くして叫んだ。

「助けて!?」「この男をボーダー商事の社員にするわ! 手伝いなさい!」

 俺と紫が同時に言う。

「え? 響をですか?」

 藍は俺の言葉を無視して紫に質問した。

「そうよ。なかなか使えそうじゃない」

(物かよ……)

 心の中でツッコむが声には出さない。

「ですが……」

 藍は俺の方をちらっと見て渋る。

「やりなさい」

 紫の低い声で俺は悟る。

「……わかりました」

(藍は俺の事を助けられない)

 この姿じゃ動けない。さっきのお札を使おうにも取り出せない。これは絶体絶命。

 その時、曲が終わった。自動的に次の曲が再生される。俺はランダム再生にしているので何が再生されるのかわからない。

 

 

 

 ~御伽の国の鬼が島 ~ Missing Power ~

 

 

 

 服が光り、別の衣装になる。上は白い半そでのシャツに下は紫のスカート。頭から2本に角が生えた。

(もしかしたら……)

 コスプレが変わった。なら、違う力を使える。なんとなくそう思った。

「ふんっ!」

 再び、腕に力を込める。すると、いとも簡単に紫の呪縛から抜け出す事が出来た。

「……本当に鬼になるとはね」

 紫はそう言いながら空間の裂け目から出てきた。前に紫、後ろに藍がいる状況。逃げるのはまず無理だ。

「やってやる」

 逃げられないのなら戦うしかない。俺はお札を取り出す。それを見た紫と藍もお札を取り出す。

「鬼符『ミッシングパワー』!」「結界『夢と現の呪』」「式神『十二神将の宴』!」

 全員が同時に宣言すると紫と藍からは大量の弾が飛んでくる。

「え?」

 俺からも弾が出ると思っていたが何故か大きくなった。弾がぶつかるが痛くもかゆくもない。紫と藍は悔しそうな表情を見せるが弾を出すのをやめなかった。

「行くぞ!」

 右手をギュッと握り、拳を作る。そして思いっきり地面を殴った。

「「!!!」」

 地面は大きく揺れ、2人はバランスを崩した。

「次! 『百万鬼夜行』!」

 宣言したら俺を中心に大玉と小玉が飛び出る。その弾たちは紫と藍を襲う。

「くっ!」

 藍は縁側から大空に飛んで回避する。紫は涼しい顔をして空間の裂け目を作り出し、弾を吸収していた。

(やべ! 曲、終わる!)

 感じ取るがどうする事も出来ない。曲は終わり、次が再生される。

 

 

 

 ~風神少女~

 

 

 

 服はまた白いシャツに今度は黒のスカート。背中から漆黒の翼が生えた。体は元の大きさに戻っている。

(翼……よし! これなら!)

 翼を勢いよく広げ、上昇し始める。この体なら空を飛べるはずと踏んだ結果だ。

「逃がさないわ!」

 紫が空間の隙間に入る。

「!!!」

 何と俺の近くに空間の隙間が出現し紫が出てきた。紫はこちらに手を伸ばしている。

(間に合え!)

 急いで空間の隙間から距離を取った。そのおかげか紫の手は俺の左手に持っているPSPに触れただけだった。そのまま全速力でマヨヒガから離れる。

 

 

 

 

 

 

 

「紫様……響をあのまま逃がしてもよろしかったのですか?」

 スキマから出てきた紫様に質問する。スキマを使えば簡単に捕まえられるはずだ。

「いいのよ。細工も出来たし」

 紫様は微笑みながらそう言った。

「細工……ですか?」

 だが、私にはよく理解出来なかった。細工する必要がどこにあったのかわからないからだ。

「少しの間、暇つぶし出来るから」

(ああ……そう言う事か)

 今の言葉で理解出来た。ただただ紫様は暇なのだ。そこに面白い能力を持った少年が現れた。しかも私と紫様の弾幕を防ぎきって逃走。きっと、これから響がどんな行動を取るかスキマで観察でもするのだろう。

(でも、細工って?)

 そこだけが不明だ。

「後で教えるわ」

 私の心を読んだ紫様が笑顔で言った。

「……わかりました。その時を楽しみにしておきます」

 マヨヒガで起きた外来人との弾幕戦はこれで幕を閉じた。

「……はぁ~」

 縁側から家の中に入る前に気付いたがマヨヒガはボロボロだった。これから私は修復作業に入らなければならないだろう。ため息を吐いて修復するために使う道具を取りに家に入った。

 


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